【リトル・ナイト・ミュージック(3)】ソンドハイムは難しい、でもハマると楽しい!――蓮佛美沙子&安蘭けい&栗原英雄&ウエンツ瑛士 座談会

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■『リトル・ナイト・ミュージック』特集vol.3■


ミュージカル界の大巨匠スティーヴン・ソンドハイムの最高傑作と称されるミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』 が4月に上演されます。

19世紀末のスウェーデンを舞台に、大女優と元カレ、年の差夫婦、年下の義母へ恋する息子、愛人の浮気を本妻に調べさせる旦那......などなど、様々な恋と思惑が入り乱れるラブ・コメディ
主役の大女優デジレに大竹しのぶ、その昔の恋人フレデリックに風間杜夫という、ベテラン俳優の豪華共演も話題です。

3月某日、この物語に出演する蓮佛美沙子さん、安蘭けいさん、栗原英雄さん、ウエンツ瑛士さんの4人にお話を伺ってきました!

蓮佛さんはフレデリックの若妻・18歳のアンLNM2018_03_01_2177.JPG
ウエンツさんはフレデリックの息子である "憂鬱そうな" ヘンリックLNM2018_03_04_0495.JPG
栗原さんはデジレの現在の恋人で "脳味噌は豆粒" と言われてしまうカールマグナス伯爵LNM2018_03_03_0393.JPG
安蘭さんは伯爵の妻であり、アンのクラスメイトの姉でもあるシャーロット
...を、演じます。
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蓮佛美沙子安蘭けい栗原英雄ウエンツ瑛士
INTERVIEW

――『リトル・ナイト・ミュージック』出演の経緯や、出演の決め手となった点などを教えてください。

蓮佛「私は今回初舞台です。2年ぐらい前から舞台をやってみたいなと思っていたんですが、大竹(しのぶ)さんが主演と聞いた瞬間に「やる!」と言ってしまって」

栗原「初舞台、初ミュージカルがソンドハイム! よくチョイスしたなと思う」

蓮佛「選んだつもりはないんです(苦笑)。決め手は大竹さんでした。周りの監督さんとかから「一緒にやってみるといいよ、すごいよ」というお話を伺っていて、同じ空間でお芝居をしてみたいとずっと思っていた女優さんだったので。そうしたら、実はミュージカルだということを後から聞いて、「すごいのを『やる!』って言っちゃった......。でもなんで私にオファーが来たんだろ?」みたいなスタートでした(笑)」

ウエンツ「実際、大竹さんはどう? すごい?」

蓮佛「意外と一緒の空間にいるシーンがなくて......」

ウエンツ「じゃあ、意外とすごくもない?」

蓮佛「そうじゃなくて(笑)! 私が言うのも大変おこがましい話ですけど、やっぱり圧倒されるようなオーラがあります。役に入る瞬間の袖でのオーラの切り替わりだとか、具体的に言葉で表現するのは難しいんですけど、"なんかすごいものを見れちゃっている感" はひしひしと感じています」LNM2018_03_01_2156.jpg

ウエンツ「僕は2、3年前からこの時期にこの作品が上演されるというのは知っていたので、参考になるようなものをいろいろ観たりしていました。一番惹かれたのは、マリア(・フリードマン)が演出っていうこと。マリアについてもいろいろ調べたんです。ジョン・ケアードさんに「彼女は素晴らしいから絶対演出を受けて!」って言われたりもしました。もちろん作品や共演者も重要ですけど、そういう方に演出してもらう機会ってめったにないので、そこが一番にありました」

蓮佛「海外の演出家さんは初めてですか?」

ウエンツ「そう。でも海外のスタッフの方は急に来日できなくなったり、なんてこともあるらしいから、「本当に来てくれるかな」って、蓋を開けるまでドキドキしていたんだけど」

安蘭「私も蓮ちゃん(=蓮佛)と一緒で「大竹さんとならこのミュージカルをやってみたい!」と、出演を決めました。この作品の『Send in the Clowns』という曲は昔から知っていて、すごくいい曲なので自分のコンサートでも歌っていたんです。大竹さんの歌声で、お芝居の中で聴けるのもすごく勉強になるなと思ったし。それに私が演じるシャーロットの曲もすごくいいんですよ」

栗原「すーごくいい!」

安蘭「ソンドハイムの曲ってとにかく全部難しくて、1回聴いて耳に残る曲ってなかなかないんですけど、『Send~』とか私の歌う曲は中でもメロディアスで、聴いてすぐに「いい曲だな」と残る曲だと思います」

