2021年9月アーカイブ

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中山優馬さんが主演を務める、ロック☆オペラ『ザ・パンデモ二アム・ロック・ショー』が2021年9月18日(土)から、日本青年館ホールで開幕しました。

初日を前にした17日(金)、記者会見とゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われ、作・作詞・楽曲プロデュースの森雪之丞さん、音楽の亀田誠治さん、演出の河原雅彦さん、出演する中山優馬さん、浜中文一さん、桜井玲香さん、水田航生さん、玉置成実さんが登壇しました。

この記事では、記者会見とゲネプロの様子を写真と共にお伝えします。

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ーーまずは、一言ずつご挨拶をお願いします!

森:オリジナルミュージカルを立ち上げるという作業は、本作で5作目。ブロードウェイでは、例えばキャロル・キングの『ビューティフル 』や、フォー・シーズンズの『ジャージー・ボーイズ』など、音楽の史実に基づいた話をミュージカル仕立てで紡いでいく作品があります。日本でもそんなオリジナルミュージカルが作れたらいいなと思って、本作を書きました。

ビートルズが初来日したとき、僕は中学1年生。校長から「武道館の周りにはいくなよ」と言われたんですけども(笑)、そんなことも物語の背景です。そこから日本の音楽はどんどん加速していき、それとともにいろいろな時代の流れが押し寄せていく。その中で、1人の少年が、ロックに夢を見て、夢と現実の間で揺れ動く。そんな物語を作れたらいいなと思いました。
 
今回、亀田誠治さんをお招きしました。まさに僕たちの肉となり血となっている先輩たちのロックが流れていて。亀田さんは、昭和の時代をモチーフにした素敵なロックを作ってくれました。格好いいです。どうぞお楽しみに!

亀田:3年前ぐらいに、雪之丞さんからお話をいただきました。「史実に基づいた音楽劇を作りたいから、亀ちゃん、腕を振るって!」みたいな(笑)。任せたよというのが一番ハードルが高いんですけども、脚本を読みながら、楽しく、たくさんの楽曲を手掛けさせていただきました。

コロナ禍ということもありまして、稽古場にはなかなか行けなかったんですが、キャストの皆さんが僕の作った曲を歌って、踊ってくれた時に、涙が出そうになることが何度もありました。パンデミックの中、エンターテイメントの力、音楽の力、演劇の力で、みんなを元気にできるのではないかな。この作品に関わることができて、大変光栄です。

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河原:いつも通り、いい演劇つくっています。それだけです。さきほど、ヘアメイクさんが「お肌、抑えましょうか?」と来てくれたんですけど、僕は現場の人間なので、僕は抑えないプライドをもって、ここに立っています(笑)。いい初日になるように頑張ります。

中山:やっとこの日が来たかというような気分です。稽古が始まって、どこか毎日不安を感じるような感覚はあったんですけど、早くこの世界を皆さんにお届けしたい、お披露目したいという思いは、本当に1日ずつ強くなっていきまして。
こんな厚底を履かせていただいて......今、この格好で皆さんの前に立てることが本当に嬉しいです。この世界を早くみなさんにお伝えしたかったです。この作品を上演している時間はですね、本当に苦しい状況や不安というものを拭い去れる時間だと思いますので、そういう時間をしっかりと提供できるように、一生懸命明日の初日から頑張っていきたいと思います!

桜井:本当に魅力あふれる作品。お話も見応えがあって面白いですし、音楽も素晴らしい曲ばかりで、どこを見たらいいのか分からないぐらい、見どころがたくさんある作品になっていると思うので、早く皆さんに見ていただきたいと思います。楽しみです!

水田:さっき優馬くんも言っていたんですけど、この格好がきょうから世間に広まっていってしまうんだなというドキドキとワクワクがあります(笑)。自分自身、こういう格好をすると、タイムスリップしたような気持ちになれて、この世界にのめり込むことができるので、見に来てくれた皆さんも、昭和のロックというものをたくさん吸収して、気持ちの良い、明るい気持ちになってくださるのではないかなと思います。
これまで、河原さん先頭に僕たちも稽古を重ねてきて、このご時世に演劇をできることに感謝をしつつ、最後まで駆け抜けるように、日々精進していきたいなと思います。

玉置:今回、雪之丞先生、亀田さん、そして河原さんという本当に大尊敬しているみなさんとご一緒できる、そして、新たなオリジナルミュージカルをいちから作れるということで、とても光栄に思っております。
そして、キャストの皆さんも一人ひとり全然違う個性があって、その個性がぶつかり合って、すごくパワフルな舞台になっています。みなさんに楽しんでいただけるように千秋楽まで楽しんでいきたいと思います。応援よろしくお願いします。

浜中:昭和の古き良き八百屋で唯一売れ残ってしまった、キノコ役を演じます。

中山:全然違う!そんな役ないから!ほら、河原さん、全然笑っていない(笑)

浜中:(笑)。みんなで楽しんでやって、はしゃいでおりますので、ぜひ楽しみに見てください!

