12月17日(金)から27日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演される『成井豊と梅棒のマリアージュ』。
【plat de 成井豊】と【plat d' 梅棒】の2バージョンで上演されるこの公演、一体どんな作品になるのか! げきぴあは稽古場におじゃまして、成井豊さんと、梅棒の遠山晶司さん・天野一輝さん・野田裕貴さんによる座談会を行いました。全③回連載の今回は第②回です。
公演の内容などは、その①からご覧ください!
*****
――【plat d' 梅棒】では梅棒の本公演で作・演出を手掛ける伊藤今人さんではなく、遠山さんが作・演出をされますが、遠山さんならではのものは感じていらっしゃいますか?
天野 今人と決定的に違うのは、構成を全て遠山が手掛けることです。今人は、みんなの意見の良いところを吸い上げてそれをバランス良くアウトプットするのに長けているのですが、遠山は「これがやりたいんだ!」と引っ張る感じ。そういう違いがありますね。あと、エモさ......エモーショナルな感じは、遠山のほうが強い気が僕はしています。
――なるほど。成井さんの作品もエモーショナルですよね。
成井 そうですね。定義として、俳優がやることは感情表現なので、僕はいかに感情を表現するかということが大事だと思っていますし、お客さんもより劇的な感情の表出を見たいんだろうなと思っています。"ドラマチック"ってそういうことだろうと思うので。ですから僕は、90年代に静かな演劇がブームになっても「静かじゃエモくない!」って感じで、85年の設立からずーっとうるさい芝居をやり続けてきました。今回もうるさいですよ!
――「静かじゃエモくない」というのはどうしてですか?
成井 私にとっての"演劇"ってやっぱりサウンドなんですよ。というのも僕は、高校時代につか(こうへい)さんの舞台を観たことから始まっているから。つかさんの舞台は、役者が台詞をまくしたてているかうるさい曲がかかっていて、無音の時間がないですから、そういうものだと僕も捉えているんですね。だから今回の【plat de 成井豊】もそうですし、【plat d' 梅棒】で梅棒さんに書き下ろした『CROSSROADS』も無音の時間はほぼないだろうと思います。特に『CROSSROADS』は22~23分の作品だけど、全編クライマックスだもんね。
遠山 あはは! そうですね。
成井 アクションドラマの一番盛り上がっているところだけやるっていう感じだから。すごいテンションとスピードとパワーでやらなきゃいけないと思います。
――なぜ梅棒にそういう作品を書き下ろされたのですか?
成井 プロット(あらすじ)を3本出したらこれが選ばれたっていうのもありますけど(笑)、でも、キャラメルボックスって女性のほうが多いんですよ。最近では男性中心の芝居もありましたけど、もともとは女性中心の芝居をやり続けてきたんですね。だから梅棒は男性しかいないってことが、私にとっては新鮮で。キャラメルボックスでできないものにしました。申し訳ないけど、やりたかったことをやらせてもらう!って感じで書きました(笑)。
――楽しそうです(笑)。
成井 【plat de 成井豊】がリアリズムなので、逆に『CROSSROADS』はタイムトラベルものにしたんですよ。だから、話はすごく男臭いんだけど、内容はキャラメルボックスの35年の路線に最も近い話になりました。テーマは「父と息子」です。梅棒さんの作品を観させてもらっていると、父と息子の関係っていうのが非常に大事なんだなと思ったんですよ。なので、テーマは梅棒さん、ネタはキャラメルボックス。
天野 プロットを読ませていただいた時点で、これだな、というものがありました。僕と遠山の間でも即一致したくらい。
遠山 そうだったね。『CROSSROADS』はうちらでやりたいなって思ったんですよ。
――成井さんは梅棒にはどんな印象がありましたか?
