喜劇作家で演出家、オリジナルミュージカルも手がける鈴木聡と、ジャズピアニストで作曲家の鬼才・佐山雅弘。さらに主演の稲垣吾郎という三者三様の稀有な個性がタッグを組み、2012年から2年おきに、"大人のための上質なミュージカル"を世に送り出してきた<恋と音楽>シリーズ。
2018年に京都劇場で上演された『君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~』は、シリーズの決定版として大きな話題を呼びました。
その興奮もさめやらない今年、ついに東京・日本青年館ホールで上演されます。
ショウシーンを大幅にリニューアルして"東京版"ともいうべき〈ショウタイム〉を盛り込んだ内容に期待が高まります。
芝居と歌、そしてダンスで構成され、エンターテイメント性に満ちた本作の魅力は、等身大の登場人物が展開する、ほろ苦くもクスッと笑えるストーリーと、夜のバーや恋人の部屋でくつろぎながら聴くような、ジャジ―でウィットに富んだ楽曲の数々。
さらに安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙という"稲垣を巡る女たち"の配役の妙など見どころ満載!
8月下旬の某日、その稽古場に潜入してきました!
舞台は日本、海の見えるダイナー。モーテルも兼ねるこの店で、夏の終わりに1人の男・ジョージと、3人の女・ビビアン(安寿)、ライザ(北村)、ニーナ(中島)が出会います。彼女たちの名前は、ライザ・ミネリファンのオーナー"ライザ"が名付けたもの。
そしてジョージは誰かを待っている様子。一方の女たちも、それぞれに秘密があるようで......。
この舞台のユニークなところは、芝居の1幕と2幕の間に<ショウタイム>があること。
昨年はミュージカル畑出身の女優陣に混じり、黒燕尾服をサラリと着こなし、自然体でスタンダードナンバーを歌う稲垣さんの姿を見て、改めて普遍的なエンターテインメントの素晴らしさを感じた人も多かったのではないでしょうか?
今年は昨年の上演後に急逝した佐山雅弘さんの遺志を受け継ぎ、息子でやはりジャズピアニストの佐山こうたさんが音楽監督とピアノを担当。
<ショウタイム>を10分拡大し、曲目も大幅に変更した点が注目ポイントです。
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稽古場に入ってまず目を惹くのが、左右に古き良きアメリカを思わせるダイナーのセット。
一段上がった後ろには、佐山こうた(ピアノ)、高橋香織(バイオリン)、バカボン鈴木(ベース)、三好"3吉"功郎(ギター)、仙波清彦(パーカッション)という、そうそうたるミュージシャンがスタンバイ。生演奏と合わせて稽古を進めています。
この日はまさに<ショウタイム>シーンの稽古。
まずはジミー・ジュフリーの名曲「フォー・ブラザーズ」に乗せて、1人の男と3人の女の、とある駆け引きが描かれます。
ちなみに本作でいう"ショウ"とは、芝居部分の延長線上にあるもの。つまりジョージと女たちがキャラクターのまま名曲を歌い踊ります。
安寿さんたちが歌っているところを稲垣さんがダイナーのカウンターにもたれて見つめていたり、、、その表情は何を想っているのか......。うーん、気になります!
「1幕の日が暮れたところで<ショウタイム>になるんですが、役のキャラクターが続いているので、ショウのシーンを見て『夜の間、こういうことがあったのかな』という風にとらえてもらってもいいですし、4人の関係のイメージとして受け取ってくれてもいい。さらにちょっとした表情や動きで、演じる僕自身の素の部分が重なって見えてくるのが、"ショウ"の面白いところ。いろんな楽しみ方をしてもらえれば」 と、稲垣さん。
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次に流れたのは、これもジャズのスタンダードナンバー「マック・ザ・ナイフ」。
ここでは安寿さんと北村さん、中村さんの3人が、"女の人生はステキなショウタイム"と小粋に歌います。
「昨年は"黒エンビ"でしたが、今年は"白エンビ"に変わりました」 と笑うのは、昨年、元宝塚トップスターならではの燕尾服の着こなしで、観客の目を釘づけにした安寿さんです。
「ショーの曲もガラッと変わりましたけど、もちろん、この座組みの良さは変わらないですね。稲垣さんをはじめ一人ひとりに個性があって、それぞれに独りで立っている感じが心地いいんです。この楽しい雰囲気が、そのままお客様にも伝わるといいですね」。
そして今回はなんと、稲垣さんがタップダンスに挑戦!
稽古場ではチャップリンの「スマイル」に乗せて、初めてとは思えない足さばきを見せていました。
ミュージカル界の実力派・北村さんも、一緒にタップを踏んでいてビックリしたそうです。
「タップって音が出るまで半年かかるので、稲垣さん大丈夫かなって思ってたんですが、しれっとしたお顔で出来てしまうのが、"稲垣吾郎"さんなんですよね。意外に本番で間違うのが私のほうだったり(笑)」 と北村さん。
「芝居でもショーでも、いつも自然に立っているところがすごい。それでフッと自分の世界に引き込んでしまうんだからズルイ! というか大好きです(笑)」 と、直球のラブコールが聞かれました。
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そんな北村さんが「私の世代にはたまらない曲」と北村さんが言うとおり、<ショウタイム>後半では、70年代~ 80年代のディスコで流れていたようなポップスが続きます。
北村さんと中島さんのふたりが「フィジカル」(オリビア・ニュートン=ジョン)をコミカルに歌い、踊ります。
美貌とクールな佇まいが持ち味の中島さん。最少年ながら、みなさんと同じ温度感で稽古場に溶け込んでいます。
「私は宝塚を退団後、久しぶりの舞台なんですが、キャスト4人にあて書きしてくださったお芝居も、そのキャラクターのままストーリー仕立てになっているショーも、本当に楽しくて。鈴木さんの脚本と佐山さんの音楽、それからフラットに接してくださる稲垣さんをはじめ、笑いの絶えない温かい座組みのおかげだなと思っています」 と話してくれました。
その言葉通り、「フォー・ブラザーズ」の稽古中、ラストに毎回違うアドリブを足してくる稲垣さんに鈴木さんが吹き出したり、「フィジカル」でコメディエンヌぶりを発揮する北村さんに、スタッフ陣から笑いが漏れたりと、終始なごやかなムードに包まれていた稽古場でした。
稽古場レポートの【後編】では、鈴木さんと佐山こうたさんの対談と、お芝居の稽古の様子もお届けします。お楽しみに!
取材・文:佐藤さくら
撮影:松谷祐増
【公演概要】
日程 2019年8月30日(金) ~ 9月23日(月祝)
会場 東京・日本青年館ホール
席種 S席 10,000円 A席 8,000円
★タイトル'輝く夜に'に因んだ夜公演だけのスペシャル企画★
【ナイトスペシャル】特典①
夜公演にご来場をいただいた方全員にクリアファイルをプレゼント!!!
クリアファイルの絵柄はA~Cまでの全3種類あります。
ステージにより配布されるデザインが決まっています。
詳しくはこちら→ チケットぴあ
【ナイトスペシャル】特典②
オープニングスペシャルナイトとして、終了後に舞台セットでの記念撮影ができるスペシャルイベントを実施いたします!ご来場をいただいた方から抽選でご招待! 舞台『君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~』の世界観に浸って撮影を楽しんでください!
■イベント実施公演日時
・9月3日(火)19時00分~公演終了後
・9月4日(水)19時00分~公演終了後
詳しくはこちら→ チケットぴあ