『モーツァルト!』山崎育三郎インタビュー

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天才音楽家・モーツァルトの人生を、生身の人間"ヴォルフガング"と、才能の化身である"アマデ"という二面から描き出すミュージカル『モーツァルト!』
『エリザベート』を筆頭とするM・クンツェ(脚本・作詞)&S・リーヴァイ(音楽)コンビ作品の中でも本作は、その美しく多彩な音楽に特に人気が高く、日本でも今回で5度目の上演となります。

主人公であるヴォルフガング・モーツァルトは、前回に引き続き井上芳雄&山崎育三郎のWキャスト
前回・2010年にヴォルフガングデビュー、今回2度目の挑戦となる山崎さんに、現在の心境を伺ってきました。

● 山崎育三郎 INTERVIEW ●

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子役時代の声が出ない高校生時代。
モーツァルトの人生は自分の悩みにリンクした

――山崎さんは前回公演でヴォルフガング・デビューを果たしていますが、その前からずっとこの『モーツァルト!』に出たかったとお伺いしました。この作品との出会いは?

「2002年、日本初演の時に観ています。まだ高校生でした。アッキー(中川晃教)も(井上)芳雄さんも、どちらも観ています。衝撃的でした。とにかく音楽が...『僕こそミュージック』が頭から離れなくて。まず音楽のとりこになりました。それで、譜面を買ったんです。同級生のピアノ専攻の子に「これ覚えたいから!」って頼んで伴奏してもらって、教室で歌ったりしていました。それにこれだけ若い男性の役がフィーチャーされているミュージカルって、日本ではあまりないじゃないですか。主役中の主役で、最初から最後まで彼のストーリー。そういう意味でもミュージカル俳優にとって『モーツァルト!』は憧れの作品。僕も一番最初に観た時から「絶対やりたい」と思いました」


――高校は音楽高校で、すでにミュージカル俳優になりたいという目標があったんですよね。おそらくすでに多くの作品を観ていたであろう中で、特にこの作品が山崎さんの中で響いたのは何故なんでしょう。

「僕は子役として活動していたんですが、高校生の頃って、変声期を向かえてまだ数年というタイミング。自分の頭の中では子どもの声...変声期前のスコーンという高いボーイソプラノが鳴るんです。それを出そうとして声を出すと、実際に出るのは低い大人の声。脳と喉が反発を起こす。歌の先生から「子どもの時の自分の声のイメージを忘れろ」と言われていました。でもどうしても、その声を忘れるという作業はすごく難しくて、現実とのギャップに悩みました。モーツァルトと比べるのはレベルは違いすぎますが、天才と言われた子供時代の影であるアマデが付き纏うという彼の人生と勝手にリンクして、よけいに感情移入しました」


――単純に「好き」以上に、山崎さんに影響を与えた作品なんですね。

「子役の自分と、今の大人になっている自分。これがいる以上僕は次のステップに行けない...。その葛藤を経た上で「闘わなきゃ」「自分は自分でいいんだ」というヴォルフガングのメッセージがすっと入ってきて、すごく泣けたんですよね...。とにかく今の自分と向き合ってもっともっと歌を練習しよう、当時、そんな気持ちになったのを覚えています」
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オーディションで掴んだヴォルフガング
いざ決まったら恐怖に...

――そんな思い入れのあるヴォルフガング役を、前回から演じています。この役はオファーがあったのでしょうか。

「いえ、オーディションです。小池(修一郎)先生にモーツァルト役のオーディションを受けてみないかと声を掛けていただきました。もう、オーディションのお話を頂いた時点で感激しましたね...! 夢だった役、絶対これは掴みたいと思って必死に歌いました。オーディションでは『僕こそミュージック』を歌いました。その時は何を言われたかなぁ、覚えてないな...。緊張していて、わからなかったです」


