バラバラの個性が放つ存在感によって作り上げられる現代の「どん底」

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新国立劇場は、小川絵梨子芸術監督が2シーズン目を迎え、個人と全体(=国家や社会構造、集団のイデオロギーなど)の関係性をテーマにしたシリーズ"ことぜん"で幕開け! 第1弾として、五戸真理枝の演出により、ゴーリキーの「どん底」が新訳で上演される。9月中旬、初日を約2週間後に控えた稽古場に足を運んだ。

20世紀初頭に書かれた戯曲で、黒澤明により同名の映画に翻案されたことでも知られる本作。社会の底辺と言える木賃宿に集う人々が巻き起こす悲喜こもごもの出来事が描き出される。

日本でも文学座、自由劇場、俳優座などにより、繰り返し上演されてきた「どん底」だが、五戸は21世紀のいま、本作をあえて上演するという"現代性"を強調すべく、オープニングからある仕掛けを施している。物語の舞台はあくまでも現代日本であり、車が頭上を通り過ぎていく高速道路の高架下で、金網や「安全第一」と書かれた工事用のフェンスが立てかけられた場末の地。そこに、とある劇団のメンバーたちが集まり、「どん底」を上演するという構造になっている。

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この日、まず稽古が行われたのは、オープニングから第1幕にかけての部分。仕事をする者、寝転がったまま悪態をつく者、病に苦しむ者、酔っぱらったままの者、そんな彼らに怒りを露わにする者...木賃宿に暮らす面々の暮らしぶり、朝の様子が描写される。貧しさとみすぼらしさが際立つが、不思議と暗い感じはない。

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本作はそもそも、特定の主人公を中心に物語が展開するわけではないのが大きな特徴と言われる。まさに今回の五戸版でも、舞台上に散らばるバラバラの個性が猥雑に、色濃い存在感を放ち、物語を築き上げていく様子が第1幕のわずかな時間からも感じられる。

興味深いのは五戸による演出の指示。第1幕をおよそ45分でひと通り通すと、その後、休憩をはさんで30分ほどかけて、ちょっとした会話の間からセリフの口調や語尾、動きや姿勢についてまで細かく、じっくり丁寧に演出していく。

「セリフに感情が乗り過ぎてしまっているので、もう少し抜いて」、「もうちょっとだけふざけた感じで」、「もう少し雑な感じで」、「怒っているシーンだけど、少し余裕やゆとりがある感じで怒ってみてください」――。時に自ら「すごく不思議なことを言っていますが...(笑)」と前置きしつつ、独特の感覚と言葉を駆使しながら、俳優陣に細かいニュアンスを伝え、主人公のいない場末の舞台に存在するキャラクターたちの個性を浮き上がらせていく。

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令和の時代の「どん底」は見る者に何を訴えかけ、どんな「ことぜん」を浮かび上がらせるのか? 完成を楽しみに待ちたい。

「どん底」は10月3日より新国立劇場にて上演。

(取材・文:黒豆直樹)

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