より高みを目指して――ミュージカル『王家の紋章』再演に向け、浦井健治が大いに語る!

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昨年の世界初演は大好評、チケットは全公演即日完売したミュージカル『王家の紋章』が、今年ふたたび上演されます!

累計発行部数4千万部を誇り、40年間連載が続いている少女漫画界屈指の大ヒット作を原作に、『エリザベート』『モーツァルト!』の音楽を手がけたシルヴェスター・リーヴァイを作曲に迎えて制作された超大作ミュージカル。

原作の魅力を最大限に生かしながらも、深い人間ドラマが描かれたグランドミュージカルとして、原作ファン、ミュージカルファン入り乱れ、大熱狂を巻き起こしました。

その熱狂の渦の中心にいたのが、主人公・メンフィス役の浦井健治
"ミュージカル界のプリンス"として幅広く活躍、いまやミュージカル界のみならず演劇界にとって欠かせない存在となった人気俳優ですが、この初演が、ミュージカルの聖地・帝国劇場での初単独主演でした。

その浦井さんに、初演の思い出や作品の魅力、そして再演への意気込みを伺ってきました。
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●物語●

アメリカ人少女・キャロルは、エジプトで友人や恋人共に考古学を研究していた。ある日、ピラミッドの発掘が行われることになるが、それは古代エジプトの王・メンフィスの墓だった。その直後、キャロルのもとに現れた謎の美女・アイシス。弟メンフィスを愛するアイシスの呪術によって、キャロルは古代エジプトへとタイムスリップしてしまう。
彼女を待ち受けるメンフィスとの出逢いや様々な試練、そしてエジプトを狙うヒッタイト王国の王子・イズミル――。数奇な運命が、キャロルを歴史の渦へと巻き込んでいく――。
(公式サイトより)

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◆ 浦井健治 ロングインタビュー ◆


――初演が去年の8月でした。開幕前から大変な注目で、初日の時点で再演が発表になりましたね。

「こんな短期間での再演って、なかなかないと思います。初日に再演を発表させていただいたというのは本当に光栄なこと。この短期間で、いかに我々ひとりひとりが成長できているか、初演の自分を超えられるかというのがひとつの課題になってきます」


――それから5ヵ月ほどたちましたが、浦井さんの中に、メンフィスはずっといましたか?

「...切り替えないと、次の作品に取り掛かれないというのはあるのですが。でも、どこかにはいましたね。セリフや歌がふとした瞬間に浮かんできたり。それに原作がまだ連載中ですから、新刊が出たりするとやっぱり思い出しちゃう。書店に行って、単行本の帯に自分の写真があったりすると「あっ!」って妙にドキドキしたりして(笑)。あとドラマCDが出る(62巻限定特装版の付属CD)と聞いては喜んだり。完全に"王族"(原作ファンの通称)ですね」


――それにしてもあまりに短いスパンでの再演です。『天使にラブ・ソングを...』などは昨年の5月から始まり、全国ツアー公演を今年の2月までやっていますよ。ひとくくりのプロダクションでもおかしくない期間での再演ですが、でも、初演の形のままでの上演ではないんですよね?

「はい、再演はまた進化したものになります。新曲が追加されるということも発表になっていますし、かなりブラッシュアップされるみたいですよ。より"王族"の皆さんに、ミュージカルファンの方に、そしてミュージカルを初めて観る方にも楽しんでいただけるようにと、スタッフさんたちが総力を挙げてかなりの熱量で取り組んでいらっしゃいます。荻田(浩一)さんは脚本から練り直しているそうで、単なる再演にはならないはずです」
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――扮装写真も、新しく撮影したとか。久々にメンフィスの扮装をしていかがでした?