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ーー本作は森雪之丞さんの自叙伝的にも感じる物語ですが、実際に扮装された中山さんを見ての印象はいかがでしょうか。期待することをお聞かせてください。

森:2人(中山さんと水田さん)を比べると分かるんですけど、優馬は、ハンサム系というか、昔サラリーマンの新入社員でもこういう格好をしていて、ヒールはここまでないんですけど、そこそこ厚い靴を履いている。でも、ルックスとかスタイルに自信がない人は、なかなかできない格好です。
それに比べて、航生の格好は、これ、実は僕はこんな格好していたんです。(水田さんと自分自身は)きれいさは全然違うんですけど、あまりルックスがよくない人間がこれを着ると、ただ汚いだけになっちゃう(笑)。(水田さんのように)きれいな男に生まれたかったと思います。

ーー本作は、中山さんが生まれる前の時代、昭和の音楽界が描かれています。豪華なクリエイター陣に囲まれて演じてみて、いかがでしょうか。

中山:本当に豪華さにまずはびっくりしました。本当に素晴らしい音楽と詞と本なんですけど、毎日の稽古の中で、河原さんの演出が加わると、日々進化する。

その進化を目の当たりにできて、こんなにパワーを持ったものだったんだと、毎日感じていましたね。本当に、豪華な日々を過ごさせていただきました。

ーー亀田さんは今回、初めての舞台音楽を担当されたわけですが、普段の音楽プロデュースとの違いはありましたでしょうか。また、苦労した点を教えてください。

亀田:音楽を作る者として、僕はよかれというものを自分の方から提供していく、提案していくということをしてきました。いい曲を書き、アレンジをすることは、舞台でも同じ感じでできましたね。

ただ、50代半ばにして、初めてミュージカルの音楽を担当させていただくというのは、運転免許を取りに教習場にも行ったにも関わらず、いきなり路上に出て運転をするような、それぐらいスリリングな展開で。素晴らしい役者さんたちと、河原さん、雪之丞さんという制作陣に囲まれて、スタートから最高の景色を見させていただくことができました。

自分の作った曲を、キャストのみんなが演じてくれることによって、「あぁミュージカルの音楽になるんだ、ありがとう」という気持ちになりました。今回、この作品に関われること光栄に思います。

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ーーコロナ禍での稽古は大変だったかと思いますが、キャストの印象はいかがでしょうか。

河原:まず、コロナ禍からいいますと、一番大変な時期だったんですね。感染爆発みたいに言われていた時期だったので、そういうこと触れずに稽古場に通うこと自体が、逆に不自然なぐらいだったから。

この長いコロナ禍で、僕も別のお芝居で稽古が止まったり、初日が延びたり、いろいろなことを経験しています。だから、明日誰か感染者が出て、急に稽古がなくなっちゃってもいいぐらいに、稽古場に集まれた時はすごく楽しくやるというお話をして。とにかく無駄に楽しくやっていた感じですかね。
こうして今ここまできましたが、明日できるかどうか、そういうことも思っていた方がいい世の中。(とりあえずは開幕するということで)幸せですけども、瞬間瞬間楽しんで作品をやれたらいいなと思います。

キャストの印象は、マスクを当然したままで、激しく歌ったり踊ったりするので、半分みんなキレていたというか(笑)。息ができないから、こんなマスクがペコペコするかというぐらい大変だったので、そんな印象ですよ。マスクぱかぱかしているなという(笑)。舞台稽古になって、マスクを外していますが、役者さん同士もマスクなしの状態の顔に慣れなきゃいけなくて大変だと思います。

ーー最後に上演を心待ちにされているみなさんに一言お願いします!

中山:昭和の時代を知っている方は懐かしいと思ったり、あったあったという出来事があったりすると思いますし、僕らの世代だと、こんな魅力的な時代があったのかという新しい発見があって、本当に楽しい作品だと思います。

愛すべきキャラクターが本当にたくさん出てきますので、楽しんでいただけると思います。こんな時代だからこそ、この上演中はですね、何もかも忘れて、大いに笑って楽しんでいただけたらなと思いますので、劇場でお待ちしております!

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【あらすじ】
1966年6月30日、ザ・ビートルズの来日に日本中がわいていた。中学生の楠瀬涼(中山優馬)は隣に越してきた"お姉さん"荒木三枝子(玉置成実)にロックを教わり、次第に夢中になっていく。三枝子が人気のグループ・サウンズ「ザ・カニバルズ」のボーカル・野村正嗣(浜中文一)と付き合いだし、失恋をした涼はますます音楽にのめり込む。

時は1973年、20歳になった涼は山下勝也(水田航生)、岡島大樹(汐崎アイル)、伊丹俊介(小松利昌)、真柳満(山岸門人)とロックバンド「THE REASON」を結成し、若者から熱狂的な支持を受けるように。そんな中、歌番組で姉妹アイドルデュオ「ウエハース」として活動する及川真実(桜井玲香)と出会い、互いに惹かれ合う。

だが、夢のような日々は、1980年12月8日、ジョン・レノンの射殺を契機にボロボロと崩れ落ち、やがて涼は悪夢と現実の間をさまよい始めるのだったーー。

作品の中では、ついつい口ずさみたくなるような楽曲はもちろん、時代を反映したファッションや、流行語を交えたセリフなど、"昭和"のあれこれが散りばめられている。1960年代後半〜70年代の同時代を生きたり、その時代のカルチャーに詳しかったりする人は、よりディテールを楽しめると思う。

とはいえ、平成生まれであっても、あの頃の世界観が年号表示と共に丁寧に描かれているので、十分に理解できると思うし、中山が語っていたように「新鮮さ」を感じるかもしれない。

ネタバレになるので、詳しくは書かないが、特に2幕以降は、河原の演劇的手法も相まって、怒涛の展開。最後の最後まで目が離せないと思う。

上演時間は、1幕65分、20分の休憩を挟み、2幕80分の計2時間45分。お見逃しなく!

