日本を代表する作詞家・森雪之丞が作・作詞・楽曲プロデュースを手掛け、岸谷五朗が演出、屋良朝幸が主演するオリジナルミュージカル『ロカビリー☆ジャック』 が12月5日(木)から東京・シアタークリエにて上演されます。
森雪之丞&岸谷五朗&屋良朝幸は、大ヒットした2013・15年『SONG WRITERS』のゴールデントリオ!
さらにテーマ音楽は斉藤和義が手掛け、さかいゆう、福田裕彦が作曲に加わる、日本ポップス界も注目の布陣がクリエイターとして名を連ねています。
物語は、ロカビリー音楽をテーマに、スターになるために悪魔と契約をかわすシンガーを中心に描かれる若者たちの青春エンターテインメント。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、最後までまったく予想のつかない内容だとか......!
登場するキャラクターも個性豊かで楽しそう。
悪魔と契約しスターになるロカビリー・シンガー、ジャック=屋良朝幸の前に立ちはだかるラスベガスのクラブの女ボス サマンサ・ロッシ役の平野綾さんに作品の魅力を伺ってきました。
★ 平野綾 INTERVIEW ★
●「共演経験のある海宝君、昆ちゃん、圭吾さんも、今まで見たことのない表情やお芝居をしています」
―― 平野さんは岸谷五朗さんの演出作品に出演されるのは初めてですね。
「はい、初めてです。岸谷さんのお稽古場の噂は聞いていたのですが、毎日マット運動をし、柔軟して......ってところから始まるんです。まず稽古場にマットがあるということにびっくりしたのですが(笑)、それが岸谷さんの稽古場専用のマットなんです。マットに色々な方のサインが書いてあるんですよ」
―― なんと。平野さんも書きました?
「書きました(笑)。(自分の名前もここに)刻まれた~! って思いました。毎日誰かしらがサインしていくみたいです(笑)。側転したり、でんぐり返しをしたり......こんなことをやるのは学生時代ぶりです。皆さんすごく軽快にこなしていらして、わたし一人、まだ側転が出来ない(苦笑)。今回の作品自体はそれほどアクションが多いわけではないのですが、何かあったときに日ごろから動いていたら対応が出来るというのと、あとは "床と仲良く" と言われました」
―― いわゆる"ボールと仲良く"みたいな(笑)?
「そんな感じらしいです(笑)」
―― 共演者の方々の顔ぶれも新鮮ですね。
「新鮮です。共演したことがあるのは海宝(直人)君、(吉野)圭吾さんかな? 圭吾さんは今年の『レベッカ』でもご一緒でしたが、『レベッカ』も『レディ・ベス』も『モーツァルト!』も、敵対する役だったり、私を滅ぼそうとしてくる関係性でしたので、今回、ちょっと意外な絡み方をするのが面白いです。昆(夏美)ちゃんは『レ・ミゼラブル』では同じ役でしたので、実は初共演です。海宝君も昆ちゃんもその『レミゼ』ぶりですので、久しぶり。でも、よく知っているこのお三方も、今まで見たことのないような表情やお芝居をされているので、お稽古場でその挑戦を見るのも楽しいです」
―― そんな中で平野さんが演じるのが女ボスのサマンサ。コメディに振り切った役からヒロインまで様々な役柄を演じていらっしゃいますが、女ボスというのは珍しいですね。
「声の仕事では割と "ラスボス" は多いんです、しかも最強の(笑)。ただ舞台でやるのは初めて。若干、小っ恥ずかしいんですよ。ボス、これでいいのかな~と。だって、ミュージカル界にはボスらしいボスがいっぱいいらっしゃるじゃないですか!」
―― 確かに。
「ただチラシのスチール写真を撮影したときに、五朗さんに「女ボスといっても女性としての可愛らしさがあって、"あっ、この人はこういう面が可愛いかも" って思えるキャラクターを作ってほしい」と言われたんです。それがとてもヒントになっています。ボスらしいところはボスっぽく、でもそういう面もあるんだというギャップを出せるように、いま稽古場で頑張っています。手下を引き連れたりもしていますので!」
―― "ラスベガスのクラブの女ボス サマンサ" を演じるにあたって、実際にラスベガスにも行ったとか。
