【『ビッグ・フェラー』vol.2】成河インタビュー&スチール撮影レポート

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内野聖陽浦井健治成河ら魅力的なキャストが集結、さらに第21回読売演劇大賞において大賞および最優秀演出家賞を受賞したばかりの今もっとも注目を集める演出家、森新太郎が演出を手掛ける『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』が今年、日本で初上演されます。

げきぴあでは、このキャスト&演出家に連続インタビュー!
第1回の森さんに続き、今回は成河さんのインタビューと、スチール撮影風景のレポートをお届けします。
簡単なストーリーなどは、vol.1をご覧ください。


前回掲載しました森さんのインタビューで、森さんが成河さんのことを「肉体的にも精神的にも見事な運動神経」と称していましたが、その柔軟さで"何にでも化ける"という印象の成河さん。
そんな彼が演じるのは、IRAメンバーのルエリ
お調子者で明るい性格でありながら、イギリス兵射殺事件に関わったことでIRAの存在意義にも深く関わっていくシリアスな面も持つ青年を、成河さんはどう演じるのか今から楽しみです!


●スチール撮影風景レポート●

BigFellah02_01.JPGスチール用の衣裳はこんな感じです。
ジーンズにTシャツという、とても身近でラフな衣裳。
ただ、胸にはアイルランドの国旗のカラーがペインティング。
IRAに所属しつつも実際に紛争中である本国からは遠く、ニューヨークで日常生活を送っている彼らを象徴するような服装です。

ペインティングされたTシャツ群。
微妙に模様もシャツの形も違っているのですが、成河さん曰く、「どれを着るかは早いもの順でした」とのこと。
...本当!?
BigFellah02_05.JPG

朗らかな笑顔で、その場の空気をあっという間に和ませてしまう成河さん。
撮影もサクサク進みます。
BigFellah02_03.JPGもちろん真剣な表情も。
BigFellah02_02.JPG

レンズを覗く視線も、すでに雰囲気がありますねー!
BigFellah02_04.JPG
そんな成河さんに、お話も伺ってきました。



●成河 インタビュー●



――台本を読んだ感想を訊かせてください。

「まだ台本をいただいたばかりなのですが(取材時は13年12月)、いやぁ、すごい面白いですよ。IRAのこと、なんの知識もないのですが、(深く)わかればわかるほど面白いんだろうなって思います。専門用語がとにかくたくさん出てくるんですね。訳注もたくさんついているし。でも読んでいくうちに、どこかで訳注読むのを諦めて、わからないながらばーっと読んでいくと、ノンストップで最後まで本当に集中して読めたんです。そのくらい、作りがしっかりしているし、引き込まれる。すごいユーモアがあって、でも背筋が凍るような瞬間がいくつもあって。そういう体験をお客さんもきっとするんだろうなあと思いながら読みました」

――と、仰りながらも、成河さんは以前、マーティン・マクドナー作品にも出演されてますし、IRAというのは近しい素材なのかと思うのですが。

「ええ、以前、長塚圭史さんの舞台(『ウィー・トーマス』2006年)に出ましたが、随分昔ですし、当時は脚本を読みこんで役を作りこんで...というより、言われるがままに体当たりでやっていたので。今思えばちゃんと勉強せずに臨んだのでもったいなかったですね。今回はちゃんと、IRAのことを調べたい。森(新太郎)さんから聞いたのですが、リチャード・ビーンという方自体が、専門的な言葉をすごく多用する作家さんらしいんです。それは、世界観をリアルに作るために、本当に携わっている人間じゃないとわからないような言葉を入れていくということらしい。ですからお客さんにとってはそれは説明じゃない、空気を作るために専門用語を多用しているので...」

――難しそうだと、身構えなくても良さそうですね。確かに特殊な世界の専門用語が飛び交うのって、わからないなりに面白かったりします。でもその空気感を出さなきゃいけない俳優さんは大変です。

「演じる側がその言葉をちゃんと使いこなせているかが問われると思うので、ちゃんとやりたいですね。でもそこが面白いとも思います。その言葉をいかにお客さんに説明して伝えるかではなく、それに対して、その人物がどう思っているかとか、その言葉が発せられることでどう関係性の中で緊張感が走るのかとか。そういうものがお客さんが見ていて面白いんでしょうから。それはすごく演劇的だなとも思います」
BigFellah02_10.JPG

――演出の森さんとは、初めてですか?

「はい、初めてです。でもいろんな方からお話を聞いています。演出のみ専業でやっていらっしゃる純粋な演出家さんって数多くないじゃないですか。いかに戯曲を読み込んで、戯曲をちゃんと組み立てて立ち上げるか、というのがご職業で。特にこういう、2010年に初演だという海外のわりと最近の作品を日本で出来るというのがすごく嬉しいですし、そういうものに立ち向かっていく森さんの存在は頼もしい。...って、今回初めてご一緒するのに、自分があれこれ言うのはおかしいですけど(笑)。
でも僕、初めてご一緒する演出家さんの場合、この人こうなんだなとか自分の中の固定観念なしで挑めるので、むしろ好きなんです。いかに真っ白でいられるかってことだと思うので、なるべくあれやこれや先入観を入れずに向かい合いたいです」