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取材・文・撮影:五月女菜穂

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スイスの劇作家フリードリヒ・デュレンマットによる戯曲を、ノゾエ征爾の上演台本・演出で立ち上げる『物理学者たち』。げきぴあ編集部は、この稽古場をリアルタイムで"リモート見学"し、後日動画でも視聴しました。

稽古場レポートの前編では、タイトルロールの"物理学者たち"が入院するサナトリウムの院長マティルデ・フォン・ツアーントを演じる草刈民代さんの登場シーンをお届け。後編はその翌日に行われた稽古の様子をお伝えします!

▼『物理学者たち』について
                            
■INTRODUCTION
とあるサナトリウムを舞台に、自らをニュートンやアインシュタインと名乗る精神病棟の患者と、院長をはじめとする施設スタッフの会話で構成される本作。第二次世界大戦での原爆被害も記憶に新しく、ベルリンの壁建設や水爆ツァーリ・ボンバの爆発実験など世界
情勢が緊迫した1961年に執筆され、時代背景にあった"科学技術"や"核"をめぐる人間のモラルと欲望が描かれます。

■あらすじ
舞台は、富裕層向けのサナトリウム「桜の園」の精神病棟。ここに入所する自称ニュートン(温水洋一)、自称アインシュタイン(中山祐一朗)、「ソロモン王が現れた」と言うメービウス(入江雅人)の患者3人はいずれも"核物理学者"だ。

ある日、自称アインシュタインが若い看護婦を絞殺してしまう。数ヵ月前には、自称ニュートンも看護婦の命を奪ったばかり。院長のマティルデ・フォン・ツアーント(草刈民代)は「放射性物質が物理学者である彼らの脳を変質させた結果、常軌を逸した行動を起こさせたのではないか」と疑う。

そんな中で起きる第三の殺人によって、事態は思わぬ方向へ。彼ら3人はなぜこのサナトリウムに入所しているのか、タブーを犯すのか──。

詳しくは、翻訳を手がけた山本佳樹さんによる"作品解説"をご一読ください。

▼稽古場レポート後編
                               
8月30日。セミの鳴き声が背後に聞こえる稽古場では、2場面のブラッシュアップが行われていました。外の猛暑に負けないほど熱いキャストの演技に、画面越しながら手に汗を握ってしまいます!

①メービウスとモーニカ
サナトリウムの精神病棟に入院している物理学者の一人、メービウスに扮するのは入江雅人さん。長らく彼の世話を焼いてきたと思われる看護師モーニカ(瀬戸さおり)との応酬は、1幕ラストの急展開を飾る迫力に満ちたものでした。

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患者と看護師の関係性を超えた結びつきを感じさせる二人。精神病棟で起こった2件の連続殺人をきっかけに担当を外れることになったモーニカは、メービウスと離れがたい様子です。演出を手がけるノゾエさんは、モーニカ演じる瀬戸さんに「メービウスのペースを
崩しているように見えるといいね」と声をかけました。

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その最たる例と感じたのが、いきなり放り込まれるモーニカの英語。椅子の上に乗ってメービウスへの想いを高らかに宣言するひと幕では、ノゾエさんから「I Love You, I Love You, I Love You!!!!!と3回くらい続けて言ってみて」と指示が飛びます。これを受けてすぐ実践した瀬戸さんは、2回も増量して応戦。毎回ニュアンスを変える変幻自在の「I Love You」に、入江さんがアドリブで「I Love You"Too!!!"」と返すと稽古場は爆笑に包まれました。

モーニカの勢いに圧される様子を、入江メービウスとノゾエさんは巧みな動きで表していきます。後ずさりのタイミングを緻密に計算したり、モーニカの耳打ちから逃れるような仕草を取り入れたり。二人の心理的なマウント合戦が観客にしっかり伝わるほど、1幕ラ
ストでメービウスが見せる激情が映える構成になっていることに気づきました。本番でも固唾を飲んで見守ることになりそうです。

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②物理学者3人(ニュートン・アインシュタイン・メービウス)
続いて行われたのは、物理学者たち3人が一同に会するシーン。殺人が行われた現場で食事を楽しもうとする自称ニュートン(温水洋一)のもとに、気が滅入った様子のメービウスが現れます。やがて自称アインシュタイン(中山祐一朗)も加わると、次第にそれぞれ
が唱える説を戦わせる不穏な展開に──。

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ここで論じられているのは、科学者の責任について。内容が少々難しいということもあって、ノゾエさんは「流してしまわず、キーワードになりそうな"責任"や"自由"って言葉を立てて発してください」と3人にオーダーします。続いて「黒板を使って議論してみましょう」と言って温水ニュートンと中山アインシュタインに実践させると、何のアクションもない状態より長ゼリフが耳に残るような気がしました。

中山さんは、時間を見つけては一人セリフをそらんじる姿を見せるなど準備に余念がない様子。常にいつの間にかその場に現れる、飄々とした自称アインシュタインのたたずまいは、こうした地道な努力から生まれているのかもしれません。ノゾエさんとのやりとりにも、信頼関係を感じさせます。

しまいにはメービウスの存在をめぐる緊迫感あふれるシーン。にもかかわらず、食事と殺人が並列で語られるなどシュールな"不協和音"が鳴り止みません。彼ら物理学者たちは何者で、本当に狂ってしまっているのか、いないのか──。真相はぜひ劇場でお確かめを。

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取材・文:岡山朋代
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ワタナベエンターテインメント DiverseTheater『物理学者たち』

2021年9月19日(日)~26日(日)
本多劇場
[作]フリードリヒ・デュレンマット
[上演台本・演出]ノゾエ征爾
[プロデューサー]渡辺ミキ、綿貫凜
[出演]草刈民代、温水洋一、入江雅人、中山祐一朗、坪倉由幸(我が家)、吉本菜穂子
、瀬戸さおり、川上友里、竹口龍茶、花戸祐介、鈴木真之介、ノゾエ征爾

稽古場プレトーク配信中!
温水洋一×入江雅人×中山祐一朗
前編 https://youtu.be/MpNJwkkKSyo
後編 https://youtu.be/2Zb6tYjrY6U
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脚本・演出を開沼豊が手掛け、
田中尚輝、鷲尾修斗、北澤早紀 、井澤勇貴、石田隼、
加藤健、毎熊宏介、田中晃平、五十嵐啓輔 ら、
いま注目の若手俳優たち が挑むリーディングドラマ
『 「幽霊ハウス」 〜あなたは死んでも彼女を守れますか?〜 』 が、 本日 9月11日( 土 )に ヒューリックホール東京 で初日を迎えました。

幽霊ハウス 開幕リリース(写真).png

『「幽霊ハウス」 〜あなたは死んでも彼女を守れますか?〜 』 は、 2016年上演 の 「 LDK ミディアム」の作・演出を手掛けた開沼 が、
「人間以上に人間らしい幽霊」をテーマに自ら筆をとり、リ ーディングドラマとしてリメイク。
物語は、さまざまな時代で亡くなった 5 人の霊が暮らす古ぼけた一軒家に、莉奈という女性と、
彼女の元カレで霊の健太が引っ越してきたところから始まります。
莉奈と健太を軸に進むストーリーはもちろん、 個性の強い霊たちのテンポの良いやりとりも楽しいラブコメディ作品となっています。
朗読劇ならではの演出もお楽しみください。


公演は、9 月 12 日(日)まで上演中。 グッズの販売などは、オフィシャルサイトでご確認ください。


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【あらすじ】
夏の終わり。
自分を変えたくて上京した1人の女と
そんな彼女について来た男。


古ぼけた一軒家での生活が始まろうとしていたが、
そこには既に 5 人の地縛霊が暮らしていた。


この不思議な関係の共同生活がスタートして数日、
男が彼女に言った。
「何のために東京に出て来たの?」
しかし、その言葉は届かない。


裏のお寺から聞こえるお経の声がリビングに響き渡る。
1人の女と 8 人の男たちが紡ぐ究極のラブコメディ。


「あなたは死んでも彼女を守れますか?」


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■公演概要
【公演名】リーディングドラマ「幽霊ハウス」〜あなたは死んでも彼女を守れますか?〜
【公演日時】2021年9月11日(土)、 12日(日) 各日開演 12:30/17:30
【会場】 ヒューリックホール東京 (東京都千代田区有楽町2丁目5ー1 有楽町センタービル 11F)
【出演者】田中尚輝、鷲尾修斗、北澤早紀 (AKB48) 、
     井澤勇貴、石田隼、加藤健、毎熊宏介、田中晃平、五十嵐啓輔
【チケット料金】全席指定:6,500 円(税込)
【スタッフ】作・演出:開沼豊
【主催】サンライズプロモーション東京
【公式HP】 https://www.yuureihouse.com/
【公式Twitter】 https://twitter.com/yuureihouse
【チケット】<<当日引換券>> 各回開演前日まで発売中

ぴあ:https://w.pia.jp/t/yuureihouse/
Pコード: 507-947

≪当日券≫
各回開演45分前から劇場にて販売致します。
※前売券と同額

【お問合せ】サンライズプロモーション東京
0570-00-3337 (平日 12:00 ~ 15:00)

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スイスの劇作家フリードリヒ・デュレンマットによる戯曲を、ノゾエ征爾の上演台本・演出で立ち上げる『物理学者たち』。開幕を約3週間後に控えた稽古場の映像には、緻密なシーン稽古に臨むノゾエさん、そして草刈民代さんらキャストの様子が映し出されていました。

とあるサナトリウムを舞台に、自らをニュートンやアインシュタインと名乗る精神病棟の患者と、院長をはじめとする施設スタッフの会話で構成される本作。第二次世界大戦での原爆被害も記憶に新しく、ベルリンの壁建設や水爆ツァーリ・ボンバの爆発実験など世界情勢が緊迫した1961年に執筆され、時代背景にあった"科学技術"や"核"をめぐる人間のモラルと欲望が描かれます。
→詳しくは、翻訳を手がけた山本佳樹さんによる"作品解説"をご一読ください

■あらすじ
舞台は、富裕層向けのサナトリウム「桜の園」の精神病棟。ここに入所する自称ニュートン(温水洋一)、自称アインシュタイン(中山祐一朗)、「ソロモン王が現れた」と言うメービウス(入江雅人)の患者3人はいずれも"核物理学者"だ。

ある日、自称アインシュタインが若い看護婦を絞殺してしまう。数ヵ月前には、自称ニュートンも看護婦の命を奪ったばかり。院長のマティルデ・フォン・ツアーント(草刈民代
)は「放射性物質が物理学者である彼らの脳を変質させた結果、常軌を逸した行動を起こさせたのではないか」と疑う。

そんな中で起きる第三の殺人によって、事態は思わぬ方向へ。彼ら3人はなぜこのサナトリウムに入所しているのか、タブーを犯すのか──。

稽古の映像を見て驚いたのは、シリアスな内容の中に"笑い"が生まれていたこと。看護婦殺しの顛末が明かされるサスペンスでありながら、浮世離れした患者や施設スタッフ、事件の現場検証に訪れた警察らのシュールな掛け合いに思わずほくそ笑んでしまいます。

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8月29日の稽古では、冒頭から各シーンの精度を上げる作業が繰り返されていました。ノゾエさんの演出は、意図して劇世界に"ノイズ"を発生させる面と、観客が作品に没入できるよう"必然性"を高めていく面を使い分けているように見えます。何度もトライ&エラーを繰り返すと、いずれもぐっと魅力あるシーンに変化していきました。草刈さん演じる院長は、ト書きで「背中の曲がった老嬢」とあるほどのクセの強い人物。

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バレエダンサーとして培った姿勢のよさを封じ、背中を丸めながら特徴的なしわがれ声で登場します。とはいえ、少々早口でシャープな印象。ノゾエさんから飛んだ「ゆったり大きく構えてください」という指示に、草刈さんは「単なるおばあさんにはしたくないんですよね......」と悩みました。「底知れない彼女のイメージはそのままに、悠然さを出してください」と返したノゾエさんの指示に、草刈さんも得心して次のシーンに移ったようです。
患者で自称ニュートン(本名:ヘルベルト・ゲオルク・ボイトラー)役の温水さんは、ウェーブがかった金髪カツラ(当時の扮装)をかぶって登場。ノゾエさんの「不自然なくら
い食い気味で切り返してみてください」という指示にも緩急自在の演技で応戦し、出オチに負けない存在感を見せていました。

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坪倉由幸さんは、事件現場に出入りする警部リヒャルト・フォスに扮します。映像に収められていた稽古では、院長と自称ニュートンに対峙するなど出演シーンが目白押し。頭のネジが数本外れた登場人物が勢揃いする中で唯一まともなキャラクターといってよく、エキセントリックな患者や院長と向き合う"受け"の演技で安定感を発揮していました。

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この日の稽古終盤に登場したのは、看護婦長マルタ・ボルを演じる吉本菜穂子さんです。
殺人が続き精神病棟から離れるよう院長から指示されたことで生じる動揺を表すために、ノゾエさんは「ペンとかいろんなものを床に落としてみて」と指示。デフォルメしながら実践する吉本さんの姿に、稽古場から大きな笑い声が上がりました。

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稽古場レポート後編では、3人の物理学者たちが一堂に会し"不協和音"を響かせる様子をレポートします。お楽しみに!

取材・文:岡山朋代
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ワタナベエンターテインメント DiverseTheater『物理学者たち』
2021年9月19日(日)~26日(日)
本多劇場
[作]フリードリヒ・デュレンマット
[上演台本・演出]ノゾエ征爾
[プロデューサー]渡辺ミキ、綿貫凜
[出演]草刈民代、温水洋一、入江雅人、中山祐一朗、坪倉由幸(我が家)、吉本菜穂子
、瀬戸さおり、川上友里、竹口龍茶、花戸祐介、鈴木真之介、ノゾエ征爾
稽古場プレトーク配信中!
草刈民代×坪倉由幸×ノゾエ征爾
前編 https://youtu.be/0hIVwsUlouk
中編 https://youtu.be/G8UBKmilOOA
後編 https://youtu.be/m6B7Y-ZGDTs
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サイモン・スティーヴンスの戯曲を、劇団「ゴジゲン」主宰の松居大悟による演出で日本初上演する『Birdland』が9月9日(木)、東京・PARCO劇場にて開幕した。

撮影:引地信彦

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サイモン・スティーヴンスといえば、日本でも2014年に上演された『夜中に犬に起こった奇妙な事件』でオリヴィエ賞・トニー賞を受賞したイギリスを代表する劇作家。演出を手がける松居は、自身が主宰をつとめる劇団「ゴジゲン」で作・演出・出演をこなし、近年は映画『くれなずめ』やドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズを手掛けるなど、ジャンルや枠に捉われない活躍を見せる注目の演出家だ。松居にとってPARCO劇場での演出は本作が初。開幕にあたって松居からコメントが届いた。


