どーも、名古屋のミラーマンこと佃典彦です。
今回の文学座公演「一銭陶貨」の台本を担当致しました。
さっそくですが「陶貨」って聞き慣れない言葉ですよね。僕も最初「何だそりゃ」って思いました。「陶貨」との出会いはNHK名古屋局の会議室でした。ドラマ担当のディレクターからシナリオをお願いしたい企画があるので来てくれと呼ばれたのです。で、おもむろに出されたのが「陶貨」でした。見た瞬間、「おはじきですか?」と尋ねたところ「いえ、陶貨です・・・一銭陶貨」とディレクター。実は第二次大戦末期、愛知県瀬戸市で製造されたシロモノだとか。「え?陶器のお金ってことですか?」当たり前の質問にディレクターは一銭陶貨にまつわる話を僕にしてくれました。
「昭和19年、金属も足りなくなった日本は家庭からは鍋や釜、もちろん寺の鐘や仏像やあらゆる金属を武器に変えるべく金属供出を断行しました。そしてついにお金もその対象になったのです。金貨・銀貨・銅貨に代わるモノとして選ばれたのが陶器と言うワケです。有田焼の有田、清水焼の京都、そして瀬戸物の瀬戸。この三都市に陶貨製造の命が下ったのです。ポイントは<割れない陶器>・・・当然お金ですから割れたりしちゃったら大変です。しかし当時はまだセラミックなんかありません。
しかもお金ですから富士山やら「大日本帝国」なんて文字やらを小さい中に極印しなければならない・・・。さらには空襲が襲うわ、男衆は兵隊にとられていなくなるわで普通に考えたら新しい技術を開発するなんて状況じゃない。有田と京都は早々に白旗を上げました。しごく当然です。でも瀬戸の職人<窯ぐれ>達は違いました。最後の最後まで苦難と闘って
陶貨を作ったのです。」
話を聞いてなんだかメチャクチャ感動しちゃいました。目の前にある一銭陶貨が誇らしく思えました。だって瀬戸市は僕の住んでる名古屋のすぐ隣なんですから!
しかしながらこの企画は編成上の都合でお蔵入りに・・・。何とかしてどこかでこの瀬戸の職人の意地っ張りの物語を作品に出来ないかと思っていました。
声が掛かったんです、僕に、文学座さんから!これは大チャンスと松本祐子さんにプロットを書いて渡しました。三本書いたっけ。そしてついに「一銭陶貨」は上演される運びとなりました。稽古初日の本読みに顔を出した僕は自分の作品なのにウルルと泣けちゃうシーンもあったりしまして、これはもうステキな意地っ張り達の物語になる事を確信しました。
是非、皆さまご来場下さい!お待ちしております。
▲ 稽古初日に撮影した集合写真
▲ 2007年『ぬけがら』公演舞台写真
◆公演概要◆
【タイトル】文学座公演 『一銭陶貨 ~七億分の一の奇跡~ 』
作:佃 典彦 演出:松本祐子
【日程】2019年10月18日(金)~10月27日(日)
【会場】紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA