【『ビッグ・フェラー』vol.3】浦井健治インタビュー&スチール撮影レポート

チケット情報はこちら

イギリスの気鋭の劇作家、リチャード・ビーンが2010年に発表した『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』がこの春、日本初演されます。
内野聖陽浦井健治成河ら魅力的なキャストが集結、今もっとも注目を集める演出家、森新太郎が演出を手掛ける注目作。


げきぴあでは、キャスト&演出家に連続インタビュー!
第1回の森さん、第2回の成河さんに続き、今回は浦井健治さんのインタビューと、スチール撮影風景のレポートをお届けします。
簡単なストーリーなどは、vol.1をご覧ください。


浦井さんが演じるのは、NY在住の消防士であり、IRAの兵士でもあるマイケル
森さん曰く「マイケルはあまりはっきり自分の意見も言えないような、繊細な青年。だけど暴力的な抗争の渦中にどんどん入っていってしまって、そこから抜け出せなくなり、いつのまにかそういうものに自分も加担してるんじゃないか...と苦悩する」という役どころだそうですが...。
浦井さんは、そのマイケルをどう捉えているのでしょうか。
お話を伺って来ました!


●スチール撮影風景レポート●

BigFellah03_01.JPG
現場はこんな感じ。
成河さんと同じく、Tシャツ&ジーンズという、日常的な衣裳です。
「このシャツも、デザイナーさんの手作り。昨日色を塗ったそうです」と浦井さん。BigFellah03_11.JPG
視線もバッチリ決まる浦井さん。
撮影は非常に順調で、あっという間に終了でした!
BigFellah03_03.JPG

●浦井健治 インタビュー●



――脚本を読んだ印象を教えてください。

「ものすごく面白いです。ただ、いろいろ考えさせられる内容ですね。登場人物が各々、信念とか生き方を持っていて、それを20代、30代、40代、50代...と時間が経過する中で成長させていく。例えば僕が演じるマイケルだったら、他の役の生き方を垣間見ながら、自分の生き方を確立していく。その過程を見せる作品でもあるし、環境の変化や信念の変化、そういったものをすごく考えさせられる。信念って何だろう、それが変わった時、人は何を思うんだろう? とか考えていきたいです。ニューヨークやアイルランドの話ですが、今の我々の日本で感じられることも結構あります。日常生活の中で起こる出来事なので、感情移入しやすい部分は多いかもしれないですね」

――とはいえ、ストーリーの表面上をなぞると、やっぱり今の私たちにとっては遠い話ではあります。

「専門的な用語がいっぱい出てきますしね。"ブラッディー・サンデー"や、"エニスキレンの爆弾テロ"とか。そういうことって、情報としてはニュースで入ってくるけど、実際日本のどこそこで爆破テロがありました、みたいなことはないから。それに、マイケルはアイルランド移民の子孫だけれど、じゃあ「アイルランド移民って何?」とか、じゃあイギリスとアイルランドの関係性は?とか、アイルランド移民がイギリスに思う感情は? とか、そこも(実感としては)わからない。きちんと調べないと、と思います」

――浦井さんは、すごくよく予習をされる方という印象がありますが。

「なるべく調べたいと思っています。今回も調べること、多いです(笑)。IRA、アイルランド共和軍って、見方を変えれば一種のテロ組織だと言われています。でも自分たちはテロだと思っていない。正義である、「間違いを正す」って思ってやっている。そのあたりのことはきちんと調べないと、まだあまり、僕個人としては語れないです。でもマイケルとしては、テロ組織にどう入っていったのか。そして、コステロ(内野)からいろいろ学んだ結果、テロということをどう思ったか、ということが、もしかしたらキモになるかもしれないですね」
BigFellah03_05.JPG

――と、この素材に向き合いつつも、この物語は"日常"の人間の話だと...。

「という風に思ったら、取っ付きやすいんじゃないかなと(笑)。これはアイルランド移民の話で、IRAがどうで...ではなく、お客さまには登場人物たちがどういう心情の変化をしたかとか、環境の変化によってどういう考え方になっていったかを、見て頂けたら」

――成河さんも、まさに同じようなことを仰ってました! それで、浦井さんが演じるのはIRA兵士のマイケルです。彼はどういう人物なんでしょう。

「ニューヨーク在住の消防士で、先祖がアイルランドから渡ってきたアイルランド移民で、アイルランド的要素はほとんどなくなっているニューヨーク生まれ・ニューヨーク育ちの青年。良識人だし、優しい男でもあるけど、確固たる信念を持ちながらもコステロたちとの出会いや、IRAという組織の中で自分が変化していく。消防士...つまりちゃんとお堅い仕事にも就いている普通の人でありながら、たくさんの刺激的な出会い、信念を持った人たちとの出会い、もしくは時代や環境によって変わっていくので、ある意味とても受け身な役。でもそういうところが、僕と繋がるところがあるかな? 僕は環境によって影響されやすい部分も結構あるので(笑)」