栗原「(小声で)お上手だからですよ......」

安蘭「大きな声で言って!」

栗原「(笑)。僕は去年『不信』という舞台をやっているときにお話をいただきました。最初どの役かわからなかったんだけど、カールマグナスと聞いて、劇団四季が日本で最初にこの作品を上演したときに鹿賀(丈史)さんがなさった役だなと。役のイメージはわかったんだけど、途中で「待てよ、ソンドハイムだ!」と気づいたとき、マネージャーに「ちょっと考えさせて」って言ったんです。でもそれから顔ぶれがだんだんわかってきて、大竹さんと風間(杜夫)さんが出演されると。このおふたりというと、僕は『青春かけおち篇』(1987年公開)という映画が印象的なんですよね。役者としては、自分も現場に参加して、憧れていた人と芝居のキャッチボールができたら楽しいだろうなって。だから多少のリスクは努力でどうにかして、これはやるべきだなと思ったんです。それでもソンドハイムはやっぱり難しいですけど(苦笑)」
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――安蘭さん、栗原さんも初めてというのがちょっと意外な感じがしますが、皆さんソンドハイム初挑戦だそうですね。

栗原「人間の心の動きみたいなものが音階になっているんだよね。嬉しいとか、とまどっているとか、メランコリックであるとか、そういう感情のときはそういう音階になっている。だからハマると良いんですよ。自分の思いと日本語とその音階が上手くハマる作業にいまだ格闘中です。(横の安蘭を見て)瞳子ちゃんは大丈夫でしょう」

安蘭「いえいえ。今は歌っていても、自分の音がピアノの伴奏の気持ちいいところにハマらなかったりして。オーケストラが入ったら多少歌いやすくなるのかな、とは思うんですけど。そしてどんなミュージカルでもそうですが、外国語から日本語にはめたものってすごく難しい。でもソンドハイムの曲は、「英語でも歌いにくいんじゃない?」って思っちゃいます(笑)」

栗原「ベストの歌詞を探しながら、今稽古しているところ。訳詞家の(高橋)知伽江さんたちと話し合ったことをマリアに伝えて、その場面ごとに一番いい歌詞は何だろうという、果てしない作業をしていますね」

ウエンツ「僕がやるヘンリックの曲は、彼の中身の屈折してる感じがすごく音楽に出ている。同じメロディをまた2番で歌うときに、ここだけ半音高いとか一音ズレているとか、そんなことの繰り返し。もちろん、それぞれにちゃんと意味があるんだろうなと思うんです。でもレッスン中もあのメロディを聴いているとずっと暗いというか、たとえ上手くできた日も落ち込んで帰る、みたいな......」

栗原「性格が暗いっていうのがあるんじゃないの(笑)? ウエンツくんは今、チェロを弾く動きを熱心に練習していて素晴らしいんですよ! あの指の動きは、お客さんに見ていただきたいですよね」

ウエンツ「曲じゃないんだ(笑)」LNM2018_03_14_0218.JPG

蓮佛「私は、曲を渡されて「これを歌います」と言われたときからずっと打ちのめされ続けているので、歌稽古が始まって新たにどうこうというのは特にないんです」

一同「(笑)」

蓮佛「1年ずっと殴られ続けているような感じだったので(笑)パニックになるというよりも......無の状態? でも風間さん、ウエンツさんと3人で合わせたりすると「ちょっと楽しいな」と思う自分がいたりするので、技術的なところでもっと追いついて、気持ちもきちんと届けられるようにならなきゃいけないなって。いちいち落ち込んでいられないし、その時間がもったいないので、グラングラン殴られながら無の心境でいますね(笑)」


――演じるキャラクターについて、今感じるところを聞かせてください。

蓮佛「アンは18歳という年齢もあるし、基本的にすごく無邪気な女の子。でも「みんな深い孤独を持っている」とマリアがよく言うんですけど、アンにもそれは当てはまる。子供と大人のものすごく微妙なところに立っている子なのかなって今は思っています。いずれにせよ、これまでにやってきた映像とは違って何回も何回も表現をトライできるから、良くも悪くも沼にはまっていく感じがあります。もともとお芝居って正解がないものだと思ってやっていましたけど、舞台の稽古を経験してみて、選択肢の自由さ、無限大さにとまどっている自分もいて。だからまだわかりきっていませんし、アンがすぐ逃げちゃう感じがしているから、ちゃんと自分の中で捕まえられるようにならないとなって思います」

安蘭「考えれば考えるほどいろいろ出てくるから、本当にどれを選択すればいいかわからなくて悩むし、頭の中が飽和状態になる。でもそれは絶対に通る道だと思う」

蓮佛「私の知らないアンがまだいるんだなという感じが面白くて、たくさん知りたいなと思います」

栗原「もしかしたらアンというより、蓮ちゃん自身が多様で、あなたの中にあなたがいっぱいいるということかもしれない。蓮ちゃんのアンはほんっとチャーミングですよ。あの年の差だけど、フレデリックは彼女に行く(惹かれる)わ、という説得力がすごくある」

安蘭「私の場合は、ご自身もシャーロットを演じたことがあるマリア曰く、「シャーロットが発する言葉は全て面白い」と。そう聞くと、なんかオモシロを狙わなきゃいけないのかなって思ってきちゃったりして、キャラがブレブレ(笑)。もう1回ちゃんと作らなきゃと思って、今また悩んでいるところですね。自分を責めがちで結構自虐的なところが、同じ女性としてかわいい人だなと思います。最初に脚本を読んだとき、アンに対して若さの部分でもちょっとジェラシーを感じているのかなと思ったんだけど、それは私の読み違えだった。彼女はアンを本当の友だちというか、「強い味方がいてくれてよかった!」ぐらいに思っていて」

