3月11日(火)都内某所にて、辻仁成脚本・演出、中村獅童主演舞台『海峡の光』の初めての稽古が行われた。
原作小説は芥川賞を受賞しており、作家・辻仁成の代表作であり、最大のヒット作。
しかしながら、辻本人の拘りの作品であったため、これまで映像化・舞台化に至らずにいたが、
このたび、本人の脚本・演出で舞台化することとなった。
『海峡の光』は、かつてのいじめられっ子が刑務所の看守、いじめっ子がその受刑者となり、
立場が逆転し、18年ぶりに函館刑務所で偶然再会するという物語で、
心に潜む闇や人生の暗部を描いた名作として知られ、複雑な精神世界を青函海峡に擬え描いてる。
その受刑者・花井修を演じるのは、中村獅童。
テレビ・映画をはじめ、現代演劇界の旗手として大活躍しており、歌舞伎俳優としての演技はもちろん、
『淋しいのはお前だけじゃない』『大和三銃士』など、多彩な舞台で主演を務め、人気・実力ともに高い評価を受けている。
原作では看守である斉藤が一人称で語られ、受刑者の花井の深層心理は明らかにされていないが、
そこに敢えて挑戦したいと本人が願い出たことから、獅童が花井を演じることとなった。
刑務所の看守・斉藤を演じるのは、バラエティ・映画・舞台等、ジャンルを問わず活躍する片桐仁。
また、斉藤の妻を村川絵梨が演じる。
共演に青木玄徳、曽世海司、佐藤洋介、水野愛子、玉城裕規、前内孝文、明石鉄平、諸橋幸太、小早川浩一、俊藤光利、横山一敏、勝矢といった個性豊かな顔ぶれが揃い、更にLUNA SEAのSUGIZOが音楽を担当します。
まず、キャスト・スタッフが一同に会す、「顔合わせ」が行われた。
獅童は紹介されると、「よろしくお願いします」と立ち上がって一言挨拶。
全員の紹介のあとに、最後に辻はコメントを求められると、
「一ヶ月の稽古ですが、皆様よろしくお願いします。さっ、早速やりますか!」とコメント。
そして、「顔合わせ」終了後は、演出の辻がキャスト全員と舞台スタッフに向けて、
舞台装置模型を見せながら、身の演出プランを説明。
台本を順に追って、それぞれの役柄についても説明していく。
「今回の舞台では、大きなセットを使ったりしないけれども、お客さんの頭が波頭に見えたり、
客席がグランドに見えたりするような、光や映像、音を使って最大限劇場を全部使ってやりたい。
舞台上はシンプルだが、照明や役者の力で別の空間になる。独房と船上、現実と幻想が一瞬にして切り替わったり、
刑務所という限られた、壁に囲まれた世界の中でどれだけ観客の想像を掻き立てることが出来るか。
役者の皆のリアクションと台詞、言語の力で観客を引き込んでほしい。居力って言うのかな。(笑)」と、
役者たちへの期待を言葉にした。
休憩時間の際には衣装や照明、舞台装置についてスタッフと入念に打ち合わせをする姿が目立った。
そして、3年前の本日3月11日に、東日本大震災が起こった14:46には、辻の提案で黙祷するという一場面もあった。
「今日は読み合わせだから、まだ動かなくていい。でも動きたい人は動いて」という辻の言葉で始まった、読み合わせ。
しかし、キャストは次々と自分なりにつくってきた役を体で表現し、初日から気合いと迫力が感じられた。
獅童は、多くは語らないものの、その佇まいで、早くも座長としてカンパニー全体を引っ張っていた。
一方片桐は、いつもコメディタッチの役どころが多いものの、今回はシリアスな演技が求められる役。
事前の取材では、「普段とは違った役にとても緊張している」と話していたが、
本読み後、辻からは、「テンポがいい」と太鼓判を押された。
これから辻の演出でどのように変わっていくのか、乞うご期待。
そして、小説執筆時に辻自身で調査した、刑務所に関する知識も役者たちに伝えていく。
函館刑務所が空港の近く、また競輪場の真隣にあり、飛行機の影や聞こえてくる競輪場の歓声の様子がどのようなものか、
また実際の刑務官や受刑者の口調を辻自ら演じて見せたりといった、役者が思わず関心してしまうようなものばかりだ。
本読み後も立ち稽古が続き、終始和やかなムードで初日の稽古を終えた。
上演は4月11日(金)より、よみうり大手町ホールにて。
チケットは発売中。
☆出演者によるアフタートーク実施決定!
4月15日(火)19:00公演終了後 登壇者:中村獅童・村川絵梨・玉城裕規・佐藤洋介
4月16日(水)14:00公演終了後 登壇者:片桐仁・青木玄徳・曽世海司・水野愛子
4月17日(木)19:00公演終了後 登壇者:中村獅童・玉城裕規・前内孝文・俊藤光利
4月18日(金)19:00公演終了後 登壇者:片桐仁・村川絵梨・青木玄徳・横山一敏
4月22日(火)19:00公演終了後 登壇者:中村獅童・青木玄徳・曽世海司・勝矢
4月23日(水)14:00公演終了後 登壇者:片桐仁・村川絵梨・玉城裕規・前内孝文
※登壇者は変更になる可能性がございます。
撮影=阿部章仁