【演出:松居大悟 初日開幕コメント】
遠いけど近くて、暗いけど明るい。吐息まで届きそうな気がする。
今まで客席で笑ったり泣いたり衝撃を受けたりしたPARCO劇場に入って、Birdlandを初めて浮かべた時に、なんとなくそう感じて。お、いいぞ、なかなかどうして匂ってくるような鋭さがあるぞと、不安を塗り潰す高揚感がありました。
本日より、舞台『Birdland』開幕します。
何年もこの戯曲を準備して、1ヶ月間マスクで稽古して、劇場で照明や音響と組み合わせて。新PARCO劇場になって初めてピンスポットを使ってないんです。それは別に主張することじゃないか。
無理やり答えを出さずに、答えを出さないという答えを確かめ合える座組です。9年前に青山円形劇場で演出した時に「彼にはまだ円形劇場は早い」と言われたことは忘れられないけれど、あの時以来の海外戯曲。でも今、劇を届ける自信があるのは、あの時よりも周りの顔つきが見られているから。マスクで顔わからないけど。まだ実感は追いついてないけど。ゴジゲン的には、目次がどう立ち向かうのかもポイントです!
戯曲の危うさ、小劇場の泥臭さ、スタッフによる繊細さによって、面白い作品ができていると思っています。
無事に幕をあけて、最後まで無事に走り抜けて、見にきた人も全員無事であってほしいです。"生きたい"と思う劇です、なにより生きていてください。劇場のガイドラインに則って、健康にお越しくださいませ!


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砂の女メインビジュアル.png2020年、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と女優・緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」。
2020年の旗揚げ公演『ベイジルタウンの女神』に続き、2021年8月22日にシアタートラムで開幕し、9月10日兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで無事大千穐楽を迎えた第二回公演『砂の女』。
緊急事態宣言の影響を受け売り止めとなり、カンパニーの、「チケットをご購入いただけなかったお客様、感染拡大下でご来場を断念されたお客様にご覧いただく機会を」という思いから、オンデマンド配信が決定した。


舞台『砂の女』は、安部公房の傑作小説「砂の女」を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当した。砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、村人の誘いで案内された砂に埋もれゆく家に閉じ込められる。その家には寡婦が一人住んでいた...。一見奇想天外な設定でありながら、普遍的でリアルな肌触りを持つ稀代の名作の舞台化は、上演前から注目を集め、その注目は評判へと繋がった。
緒川たまき、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲、といった実力派キャストの力演により作り上げられる密度の濃い空間、そして音楽・演奏の上野洋子の眩惑的なインプロビゼーション、小野寺修二の物語に溶け入るステージング、美術・加藤ちかの生み出す圧倒的な砂の世界、映像・上田大樹の肌に迫るような映像表現...。全てが緻密に織り上げられた総合芸術は、各新聞評やSNSなどを通じ、瞬く間に大きな話題となった。

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撮影:引地信彦

全国各地の演劇ファンが、この"研究室"の挑戦的で実験的なコラボレーションを逃さず体感できる絶好の機会だ。

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ケムリ研究室no.2 『砂の女』  オンデマンド配信
<配信期間>9/30(木) 10 :00 配信開始 (10/6(水)23:59までアーカイブ有り)
<配信元> 「PIA LIVE STREAM」(チケットぴあ)にて配信 
<チケット料金> 3,500円
<チケット発売期間> 9月11日(土)10:00 ~ 10月6日(水)21:00販売
<チケット取り扱い> チケットぴあ https://w.pia.jp/t/sunanoonna/
※ 配信される舞台映像は、シアタートラムにて収録された映像を配信用に編集した"配信限定編集版"となります。
 詳細:キューブオフィシャルサイト https://www.cubeinc.co.jp
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<公演概要>
ケムリ研究室no.2 『砂の女』 
原作:安部公房
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
音楽・演奏:上野洋子  振付:小野寺修二 
出演:
緒川たまき
仲村トオル
オクイシュージ
武谷公雄
吉増裕士
廣川三憲

【東京公演】2021年8月22日(日)〜9月5日(日) シアタートラム
【兵庫公演】2021年9月9日(木)〜9月10日(金) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
企画・製作=キューブ

<ケムリ研究室とは?>
劇作家、演出家、音楽家のケラリーノ・サンドロヴィッチと女優・緒川たまきが2020年に始動させた演劇ユニット。企画、キャスティング他、多くのパートを二人三脚で担う。旗揚げ公演は同年9月『ベイジルタウンの女神』(世田谷パブリックシアター他)。本作『砂の女』は第二回公演にあたる

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気鋭の劇作家・演出家の加藤拓也と15名の多彩なキャスト陣による安部公房の傑作戯曲「友達」の上演が、9月3日(金)に新国立劇場小劇場(東京)にて開幕した。

写真提供:シス・カンパニー

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原作は戦後日本を代表する作家の一人であり、「シュールで不条理」が代名詞の作家・安部公房の戯曲「友達」。その傑作に対して、演劇と映像の両分野で新世代を代表し、常に心をザワつかせる世界観を提示してきた加藤拓也が演出と上演台本を手がける本作。特異で不思議で可笑しな関係性を演じる15名の役者陣にもまさに心がザワつく驚きの顔ぶれがそろった。

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不条理な状況に追い込まれていく「男」を演じる鈴木浩介に迫るのは、安部公房スタジオ出身の祖母:浅野和之を筆頭に、父母:山崎一キムラ緑子、3人兄弟・3人姉妹(林遣都岩男海史大窪人衛富山えり子有村架純伊原六花)の9人家族。そこに、内藤裕志長友郁真手塚祐介西尾まり鷲尾真知子がさらに加わる。

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~INTRODUCTION~
ある夜、ひとりの男(鈴木浩介)の日常に忍び寄る、見知らぬ「9人家族」の足音。
祖母(浅野和之)、父母(山崎一・キムラ緑子)、3人兄弟(林遣都・岩男海史・大窪人衛)、3人姉妹(富山えり子・有村架純・伊原六花)から成る9人家族は、それぞれに親しげな笑みを浮かべ、口々に隣人愛を唱えながら、あっという間に男の部屋を占拠してしまう。何が何だかわからないまま、管理人(鷲尾真知子)、警官(長友郁真・手塚祐介)、婚約者(西尾まり)、弁護士(内藤裕志)と、次々に助けを求め、この不条理な状況説明を試みるが埒があかない。しかも、彼らは、どんどん「家族の論理」に加勢していく流れに...。一体、この「9人家族」の目的は何なのか? どこからが日常で、どこからが非日常なのか? この男を待ち受けるのは、悲劇なのか、はたまた救済なのか?