「カメラマンさんやスタッフさんには「前よりも板についている」と言われました。今考えれば、初演のチラシ撮影時は僕、お人形のようでした。今回は公演を経て、自分からメンフィスとして動けるので、全然威力が違うと言ってもらえました。出来上がった写真を自分でみても、雄々しい部分や少年の部分、色々な表情を出すことができた。演じた経験は身体に残るんだなって感じました」


――自然にメンフィスになれたということでしょうか。

「はい。自分とは別の人間になる。性格も全然変わりますしね。何より、このカツラをつけ、メイクをし、衣裳をつけると、僕を浦井じゃなく、メンフィスとしてまわりの人が見はじめる。それも大きいですよね」


――なるほど。では改めて、初演となった去年8月の帝国劇場公演を振り返って。初の帝国劇場単独主演でしたが、いま振り返ると、浦井さんにとってどんな経験になりましたか?

「帝国劇場の主演というのは、思っていたものよりもとても大きな経験であり、財産になりました。正直、体力的には本当にハードだし、"帝劇主演"の重圧たるや本当に凄いもので、精神的にも追い詰められそうになりました。でもこの経験をすることで、山口祐一郎さんを筆頭に、その看板を背負ってきている皆さんが何故こんなにも愛され、慕われているのかということもわかりました。役者、表現者以前に、人として大きなことを学んだんです。僕、自分ひとりでは衣裳も着れなかった。自分ひとりでは役として存在できない、というのは、自分ひとりで生きていけない、ということと同じですよね。舞台から袖に戻れば常にスタッフさんが誘導してくれるし、裾は持ってくれるし、足元は照らしてくれるし。僕のまわりには必ず誰かがいて、全員で支えてくださっていた。それは逆に、自分はひとりではあるけれど、僕の身体は自分だけのものではないと思わなきゃいけないという実感にも繋がった。そこまでの責任を感じる経験は本当に今までになかったです」
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――実は辛いこともありましたか? 初演の公演中にもお話を伺っていて、その時は「楽しい」「幸せ」だと仰っていたのですが。

「そうそう、ひたすら幸せだっていうお話をしたんですよね。「今振り返ると実はこんな辛かった」ってお話ができれば面白いと思うんですが(笑)、本当に辛いことや嫌なこと、なかったんです。共演者も刺激に満ちたメンバーで日々新鮮でしたし、お客様も本当に喜んでくださっているのが伝わってきたので。でも、もちろん大変ではあって......大変じゃないわけはないんです。(原作の)細川智栄子先生と芙~みん先生が40年以上、命をかけて作ってきたものを、僕らに託してくださっているので。でもそれを含め、幸せな経験でした」


――原作のファンからも非常に評判が良かったと聞いています。

「ありがたいことに、原作ファンの方からも、たくさんお手紙をいただきました。「いつも読んでいた漫画のメンフィスが目の前に現れた」というような声を頂いて、すごく嬉しかった。メイクさんや衣裳さんと一緒に、「やった、苦労したかいがあったね!」って喜びましたよ」


――細川両先生もご観劇なさっていましたが、何か言われましたか?

「「メンフィスにぴったり」ということと、「私はあなたを"王族"として認めます」ということを言ってくださって...。王族としては、この上ない幸せですよね! 僕のソロコンサート(昨年9月『Wonderland』)にも来てくださったりして、役を通して、僕のことも同じように愛してくださっているんだなと感じて、本当に嬉しいです。おふたり、本当に可愛らしいんですよ。キラキラしていて。僕は先生方のこと、リアル・キャロルだと思っています!」
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――ちなみにメンフィスという人物について、先ほど"雄々しい"といった言葉もありましたが、実際演じてみての"気付き"はありましたか。

「原作を読んでいると、身勝手なところや、人を人と思ってない部分が先に目についてしまって、「イズミルの方が優しいのになぁ...」とか思っちゃったんですけど(笑)。でも実際演じてみると、彼は幼い頃からファラオになる身として扱われ、育ってきたので、それはそうなるよなって。当時のエジプトの人たちにとってはファラオは神に近い存在なんです。根本のところは素直でまっすぐで実は優しい青年なんですけど、そういう威圧的なふるまいになるのは当然なんだなというのが"気付き"でしょうか」