「はい! 私、ラスベガスに行ったことがなかったので、サマンサをやるからには行かなきゃと夏に行ってきました。ひととおりエンタテインメントを観て、ラスベガスの空気を背負って帰ってきたつもりなので、ちゃんとその雰囲気を出せたらいいなと思っています。もう、夢を見ているような時間でした」
―― 平野さんは福田雄一さんの作品などでもコメディエンヌっぷりを発揮されているので、今度のサマンサがどんなキャラクターになるのか楽しみです。
「ボスということでわりとハキハキ喋るので、ポジション的にはツッコミかな? と思いきや、すごくボケています(笑)。サマンサの片腕の、青柳塁斗さん扮するテッドとだいたい "ニコイチ" で出てきますが、彼が全部ボケを拾ってくれるので、安心してボケられます。すごく気を利かせたツッコミをしてくれるんですよ。ただ、いまこのふたりにしかわからないギャグをやってただスベる、というのをずっとやっていて、これがお客さんが入ってどうなるのかが怖いです(笑)。シーン......となるのが正解なのかなと思いつつ......どうなるでしょう。基本、ふたりでいる時はロケット団みたいなイメージで、サマンサひとりのときは恐竜みたいな感じでやっています。ビル(海宝直人)とのシーンが結構あるのですが、彼に対しては本当に噛み付いていくんじゃないかって勢いで(笑)。ビルのバラードに乱入するシーンがあるのですが、そこも本当に楽しみにしています。ひとしきり荒らして帰るんで、海宝君のファンの皆さんごめんなさい、みたいな(笑)。生暖かい目で見てもらえれば嬉しいな、ヘヘヘ」
―― ほかに稽古場で楽しんでいらっしゃるポイントがあれば教えてください。
「みんながみんな、キャラクターが濃い! 昆ちゃんもびっくりする面白さですし、圭吾さんは "美しすぎて面白い" みたいなところが遺憾なく発揮されていらっしゃる。すごく稽古場でイキイキとされています。五朗さんが稽古場で爆笑されていますもん! そして屋良さんが本当にお芝居に対しても歌に対しても毎回全力投球で、それがジャックの夢に向かって突っ走る感じとマッチしている。本当に真っ直ぐな方で、愛されキャラです」
―― 屋良さんは、各現場で共演者の方がそのお人柄を褒めていらっしゃるのを耳にします。
「そうなんです、私もその前情報をたくさん耳にしていて、実際現場に入ったら本当にその通り、見習わなきゃ! ってことばかり。座長ってこういう方のことを言うんだという、お手本のような方だなって思いました。あとはやっぱりダンスがめちゃくちゃカッコいい! しょっぱなからものすごく踊っていらっしゃるのですが、私は台本にも "今作一のダンスナンバー" と書かれているナンバーがどうなるのかワクワクしていたら、実際振付がついたら本当にアクロバットなワザも入ったカッコいいものになっていました! すごいですよ」
●「どの曲もキャッチーで覚えやすい。音楽だけでも楽しんで帰っていただけるんじゃないかな」
―― 物語の重要なファクトとしてロカビリーがあります。実際劇中にロカビリーっぽい曲調のものも出てくるんでしょうか。
「はい。ロカビリーって、私はあんまりミュージカルの舞台で聴いたことがなくて、新鮮です。稽古場では歌のダメ出しで「ミュージカルっぽいからやめて」とかも言われます。ただ個人的にはアーティスト活動としてロックやパンクを歌うことが多かったので、ミュージカルをやるにあたって封印してきた自分の歌い方を久しぶりに開放しています。でもロカビリーは "屋良さん担当" という感じですね。私は「1950年代でロカビリーは死んだ!」と言い張る、ロカビリー否定派のトップで、そういう時代的に衰退していったものを屋良さんや海宝君が覆していく......という物語なんです。で、それぞれ "担当" があるんですよ。海宝君はバラード、昆ちゃんはアイドル・ポップ。私はちょっとジャジーでカッコいい音楽なので、すごく嬉しい。ただ......難しいです! でも割とみんなで歌うので、いい意味でユニット感、グループ感を出すことに重点を置いて歌うようにしています」
―― グループ感、それもまたちょっと平野さんにとっては珍しいような?
「そうなんです、私、わりとミュージカルではひとりで歌い上げる系が多かったので(笑)、みんなとできるのが楽しい! 女子3人で歌ったり、男子を引き連れて歌ったりしています。すごくいい経験をさせていただいているなと思います」
―― 音楽といえば、斉藤和義さんがミュージカルに楽曲を書き下ろすのは初めてだそうですね。
「はい。芝居ももちろん面白いのですが、音楽だけでも楽しんで帰っていただけるんじゃないかなと思う楽曲です。稽古から帰る時に、自然とその日にやっていた歌を口ずさんじゃう、人の歌でも。どのキャラクターの歌もキャッチーで覚えやすいんです。それはすごくミュージカルとして大事なことだなって思う。しかも作曲家が3人いらして、キャラクターの変化が出ていて面白いし、さらに雪之丞さんの詞が合わさって、本当にミュージカルナンバーとして聞き応えのあるナンバーが揃っているなって思います」
●「みんなが、ちょっと雑に生きていて、キラキラしすぎていない(笑)。そこが人間っぽくて良いんです」
―― ちなみにこの物語、主人公のジャックが悪魔と契約をして"愛"と引き換えにスターになる......というものなのですが、平野さん、悪魔と契約しても手に入れたいものはありますか?
「うーん...! 私、割と自分で何とかしようというタイプなので(笑)。悪魔に囁かれても「自分で努力します!」って言っちゃうかもしれません。だって、命と引換えに......とか、怖いですよ~! でもいわゆる "クロスロードの伝説"(ロバート・ジョンソンがギターの腕と引換えに悪魔と契約したという伝説)が、こういうアレンジになるのは雪之丞さんさすがだなぁ、と思うんですが、またそれについてもオチがありますから! 楽しみにしていてください」
―― チラシにも「予想のつかないどんでん返しの物語」とあります。
「そうなんです、だから物語についてはお話しづらい(笑)。ただ......みんな、すごく "なんとなく" 生きているんですよ......。ざっくりとした夢があって、ざっくりそれに向かって生きているんだけど、特にあんまり努力はしていない! そんな人たちの集まりが、ひょんなことで急に運命が変わっちゃって、自分が思っていたのと違う方向に流されてしまうのを、いかに楽しんで生きるか、みたいなところがあります」
―― ......いいですね、"ざっくりした夢"、"なんとなく"(笑)。あまりキラキラしていない?
「そう、キラキラしすぎていないんですよ、みんなが、ちょっと雑(笑)。夢に対して雑に生きていて、でもなんだかそれが逆に、人間っぽくて私はいいな、面白いなって思います。いい具合に力の抜けた感じ? 気張ってないミュージカル。年末の慌しい時期ですし、一年をシリアスに締めたくないなって思う方にはぴったりだと思います! ストーリーを深追いしすぎず、晴れやかな気持ちで今年を終えられます。私も今年は『レベッカ』に始まり、先日までやっていた『仮面山荘殺人事件』も重かったところに急にコレが来て(笑)。最初は「なんか、歌が重い」って言われちゃいました。今、このタイミングでコメディが来てくれて、自分の気持ちも救われています」
―― ミュージカル界、シリアスに闘いがちですし、たまにはいいですよね。
「ミュージカルでは結構、闘いますからね。そういう作品も嬉しいのですが、気軽に観られる作品もいいと思うんです。今回は、女性の目線から見ていて、もちろん男子もカッコいいのですが「この女子、カッコいい!」って思ってもらえる作品でもあります。女性の可愛らしさ、セクシーさが健康的にバンバン出てきます。私もダンスシーンとかで、そういう表情も出せるように頑張っています!」
―― お話を伺って、楽しみにになりました!
「オリジナル作品の初演ということで、五朗さんの頭の中に「こう!」というビジョンが明確にあって、それをみんなで具現化していくお稽古がすごく楽しい。一方でいい意味での余白がまだすごく残されていて、私たちも色々とトライしながら出来ますので、本番があいて、どんなミュージカルになるのか、私も楽しみにしています」
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:石阪大輔
【公演情報】
12月5日(木)~30日(月) シアタークリエ(東京)
1月11日(土)・12日(日) 福岡市民会館 大ホール
1月16日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)
下記公演(東京)の「ぴあシート」も発売中!
12/11(水)13:00、17(火)13:00/18:00