30-DELUX(サーティーデラックス)と劇団朱雀。
同じ演劇というジャンルでも、なかなか交流のなさそうな小劇場界と大衆演劇が融合し、この冬、合同公演を開催します。
作品は『オレノカタワレ~早天の章~』。
大衆演劇の一座「劇団時座」を舞台に、座長の息子として将来を期待された青年・時枝三四郎と、時座に入り役者としての才能を開花させた青年・風祭ジョー、ふたりの才能ある若者の運命の邂逅を描いた物語です。
この作品で、三四郎とジョーの2役をWキャストで演じる天野博一と早乙女友貴、
さらに"両座長"30-DELUX主宰・清水順二、劇団朱雀の座長・葵陽之介、
また劇団朱雀の看板俳優であり、本作にはトリッキーな役回りで出演する早乙女太一、
5名のインタビューを敢行してきました!
【バックナンバー】
● INTERVIEW ●
――まず今回の作品ですが、30-DELUXさんからのラブコールだったんでしょうか?
清水「そうですね、ラブコール的なものは贈りました。もともと知り合いではあったのですが、僕が何か一緒にやりたいですねと持ちかけました。その中で、実はその昔に僕は劇団朱雀さんを観たことがあります、すごく参考にさせていただいて作った『オレノカタワレ』という作品があって...というお話をして、と、そんなところから始まっています」
陽之助「それに清水さんのおっしゃることが私の思いと一緒だったので、ぜひともやらせていただきたいと言いました。というのは、何よりも次の世代の子を育てていかなければならないというのは、すごく私も感じていたんですよ。清水さんもそういう考えを持たれていて、ならばふたつの力を併せて作品を作りませんか、と。『オレノカタワレ』という作品については、内容を訊いて、それは面白そうですね、ということで「やりましょう!」とスタートしました」
――"次の世代の子"ということで、今回主役に抜擢されたのが、天野さんと友貴さんですね。おふたりはこの合同公演の話を知った時はどう思いましたか?
友貴「単純に楽しみだったよね。天野君のことは知っていましたし」
天野「そうなんです、共演していたので(2013年『THE SHINSENGUMI』)、すごい楽しみでした」
友貴「清水さんとも共演させてもらっていたし、ふたりのいる劇団と合同で公演をするのは嬉しかった」
天野「その共演した舞台の千秋楽の時も、終わってから朝まで、ずっとふたりでこの『オレノカタワレ』の公演について話をしていました。主役、座長とは何ぞやとか(笑)、その心構えとか。まだまだ未熟ながらも、なんとか振り絞って考えを出して...というのをふたりでやっていました」
△ 早乙女友貴
△ 天野博一
陽之助「うちの公演はほとんどが太一が主演で、ゲストの方を招いてという形がメイン。だからこういう合同公演というのは初めての経験で、しかも今回は弟の友貴が主演。それは嬉しかったよね、私としても」
太一「そうですね、僕も自分のポジションとして、こういう形で出る公演は初めてです。未知の世界のことなのでやってみないとわからないのですが、あまり考えずにその場、毎ステージで感じることを、リラックスしつつ、ちゃんとやっていければいいなと思っています」
清水「太一さんは主役じゃない分、楽しんでやっていただければ! 色んな役で、ちょっとだけ出て、すぐハケて...というような、そんな役どころ。七変化を楽しんでもらえれば、それはファンの方も喜びますし、うちのファンの方も「太一さんはどういう登場をするんだろう」と期待をされてるところだと思います」
△ 早乙女太一
――合同公演というのは、よくやるんですか?