――20代から50代まで、ひとりの人生の長い期間を演じるのも、あまりないことですね。

「これだけの何十年の経過を演じるというのはなかなかないですから、とても難しいと思います。森(新太郎)さんに、最後はちょっと白髪まじりになるって言われたので、それぐらいの変化って、結構難しい。でも外見ではなく"対相手"とのやり取りで変化を見せていくこと。年を老いていくでなく、年を重ねていった人、というのが、この作品に関してはたぶん大事なんじゃないかと」

――結局最後に残される...というのは、『ロミオ&ジュリエット』のベンヴォーリオにも通じるような。

「確かに多いですね、残される役(笑)。今回も確かにそういう役だと思います。だからこそ難しいというか、本当にやりがいもあるけど、ちゃんと登場人物ひとりひとりと芝居のコミュニケーションで成り立つ役だから。信念があるんだけど、あるようでないようにも見える役。難しいです」
BigFellah03_06.JPG
――コステロ役の内野聖陽さんとも、久々の共演です。

「『エリザベート』以来ですね。『エリザベート』で、ルドルフ皇太子がピストル自殺をする場面があるのですが、反体制派と協力をしていることが父親にばれて、でも本当に今動かないと第一次世界大戦になっちゃうという危機感を持ち...と、がんじがらめになっていたルドルフが、最後に自害、もしくは心中をする。その時にピストルをどういうふうに扱うかとか、死を覚悟した人がどうやって死ぬかとか、そういったことを「もう一回考えてみ?」と、内野さんに教わったことがあって。それまでは「ママも僕を見捨てるんだね」と言いながら、「ああ、死んじゃう僕...」って泣きながらやってたのが、この死が国にどういう影響を及ぼすかを計算しながら死んでいったんではないかとか、いろいろ考えるようになりました。責任をもって死んだのか、もしくは責任を放棄して死んだのか、とか...。それも内野さんに教わったこと。そういう優しさをポンとかけてくださる人で、深く考えるきっかけをくださる人。またご一緒させていただくのが楽しみです」

――演出の森さんとのタッグも楽しみです。

「本当です! 僕、『ゴドーを待ちながら』とかを観ていて、すごく骨太で素敵な作品を作る方だな、いつか森さんの作品にご一緒できる日がくれば素敵だなって夢見てたので。以前、朗読劇(『いのちを詠う』2011年)でご一緒したことはあるのですが、その時の印象は「あきらめない人」。ちゃんと一語一語を大切にして、イメージと、そしてダメ出しを、熱を持ってひとりひとりの役者にかけてくれる。知識豊富だし、ちゃんと役者を見てくれる人。今回はこれだけの技術を持った名優揃いの中に僕がいるので、森さんからの1対1のダメ出しが僕に多いだろうことを覚悟しています」

――浦井さんは本当に次々と素敵な演出家さんと仕事されますよね。

「本当にありがたいです。森さんもですが、今年は僕と近い世代の演出家の方とご一緒することが多いので、そういった意味でもとても学びの年。昨年は本当にたくさんのことをやらせていただきました。野田秀樹さんとの出会いも大きかったし、StarSとしての活動も大きかった。武道館という夢の形を、スタッフやバンド、ダンサーのみんなと、ファンの皆さん、そしてお客さまと一緒に実現出来たことは財産にもなりました。2013年はそういった、ドーン! ドーン! ドーン! と大きなものが続いて実りの年になりました。だから今年はその実りをふまえて、またいろんな種をまく時期。トライアルなことが増えて細やかに動けるように務めるぞと、意気込んでいます。新鮮に、楽しんでいきます!」

BigFellah03_04.JPG
撮影:源賀津己(インタビューカット)、
取材・文・撮影(スチール撮影風景):平野祥恵




【公演情報】
5月20日(火)~6月8日(日) 世田谷パブリックシアター(東京)
6月12日(木)~15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
 一般発売:3/16(日)10:00~
6月28日(土)・29日(日)
穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール(愛知)
 一般発売:4/6(日)10:00~

※そのほか、新潟、滋賀でも上演。

★東京公演 プリセール受付中!★
【受付期間】受付中~3/15(土)23:59

■チケット1枚につきプログラム1部付き!東京公演「ぴあSpecial Day」■
公演日:5月23日(金)19:00


★愛知公演 プレリザーブ受付決定!★
【申込期間】3/23(日)11:00~3/27(木)11:00


チケット情報はこちら

前の記事「辻仁成×中村獅童「海峡の光」稽古初日・顔寄せレポート」へ

次の記事「『サ・ビ・タ』ホワイトデー稽古場イベントレポート」へ

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ

劇団四季

演劇チケットぴあ
劇場別スケジュール
ステージぴあ
劇団 石塚朱莉