2016年3月に初演、2017年12月に第二夜、2019年4月に第三夜を上演した人気シリーズ・浪漫活劇譚『艶漢』 第四夜が、2020年2月上演されます。詳しくはコチラ!
原作は、「ウィングス」(新書館)で連載されている尚 月地の人気漫画。ノーフン(フンドシをはいていないってこと!)がちで柳腰の美少年で傘職人の吉原詩郎と、熱血正義感の巡査殿・山田光路郎、詩郎の兄貴分で無敵な色気を放つ吉原安里の物語を軸にした、エログロナンセンスな昭和郷愁的アンダーグラウンド事件簿です。
舞台版は、ストレートプレイの「浪漫活劇譚」と、歌謡エンターテインメントショーの「歌謡倶楽部」(いずれも同キャスト)が展開されており、今回の「浪漫活劇譚」で脚本・演出を手掛けるのは、ほさかよう氏。
初演から出演する主人公・吉原詩郎役の櫻井圭登さん、山田光路郎役の末原拓馬(おぼんろ)さんにお話をうかがいました。
*****
――前作の第三夜では、詩郎の過去が描かれましたね
櫻井 そうですね。コミックスで言うと、第二夜までは1~3巻だったのが、第三夜で一気に9巻まで飛んだっていう感じだったので。それぞれの関係性も変わりましたし、新たな『艶漢』をお見せできたのかなと思いました。第四夜ではまた前半のエピソードに戻るのですが、そこは第三夜の流れを踏まえて演じたいなと思っています。
末原 ただ詩郎と光路郎の関係性に関して言えば、第一夜で「合わない」っていうところから無理矢理仲良くなって、第二夜は春澄の登場によって光路郎が「(詩郎には)俺にはわからない何かがあるんだ」ということを知って、第三夜ではキープだったからね。
櫻井 そうですね。
末原 ただ、第二夜までは向き合ってないといけなかったけど、第三夜は同じ方向を見るみたいなメンタルでやれたのが楽しかった。第四夜は、コミックスは遡るけど、光路郎と詩郎の関係性は先にいきたいよね。
櫻井 なんか本当にだんだん夫婦みたいな感じになってますよね。それぞれ別の行動をしていても、戻ってくる場所は一緒みたいな。
末原 でもその絆みたいなものは、もしかしたら生身だからこその蓄積があるかもしれないね。
――夫婦みたいってどういう感覚なんですか?
末原 恋愛中の男女って「相手がいなくならないかな」とか「こっち向かさなきゃ」とかっていう、ある意味の信頼のなさみたいなものがあると思うんですよ。そういう意味では、詩郎くんも光路郎には大事なことをほとんど話してなくて、そこを――これは舞台版の光路郎ならではなところもありますが――光路郎は「詩郎くん、本当のことを言ってくれてないんだな」とかちょっと悩むような弱さがあった。でも前回でその不安度が落ちてたというか。どこかで「あの人は自分と繋がっている」という安心感ができているのかなと思います。
――ブレなくなった?
末原 そうそう。本当はブレがあるほうがスリリングでいいんだけどね。第三夜は温かい関係が見えてくるっていう、やさしい感じになってきてますね。ただそれは、第三夜の終わりで詩郎がどこかに行っちゃうので、これ以上ないほど近づいて「当たり前の存在だよね」って言ってあげるほうが多分詩郎は辛い、というところもある。
櫻井 そうですね。
――そもそも論としてうかがいたいのですが、詩郎と光路郎ってどういう感情でお互いを見ているのでしょうか??
末原 光路郎は、「何があろうと詩郎くんとはいる」っていう前提がある。彼は頑固でそこはブラさないから、何かあっても「どうする?この人と離れる?」ではなくて「いるためにはどうしよう」という考えになる。例えば喧嘩でも、恋人同士の喧嘩よりも夫婦の喧嘩のほうが深みがあるじゃないですか。お互いの根幹を知るぶん、表面的な喧嘩よりもちゃんと話すから。そのぶん戻ってきたときの回復値とか成長度が高くなっていくところがいいと思うんですけど。僕らも「これから先の人生もやっていくこと」が大前提なほうが、シンプルだし強いかなと思います。
櫻井 結婚してないので夫婦とかわからないんですけど、拓馬さんといると、夫婦の関係性ってこういうことなのかなと思うことが結構あって。
――なぜですか?
