日本文学の名作を"読み師"や"具現師"らによって表現していく本格文學朗読演劇シリーズ。その第14弾の上演が決定しました!
今回も脚本を神楽澤小虎(MAG.net)、演出をキムラ真(ナイスコンプレックス)が手掛け、坂口安吾の『桜の森の満開の下』を原作に、シリーズならではの世界をつくりあげます。
極上文學シリーズファンの方はお気づきかもしれませんが、実は本作、8年前に上演されたシリーズ第一弾の再演!リクエストがとても多かったのだそうで、今回は本格文學朗読演劇シリーズ「極上文學」第14弾『桜の森の満開の下』~孤独~として上演します。出演には読み師として、荒木健太朗、梅津瑞樹、太田将熙、田口 涼、田渕法明、轟 大輝、松本祐一、三上 俊、宮城紘大、山本誠大(50音順)。また語り師として榊原優希、笹 翼、高坂知也、ランズベリー・アーサー(出演順)が、 具現師として市川真也、今井稜、萩原 悠、古見亮大(50音順)が出演します。
キャストのさまざまな組み合わせも楽しい作品。げきぴあでは、山賊(本作では「鼓毒丸(こどくまる)」)を演じる梅津瑞樹さんと太田将熙さん、女(本作では「ツミ夜姫(つみよひめ)」)を演じる三上俊さんにお話をうかがいました!
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――この極上文學シリーズに出演が決まって、三上さんは二度目、梅津さんと太田さんは初参加ですが、どのように感じていますか?
三上:極上文學シリーズは世界観が大好きで、ずっと「また出たい」と言っていたんですよ。演出のキムラ真さんも大好きなので、すごく嬉しいです。久しぶりの女性役というのもドキドキで楽しみにしております。
――前回は'14年の第8弾『草迷宮』(泉鏡花)ですが、そのときはどうでしたか?
三上:朗読劇だと思って臨んだら、全然違っていて(笑)。しかも割と自由だったので、探りながらやってましたね。例えば台本をどう使うかとかもそのひとつ。ただ読むためだけじゃなく、小道具として使うようなこともあるので。今回は経験があるぶん、最初から攻めて試してみようと思いました。
――キムラ真さんのどういうところが大好きなのですか?
三上:人柄がまず好きなんですよ。演劇に対して熱いので、「僕、こう思うんですよ」とか言い合えるし、聴いてくれるし。稽古が楽しかったです。
太田:僕もキムラさんとまたご一緒できるのが嬉しいです。前回ご一緒したとき、気持ちを大事にする演出家さんだなという印象があって。だからまたやりたかった。それと個人的に今年コメディ系の作品に出演することが多かったので、こういう文学作品をやらせていただくのも嬉しい。新しい自分を表現していけたらなと思っています。
梅津:僕は前作『こゝろ』を拝見したのですが、観た後でキムラさんにご挨拶をさせていただいて、めちゃくちゃ熱く語っちゃって(笑)。
――なにを語ったのですか?
梅津:語りすぎてあまり覚えてないんですけど(笑)。劇中で体に塗料を塗りたくる演出があって、観たときにすごく生々しかったんですよね。それがすごく印象的で。
――全体的にどういうところが面白いと思いましたか?
梅津:朗読劇だけどフィジカルも使う、だけど朗読劇であるという表現の仕方が面白いと思いました。朗読劇にも色々なスタイルがありますが、そのなかでもかなり特異だと思います。だからこそ今回、出演させていただけるのがすごく嬉しくて。坂口安吾も好きなので、より楽しみです。
――坂口安吾のどういうところが好きなのですか?
梅津:今回の『桜の森の満開の下』のような寓話的なお話も書かれますが、『堕落論』や『白痴』のようなカチッとした話もありますし、ミステリーも書きますし、作品によってガラッと印象が変わる作家さんという印象があります。ただ、カチッとした中にもユニークさがあったり、と思えば抉ってくるし、ドロドロしていることもあって。そのギャップやズレが楽しい作家さんだなと思います。
――その中で『桜の森の満開の下』はどうですか?
梅津:どこかおとぎ話のようで、読んだ人は多分「結局この物語で伝えようとしたことはなんだったのか」ということに集中しちゃうと思います。そこを探るのが楽しい。
――読んでどう思われましたか?
