■『ビッグ・フィッシュ』vol.4■
ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』公開稽古レポート、
演出の白井晃さんと、主演の川平慈英さんのご挨拶とフォトセッションの様子に続き、今回は稽古本編の模様をレポートします。
父・エドワードと、息子・ウィルの確執と和解を軸にしたこの作品。
物語はウィルの結婚式を控えた"現在"と、ウィルの子ども時代である"過去"――エドワードの語る大げさな話をまだウィルが信じていた頃を行き来して、紡がれていきます。
浦井健治さん扮するウィルのナレーションから、物語はスタート。
「人には、決して釣れない魚がある...」「僕は迷信なんか信じない」
そう語りながら、どこか、そういったものに憧れを抱いているかのようなウィルの表情が、観る者をぐっと『ビッグ・フィッシュ』の世界へ誘います。
現実的な息子に対して、幻想・空想に遊ぶ父親・エドワード=川平慈英さん。
「この川で、おまえはこんなに大きななまずを釣った」
「実際はその半分くらいだけどね...」
いつしか、世界は過去に巻き戻って。
ヤング・ウィル=鈴木福くんにせがまれて本を読むエドワードですが、「ギリシャの話なんかじゃなく、もっと自分の目の前にある話をしよう!」と父。
ここで歌われる『ヒーローになれ』は、川平さんイチオシのナンバーですよ!
想像力さえあれば、王様にだって物語のヒーローにだってなれる、人生は果てしない夢を生きることだ...というメッセージは人生の応援歌にもなりそう。
また現実の世界から、空想の世界へ羽ばたくというのは、とてもミュージカルらしく、上手く出来ています。
そして(おそらく)エドワードのおはこの冒険譚、魔女に出会った話へ...。
少年時代のエドワードと、幼馴染のドン・プライス(藤井隆さん)、その弟のザッキー・プライス(東山光明さん)。
どうやら森の中を探検中。
魔女は未来を予言してくれるらしい...。
ムードたっぷりに登場した魔女=JKimさん。
劇団四季出身の歌姫ですよ!
しかしこの魔女、なかなかユニークです。
そして藤井さんのこの表情!
エドワードとドン、一緒に探検しているのだからきっと仲は良いのでしょうが、何かと言うと張り合っているようなふたりの関係性も、微笑ましく。
さらにお兄ちゃんの真似をしてエドワードにつっかかる、のだけど気弱そうな弟のザッキーも可愛いです!
魔女にいじめられて(?)涙目で捨て台詞をはいて去っていったドンとザッキー。
残されたエドワードは、魔女にある予言をされます。
過去から現在に戻って、父と息子の会話。
「僕の結婚式で乾杯の音頭をとらないで、スピーチをしないで」と言う息子。
何でも自分の話にもっていってしまう父に、息子はうんざりしているよう。
母親のサンドラ(霧矢大夢さん)は、主張の食い違う父と息子、どちらも否定はせずあたたかいまなざし。
さて、ウィルとその妻になるジョセフィーン(赤根那奈さん)の結婚披露宴。
案の定、エドワードはあるやらかしをしてしまい、怒るウィル。
「もううんざりだ!」
...でも、どちらの言い分も、よくわかるんですよねー。
父と息子って、難しい。
ジョセフィーンのおなかの子が息子だとわかり、喜ぶウィル。
自分も"息子の父親"になる...。父エドワードへの複雑な思いが入り混じります。
ここで歌われるナンバーは、昨年の浦井さんのソロ・コンサートで先行して披露されていた『見知らぬ人(ストレンジャー)』。
繊細な気持ちを歌にのせる浦井さん、さすがです!
一方でエドワードには病が見つかります。
そのことから、父の語った数々の空想のような冒険譚の真実を...そして父という人間のことを知りたいと思うようになる、ウィル。
聡明な妻・ジョセフィーンも「家族の歴史が知りたい」とその手伝いをしていきます。
エドワードが語る物語は色々なパターンがあって、「サンドラとの出会い」の物語だけでも何パターンもあるらしい!
ハイスクール時代、エドワードは何でもできる町いちばんの男だった話。
町いちばんの可愛い女の子、ジェニー・ヒル(鈴木蘭々さん)と恋をした話。
(ちなみにジェニー・ヒル、劇中の超キーパーソンです!)
巨人のカール(深水元基さん)と仲良くなった話。
また出た!プライス兄弟!!
嫌味ったらしいのですが、彼らが出てくるたびにくすりとなっちゃう、味のある兄弟です。
エドワードの少年時代の、嘘みたいなエピソードが、心浮き立つ素敵な歌や夢のようなダンスの中で、次々と語られていきます。
そして、運命の女性・サンドラとの出会い。
それはサーカスで、でした。
キャロウェイ・サーカスの団員オーディションを受けに来たサンドラと友人たち。
若き日のサンドラを演じる霧矢さん、可愛い!
このシーン、ダンスもキュートで必見です。
サーカス団の団長エーモスはROLLYさん。
私服(?)なのに、すでにティム・バートンの世界の住人といった雰囲気!
サンドラはサーカス団に合格しなかったのですが、彼女を見て恋に落ちたエドワードは、彼女の情報をエーモスからもらうために、サーカス団で働きます。
月にひとつ、サンドラの情報をもらい...働くこと3年!
最後に得た、「サンドラの好きな花はスイセン」というヒントを持ち、スイセンを手にサンドラを探し出すエドワード。
実はこの時すでにサンドラには婚約者がいたのですが...サンドラはエドワードの優しさにふれ、彼と恋に落ちます...。
さて、父エドワードの真実を探す、息子ウィルの旅は、どこへ行き着くのか。
父が語った物語の真実は。
父と子は和解できるのか。
...続きはぜひ、劇場で!
俳優たちの演技を見つめる、演出の白井晃さん。
「必要があったら止める」と仰ってたのですが、ノンストップで1幕全部通して行われた、この日の公開稽古でした。
まだ稽古場ですので、セットや衣裳がどういったものになるのかはわからないのですが、それでも「このシーンは明るく華やかなものになりそうだな」「ノスタルジックでうっとりするシーンになりそうだな」と、想像するだけで美しい世界が目の前に広がるミュージカル版の『ビッグ・フィッシュ』!
特に1幕ラスト、サンドラの好きな黄色いスイセンが舞台上いっぱいに広がったら、どんなに美しいんだろう...!と、今から期待値上がりまくりです。
最後に、ちょっとしたシーンながら、とても素敵に思えたこのワンカットをお届けして、公開稽古レポ、終わりにします!