――そして2010年、念願のヴォルフガング役を掴みました。

「ヴォルフガング役は夢で、やりたいやりたいと言い続けていたし、絶対にやってやるという思いでオーディションを受けたんですが、いざ決まったら恐怖に変わりました。ある意味、ここを目指してがむしゃらにやってきていた。でも自分がその場所にポンと置かれると...まだ未熟だし、もっともっと上手くなりたい、勉強したいと思ってる自分がここに来ちゃったということへの恐怖。それに帝国劇場の主演という目標としていた地点に来ちゃったということは、逆に言うとあとは落ちるだけ...このあともっと長い人生なのに24歳で...。まわりからも変なプレッシャーかけられたし(笑)。自分でも変なスイッチが入っちゃって。「いや待てよ、市村(正親)さんより(山口)祐一郎さんより後に僕がカーテンコール出てくるんだ、うわぁありえない、ダメでしょ!! ああもう無理だ...」って。僕、普段は全然悩まないんですよ。悩まないタイプなのに、あの時は本当に恐怖に押しつぶされそうでした」


――その前に、これも目標のひとつだったという『レ・ミゼラブル』のマリウス役も演じていますよね。その経験があってもそんなに?

「全然、プレッシャーのレベルが違いましたよ! そこで改めて、芳雄さんのすごさに気付きましたね。主演として参加するものと主演じゃないものでは、自分の気持ちも居方も、まわりからの見られ方含め、全然違うんです。"背負う"という言い方が合っているかはわかりませんが、自分がセンターに立つという意識でいなきゃいけないという立場を長い間やっているというだけでも尊敬します。とんでもないプレッシャーの中で表現して、歌っていたんだ...と。それは市村さんも祐一郎さんもですが、改めてすごいと思ったし、やっぱりそういうものを乗り越えてきている方って優しいんですよね...。祐一郎さんは、稽古場でも舞台袖でもササッと来てくださって「いいよかっこいいよ、素敵だよ大丈夫だいじょうぶ」とか声を掛けてくださったりして。本当に皆さん、優しいんです」


――そんな中で迎えた初日のことは、覚えていらっしゃいますか?

「初日、自分が登場する前の舞台袖は、震えていました。始まる!と思って。みんなどう思うだろうとか、余計なことを考えるし。それで、当時付き人をやっていた子に背中を何発か叩いてもらって、ヨッシャ!って出て行って、一曲目の『赤いコート』を歌いました。なんか...闘っていましたね。「どうせダメだと思ってるんだろう!」「俺は俺なんだー!!」って。そんな気持ちで行くしかないくらい、怖かったんです。でも始まってみると、モーツァルトが誰にも理解されず、自らの表現を貫き通したという人生と、自分が置かれている立場がリンクできたから、そこに乗っかってやり通せました」
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――実はその初日に怪我をしてしまったとか。

「そうなんです。肋骨にヒビが入ってしまって。1幕ラスト近く、2メートルくらいのところからジャンプして、みんなが受け止めてくれるシーンがあるんですが、その時にマイクの送信機...タバコの箱くらいのサイズのものを着けているんですが、それが下にいる方の手と当たってしまってアバラに食い込んで、ミシ! と。なんかヤバイなと思ったんですが、そのすぐ後には大ナンバー『影を逃れて』もありますし、気合いが入ってるせいか痛みはないんです。その後休憩時間中に楽屋に戻ったら痛くて歩けない。息をするだけでズキーン!と激痛で...。でもテンションがあがっていて、何も思わなかったです(笑)。気合いでとにかくやり終えて、皆さん楽屋前で待っていてくださったんですが僕は握手も出来ずに帰って病院に行きました。「何やってるんだろう俺!」「明日からどうしよう!」って思っていました。テーピングと痛み止めと注射とで、結果的には休演はせずに出来ましたが」


――そんな大変なことがあったとは思えない熱演でした。

「でもその怪我さえも、ヴォルフガングがアマデを抱えて生きているということと、痛みを抱えている自分とリンクするようでもあり、逆に作品に集中することができました。とにかく力を抜くこともわからず一生懸命、がむしゃらにやった、という初演でした。それはそれで、その時の自分の精一杯の表現だったと思います。今思うと何がなんだかわからないくらい、本当に無我夢中でした」