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和やかで楽しそうに響くタイトルとは裏腹に、足を踏み入れれば、どこか怖いような滑稽なような不思議な別空間が・・・。
初日をむかえるにあたりキャストを代表して、鈴木浩介・山崎一・林遣都・有村架純の4名のコメントが届いた。

【男:鈴木浩介 コメント】
この戯曲は、僕がかつて所属していた劇団青年座で初演された伝説的な戯曲です。今、こうして「男」という役を演じる機会をいただけるなんて、不思議なご縁を感じています。安部公房作品は初めてですが、演出の加藤拓也さん、共演の皆さんと、とにかくいつ初日が来てもいいくらいの覚悟で、練りに練り、深めに深め、稽古を進めてきました。
男の日常があっという間に侵食されていく物語は怖いけれど怖すぎて笑えます。是非笑いながら観ていただきたいですね。

【父:山崎一 コメント】
もともと別役実さんが大好きで不条理劇には長く親しんできましたが、安部公房作品は僕にとっては全く質感が違うもの。
そこに、初めてご一緒する加藤拓也さんの視点を通して作られたこの世界観です。
加藤さんの稽古の進め方から言葉、指示に至るまで初めてのことばかりの稽古場でした。
この新世代の"得体の知れなさ"に出会えたこと、探求できたことに、ずっとワクワクし続けている自分がいます!
是非、お楽しみください!

【長男:林遣都 コメント】
舞台は、僕にとっての鍛錬の場です。そして、稽古は自分の余計な部分を削ぎ落し、時間をかけて芝居を追究できる大好きな場所なんです。今回の作品は、自分の価値観とは違う次元で生きている役で、加藤さんは自分では到底到達できない視点を提示してくださいました。ずっと頭を働かせ、神経を張り詰めて稽古をしてきて、気が付くと1日が終わっている感覚でした。それが何よりも楽しくて、役にも戯曲にも発見がとても多く、それをきちんと自分の身に落とし込んで、毎日の本番に臨みたいと思っています。

【次女:有村架純 コメント】
安部公房さんの戯曲が演出家の加藤さんの手によって文字に起こされ、何度台本を読んでも、私の頭だけでは到底理解には辿り着けないだろうと思いながらの稽古でしたが、そんな時間も心底楽しく、カンパニーの皆様と一緒に、無事に初日を迎えました。
とても幸せです。男と9人の家族による、正義の分断、正義のぶつかり合い。お客様が観劇し終わったあと、心に残るものがどんなものなのかとても気になりますが、是非余韻に浸っていただけたら、と思います。カンパニーの皆様全員で完走します!

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<公演情報>
【東京公演】
2021年9月3日(金)~26日(日)
新国立劇場小劇場

【大阪公演】
2021年10月2日(土)~10日(日)
サンケイホールブリーゼ

作:安部公房
演出・上演台本:加藤拓也
出演:鈴木浩介 浅野和之 山崎一 キムラ緑子 林遣都 岩男海史 大窪人衛 富山えり子 有村架純 伊原六花 西尾まり 内藤裕志 長友郁真 手塚祐介 鷲尾真知子

お問合せ:シス・カンパニー
03-5423-5906 (営業時間 平日11:00~19:00)

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小劇場ミュージカルとして絶大な人気を誇るミュージカル『SMOKE』が、8月28日(土)、東京・浅草九劇で開幕した。韓国で誕生し、日本では2018年に初演。3人の俳優のみで、ひとりの天才詩人の苦悩と葛藤をドラマチックに描き出すミュージカルだ。上演を重ねるごとに"愛煙家"と呼ばれる熱狂的なファンを生みだし、今回で四演目となる。初演からのキャストである大山真志池田有希子に加え、8名の新キャストが加わり計10人の俳優たちが挑んでいる2021年版の観劇レポートを記す。

物語はふたりの青年・超(チョ)と海(ヘ)が、三越デパートの令嬢だという紅(ホン)を誘拐してくるところから始まる。身代金を得て、まだ行ったことのない海を見に行くのだと。しかし目隠しを外された紅は、海を見て、懐かしそうな表情を浮かべた。彼らは知り合いだったのか......? サスペンスのように始まったミステリアスな物語は、予想のつかない展開へ。やがて、自分の才能に絶望し、苦悩し、その中でもひと筋の光を掴もうとするひとりの天才詩人の内面が浮かび上がっていく。モチーフは、20世紀初頭に生きた韓国の詩人、李箱(イ・サン)の遺した詩と彼の人生。文学的奥深さと、激しい感情のキャッチボールが同居する作品を、3人のキャストが時に激情をぶつけ合い、時に仕掛け合い、時に寄り添い紡ぎ出していく。