陽之助「最近はあまりないですが、大衆演劇内では結構、数を踏んでいます。だから他劇団といっしょにやることに関してはなんの抵抗もなかった。清水さんの人柄もわかっていたし、30-DELUXの舞台を見て「ああこういう風なやり方もあるんだな」というのを知って、それを吸収できればなとも思いましたので、我々としてはすんなりと今回のお話は受け入れられました」
清水「うちはよくやっています。やっぱり違う価値観の人と一緒にやると、乗り越えなくてはいけない壁はすごく多い。多分、朱雀さんが進んできた道と、僕らがやってきた道は、似ているようで全然違うと思うんです。いろいろ話をしていても、ルールからしてだいぶ違う。でも舞台、エンターテインメントにかける魂というのは一緒。そこがあれば違う価値観はお互い話し合って乗り越えられるのかなというのはすごく思っています。それに、天野君と友貴君がすでに親友のように何でも言い合える仲になってるというのが、すごく安心できるところ。さらに個人的なことを言えば、もともと僕は初めて劇団朱雀を観た時に、役者・葵陽之助という人の色気にすごく感動したんです。この人と対決したいという思いがあったので、そこが楽しみでしょうがないです」
――確かに、お稽古場を拝見していて、役柄的に対立しているわけではありませんが、清水さんと陽之助さん、両座長の存在感や声の張り具合などが、まさに双璧!という感じで、面白く感じました。
清水「葵さんは、僕とは本当に歩んできた道が違いますし、僕の知らない世界を知っているので、正直得体が知れないといいますか(笑)、怖い部分があります。でも普通にしゃべってる分や、芝居してる分にはすごく楽しい」
陽之助「いやいやいや。僕はやりたいことをやらさせてもらうつもりです。もちろん演出家のもとでどう直されていくのかはわからないですが、やれることを精一杯やって楽しみたい。だから30-DELUXさんのやり方に無理に合わせようとも思ってないし、30-DELUXさんも自分たちののできる範囲内で最大限に、それを受け入れていただければ...。ただ僕のセリフが多すぎるのが...ちょっとなあ! はじめと話が違うぞ、みたいな(苦笑)」
清水「でも脚本の米山(和仁)君や演出の伊勢(直弘)さんが、劇団朱雀さんの昔はどうだったんですか? とかいろいろ取材をしていて、そうすると葵さんは過去の経験をいっぱい話してくれる。さらに「二々郎(陽之助さんの演じる役)だったらこういう風に考えるんじゃない?」とかアイディアもたくさん出してくれるので、どんどん二々郎像が膨らんでいくんです。ある種自分の責任です(笑)」
△ 清水順二
――そうなんですね(笑)。時座自体も、朱雀がモデルだったりするんですか?
清水「いえ、僕が劇団朱雀の公演を観たのがきっかけではあるのですが、モデルというほどではないです。米山君もいろいろ調べてくれたし、大衆演劇の劇団ってこうかな、という勝手な想像もあり。...でも意外に似てたって言われました」
陽之助「そうですね、ある程度似ているところもありました」
太一「本当のことを言うと、あまり(劇団の内情は)他人には話せないことの方が多い...」
天野「そうなんだ...」
友貴「あまり詳しく言っちゃうとね?(笑)」
陽之助「"ピー"が入っちゃいますね(笑)。...簡単に言うと、座長が黒といえば黒、白といえば、白。座長の言う事は絶対という世界。座長が立ち回りを間違えようとも、周りがあわせなきゃいけない。だから私は座長になりました(笑)」
――じゃあ今回は立場的には清水さんが座長になるんでしょうか、その清水さんが黒を白と言ったら?
陽之助「それはもちろん...反発します!」
(一同笑)
△ 葵陽之助
――そんな座長同士の火花の散らしあいもある中で(笑)、主演を務めるおふたりは、さらに2役を交互に演じます。大役が、しかも2倍になりますが...。
天野「今、三四郎とジョーを、友貴君と僕で交互に稽古をやっている状況なんですが、友貴君の演じるのを見ると、僕が考えていたジョーのイメージ、三四郎のイメージを覆してくることが多くて。ああなるほど、こう作るのか...と日々考えさせられます。それはWキャストのいいところですね。意見交換もしやすいし」
友貴「そうだよね。ほかの人が自分と同じ役をやっているのを見ることはあまりないので、見ていて発見がありますよね。あ、こういうふうにやるんだ、じゃあ僕はこうしよう、と」
天野「逆に「上回ってやろう」という気持ちも出てくるよね!」
友貴「と言いながら、天野君は稽古場でまだ(力を)押さえているんですよ...」
天野「いやいや(焦る)!...そうなんです僕、もともとが気を遣っちゃう性格というか、控えめというか...。そういう自分が嫌いだったりもするんですが、友貴君は自分にないものがあるなと思っていて。そういったところでも勉強する部分がたくさんありますので、楽しいですね」
――三四郎とジョー、どちらが共感しやすいですか?
