【リトル・ナイト・ミュージック(2)】恋する人々が可笑しくも愛らしい! 公開稽古レポート

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■『リトル・ナイト・ミュージック』特集vol.2■


ミュージカル界の大巨匠スティーヴン・ソンドハイムの最高傑作と称されるミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』
4月の公演に向けて現在カンパニーは絶賛お稽古中ですが、3月18日、その稽古場の一端が報道陣に公開されました。LNM2018_02_00_2476.JPG

物語は、19世紀末のスウェーデンを舞台に、大女優デジレ(大竹しのぶ)とその昔の恋人フレデリック(風間杜夫)、フレデリックの若き妻アン(蓮佛美沙子)、フレデリックの息子で義母に恋しているヘンリック(ウエンツ瑛士)を軸に、さまざまな恋の鞘当て、ボタンの掛け違い、恋人たちの思惑が絡み合うラブ・コメディ。

夏は白夜で陽が沈まず、冬は一日中暗いというスウェーデンの独特の気候の中、恋に喜び恋に悩む彼ら彼女らの行き着く先は......。


さて、この日披露されたのは1幕ラストの『田舎でウィークエンド』
登場人物全員が出てくる、1幕の幕切れに相応しいビッグナンバーです。
『レ・ミゼラブル』だったら『ワン・デイ・モア』、『ウエストサイド物語』だったら『クインテット』ってところでしょうか!

「田舎」とはデジレの実家、アームフェルト家のこと。
ここではデジレの母であるマダム・アームフェルトと、デジレの娘・フレデリカが暮らしています。
デジレは女優で各地を飛び回っているから、娘を自分の母親に預けている、といった形。

マダムは木野花さん、フレデリカはトミタ栞さん。執事のフリード安崎求さん)もいますね。LNM2018_02_10_2045.JPG

そこにデジレ大竹しのぶさんが帰ってきました。LNM2018_02_11_2105.JPG
マダムは奔放なわが子に苦言を呈していますが、フレデリカは久々に会ったお母さんのことが大好きな様子。
いい笑顔!LNM2018_02_12_2270.JPG

デジレは一家の主であるマダムに、この屋敷にある一家を招待して欲しいと頼みます。
その一家が、風間杜夫さん扮するフレデリックの家族。
デジレは久しぶりに再会した昔の恋人・フレデリックへの恋心が再燃してしまってるんですね。
娘のフレデリカに「自分たちの家を持って、パパになる人と一緒に暮らすってのはどう?」なんて匂わせたりしています。
といってもフレデリックには妻がいるんですが......。

一方でおばあさんとの暮らしは「幸せ」と言いつつも「ママと一緒にいたい」というフレデリカ。
トミタさんのフレデリカ、可愛い上に、聡明さもあって素敵。LNM2018_02_13_2048.JPG


さて、そんなご招待を受けたのがこちら、フレデリックの家族であるエーガマン一家
お城からの招待状よ!とキャッキャする若妻アン蓮佛美沙子さん)に、メイドのペトラ瀬戸たかのさん)。LNM2018_02_16_2153.JPGLNM2018_02_17_2177.JPG

と、無邪気に喜んでいたアンですが、送り主が「アームフェルト」、つまりデジレの家からだと気付いて、とたんに不機嫌に。

夫のフレデリックも帰ってきて、「考えすぎだよ、仕事だよ」と若妻をいなします。
が、「君がいやならやめておこう」とも。
フレデリック、アンに優しいですね~。LNM2018_02_18_2249.JPGLNM2018_02_19_2236.JPG

アンは、以前から夫とデジレのことを相談しているシャーロットにその件についても話しにいきます。
シャーロットは安蘭けいさん。LNM2018_02_21_2284.JPGLNM2018_02_22_2288.JPG

「行くべきよ、行ってあの女(デジレ)にあなたの若さを見せつければいいわ」とシャーロットに言われ、「そうね!」と一転して笑顔のアン。
女性の企み、怖いっ。


......と、デジレは昔の恋人であるフレデリックとその家族を招待したのですが、
そのデジレ、今は別の恋人がいます。
この人。
栗原英雄さん扮する、軍人のカールマグナスさん。LNM2018_02_25_2321.JPG

昔の恋人を呼んだ場に、今の恋人を呼んだりは、もちろんしません。
デジレも、「カールマグナスは、奥さんの誕生日だから家族サービスをしてるわ」と安心してたのですが......。

が、シャーロットは、カールマグナスの妻。
アンからのルートでアームフェルト家にエーガマン一家が招待されたと知ったシャーロットが、そのことを夫に伝えます。
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カールマグナス、自分の愛人(デジレ)が他の男と会おうとしていると知って、「それなら自分たちも押しかけよう」!
しかも妻シャーロットには、この旅が「君への誕生日プレゼントだ」とも......。
なかなかにヒドい男ですね、カールマグナス!