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超役は大山真志、東山光明、伊藤裕一、山田元の4名。兄貴分的存在で、常に何かに苛立っているような役柄だ。大山の超は低く深い声と大きな存在感で頼りがいのある、しかし暗い道をひとりで突き進んでいくような孤独も感じさせる超だ。もしかしたらこの『SMOKE』という作品を初演から引っ張ってきたトップランナー・大山の孤高の戦いが役柄に反映されているのかもしれない、そう思わせるストイックさが魅力だ。東山が見せたのは鋭角的な超だ。だがその荒々しさは怯えからきているような心許なさがあり、ひどく悲しい。主に小劇場で活躍する伊藤は、この情熱的で激しい作品においても細部まで無理なくナチュラルな超。ことさら自分の"個"をひけらかすことなく、素直に作品と向き合った思われる役作りで、物語の中に息づいている。ミュージカル2作品目ながら安定した歌声を聴かせてくれたのも頼もしい限り。そしてパブリックイメージでは柔らかなイメージを持つ俳優である山田が、4人の中で最も猛々しい超を作り出していたのも面白い。激しさゆえ、絶望の深さも際立つような超だった。

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27歳だが精神は14歳で止まっている少年、海役を務めるのは大山真志、内海啓貴、中村翼の3名。超と2役演じる大山の海は、日本初演から磨き続けてきた海役のまさに集大成と言えそうなパフォーマンス。特に終盤、物語の全貌が見えてからの演技は圧巻で、劇場全体が彼の内面世界に飲み込まれてしまったかのようだった。内海は少年性の強い海であどけなさが可愛らしい。だが後半、自身の記憶を取り戻してからの表情が冷え冷えとしていて、そのギャップが面白かった。中村も幼さが全面に押し出されている海だが、内海とは違いずいぶん超への依存度が高そうな繊細さが印象的。まだ大学生とのことだが、素直で伸びのある歌声もいい。物語の要である海を、3人がまったく異なるアプローチで作り上げているため、作品自体のカラーが海の役者によって全く変わってくるのも見ごたえがある。

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紅役は池田有希子、木村花代、井手口帆夏、皆本麻帆の4名。世代の違う4人が配役されたが、いずれも美しく強く、ミステリアスな女性を作り上げ中ている。韓国産ミュージカルの特性であるアップダウンの激しい感情を、しかしナチュラルに自由に見せられる稀有な女優である池田は、3度目の『SMOKE』でもハッとさせられるほど新鮮。特に今回は、"恋しい"という感情を通奏低音として流しているように見え、ひとつ物語に揺るぎない芯が通った感。木村の紅には"切なさ"が常に漂う。もともとの彼女の魅力である柔らかさと相まって、台詞にあるように海のような紅だ。また、高音も低音も自在の歌唱力も圧巻だった。面白かったのは皆本の紅だ。もともとコケティッシュな魅力のある女優だが、"夢の女"といった風情の、どこからやってきたかもわからない不思議な浮遊感。様々な女優が演じてきた紅だが、確実に新しく、そして目が離せない紅だった。そして、これがデビューとなる井手口。フレッシュさはもちろんのこと、まぶしいほどの透明感だ。大切にしたかった、守りたかった純粋な心の欠片がそのまま具現化したかのようで、新鮮でありながらも、ある意味この作品のテーマをど真ん中を突いているのでは、と思わせる紅になっていた。歌声も美しく、これからのミュージカル界での活躍も大いに期待できる。

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......と、駆け足でそれぞれの役柄の印象を述べたが、もちろん組み合わせによってもどんどんその印象を変えていくに違いない。例えば今回見た大山・超と池田・紅の組み合わせは、長年本作に関わっているふたりなだけあって、ののしりあっていても、その息の合いっぷりからどこか共犯者めいた空気が出てくるのが面白かったが、同じシーンを頑なさを強く感じた山田・超と、その場でどんどん感情を変えていく池田・紅がぶつかったらどうなるだろう? というような興味もムクムクと沸いてきた。今回は36通りのキャストの組み合わせがあるとか。自分だけのお気に入りの『SMOKE』を見つけるのも楽しみのひとつかもしれない。

演出についても特筆したい。今まで浅草九劇では四方を客席で囲ったセンターステージで上演、観客の眼前に俳優がいる緊密さ、迫力も話題のひとつだった。今回はコロナ禍もあり物理的"密"は避け、三方囲み、ステージは特殊フィルムとビニールシートで囲まれた。しかし"囲まれた"ことを利用し、ステージを煙で満たしたり、特殊フィルムを駆使しあえて観客の視界を遮り想像力に委ねたりと、現状を逆手にとった演出の巧みさが見事。時に光の加減でスクリーンやビニールシートに俳優の姿が反射し鏡のようになるなど、作品の内容ともリンクし、面白い効果が生まれた。何よりも3人ずつの俳優たちが相手役と息を合わせ、心情で"密"な作品を作り上げている。これまで『SMOKE』を何度も観ている人にとっても、また新しい『SMOKE』になっているはずだ。

公演は10月3日(日)まで浅草九劇にて。その後10月15日(金)から17日(日)にかけ、大阪・シアタードラマシティでも上演される。9月3日(金)19:00、9月6日(月)19:00公演はライブ配信も決定。公演・配信チケットは発売中。(取材・文:平野祥恵)

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