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ヴォルフガングは自分の全部を出し切らないと出来ない役


――そんな初演を経て、4年ぶりに再びヴォルフガングに挑みます。

「4年のあいだに色々な舞台をやらせてもらうようになって、自分自身も変わっている。ただ僕はどんな役でも結局、自分自身を通してじゃないと演じられないと思うんです。自分にないものは出来ない。だからあの時の自分が出来たことと、いま出来ることは違う。芳雄さんも言っていましたが、デビューの時と今と比べると、いいこともあるし悪いこともある。今の方が冷静に出来ると思いますが、テクニックだけですべてが通用するものでもない。新鮮さやがむしゃらな部分が逆にモーツァルトに見える瞬間もあったと思います。でもとにかくこの役は「こうしてやろう」という思惑が通じない、全力でぶつからないと出来ない。今の自分が感じたままで出来ることを、ひとつひとつのシーンでやっていきたいと思っています。実際今、稽古でも、前回自分が感じてたことと違うところで心が動いたりしています」


――例えばどんなところが、前回と感じ方が違っていたりするんでしょう。

「やっぱりお父さんの死とか家族との関係性とかは、より切なく感じます。僕は家族を大事にしたいと思って生きてきているので、その関係性は大切にしたい。今回お姉さんも花總(まり)さんになりますが、『レディ・ベス』でもずっと一緒にやってきたので、今回もコミュニケーションを取りながら、家族との繋がりをもっと深く明確に作りたい。あとは...まだ稽古が始まったばかりなのですが(※取材は10月中旬)...毎回新鮮なんですよ。今の自分が、自分と向き合いながら出来ていくものを、自分でも楽しみにしています」


――今年、オーストリアに行ってきたそうですね。

「そうなんです。ウィーンと、ザルツブルクに初めて行ってきました。ずっとタイミングがなくて行けなくて。一度行ったらまた行きたくなる場所でした。色々なところに行きましたよ、モーツァルトの生家や、お墓も。お墓は、あんなところにあるんだなとちょっとびっくりしました。奥まったところで、しかもあまり周囲が整えられていない感じで。でもやっぱり向こうの空気を感じるだけで、こういうところをモーツァルトが歩いていたんだな、こういう空気を感じながら生活して、作曲をしていたんだなと感じることができただけで、かなり違いますね。舞台に立った時に、自分が感じた空気だったり町並みだったりを想像しながら芝居が出来るのはすごく大きい」
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――Wキャストの井上さんとはお話をされたりしていますか? 4年の間にStarSの結成があったりと、関係性もずいぶん変わったと思いますが。

「役については話していないですね。振付とか、動線とか、決められていることについてはお話していますが。でも今は何でも相談できるから、わからないことがあれば話したいなと思います。実は前回は、ほぼ芳雄さんとしゃべってないんですよ。僕はもう自分の譜面と台本に集中して、言われたことを「ハイ」ってやっているだけだったから。多分見守ってくれているような感じだったと思います。といっても芳雄さんは自然体なんで、4年前と変わらないです。自然体でいるようで、今みんながどういう風に思っているかとか、しっかり見ているんですよね。"空気作り"をしている。でも芝居すると自分の世界に持っていくし。改めてすごいなぁと思います」


――4年間で色々な大きな作品を経験されました。その上でもやはり『モーツァルト!』は特別な作品ですか?

「特別ですね。これだけ、主役中の主役という役はなかなかないし、彼に挑むには体力的にも精神的にも喉も、万全な状態で、本当に全部出し切らないといけない。体調管理も含め一番神経を使います。だから緊張感もあるんですがやりがいもすごくあるし、カーテンコールで出てきた時の感動は『モーツァルト!』が一番なので、忘れられないですね。赤いコートを着るだけで気持ちが上がるし、気が引き締まります。だからできればずっとやっていきたい役ですが...芳雄さんだけでなく僕ももしかしたら今回が最後かもしれませんし。もともと毎回、どの作品もこれが最後だと思ってやっています。今回もこれで最後だと思えるくらいの表現をちゃんと出来ればと思っています」


【公演情報】
11月8日(土)~12月24日(水)帝国劇場(東京)
1月3日(土)~15日(木)梅田芸術劇場 メインホール(大阪)


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