さらにフレデリックの息子・ヘンリックも「嫌な予感がする...」と田舎行きを決意。
単独行動のヘンリックはウエンツ瑛士さん。LNM2018_02_31_2409.JPG

そんなこんなで登場人物が全員、アームフェルト家のお屋敷に大集合!
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......というところで1幕が終わるのです。

それぞれの思惑が透けてみえすぎて滑稽ですらある彼らの行動ですが、その気持ちが、行動が乗っているのは、ソンドハイムの上品なメロディ。

1シーンのみのお披露目でしたが、繊細な音楽に乗せられた揺れ動く登場人物の心情を、俳優たちがイキイキと演じ、それが幾重にも重なり、タペストリーのような美しい世界が広がっていることが伝わってきました。

それにしても、さあ、このあとどうなる...!?
あっちこっちバラバラな方向を向いている恋の矢印は、ちゃんと収まるところに収まるのでしょうか?

こちらは、稽古を笑顔で見つめる演出のマリア・フリードマンさんと、振付のティム・ジャクソンさん。LNM2018_02_35_2301.JPG


稽古場披露の後には、囲み取材もありました。LNM2018_02_40_2502.JPG


大竹しのぶ
「本当に素晴らしいミュージカルで、可愛らしいし夢がある。でもなおかつ、寂しさや人生を考えさせられるところもあります。マリアが表現したい世界、ソンドハイムが表現したい世界を、私たちが必死になってやっています。初日まであと3週間しかありませんが、光に向かってみんなで手を取り合っていきたい」とご挨拶。LNM2018_02_41_2756.JPG

見どころを問われると
「やっぱり音楽がすべて素晴らしい。全部意味があってこの音になっているんだ、というのが、やればやるほどわかってくる音楽です」とのこと。

そしてその素晴らしいソンドハイムの音楽は、難しいという話もよく聞きますが......
「同じくソンドハイムの『スウィーニー・トッド』をやったときも、出来る人がなんで出来るのかがわからなかった......。なんで上手にお芝居ができて、上手に歌が出来るのかわからなくて。でもやるしかないので、本当に一音一音確かめながらやっています」と、現在のご苦労と決意を語りました。


風間杜夫
「ミュージカルに出るのは初めてです。悪戦苦闘の日々です。(フリード役で、歌唱指導でもある)安崎さんに歌を教えてもらい、しのぶちゃんに励まされて、マリアさんにリップサービスで「グレイト! 素晴らしい」と叱咤激励されて頑張っています。でも、(グレイトだとは)信じてません、出来てないことは自分がよくわかっています...」

と言ったところでマリアさんが大声で「ノーノーノー、彼はファンタスティックよ! 一緒にお仕事が出来て光栄に思っています」

で、風間さん「ただ今日これだけ大勢の人の前でやってみて、そうだ、多少歌詞を忘れても、笑っていればいいんだってことがわかりました(笑)」と茶目っ気たっぷりのご挨拶でした。LNM2018_02_42_2529.JPG


蓮佛美沙子
「私はミュージカルも初めてですが、舞台初挑戦です。今日の(公開稽古の)時点でけっこう緊張したので、本番どうなるんだろうなと自分の中でも未知数です。とにかく先輩方が優しくて色々なことをたくさん教えてくださるので、振り落とされないように食らいついて、楽しんでアンを生きていけたら」LNM2018_02_43_2642.JPG

蓮佛さんは、大竹さんと共演出来るという1点で出演を決意したと、製作発表の場でも語っていましたが、その大竹さんと一緒にお芝居をしている現在の心境を次のように語りました。
「直接お芝居することが意外となくて、その場にはいらっしゃらないデジレを思っての芝居とかが多いんです。ただ、稽古場でお芝居を作っていく過程を間近で見せていただけるということが、ものすごく私にとっては大きなこと。もちろんアドバイスしていただいたりすることも貴重ですが、(客席からだと)ぜったいに見られないもの(創作過程)を毎日見ているということに、毎日すごく興奮しています。楽しいです」


 

安蘭けい
「久々のコメディなので、皆さんに笑っていただけるようなキャラクターを作りたいと頑張っています」LNM2018_02_44_2583.JPG


栗原英雄
「ソンドハイムの曲がすごくフィーチャーされるんですが、物語自体が、大人のユーモアがたくさん詰まったもの。楽しみにしていてください」LNM2018_02_45_2598.JPG


安崎求
「今回はスタッフ(歌唱指導)と俳優とを兼ねての出演です。皆さんの素敵な歌を聴いていて、出トチらないように頑張っています(笑)。楽しい舞台になります、よろしくお願いします」LNM2018_02_46_2575.JPG


トミタ栞
「ミュージカルが初めてなのですごく緊張すると思うのですが、皆さんに勉強させてもらいながら一生懸命楽しみたいと思います」LNM2018_02_47_2556.JPG

瀬戸たかの
「もっとも自由なメイドの役です。色々な男性とちょっと...キスできるのが楽しいです、はい(笑)。春風を吹かせたいと思います!」LNM2018_02_48_2613.JPG


木野花
「本格的なミュージカルに出るのは初めてでして、命を削って練習している感じ。マダムはとにかく誰よりもパワフルにと、演出のマリアに言われているので、汗かいてやっています」LNM2018_02_49_2636.JPG


ウエンツ瑛士
「コメディとして面白いセリフ、空気感がたくさんあるのですが、それぞれの年代の恋愛模様があって、そこに人生観があって、刺さる言葉がたくさん出てくる。楽しめる作品ですが、何かちょっと胸が痛くなるようなこともあるお芝居になると思うので、ぜひ楽しみにしていてください」LNM2018_02_51_2532.JPG


今回、メインキャストでは蓮佛さん、風間さん、木野さん、トミタさんらがミュージカルに初出演。
そんな彼女らへ、ミュージカルに多数出演しているウエンツさんからのアドバイスは?という質問については...

ウエンツ「(ちょっと上から目線で!?)いや、よく頑張ってると思いますよ!」(一同爆笑)
大竹「でももっと頑張らないといけないと思う...。稽古場で泣いちゃうくらい」
風間「そうですか......。家で泣いてるから!」
木野「私もうちで泣いてるよ~」
大竹「(笑)。そうなんだぁ~」
ウエンツ「でも本当に皆さん素敵ですし、やっぱりソンドハイムは大変。音楽を考えると感情が...ってなって、感情を考えると今度は音がずれちゃう」
木野「ほんと、そう!」
ウエンツ「でも皆さん本当にすごいです。僕、自分が出ていないシーンも、袖で見たくなっちゃいますもん」
大竹「そう。それで、自分も含めみんながちょっとずつ階段をのぼってるのが嬉しくなるよね。自分ももっと頑張らなくちゃって」


そして、蓮佛さんは、ウエンツさんが先輩としてアドバイスをしてくれない、という暴露話をし...

蓮佛「皆さんに相談させていただいているんですが、ウエンツさんは最初ぜったい、質問しても「やだ」って言うんです。出来たら困るから言わないって、教えてくれないんです。先輩、ツンデレなんです(笑)」
木野「どういうこと?心が狭いの?」
ウエンツ「ちょっと、全部きこえてますよ!」
蓮佛「出来たら困るから言わないって仰るんですが、そこを、いやいやちょっと先輩お願いしますよ、っていうと、最後にやっと教えてくれるんです」
ウエンツ「だって(蓮佛さんは)自分のシーンの稽古が終わっても、大竹さんのシーンがあるから残ってく、見ていきたいから、っていう人なんですよ。そんな努力家、ミュージカル界に入ってくるなんて、イヤでしょうがない!」
蓮佛「そう言わずに教えてくださいよ~」
ウエンツ「そもそも僕より訊くべき先輩たくさんいますよ? 安蘭さんとか、栗原さんとか」
蓮佛「もちろん皆さんに訊いてます。皆さんはすぐ答えてくれるんですけど。ウエンツさんだけ(教えてくれない)。ねえ!」
ウエンツ「(風間さんに小声で)ちょっとおたくの嫁がうるさい...」


そしてそんな風間さんもミュージカル初挑戦。
大竹さんとの共演自体、27年ぶりです。

大竹「ふたりともダラダラ系。27年前もダラダラしていましたね。舞台では初めての共演なんですが、風間さんはミュージカルが初めてですし、あがいている姿がいい。私たち役者はあがき続けてナンボだな、と思って、すごく面白いです」
風間「あ、そうですか...」
大竹「でも風間さんはすぐ帰りたがる! あーもうだめだ、帰りたい帰りたい、って言うから、ふざけんな、って思っています(笑)」
ウエンツ「昨日大竹さんがいらっしゃらなかったから大変でした。風間さんが「帰りたい」ってなったときに「ダメ!」って言う人がいなくて」
蓮佛「本当に帰っちゃうかと思いました」
風間「帰らないよ!」
大竹「登校拒否症みたいになっているんです。でもそれはすごく素敵なことだなと思ってます。恐れるものが出来たというのは、挑むものが出来たってこと。すごくいいことだよね」
風間「ありがとうございます。しのぶちゃんが、「数式が解けるように、頭の中でぐちゃぐちゃなものがパーっと晴れる瞬間が来ますから、そのときには今まで経験したことのない素晴らしい喜びがあるから」って言ってて、それに励まされて頑張ってます」
大竹「本当に細かい数式がパーって(理解できるような)。そういう世界に連れていってくれるよ。信じてね」
風間「信じてます」
大竹「来ない場合もあるかもだけど」
風間「おいおいおい(笑)!」


......と、苦労をすることを喜びにかえているような、前向きなカンパニー。
その姿がとても素敵に見えた、公開稽古での皆さんでした!

 
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:石阪大輔

 
【『リトル・ナイト・ミュージック』バックナンバー】
#1 歌入り本読み稽古潜入レポート
  
【公演情報】
4月8日(日)~30日(月・祝) 日生劇場(東京)
5月4日(金・祝)・5日(土・祝) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
5月12日(土)・13日(日) 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
5月19日(土)・20日(日) 富山 オーバード・ホール

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