12月17日(金)から27日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演される『成井豊と梅棒のマリアージュ』。
※公演概要はこちら:http://napposunited.com/mariage/
【plat de 成井豊】と【plat d' 梅棒】の2バージョンで上演されるこの公演は、ざっくり特徴を言うと、
◎共にオムニバス形式
◎それぞれのバージョンのベースは、成井豊と梅棒ならではの作品
◎【plat d' 梅棒】には一作、成井が書き下ろしの戯曲・演出で参加
◎【plat de 成井豊】には遠山晶司演出・梅棒振付で梅棒スタイルのシーンが挿入される
◎それぞれのバージョンに、成井が代表を務める「演劇集団キャラメルボックス」(現在活動休止中)のメンバーと「梅棒」のメンバーが出演し合う
というものですが......この劇団の存在が演劇の道の始まりという人も多い「演劇集団キャラメルボックス」の代表である成井さんと、台詞を使わずダンスと音楽でストーリーを見せるスタイルのエンタテインメント集団「梅棒」が、一体どう"マリアージュ"するのか。想像がつかないですよね!?
というわけで!
始まったばかりの稽古場で、成井豊さんと、梅棒の遠山晶司さん・天野一輝さん・野田裕貴さんにお話をうかがってきました。たっぷり全3回連載でお届けします!
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――まずは、プラ...プラ......
遠山 【plat de 成井豊】は「プラドゥナルイユタカ」、【plat d' 梅棒】は「プラドゥメボウ」と読みます。
――ありがとうございます(笑)。まずは【plat de 成井豊】と【plat d' 梅棒】作・演出の成井さんと遠山さんからそれぞれの作品についてうかがいたいです。
成井 【plat de 成井豊】は、7つのストーリーからなる連作短編集です。全編つながったラブストーリーですが、一話一話が独立しています。雪という女の子と、和彦という男の子が高校2年生から11年の時間の中で結ばれていくストーリーで、雪をキャラメルボックスの原田樹里、和彦を梅棒の野田くんが演じます。まさに「キャラメルボックス」と「梅棒」が恋をするお話です。7本のうちの6本がふたり芝居で、5本目だけ登場人物が8人いて、ここに梅棒のメンバーがどっと出てきます。
――1作目だけはキャラメルボックスや梅棒が出演したMrs. fictions『15 Minutes Made Anniversary』('17/6団体が15分の作品を上演した企画公演)で上演された作品ですが、約2年ぶりのオリジナル新作になりますね。
成井 はい。まず短編集をやるのが初めてで、さらに今回、リアリズムです。僕のお芝居はたいていファンタジックな要素が入るのですが、これは7話全部が現実です。
――かなり新鮮な。
成井 はい。さらに1本約15分なんですけど、すべて時間が飛んだり場所が飛んだりしない一幕ものです。僕は一幕ものも書いたことがなかったんですよ。2時間で一幕ものをやる勇気はないんだけど、15分だったらなんとかなるんじゃないかと思って。
――初めてづくしですね。でも、2時間でひとつの話をやる勇気がないというのは?
成井 私、飽きっぽいので、時間とか場所が飛んでくれないと「まだこのシーン、続くのかよ」となっちゃうんですよ。そういう意味で勇気がなかった(笑)。でも今回、書いてみて、照れくさいですがかなり自信があります。面白いものができたんじゃないかと思っています。
――楽しみです。【plat d' 梅棒】の話もうかがいたいのですが、その前にこの【plat de 成井豊】と【plat d' 梅棒】は、遠山さんが付けられたそうですね。
遠山 そうです。
――どうしてこのようなタイトルに?
天野 これは企画の話になるので僕がお話します。今回、オムニバス形式だから全体をくくるタイトルに苦労したんですよ。それで、遠山は料理が得意で、フランスで修業もしていたので、そこにかけて『成井豊と梅棒のマリアージュ』となりました。それぞれのバージョンの呼び名は良いフランス語がないかを遠山に尋ねて決まりましたね。つまり遠山を推したタイトルです。
――(笑)わかりました。【plat d' 梅棒】はどのような作品ですか?
遠山 こちらは4本のオムニバスでして、1本は、先ほども出てきた『15 Minutes Made Anniversary』で上演した作品(作:伊藤今人・遠山、演出:遠山)になります。2本は僕が作・演出の新作です。そしてもう1本は、成井さんの書き下ろしの本で演出もしていただいて梅棒のメンバーがストレートプレイをやる、という作品です。
――梅棒でストレートプレイは初ですね!
