一年の終わりに、大いにわらって温かな気持ちに――屋良朝幸主演ミュージカル『ロカビリー☆ジャック』開幕レポート

チケット情報はこちら

【開幕ニュース】
 
森雪之丞(作・作詞・楽曲プロデュース)、岸谷五朗(演出)、屋良朝幸(主演)という、2013・15年に好評を博した『SONG WRITERS』の強力トリオが放つ、新作オリジナルミュージカル『ロカビリー☆ジャック』。ロカビリー音楽を題材に、悪魔と契約することで成功を手にした歌手の、愛と友情の顛末を描いた本作が、いよいよ本日12月5日(木)、東京・シアタークリエで開幕する。初日前日に行われた、熱気あふれるゲネプロの様子をお伝えしよう。

▽ 写真はすべて初日前日の囲み取材より01IMG_0477.JPG


売れないロカビリー歌手のジャック(屋良朝幸)は、彼を慕いマネージャーとなった昔馴染みのビル(海宝直人)とともに田舎からラスベガスに出てくる。だが既にロカビリーは下火、かつジャックの女癖の悪さが災いして、なかなか目が出ない。ついに小さなクラブさえクビになったジャックの前に、悪魔(吉野圭吾)が現れ、ある契約を持ちかける。それは、シンガーとしての成功と引き換えに、やがて彼の中に"愛"が大きく育った時、その愛と命をもらう、というものだった......。

世に伝わる"クロスロード伝説"(早逝のミュージシャン、ロバート・ジョンソンが悪魔と契約して才能を手に入れたという伝説)を彷彿とさせる設定だが、もちろんおどろおどろしさは皆無で、登場人物たちは皆、欠点を抱えつつも憎めない人間らしさに満ちている。その最たるものが、屋良朝幸演じるジャックだろう。女遊びにうつつを抜かす時もあるが、元来人がよく、ビルの境遇を思いやる優しさや、愛した女性ルーシーの葛藤を受け止める大きさを持ち合わせた、魅力的な男性。屋良の、キュートかつ一本気な個性が大いに生きた配役だ。

▽屋良朝幸02IMG_0518.JPG

周りのキャストも実力派ぞろい。ビル役・海宝直人は、持ち前の澄んだ歌声でジャックへの憧れ(その一途さは、もはや友情というより愛!?)を歌い上げ、ショーストッパーとなる予感大だ。ジャックを陰になり日向になり支え続けるルーシー役の昆夏美は、敢闘賞ものの体当たりの演技を見せている。またライバル会社のボス・サマンサを演じる平野綾は、ジャックの前に立ちはだかる壁としての力強さと、時に覗く女性としての可愛らしさを、変幻自在に表現。その片腕テッド役の青柳塁斗は、サマンサとの息の合った掛け合いのほか、立ち回りで高い身体能力を披露するのでお楽しみに。岡千絵演じる謎の魔女は、物語の行方を掌握する存在なので、キレのあるダンスはもちろん、細かな表情にも注目して見てほしい。そして吉野圭吾演じる悪魔は、その一挙手一投足に(登場するだけでも)客席が沸く、まさに個性の塊!! 魔女と悪魔のタップダンスも、見応えたっぷりだ。

そして、本作の大きな見どころが、「歩いて帰ろう」「やさしくなりたい」などで知られる人気シンガーソングライター・斉藤和義が、初めてミュージカルの楽曲を手掛ける点。ノリの良いグループナンバー「ジャックに "愛" は歌えない」、古き良きアイドルソングのような高揚感のある「秘密のデート」、メロディアスなラブソング「愛していると言えなくて」、切なさと力強さの同居した「愛しい嘘」など、必聴の名曲揃いだ。また斉藤のほか、『SONG WRITERS』にも参加したさかいゆう福田裕彦も作曲を担当。前述した、ビルがジャックへの憧れを歌うナンバー「永遠の憧れ」(さかいゆう作曲)、"お持ち帰りソング" 間違いなしの「契約ゲロッパ!」「無罪 ヒットパレード」(共に福田裕彦作曲)など、実にバラエティ豊かだ。

▽ 斉藤和義04IMG_0508.JPG


なお当日は囲み取材も行われ、演出の岸谷は「素晴らしい稽古場を1ヵ月半以上過ごして、本当にキュートな新作がまたひとつできあがったという実感です」と自信をのぞかせた。主演の屋良に対して「素晴らしい舞台俳優。全てができる、全てを備えている実力派なので、何の役を渡しても安心」と信頼を表し、一方の森も「五朗ちゃんと『ここのセリフはちょっと長いから切ろうか』と言っていたが、やらっちが実際にセリフを喋った時に良すぎて、これは残そうとなりました」というエピソードを披露した。対する屋良も「『SONG WRITERS』は僕の中ですごく衝撃的で、いろんなものをいただけた作品。だから今回、それ以上のものをと、家にいる段階からすごく練習して準備しました。初めて、稽古が終わってほしくないと思った。それぐらい稽古場が楽しすぎて」と充実感を表した。

スタッフ、キャストの愛がたっぷりと込められ、一年の終わりに、大いに笑って、ほっこり温かな気持ちにしてくれる作品。公演は12月30日(月)まで同劇場にて。チケットは発売中。

▽ 岸谷五朗06IMG_0538.JPG
▽ 森雪之丞05IMG_0509.JPG
▽ 海宝直人03IMG_0500.JPG
▽ 岸谷五朗&海宝直人08IMG_0545.JPG
▽ 屋良朝幸&海宝直人09IMG_0542.JPG

  
取材・文:羽成奈穂子
撮影:平野祥恵(ぴあ)

 
【公演情報】
12月5日(木)~30日(月) シアタークリエ(東京)
1月11日(土)・12日(日) 福岡市民会館 大ホール
1月16日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)

チケット情報はこちら

前の記事「歌、ダンス、スケート、タップで クリスマス気分をとことん味わいたい」へ

次の記事「「いい具合に力の抜けた、気張っていないミュージカルです」――『ロカビリー☆ジャック』平野綾インタビュー」へ

カテゴリー

ジャンル

カレンダー

アーカイブ

劇団別ブログ記事

猫のホテル

文学座

モナカ興業

谷賢一(DULL-COLORED POP)

劇団青年座

劇団鹿殺し

 はえぎわ

柿喰う客

ONEOR8

M&Oplaysプロデュース

クロムモリブデン

演劇集団 円

劇団チャリT企画

 表現・さわやか

MONO

パラドックス定数

石原正一ショー

モダンスイマーズ

ベッド&メイキングス

ペンギンプルペイルパイルズ

動物電気

藤田記子(カムカムミニキーナ)

FUKAIPRODUCE羽衣

松居大悟

ろりえ

ハイバイ

ブルドッキングヘッドロック

山の手事情社

江本純子

庭劇団ペニノ

劇団四季

演劇チケットぴあ
劇場別スケジュール
ステージぴあ
劇団 石塚朱莉