梅津:僕が小説を読んだのはずいぶん前なのですが、読み終わったときは空虚な気持ちになりました。作中で山賊の変化は描かれるけど、その変化の"結果"は描かれない。変化をした先の生活が描かれるのであればわかるけど、それがないから空虚なのかなという気がしました。
――なるほど。
梅津:だから、その変化に読む側が振り回されるような感覚があります。山賊に視点を置くのか、女に視点を置くのかでも全然違いますし。シンプルなお話だからこそ見方によって様変わりする気がしています。そういうところが楽しいです。
太田:僕は今朝読み終わったんですけど(笑)、さっき「山賊は女と出会わなかったら、一生都には行ってなかったんだな」と気付いて。それをちょっと「怖いな」と思いました。
――なぜ怖いのですか?
太田:山賊はずっと山で暮らしてきたぶん、どこか無知なんですよね。狭い世界しか知らない。でもそれって怖いことだなと思う。だから女と出会ったことで、都に行ったのはいいことではないかって。結果的に狂いますし、山賊の気持ちはほったらかしなのですが(笑)。僕という第三者の目から見ると、いろんなものを知ることは大切だなと思いました。
――ちなみに三上さんは、梅津さん・太田さんそれぞれと共演したことがありますが、おふたりの山賊はどういう違いが生まれそうですか?
三上:(梅津は)クールな山賊、(太田は)明るい山賊でしょうね(笑)。
一同:(笑)
――ちなみにおふたりから見て、三上さんのツミ夜姫はどうなりそうですか?
梅津:美しいのは確定してますからね。生首を並べているところを見たいですもん。
太田:僕も狂気は楽しみです。美しさと狂気のギャップが見たいですよね。朗読劇だけど、指先まで美しく表現されるんだろうなと思いますし。
――三上さんはこの作品を読んでどのように思われましたか?
三上:"桜"がすごいポイントになると思いました。なんなら桜が主役なんじゃないかっていうようなお話だと思うので。普通だったら「綺麗」な桜を「怖いものだ」と書かれている。それを僕らがどう体現するのかは重要だと思う。
――作品そのものに「怖い」とは感じたりしましたか?
三上:いえ、作品そのものに怖さは感じてないです。儚いなっていう印象ですね。ツミ夜姫って一見狂っているのですが、わからなくもない部分がありますから。そこにある"意味"のようなものは探していきたいです。
――朗読劇でツミ夜姫のような役を演じるのはなんだか難しそうだなと思います。台本を手に持って没頭はしにくいですよね?
三上:むしろ少し離れて演じるイメージです。僕、前回はなるべく自分の台詞を覚えないようにしていたんですよ。朗読劇だから「読む」を第一にしていました。そういう技術が試される場だとも思っていましたし。読み解きはするけど、覚えずに演じる。俳優とも、声優とも違う演じ方だと思います。
太田:僕も、朗読劇で「覚えない」ということは気を付けています。舞台って稽古が一か月くらいあるので、一歩間違うと台詞が新鮮に捉えられなくなってしまうんです。でも朗読劇って、覚えていないからできる新鮮な反応があるなと思っています。言葉も普段以上に大事にしますしね。
――特に今回は文豪の書いた言葉ですしね。
三上:そうなんですよ。見せるというより、読み聞かせるってことなんですよね。
――ところで梅津さんは小説を書いたことがあるという情報を得たのですが。
梅津:いや(笑)、大学で文学を専攻していたので、そのときのことですよ。今書いているものはないんですけど、書くのは好きです。
――書く人からすると、朗読劇はまた違う視点がありそうだなと思うのですが。
梅津:僕が文章を書くときに一番大事にしているのがリズム感で。文章って、黙読していても、脳内では音で再生されているじゃないですか。だから「記号としての文字」と「言語としての言葉」って切っても切り離せないなと感じていて。なので、そういった感覚に逆らわずに読めたらなと思います。観に来る人は本を読みながら観るわけじゃないですけど。
――今回、囲み舞台っていうのも面白いですよね。
三上:そうなんですよ。朗読劇で囲み舞台ってなかなか攻めてますよね。台本の使い方も含め、今まで以上に気を使いたいなと思います。だって本の中身も見えちゃうんでしょう?
太田:そっか。挿絵とか書こうかな。
三上:なんで!
一同:(笑)
本格文學朗読演劇極上文學 第14弾『桜の森の満開の下』~孤独~は12月7日(土)から15日(日)まで東京・新宿FACEにて上演。チケットは11月2日(土)より一般発売。