成井 本公演は2回観ているのですが、そもそも私はつかさんから始まっているから、キャラメルボックスも身体表現をすごく重要視しているつもりなんです。だから"全身で台詞を喋る""全身で感情を表現する"ということは、キャラメルボックスはやってきたほうなんじゃないかと思っています。そういう一種のプライドを持っていたのですが、梅棒を観たら、もっとすごいヤツらがいた。喋らないのにこんなに感情を全身で表現している......というのが、羨ましいやら悔しいやらで。
――本公演が最初の出合いですか?
成井 いえ、初めて観たのは『15 Minutes Made Anniversary』の通し稽古です。うちがやる前に梅棒を見せられちゃって。すんごい面白さで、衝撃的でした。そのショックで筒井が台詞を忘れたりして(笑)。僕と筒井の間で梅棒ショックがあったんですよ。すごいの見せられちゃったって。
遠山 ......知りませんでした。衝撃です。
成井 ですから僕も【plat de 成井豊】の中で"梅棒"をやりたくて。1曲なんですけど、遠山さんに演出してもらって、キャラメルボックスのメンバー7人と野田くんと合計8人で、梅棒をやるシーンがあります。
――えー! 楽しみ!
成井 梅棒、やりたいんですよ。やってみたい!
遠山 ストーリーと曲はいただいて、方向性はゆだねてもらっています。
――それ、たまんないですね!
遠山 でも成井さんのお話にびっくりしました。梅棒がやりたいって......。僕なんて高校生の時からキャラメルボックスをやりたいって思っていたのに。
――ちなみに成井さん演出作品の出演者としての梅棒はどうですか?
成井 みんなカッコいい。キャラメルボックスの男たちがいかにひ弱か(笑)。
遠山 いやいや!
成井 ただ、僕は「カッコ悪いヤツが、2時間経つとカッコよく見える」をやりたいんですよ。自分という人間がカッコ悪いからこそ、困難を乗り越えたり悪戦苦闘する姿を観ていただいて、こんなヤツだってカッコよく見える、ということをやりたいとずっと思っています。でも梅棒のメンバーは既にカッコいいので、どうしたもんかな、っていうのはちょっと困りましたね(笑)。結局書いたものは、脚本上は誰もカッコよくないものです。みんな欠点とか弱点とか間抜けな部分がある。だけど6人がそれぞれがんばることによって、最終的にはカッコよく見えるものになったと思います。まだ稽古してないですけどね(笑)。
遠山 それができるかどうかは僕ら次第ですね。
――野田さんはどのように感じていますか?
遠山 あ、すいーつ(野田)喋ってない!
一同 (笑)
野田 期待に応えられるようにがんばらなくちゃいけないなって思います。梅棒メンバーとお芝居で共演するってことも実はなかなかないことなので、それも新鮮ですし。僕は成井さんと『かがみの孤城』('20)で初めてご一緒して、また成井さんの演出を受けられるのが嬉しいですが、2回目だからこその新しい自分も見せられるようにしなければいけないなという気持ちもあります。
――成井さんと一緒にやれる嬉しさってどんなものですか?
野田 僕も遠山と同じで、高校生の演劇部の頃からキャラメルボックスの「ハーフタイムシアター」とか観て育っているので。「あの時の自分に言いたい」じゃないですけど、こんなにがっつり組んでやらせていただけるなんて夢みたいですし、胸いっぱいって感じです。
成井 でも野田くんの演じる和彦には、僕自身を投影しちゃっているんですよ。和彦ほど僕はカッコよくないですけど、でも多分に投影しています。好きな人に好かれるためには立派にならなきゃダメなんだ、愛される価値のある男にならなきゃダメなんだっていうようなことを書いていて。そんなふうに生きられたかどうかはわかりませんが、でもやっぱりそういう愛のカタチっていうのを書てみたかった。そして野田くんにぜひそれを体現してほしいので。
野田 僕も読んでいて、和彦に成井さんをすごく感じました。責任重大ですし、そんな役をまかせていただけたことが本当に嬉しいので。ちゃんといいものにできるようにがんばります。
(その③につづきます!)
取材・文 中川實穂
撮影:源賀津己