遠山 梅棒の作品は基本的に台詞を使わずダンスで表現する作品なのですが、メンバーの中には役者から始まった人間もいますし、なによりせっかく成井さんとご一緒できるということで、成井さんの脚本でやりたい、そして演出もつけていただきたいという我々の願いがあって。今回、こうなりました。それ以外の作品にはキャラメルボックスの皆さんに入っていただいて、僕ら梅棒の、台詞のない作品を一緒にやります。
――梅棒の公演はこれまで基本的に伊藤今人さんが総合演出としてやってこられましたが、今回、遠山さんが演出をされるのはどうしてですか?
遠山 以前から、(梅棒のプロデューサーでもある)天野に「やりたい」ということは言っていたんですよ。
天野 実はこれが今回の企画の発端でもあるのですが、僕も遠山が演出する公演をつくりたいなと思っていまして。と同時に、梅棒のメンバーが台詞を喋る姿もお客さんに見せたいなということも考えていました。だからと言って急に梅棒の本公演で2時間のストレートプレイをしたらお客さんもびっくりしちゃうと思うので、"THE 梅棒"と"新しい梅棒"が同時に観られる企画として、短編のオムニバスをやろうと考えていて。その流れで、ストレートプレイの脚本を成井さんに書いていただけませんかというお願いをしていたんですよ。そしたら、その時期に成井さんも公演をやる予定があって、しかも短編をやろうとしていてるという話を聞いて。「ということは諦めたほうがいいかな」と思っていたら、「だから一緒に公演をやりませんか」という上をいくご提案をいただいて(笑)。なんてラッキーなんだと思い、今回に至りました。
――すごいですね!
天野 もともと梅棒は、伊藤今人が総合演出をしていますが、各楽曲ごとの振付・構成はそれぞれメンバーに割り振ってつくっています。その中でも遠山は、起承転結のポイントとなるところを担当していることも多いですし、そもそも生み出すものが多いタイプだと僕は思っていて。ダンスで台詞なしで見せるというスタイルは同じですが、今人と遠山で演出の手法もまた違うので、いつも梅棒を観てくださっている方にも楽しんでもらえたらなと思います。
――梅棒の新しい表現がふたつも。
天野 はい。梅棒は今年2月に第10回公演という節目の公演をやって。次のステップという意味でも、いろんな新しい姿を知ってもらいたいので。
――野田さんは両方に役者として出演しますし、【plat de 成井豊】では大事な役どころを演じられますが、今どのように感じていますか?
野田 すごく贅沢な時間を過ごさせてもらっているなと感じています。稽古場も隣同士で、役者は行ったり来たりしながらやっているんですよ。
――でも大変ですよね。ふたり芝居に梅棒のダンスに。
野田 ボリュームがあるので頭がいっぱいになることはありますが、成井さんの脚本は最初に脚本を拝見したときからグッと来ていて、自分がこんな大事な役に選んでいただけるのもびっくりですし、キャラメルボックスの方々のお芝居も楽しみですし、頑張らなければいけないなという気持ちでいっぱいです。梅棒のほうも、普段梅棒の本公演に出ていただいている客演さんの力も借りつつ、キャラメルの皆さんと一緒にやれるのが新鮮で。そもそも梅棒の公演で、これだけ役者さんの比率が大きいのは珍しいことでもあって。
――役者が多いからこそのものもありますか?
野田 まだ始まったばかりですが、キャラメルボックスの皆さんは演技力がすごいですから。"成立させられる力"のようなものを感じています。僕も一緒にやれて新鮮ですし、すごく勉強になるなと思っています。
天野 特に今回梅棒はイレギュラーなつくり方をしていて、振付ではなく、動きの流れ・構成だけを先につけているのですが、皆さんが「このシーンは、こういう感情だからこうなって、こう動きたいんだ」ということをすごい瞬発力で出してくださるんですよ。だから、まだ振付もないのに「あれ? できた?」という気持ちになります(笑)。これは普段の梅棒の公演ではない感覚なんです。うまく言葉にできないのですが、動いてるだけですごい説得力なんですよ。
(その②につづきます!)
取材・文 中川實穂
撮影:源賀津己