櫻井 拓馬さんが稽古場にいないと不安になっちゃう......。
二人 (笑)
櫻井 稽古場で最終的に相談したい相手なんですよ。光路郎と詩郎をやっていく中でその関係性が築けたのはよかったなと思います。
――それは、この作品ならではでもあるんでしょうか?
末原 そういうのもあるかもね。やっぱりこの作品って、始まるときは毎回ちょっと怖いんですよ。
櫻井 怖い。
末原 内容も過激だし、これどうなんだろう?と思いつつ、でも「信じるしかなくてやる」「仲間を信じてやる」ということで毎回勝ってきたところがる。そこでやっぱり絆みたいな、そんなものをこの連中と築こうと思って始めたわけでは多分誰もないんですけど、いつの間にかできている。
櫻井 そうですね。
末原 それは嬉しいなと思っています。
――第三夜の終わりからは、第四夜はやや横道に逸れるというか、趣が違いますね。
二人 (笑)
末原 だからまあ、このシリーズは長期戦になるぞっていうことですよね!
櫻井 あはは! 僕も正直、第四夜はもっと先にいくと思っていました。
末原 (笑)。前回、終わらせにかかるのかなって思ったよね。
櫻井 はい。ジェットコースターの一番上のところにきて、あとは滑り落ちるだけだ、みたいな気持ちだったんですけど(笑)。
末原 丁寧にやっていきますよってことだよ!
櫻井 ほさかさんもずっと「(今回やる)水劇のエピソードをやりたい」って言ってましたしね。
末原 シュン・ミカミ(三上俊)も言ってたよね。(三上演じる)安里は水劇エピソードに全然出てこないけど(笑)。
櫻井 みんなが観たいエピソードなんですよね。
――水の中でお芝居をする女優たちのお話ですよね。どう表現されるかも楽しみです。
末原 でも、特殊な小屋でやるのかと思いきや、もはや僕らの持ち小屋であるシアターサンモール。
櫻井 (笑)。お世話になってます!
末原 演劇としてどうやるのか楽しみだよね。実際にプールでやるよりも、魔法が起きる気がしています。
――水劇は役者のエピソードですが、同業者としていつも以上に響くものはありますか?
末原 なんかわかるよね。
櫻井 そうですね。
末原 でも(原作の)尚先生って短編のそういうところがうまい。
櫻井 わかります。
末原 人のえぐみを描くときの、引っ掻き方がすごいから。
――光路郎の幼馴染・一平というキャラクターが出てくるエピソードもやるそうですね。光路郎の過去が描かれることになりますが。
末原 浪漫活劇譚の光路郎は「詩郎が成長する話」の"そばにいる人物"という感じだから、光路郎の物語が動くのは、実は初めてなんですよ。......疲れるんだろうな。
櫻井 疲れますよ(笑)。詩郎も今回、とある大事な人が出てきます。
――おふたりがメインになりそうですね。
末原 そうですね。そういう意味では、今回はエピソード的に、毎回出てる人が出なかったりするんですよ。だから、次にみんなが戻ってくるときに「俺ら、やっといたから!」というふうな迎え方が......
櫻井 したいですね!
末原 うん。みんなに「帰ってきたいな」と思ってもらえるようにできるかは、今回の僕らの戦いかな。
櫻井 ある意味、勝負です。第三夜での終わり方も踏襲しながら今回のエピソードを伝えることができれば、今までよりもひとつ上にいけるんじゃないかなと思います!
浪漫活劇譚『艶漢』第四夜は、2020年2月に東京・シアターサンモールにて上演。チケット一般発売は12月21日(土)11時より。
取材:中川實穗/撮影:川野結李歌