【光より前に(1)】「走る」を考える。ワークショップに潜入/前編

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11月に上演される舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』。谷賢一さんが脚本・演出を手掛ける本作は、1964年の東京オリンピックで銅メダルを獲得した円谷幸吉(つぶらや・こうきち)と、その4年後のメキシコオリンピックで銀メダルを獲得した君原健二(きみはら・けんじ)の物語を初めて作品化する舞台です。

げきぴあでは、主演の宮崎秋人さん、木村了さん、和田正人さんが参加した、谷さんのワークショップと合同取材会の様子を連載でお届けします!

IMG_3214_和田正人_木村了_宮崎秋人_谷賢一.jpg▲(左から)和田正人さん、木村了さん、宮崎秋人さん、谷賢一さん

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早速ワークショップの様子をお届けする、その前に......まずはこの作品で描かれる、円谷幸吉さんと君原健二さんとはどんな方なのかをザックリとご紹介します!

<円谷幸吉> 演:宮崎秋人

1940年5月13日福島県に生まれた円谷さんは、長距離・マラソンランナーとして、1964年東京オリンピックに出場。男子10000m6位入賞(※日本男子の陸上トラック競技では戦後初の入賞)、そして男子マラソン銅メダル(※東京五輪の陸上競技において日本が獲得した唯一のメダル)という素晴らしい結果を残した方です。次の1968年メキシコシティオリンピックでの金メダルを宣言しますが、当時の環境やプレッシャー、上官の命令によるコーチ左遷や婚約破棄などさまざまな出来事の末、1968年1月に27歳という若さで自殺し、この世を去りました。その際に残した「父上様母上様 三日とろろ美味しうございました」から始まり、「幸吉は、もうすっかり疲れ切ってしまって走れません」と語る遺書は、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

<君原健二> 演:木村了

1941年3月20日福岡県に生まれた君原さんは、長距離・マラソンランナーとして、1964年東京オリンピック、1968年メキシコシティオリンピック、1972年ミュンヘンオリンピックと三大会連続で出場。東京オリンピックではメダルを期待されるも8位という結果に終わり、一度は陸上部への退部届を出すほどに落ち込みましたが、コーチ(高橋進さん)の導きや結婚を機に復活。次のメキシコシティオリンピックで銀メダルを獲得します。それからもさまざまな大会で素晴らしい成績をのこし、77歳を迎えられた現在も走り続けていらっしゃる方です。

円谷さんと君原さんはライバルであり友人。谷さんが本作に寄せたコメントで「円谷幸吉と君原健二の人生は、「走る」という共通点だけがあり、それ以外はすべて好対照・正反対でした」と語ったそんなふたりが、ほんの短い時間を共に過ごし生まれた物語です。今まで一度もドラマ化も映画化もされていない「物語のように美しい二人の人生」(谷さん)が今回、初めて描かれます。

IMG_3028.jpg▲円谷さんと君原さんを演じるおふたり!

というわけでここからはワークショップのレポートです!

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参加したのは、円谷役の宮崎秋人さん、君原役の木村了さん、円谷のコーチである畠野洋夫役の和田正人さん。

IMG_3124_宮崎秋人.jpg

宮崎さんは現在、公演に向け走っているのだそうですが、「走るのは辛いです」と告白。なんと昔から走ることがかなり嫌いで、とにかく走ることを避けてきたんだそうです。「ちゃんと走るのは人生初めて」という宮崎さんが、これからどう変化していくかが楽しみですね。

IMG_3131_木村了.jpg木村さんはもともと「走るのが趣味」という方。この日は、その経験のなかで公園のランナーに感じる不思議だったり、プロの走りを見て気付いた足の着地の仕方の違いだったり、君原さんの著書から感じたご本人のイメージだったりをお話されていました。常にあらゆることに興味を持っていらっしゃることがすごく伝わります!

IMG_3153_和田正人.jpg和田さんは、ご存知の方も多いかもしれませんが、箱根駅伝などにも出場した元ランナー。本作に特別監修として参加される青山学院大学陸上部の原晋監督と作品を繋いだのも和田さんなのだそうです。「走るということには向き合ってきた」という和田さん。ワークショップでは、実際に走ってきた人にしかわからないような心境や感覚、視点、さらに豊富な陸上界&マラソンの知識を、惜しみなく皆さんに伝えていらっしゃいました!

IMG_3181_谷賢一.jpg脚本・演出の谷さんは、君原さんに直接会いに行ったり、原監督とお話したり、原監督が指導する青学陸上部の合宿に密着したりと、さまざまな準備をされている最中です。この日は、そこで話したこと、見たこと、感じたことを皆さんにお話しされていましたよ。

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ワークショップ前半で主に話されていたのは、「走る」ということでした。

例えば...

◎今から走っていてほしい理由

谷さんが、走ることを日常に取り入れておいてほしいと考えた理由は、マラソンランナーの物語をやるうえで"身体の持っている情報量"は大切だという思いから。"走っている人の身体"は稽古が始まってから対応しても間に合わないので、事前に話したかったのだそうです。ちなみに和田さん曰く、見た目が本物に近づくのは体脂肪率5%。「そこまでしぼれば、ぽく見える」そう。5%...。

◎実際に走ってみての発見

前述の通り走ることが嫌いで、走っていても「負の感情しか生まれない」と宮崎さん。和田さんの「目標がないからでは?」という指摘に、宮崎さん以外のおふたりも「なるほど!」と納得されていました。ただ、谷さんが調べたことによると、走っている最中の負の感情というのは円谷さんや君原さんも戦っていた部分なのだそう。「湧いてくる負の感情は、実際に役を立ち上げていくときに繋げてくれる要素じゃないかな」とアドバイスされていました。

◎走りたいと思うのか?

このワークショップで何度も出てきたのは「なぜ走るのか」という言葉。その答えは出ないですが、宮崎さんの「走りたいと思いますか?」という質問に和田さんは「マラソンは基本的に楽しいものじゃない。野球やサッカーみたいなゲームって"楽しい"があるけど、ランニングのレースは基本的に自分の五体を使い、極限まで速く走ることなので楽しくはない」と経験者ならではの言葉。けれど「それを耐えてがんばった先に、ほんの一瞬の光が見える。それを手にした瞬間の喜びがすごい」そう。和田さん自身も、自己ベストのタイムを出したときの喜びに勝る喜びは未だに経験したことがないそうです。「1回それを覚えちゃうと、またそれを手にするためにやる」のだとお話されていました。

おもしろいですねー。このほかにも「レース中にトイレに行きたくなったら?」「何キロ地点から苦しくなる?」「コンマ1秒の差がどうしてうれしいのか」「数ある練習でも『マジか!』と思うものは?」など、笑いも交えながら、みなさんで話して共有されていました。

*****

→→ワークショップのレポートは次回も続きます!

公演は11月14日(水)から25日(日)まで東京・紀伊國屋ホール(※14日はプレビュー公演)、11月29日(木)から12月2日(日)まで大阪・ABCホールにて。

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