ウエンツ「女の人ってそういうのありますよね。「そこ通じちゃうんだ?」っていう」

安蘭「元カレの彼女と友だちになったりしてね」LNM2018_03_12_0390.JPG

栗原「僕は今、カールマグナスの "脳味噌が豆粒" の表現に苦労してます。......というのは冗談で(笑)、彼は "わが道を行く" を徹底している人物という感じでしょうか。でもそうすると典型的な男を演じてしまいがちになるけど、それは絶対に避けたい。僕の中でリアリティを持つべくマリアと話したのは、やっぱり彼は弱い人間で、弱いからこそ鎧をつけている。それがあるとき妻シャーロットの行動によって、自分の鎧やら全部がガタガタと崩れて、目の前に真実が見える。だから実は「一番旅をする人なんだ」ってマリアに言われたんです。0か100かの振り幅を3時間の中でどう旅できるか、ですよね」


――結局、カールマグナスは妻シャーロットのことを愛しているんでしょうか?

栗原「"愛している" ということに自信を持っている。「俺は妻に誠実だ! 愛人にも誠実だ! 俺は彼女たちを一生懸命愛している!」っていう、そこには何の曇りもないんです」

安蘭「結局、自分が大好き」

ウエンツ「そういう人、いっぱいいる」

安蘭「でも実はここ(シャーロットの掌の上)にいるんですよ。全部私のここでやっている」

栗原「そして結局はシャイなんですよ」

安蘭「かわいいの(笑)」

ウエンツ「カールマグナスは下手したら男の俺が見てもかわいいなって思うときありますもん」

栗原「で、ヘンリックは役作りしないでそのままなんだよね?」

ウエンツ「してますよ(笑)! でも確かに最近はマリアにあまりにも構ってもらえないから、みんなに「後でね」って言われちゃうヘンリックの気持ちになっているかもしれない」

蓮佛「ウエンツさんよくおっしゃってます。「誰とも目が合わない」「誰も話しかけてくれない」「辛い」......(笑)」

ウエンツ「今日の稽古で1幕を頭から通したけど、マリアに何も言われなかった。で、俺は1階にいるのに、ずっと2階を見てるんですよ。1回もマリアと目が合わない! 「次この場面からいってみよう」ってときも、俺には1回も言わない。最初の台詞、俺なのに!」

一同「(笑)」

ウエンツ「だからすぐにそのときの気持ちを台本に書きました。「これだ、ヘンリックの寂しさはこれだ!」って」


――実は緻密に練られたマリアさんの作戦では(笑)?

ウエンツ「だとしたらドンピシャですよ(笑)。でもちょっとヘンリックに憧れるのは、今の自分ならそういうことを感じても、いろんな選択肢があって、違うことに気持ちが切り替えられる。感じているけどたぶん隠せているんです。でも19歳のヘンリックはそれをしない。やり方もわからないんでしょうけど、ずっとそこを考えるっていうのは、ある種うらやましいなと思いながら演じています」

栗原「今はイヤな大人になっちゃったんだ?」

ウエンツ「油断するとヘンリックの屈折の隙間から、俺のまっすぐでピュアな気持ちが出ちゃうので、隠すのに必死ですよ(笑)!」


――ヘンリックとの共通点や、シンパシーを感じる部分はありますか?

ウエンツ「人にあまり注目されないなって昔から思ってきたので、自分の昔を思い出す感じがちょっとあります」

安蘭「注目浴びない時期とかあったの? 思い過ごしじゃない?」

栗原「欲するものが多過ぎるんだよ」

ウエンツ「......エエ、足りないんです(笑)!」

栗原「僕らの役はさ、物語の中で本物の愛に気づくっていう変化があるけど、ヘンリックは最終的にはどうなっていくんだろうね? "彼女" とああいう行動に出た後は?」
 ※ヘンリックが "どの彼女" と "どんな行動" に出るのかは、ぜひ劇場で!

ウエンツ「死んじゃうでしょう、ふたりで」

一同「エエーッ!(驚)」

ウエンツ「え、死ぬでしょう。俺、死ぬと思ってるよ?」

栗原「だって「後でね」って言わない人にようやく出会って、初めて喜びを知ったんだよ? 希望の方に行かないの?」

ウエンツ「喜びはもちろんあるんですけど、やっぱりそこは変わんないかなって思うんです。「一緒に死のう」って言ったら、相手には「は?」とか言われそうだけど」

栗原「ホントに暗いんだねえ! そしてやっぱり "注目されたがり" なんだよ(笑)」

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取材・文:武田吏都
撮影(蓮佛):石阪大輔

 
【『リトル・ナイト・ミュージック』バックナンバー】
#1 歌入り本読み稽古潜入レポート
#2 公開稽古レポート

  
【公演情報】
4月8日(日)~30日(月・祝) 日生劇場(東京)
5月4日(金・祝)・5日(土・祝) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
5月12日(土)・13日(日) 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
5月19日(土)・20日(日) 富山 オーバード・ホール

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