――神ですか...! そう考えると、改めて大変な役でしたね。

「何か失礼があったら首を切られる、死を覚悟しなきゃいけないくらいの人物ですよ。しかも自ら戦闘に赴く強さもある。......という存在だったのは、現代の僕らにしてみれば、最初は理解しづらいところじゃないですか。でも演じているうちに、それが変な快感になってくるんですよ(笑)。この衣裳を着て歩けば、舞台裏でもみんなが道を作ってくれますし。で、そんなメンフィスを仲間内やマネージャーさんなんかはフランクに浦井として扱ってきて、「はっ、違った!俺、メンフィスじゃなかった!」ってなる、という(笑)」


――(笑)。舞台裏、カンパニー内の雰囲気も良さそうなことが、皆さんのSNSなどからも伝わってきました。

「『王家の紋章』カンパニーでLINEグループを作っていて。今現在も、ことあるごとにネタが投稿されています。みんな、繋がってますね~。新年の挨拶から、誕生日祝いから。あとはそれぞれの舞台の初日祝いとか」


――再演に向けて、何かお話されたりは?

「全員が言っているのは、とにかくみんな健康でいこうってことですね! 1回1回を真摯に取り組むためには、まずはきちんとそれが出来る環境を整えないといけないので」


――堅実ですね(笑)。ちなみにどなたがリーダーシップをとっているんですか?

「みんなが朗らかで、"誰が"ってワケじゃなかったかなぁ」


――とはいえ、座長は浦井さんですよ。浦井さん、どんなタイプの座長でしたか?

「うーん、マモちゃん(宮野真守)は「太陽みたい」って言ってくれました。ファラオは太陽だから、そのままでいいかなって思って、そのままでいました。イズミルが月だから、太陽と月として存在できるように。とはいえマモちゃんも太陽みたいな人だし、(平方)元基も......たまによくわからないけど、不思議な明るい太陽みたいで(笑)。で、(宮澤)佐江ちゃんはいつもぽかぽかの太陽だし、(新妻)聖子ちゃんも太陽みたいに明るく元気な人でしょ。...全員太陽か(笑)!」


――まぶしいですね(笑)。

「もう、暑いくらいです。ライアン兄さん(伊礼彼方)なんかは本当に熱いし......あれはミラーボールかな(笑)」
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――今のお話だけでも、浦井さんが「幸せだった」と語った気持ちが伝わってきました。

「そして僕ら世代を、濱田(めぐみ)さんと祐さん(山口祐一郎)が包んで、引っ張ってくれました。祐さんはいつでもみんなに明るいトーンで声をかけてくださって、元気をくれるんですよ。その後姿が、僕には頼もしくて、自分もそういう先輩になりたいって思いました。祐さんのようになっていけるためには今が大事な時期だ、まずはこれ(帝劇主演)を全うしなきゃ、と思ってやっていました」


――浦井さんは最近、"後輩に繋いでいく"というお話をよくされていますよね。

「本当に祐さんを見ていると、強くそう思います。あの存在感、個性、スター性、すべてを兼ね備えた先輩がいま、目の前で背中を見せてくれている。それはちゃんと自分の中に刻んで、次の世代の後輩たちに、自分もそういう存在として見られるようになっていかなきゃって思うんです。でもそれは祐さんに限らず、デビューしたての『エリザベート』の頃から諸先輩方が、口ではなく存在として教えてくださっていたことなんです。それは自分がそれだけ大事にされてきたということでもあると思うので、ちゃんと感謝し、恩返しもきちんとしていかなきゃと思っています」
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――素敵なお話ありがとうございます。少し話を戻して、公演中の、印象的だったエピソードなどあれば教えてください!

「うーん...、ライアンが必ず僕の楽屋に迎えに来てくれる、とか?」


――......、どういうことですか?