――共演の方々も、楽しみな顔ぶれですね。本当に、そのキャラクターと俳優さんの個性がピッタリな気がして、私はもう皆さんが演じる絵が頭に浮かびます(笑)。

「(前のめりに)ですよね! ホントにみんなピッタリだと思うんですよ!! 僕も自分がお客さんになったつもりで早く観たいと思っちゃいました。コステロ役の内野聖陽さんとは、『イリアス』(2010年)という作品でご一緒しました。あの作品も何千何万人の前で演説するような役どころを演じていらっしゃいましたが、目に見えない聴衆を目の前にポーンと作り出せる方なので。そういう力強さがぴったりだなー!と、今回も楽しみにしています。しかもその中で揺れていく人間の感情も丁寧に描く方ですし。...でも前にご一緒した時は、兄貴分の内野さんに対し、熱血漢で血の気の多い弟分、という関係でしたが、今回はある意味真逆。ひょうひょうとしていられるといいますか、自分としてはやりやすい部分もあるので、いかに自由に...空気を読まずにつっこんでいけるか(笑)、ですね」

――その成河さんが演じるのが、ルエリ。IRA活動家のメンバーですが、彼に共感はできそうですか?

「いやぁ、めちゃめちゃ出来ますよ! すごく好きなセリフもたくさんありました。"IRAが好きで、自分はここにいたいけど、人が死んじゃうのが嫌なんだよね"といった意味合いのセリフに象徴されるような、気になる言葉がたくさんあったので、すっと(役に)入っていけそうな気はしています」

――ちょっとお調子もののところがあったりもするキャラクターですね。

「実は何年か前に(翻訳の)小田島恒志さんとお仕事した時に、「面白い戯曲があって、その中のある役が成河にぴったりだと思うから、いま"当て翻訳"してるんだよ」と仰られてて。なんだ当て翻訳って、と思ったんですが(笑)。それがこの作品でした」

――当て書きならぬ、当て翻訳! じゃあその時から、小田島さんの中ではルエリは成河さんだったんですね。...でも確かにルエリの憎めない人の良さとか、ピッタリです。

「読んだ時、なるほどその部分なのかなって思うところが自分でもありました(笑)。お客さんのガイドになるような役でもありますし、ふっと空気を抜くというか。小難しくアタマをガチガチにさせないための存在でもあると思います」

――でもこのテーマは、私たちにとっては決して親しい素材ではなく、とはいえ全く他人事ではいられない問題です。

「そうですね。だから、「わかるわかる」というよりは、お客さんもわからないところから始めて、それでこそ面白いものになっているような気がする。どうしてもテロだとか、9.11の話になっていきますが、この作者が「あれはこうなんだよ」と言うのではなく、ちょっとみんなでこのことを考えてみようじゃないか、っていう作品だと思うんですね。確かにIRAの問題は縁遠いかもしれないし、言ってしまえば9.11だって日本で起こった事件じゃない。でも、テロだとかそういうものを日本人が日本で考える時に、すごくやる価値があるなと思います。変にその世界に共感する必要はきっとない。あれって何だったんだろうというのを、ちゃんと一緒に考えられるような演劇になればいいなと思います」

――お話を伺って楽しみになってきました。最後に作品から離れた質問を。成河さんはすごく色んなタイプの作品に出て、その都度、全く違う色を見せてくれますが、どのように作品やキャラクターに入っていくのですか? 俳優さんごとに、すごく下調べをするとか、最初に役と自分の接点を探すとか、色んなタイプの方がいますが。

「...あんまり考えていないんです(笑)。役にどう入っていくかよりは、その時ご一緒する人たちと、どういう風に一緒にいるかを先に考えてしまうので。何より、演出家さんや共演の方、その都度初めて会う方に対する好奇心。一緒にいてどういう空気になっていくか。それは役をやっていても、いない素の状態でも、自然と生まれてくるその人との間で流れる空気感。それをどう作るかから入ることの方が多い。そういうものがすごく役にたったりするので、あまり役だけを掘り下げて自分の中で確信をもって近づいていくということはしないですね。一緒にやる人たちとの中で生まれたものの中で、やる。...でもその方が面白いと思うんですよね、役というものを先に置いてしまうより。先が見えないというか、どうなるかわからないところが、ね」

BigFellah02_11.JPG

●Key Word●
ブラッディー・サンデー[The Bloody Sunday(血の日曜日)]
1972年1月30日、デモ行進中の北アイルランド、デリー市民がイギリス軍に銃撃され、14名死亡、13名負傷した事件。軍が非武装の市民を殺傷したこの事件はIRAのその後の活動にも大きな影響を与えた。『ビッグ・フェラー』の物語は、この事件が起こった数ヵ月後から始まる。




【公演情報】
5月20日(火)~6月8日(日) 世田谷パブリックシアター(東京)
6月12日(木)~15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
 一般発売:3/16(日)10:00~

6月28日(土)・29日(日)
穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール(愛知)
 一般発売:4/6(日)10:00~

※そのほか、新潟、滋賀でも上演。

★プレリザーブ★
■通常東京公演分
【申込期間】3/6(木)11:00まで受付中

■兵庫公演分
【申込期間】3/13(木)11:00まで受付中

★ぴあ貸切公演限定 プリセール受付決定★
対象公演:5月23日(金)19:00
【申込期間】 3/6(木)12:00~3/15(土)23:59
※チケット1枚につきプログラム1部付き


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