■『スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~』vol.7■
ついに1月12日に開幕しました、『スタンド・バイ・ユー ~家庭内再婚~』。
個性の強い、可笑しな、でも愛らしいキャラクターたちが大騒動の末、「夫婦とは何なのか」という深淵なテーマを浮かび上がらせる、ハートフルな作品になっています。
なんといってもキャラクターがイイ!
そして、そのアクの強いキャラクターたちを、コミカルに演じきる俳優さんたちが楽しい!!
大爆笑したい人にも、ほっこりしたい人にもおススメしたい舞台です。
1月12日、初日を控えた出演者たちが会見に応じました。
その模様をレポートします。
初日囲み取材レポート
ふた組の夫婦をメインに据えた物語。
演じるはミムラ、戸次重幸、真飛聖、勝村政信、という顔ぶれです。
藤沢ハルカ役はこれが初舞台となるミムラさん。
「私の演じるハルカは、見た感じからしてちょこっと浮世離れ...といいますか、「ああ、あのタイプね」というカテゴリがなかなかできないところにいるニッチな人。なのですが、自分の中で思っていることがあっても、あまり表にも出さず、自分ともたぶん対話をせずに今まで来ていたものが、今回この舞台の中で、自分自身のことも、自分と外の人の関わりも発見する、そんな感じの役になっています」と役どころを紹介。
藤沢英明を演じるのは戸次重幸さん。
「ハルカの夫役です。性格は『見栄を張る、虚勢を張る、中身すっからかん』。非常に私と共通点の多い人物で、全く役作りすることなくやらさせていただいています(笑)」。
榊誠治役は勝村政信さん、なのですが、
「僕は榊さんという地味な...。たぶん榊さん、下の名前もないんでしょうね」とボソッと言ったところで真飛さんが「誠治ですよ!ありますよ。誠治、誠治」と即座にツッコミ!
↑ 真飛さん、手がもう、ツッコミの手ですよね(笑)
続けて勝村さん、「非常に地味で、いじめられて、真飛さんにいじめられて(真飛さんより「真飛さんにじゃないですよ、愛子にです!」)。ちょっと変わり者のミムラさん(ハルカ)と仲良くなっていくかな、みたいな役どころ。それ以上は言えません。...自分との共通点はあまりないですね」と飄々と話します。
そんな誠治さんの妻、榊愛子を演じるのは真飛聖さん。
「性格は肉食女子で、最近、肉食女子って世間で増えてきたとは思うんですけど、その中でもマックスですね。あそこまで行ってしまうと、ちょっと行き過ぎてしまっている気もします(笑)。思っていることを、すぐ行動なり、顔なり、言葉に出してしまうような...」
真飛さん、「顔なり」とご本人も仰ってるように、スゴイ表情をしてくれているのですが、
真飛「...顔? 役作りですよ!」
勝村「肉作り?」
真飛「肉作りじゃない、役作りだよ! 自分と共通しているところはないと思いますけど。全て役作りで大変です。そう言っておかないと、いろいろと差し支えが(苦笑)」
...と、もはや勝村さんと真飛さんは夫婦漫才のノリなのです。
演出は堤幸彦監督。
手応えを問われ、
「もう仕上がりは完璧です!(キャスト一同「ひぇぇぇ!」の声...)...と、思いたい。ちょっと、かなり難しい舞台だと思っております。会話劇であり、ミュージカルのようでもあり、コメディでもあり、じわっとくるところもあり、いろんな方向性を持ってるから。しかもそれを素舞台に近いところで演じてもらわなきゃいけないんで、まあ、役者さんは大変ですね。でも昨日までは本当に大丈夫かな、もう1回初日を組み直して別日にした方が良いんじゃないかなと思っていました。今日の昼間で、なんとか今夜いけるぞと確信を持ちました。皆さんのおかげです」とキャスト陣への感謝を織り交ぜつつ、自信のコメントです。
また各キャストについては、
「戸次さんはもう本当にね、好きなんですよ、舞台の上が、たぶん。(戸次さん「好きですよ」との返し)...たぶん一番ビビってると思うんですけど、とても舞台が好きな方なので、お客さんが入るとものすごく変わっていくと思うんです。そこに僕は本当に期待しています。舞台で豹変するタイプですね。
ミムラさんは機械のように正確。なんだけど、人間味がものすごくあるんです。あれ、どこから出ているんでしょうね。ものすごく考えていると思うんです。稽古の初日から、或いは本読みの時からものすごい考えて考えて、それが滲み出る感じ。だから人間としてとても幅広い芝居ができる。
勝村さんも板の上に立てば立つほど(生き生きとする)。さっき(ゲネプロ)もちょっとしたスタッフ側のミスを完全に笑いに転化していましたが、もうマジシャンですよ。
真飛さんはすごいです。さすが。板の上に立った据わりがものすごくいいですね。そういうきれいな佇まいにも関わらず、ものすごい役どころをやってもらっています。私も笑いの作品が多いですが、笑い中心のものに今後お呼びしたい! それくらいね、間というかきっかけというか。コントやりませんか?」
...とそれぞれを褒める、というかもう絶賛の域!
そしてコントへのお誘いを受けた真飛さん、「よろしくお願いします、ぜひ!やりたいです」と答えていました。
またミムラさんへは初舞台への心境が問われましたが、皆さんとの掛け合いが楽しかったので、会話形式で以下お届けします。
ミムラ「初舞台なので、わからないことはすごくたくさんあるんですが、先輩方のリアクションを見て、今回の舞台は「これって舞台の中でも通常よくあることじゃないんだ」と思っています。そしてすごく素晴らしい先輩方ばかり。例えば戸次さんは本当にキレのある動きと、今ここに何が必要かというのをわかって演じている。私は言われないと、そのツッコミや動きを足せないんですが、戸次さんは必要だと思ったら体が自然に反応して作っているんですよね。そういうのを見ていて勉強になります」
戸次「もう、(褒められすぎて)いじめですよ...」
↑ 褒められすぎてこんな顔になっちゃってる戸次さんです
ミムラ「(笑)。勝村さんはいつも稽古場に入るのが早い! そしてとにかく体を使った演技、あと何か起きた時、それをトラブルに見せず、観客にマイナスポイントとして与えない拾い方とか、そういうところがすごい素晴らしい」
堤「そうだ!」
ミムラ「真飛さんは、やっぱり宝塚という地盤で築かれた体の動き」
真飛「顔の動き?(笑)」
ミムラ「いやいやいや、体です(笑)。なんですけど、今回はいつもの<きれいでかっこいい真飛聖>じゃないところもあるんですよね。それがきっとファンの方からすると面白いですし、後輩である私から見ても、体にこれだけキレがあると芝居にもこれだけ幅が出るんだっていう(ところが素晴らしい)。あと顔ですよね(笑)。今回、たぶん見たことのない真飛さんが見れると思うので、それは私も一観客として楽しみです」
そんなミムラさんに対しては堤監督、「ミムラさんも初舞台とは全く思えないですよ。感情の幅がすごい。ウネウネからパーンッまでいきますからね!」とのコメントでした。
そしてテーマが"夫婦"ということで、この作品から自分が感じた"夫婦観"についても話題にあがりました。
「今はすごく多様な出会いがあるからこそ、夫婦の種類もより増えているような感じがしています。でも、やっぱり、皆どこかで「うちの家庭って普通なんだろうかと」「これは一般的な幸せの上に乗っかっている家庭なんだろうか」と気にするところはあると思うんです。そこに関して、「それぞれでいいんだよ」というメッセージも今回の作品に描かれていると思います。ふたりの中で幸せが見つかれば、そしてそれが他所様に大きな迷惑がかからなければ、それはそれでひとつ正解じゃないかなとは今回やりながら感じました」(ミムラ)
「独身なので、想像ですが...。親から子への愛が無償だとすると、夫婦それぞれのお互いへ対しての愛というのはなかなかそうはいかない。だけど、どれだけ無償の愛と自分で言えるか、というものではないでしょうか...。ネットで見たような知識で浅いです(笑)」(戸次)
「無償の愛。やっぱり愛はお金ですね。夫婦になればなるほどお金が必要なのかなと。(ミムラ「無視はできないですよね」)幸せになるためにはお金が必要。......。...夫婦ってどういうものか、できれば教えていただきたいです。どうすれば僕とか堤監督みたくならずに済んだのかなと...!」(勝村)
この勝村さんの自虐発言(?)にはミムラさんが「私も入ってますよ、実は(笑)」とフォローし、堤監督が「やめましょうよ...」と悲鳴をあげていました...。
最後に真飛さん、「全く今の話でわかんなくなりましたけど...(苦笑)。私も独身なのでアレですが。不満をお互いに抱きながらも、夫婦って帰るところは同じじゃないですか。そこを我慢と勝手に自分が思って、相手が悪いからこうだ、みたいな勝手な思い込みで過ごしていくことでよじれたり、思わなくていいことまで芽生えてしまうので、自分のこともちゃんと見て、相手だけにぶつけないで...っていうのが、今回は特に思いましたね、自分の役を通して」。
なかなかに皆さま、含蓄の深いコメントでした。
最後にミムラさんが「夫婦という関係性の不思議について、なぜ他人と他人が一緒になって、その後ずっと一緒に生きていくのか、色んな人がそれぞれの世代で疑問に感じたり、不思議に思ったりすると思います。その一端を紐解いた作品となっています。これを見て何かお持ち帰りしていただきたい。人生にぽっと花が咲くようなそんな作品になっていますので、よろしくお願いいたします」とアピールして会見は終了しました。
コメディには俳優さんの個性の強さが必須だと思っておりますが、まさに俳優さんのキャラと、役柄のキャラが(意外性もありつつ)ズバとはまった作品になっています。
そして稽古場、インタビューと様々な角度からこの公演を追ってきたげきぴあですが、夫婦(役)の息の合い具合も素晴らしい!
ぜひお楽しみに。
最後に舞台写真もお届けします。
取材・文・撮影:平野祥恵
【公演情報】
1月12日(月・祝)~27日(火) シアタークリエ(東京)
1月30日(金)~2月1日(日) サンケイホールブリーゼ(大阪)
2月4日(水)北國新聞赤羽ホール(石川)
2月7日(土)静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
2月9日(月)愛知県芸術劇場 大ホール
町田君のバク転!