「えっとですね。一幕、まず最初にメンフィスが登場するんですが、いったんすぐ引っ込んじゃうんです。その後、僕が楽屋に戻って、その間にライアンが舞台に出て行くんですね。で、そのライアンの出番が終わったあと、彼方が楽屋に迎えに来てくれるんです。メンフィスは髪が長いので、いつも手元に櫛を持ってるんですが、「じゃあ行ってくる」って時に、その櫛でお互いの髪をとかし合って「いってらっしゃい」と送り出してくれる(笑)」


――ちょっと、面白い光景ですね(笑)。

「そういえばメンフィスのカツラは、再演では、よりサラサラヘアになるそうです。王族の聖子さんが「メンフィスの髪は、こうなのよ!」というところを目指して(笑)、頑張っていこうと思います」


――新しい髪型にも注目しつつ(笑)。メンフィスについて、より深めたいところは。

「原作が偉大であるがゆえに、それぞれのお客さまが持っているメンフィスのイメージというものがあると思います。でもより高みを目指し、より多くの方に満足していただけるメンフィスを目指したいです。例えば振り返った瞬間に「浦井がいる」じゃなく「メンフィスがいる」と思ってもらえるように。自分も王族ですから、ファンの方に「このメンフィスならアリ!」って思ってもらえるようなイメージをちゃんと大切にしながら演じたいです」


――「振り返った瞬間」といえば、メンフィスの登場シーン、素敵でした。見せ方にこだわったところはありましたか?

「仕草や歩き方などは、やっぱりメンフィスらしさに拘りました。メンフィスが登場する原作のコマ、1個1個を観察して「この仕草を取り入れようか」とか。例えば、怒ったときに白目になるじゃないですか。あれをそのまま演じるのは難しいですけど、怒るとなぜあの表情になるのか、というのは考えるし、研究したりしましたね」
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――改めて、このミュージカルがこれだけの熱狂を巻き起こした理由はどこにあると思いますか?

「それはもう、原作の力であり、細川智栄子先生と芙~みん先生が40年、命をかけて作ってきたものが素晴らしいからですよね。『王家の紋章』が、たくさんの人に愛され続ける少女漫画の金字塔であるということの実証だと思います。そこに、トップ声優の方、アイドルとしても活躍されている方、ミュージカル界のトップランナー、各界から本当に異種格闘技のようなメンバーが集まって役に息を吹き込み、みんなが生き生きと演じた。そしてスタッフさんが本当に愛を持って作品を包んでくださった。奇跡のような瞬間がたくさん生まれたからこそだったのかなと思っています」


――再演に向けて、浦井さんの中で「ここはこうしたい」と思っている部分があれば教えてください。

「もうちょっと、自分の中でメンフィスとイズミルの関係を深めていける部分があるんじゃないかな、と考えています。あまりふたりが直接出会うシーンが描かれていないというのはありますが、もう少し自分としては掘り下げたい。メンフィスとキャロルの関係性の変化は見えたと思うのですが、メンフィスとイズミルの関係性の変化を感じていただけるところを探していきたい。宿命のライバルとしてふたりが出会ったことで、それぞれがどう変わったか。それを表現できるように努めたいです」


――それは楽しみです! より深みを増したメンフィスに会えるのを楽しみにしています。

「メンフィスという存在をより高みに持っていけるように頑張ります。この役は、エネルギーの塊なので、ちゃんと手懐けて、自分で手綱を握っておかないと、とんでもないところに行っちゃいそうですから(笑)。今年は初演より公演期間も長いですし、ちゃんと完走出来るように頑張りますので、ぜひ多くの方に劇場に来ていただきたいです!」


取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:福井麻衣子
舞台写真提供:東宝演劇部

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スタイリスト:壽村太一(SIGNO)
ヘアメイク:山下由花
ジャケット/麻布テーラー、シャツ/ニューヨーカー、その他/スタイリスト私物


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【公演情報】
・4月8日(土)~5月7日(日) 帝国劇場(東京)
 一般発売:1/28(土)
★最後の先行販売!WEB先着先行「座席選択プリセール」受付★
 受付:1/27(金)18:00~1/28(土)9:30

・5月13日(土)~31日(水) 梅田芸術劇場メインホール(大阪)
 一般発売:2/4(土)

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