■『リトル・ナイト・ミュージック』特集vol.6■
27年ぶりの共演が話題の大竹しのぶ&風間杜夫を中心に、豪華キャストで上演するミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』 。
その初日が目前に迫ってきました!
稽古場取材やインタビューから、この作品を開幕まで追っている当連載ですが、今回は「オケ合わせ」の様子を取材してきました。
「オケ合わせ」とは、それまで稽古場ピアノで練習してきたキャスト陣と、オーケストラが、稽古場で音を合わせる作業。
『リトル・ナイト・ミュージック』は巨匠スティーヴン・ソンドハイムによる美麗な音楽が大きな見どころ・聴きどころのひとつ。
やはりオーケストラの重厚な音が入ると、その音楽の素晴らしさが際立つようで......。
稽古場レポート、どうぞ!
初日まで約1週間のミュージカルの稽古場は、どんな感じなのでしょう?
興味津々で稽古場に入ると、キャストが発声練習中。ピアノに合わせて「ア~ア~♪」と声を出していきます。ミュージカルに初挑戦の風間杜夫さんものびのびと声を響かせて楽しそう。声のウォーミングアップをしたところで、いよいよ稽古がスタート。
この日行われたのは、「オケ合わせ」。ずらりと並んだオーケストラはハープもありの16人以上というなかなか豪華な編成です。まずは脇を固める5人のキャスト、"リーベスリーダー" による『ナイトワルツ』の抜き稽古から。大竹しのぶさん演じる大女優のデジレ、風間杜夫さん演じるその元恋人のフレデリックを軸に、男女の絡み合った愛が描かれた『リトル・ナイト・ミュージック』のテーマとなるワルツです。マエストロの合図でオケ演奏が始まると、柔らかく豊かな音楽に包まれるよう。音楽を聴いているだけで胸躍りドラマが浮かぶのは、さすが巨匠スティーヴン・ソンドハイムの作品です。
途中、演出のマリア・フリードマンさんが「もっと口角を上げて声を上に、上に! テンポを大切に!」と指示を出します。「次の8分の9拍子を...」なんて言葉も飛び交い、譜面は一体どんなことになっているんでしょう??
一方、稽古場の隅では、ウエンツ瑛士さんが黙々とストレッチしていたり、風間さんは笑顔でワルツのポーズを練習していたり。各々の出番を待ちます。
1時間が経過して、デジレの邸宅に、それぞれ思惑を抱えたカップルがやって来る2幕頭の稽古へ。デジレの新旧の恋人が顔を付き合わせるシーンでは、風間さんとカールマグナス伯爵役の栗原英雄さんが歌う『彼女は完璧だ』の男の本音がわかる歌詞にニヤリとしてしまいます。
全員揃ったディナーは、まさに不穏という感じ。中でもひときわ存在感を放つのが、木野花さん演じるデジレの母のマダム。低音を効かせたセリフまわしが、みんなの心の中を見抜いているような...。夫カールマグナスの浮気を知り、何やら企んでいる、安蘭けいさん演じるシャーロットのはしゃぎぶりからも目が離せません。
続いて『リトル・ナイト・ミュージック』の見せ場のひとつ、デジレとフレデリックのシーンへ。フレデリックとやり直したいデジレ。その気持ちを知り、自分が彼女に甘えていたことに気づくフレデリック。風間さんの低く優しい声で語るセリフが、歌のごとく心に響きます。そしてフレデリックの去った後、デジレが歌うのが名曲『ピエロたちの喜劇(Send in the Clowns)』です。クラリネットによる前奏が始まった途端、大竹さんの集中度に引っ張られるように、稽古場がシーンと静まりました。丁寧に一言一言、語りかけるように歌う大竹さん。それは歌であり、まさに芝居。一度歌い終えたところで、どうもオケと自分の歌との間に隔たりを感じている様子。そしてもう1回。歌うほどに、声が豊潤さを増していきます。ここで大竹さんがある行動に出ました。
「そこに行っていいですか」
マエストロにそう言い、オケの真ん中に入っていった大竹さん。そこで再び歌い始めました。全身で音楽を感じながら歌表現を探求する姿に、稽古場の誰もが見入っています。大竹さんが歌っている間、マリアさんは指揮をするように手を振り、全身を揺らし一緒に歌っているよう。そう、心では一緒に歌っているのです。
まさに、ミュージカルの歌が生まれていく瞬間!!!
何より、大女優でありひとりの女であるデジレの心情が、歌詞と音で見事に表現された楽曲に心を奪われるばかりです。再び、演技スペースに戻りもう一度、大竹さんが清々しく歌い切ると、マリアさんから拍手が!
稽古場内が言葉にならない、あたたかい熱に包まれているのを感じました。
本番はもうまもなく! 幕が開くのが楽しみでなりません!
取材・文:宇田夏苗
【『リトル・ナイト・ミュージック』バックナンバー】
#1 歌入り本読み稽古潜入レポート
#2 公開稽古レポート
#3 蓮佛美沙子&安蘭けい&栗原英雄&ウエンツ瑛士 座談会
#4 風間杜夫インタビュー
#5 大竹しのぶインタビュー
【公演情報】
4月8日(日)~30日(月・祝) 日生劇場(東京)
5月4日(金・祝)・5日(土・祝) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
5月12日(土)・13日(日) 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
5月19日(土)・20日(日) 富山 オーバード・ホール