天野「(友貴君は)ジョーだよね?」
友貴「...うん」
天野「で、僕は三四郎なんですよ。裏で考えてストレスをめちゃめちゃくちゃ溜めて...というところが僕はすごく共感します」
友貴「でも俺もプライベートでは三四郎の方だと思う。考え方とか。隠れて考えてしまうから。ひとりでずっと考えてるから、解決できないんだよね...」
清水「友貴君はジョーを演じている時も三四郎を演じている時も、近いものがあるんじゃないかなと思う瞬間がそれぞれにすごくあります。三四郎はいま言ったようにプライベートな友貴君に近いし、ジョーのような顔を見せるときもある。天野に関しては、確かに三四郎に通じるところがあるけど、真面目だし普通に明るい子なので、ジョーみたいに思い切ってむちゃくちゃやるということをあまりしないタイプ。そこが今回の彼の壁なのかな? と思います」
天野「はい、だから友貴君がやるものがすごく参考になっています」
――顔合わせでは、天野さんが友貴さんと「実際に"オレノカタワレ"になれたら」と仰っていましたね。
天野「そうしたらすごいスピードで拒否られましたね、びっくりしました!(笑)」
友貴「いや、まだそこまではいってないので(冷静)。友だちで、親友くらいまでにはなっていますが、カタワレっていったらそれ以上のものなんですよ。だって自分の半分がその人ってことだから」
天野「この前も"オレノカタワレ"って結局なんだろうねって話していたんです。親友でもないし愛でもない。その言葉すら見えていない段階で、自分たちもカタワレとは何かを追い求めている状況でもあるので、それは今後の稽古で見つけないと絶対成功しない。そこは稽古のあいだ、死に物狂いで探していきたいです」
――では最後に主演のおふたりに。様々な意義がある公演になりそうですが、自身がこの公演で目指したいことは?
友貴「目標は、無事に終えることですね。自分はここで成長できるチャンスだと思うので、精一杯頑張って、その一歩を踏み出し、無事に終えること。それからまた何か、別の仕事に繋がっていけばさらにいいことだなと思っています」
天野「僕は...今回の芝居を観ていただくお客さまに楽しんでいただくのはもちろんなんですが、「友貴と僕が主演に立った時は面白いものが見れる」と感じてもらえるような舞台になるように心がけていきたいです。30-DELUXと朱雀がやったからこそ、プラス、このふたりが真ん中に立ったからこそ、こんなに面白い舞台が出来たんだと思わせられたら、今回僕らがやる意義がすごく出てくるんじゃないかなと思います」
●STORY●
「結局ここに舞い戻ってきました...」
誰もいない劇場で『劇団時座』の最後の幕が上がる。
一人舞台に立つのは、三代目座長、時枝三四郎。
彼の人生の全てであった《カタワレ》風祭ジョーとの半生を語りだす...。
劇団時座は、三四郎の父一二郎、叔父の二々郎とで旗揚げされた大衆劇団。
座長の息子として、将来を期待されていた三四郎だったが、 自分に自信を持てない彼は、芝居に対しあと一歩踏み出せないでいた。
そんな時、問題児ではあるが、芝居の腕はピカ一の風祭ジョーが入ってくる。
彼はすぐさま、頭角を現していく。 そして、事あるごとに三四郎を焚きつけた。
いつしか三四郎は劇団時座を背負って立つ役者へと成長していく。
二人の若き才能がぶつかり、劇団時座は、その人気を不動のものとしていくかにみえたのだが...。
(オフィシャルサイトより)
【公演情報】
12月10日(水)~14日(日) シアターサンモール(東京)
1月22日(木)~25日(日) ABCホール(大阪)
1月31日(土)~2月1日(日) 名鉄ホール(愛知)