【前編:作品編】南河内万歳一座『~21世紀様行~ 唇に聴いてみる』内藤裕敬インタビュー

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1980年に大阪で旗揚げし、40周年を目前にする劇団「南河内万歳一座」(http://banzai-ichiza.com/)が、6月6日(木)からザ・スズナリで『~21世紀様行~ 唇に聴いてみる』を上演します。

本作は、昨年からスタートした旗揚げ40周年に向けた記念企画の第2弾。再演リクエストナンバー1の名作『唇に聴いてみる』を、初演から35年ぶり、最後の再演から23年ぶりに上演するそうです。

というわけで、作品のことや劇団の40年について、作・演出で劇団主宰の内藤裕敬さんにたっぷりうかがいました!

まずは<前編:『~21世紀様行~ 唇に聴いてみる』編>です!

*****

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――『唇に聴いてみる』はかなり久しぶりの再演ですが、どうして今回この作品を上演することになったのですか?

 南河内万歳一座は1980年旗揚げだから、今年が39年目、もうすぐ40周年なんです。でも40周年が2020年でオリンピックの年なので、ややこしいなと思って。

――(笑)

 それで、40年まるまるやって41年目に「40周年記念」をやろうかなと考えているのですが、それまでの3年間は40周年に向けて、いつもはやらないことをやろうと思っていて。昨年は、劇団「空晴」という大阪で上昇気流に乗っている劇団と合同公演をやりまして、今年は劇団「いちびり一家」という大阪の若手とコラボして新しい作品をできればなと考えています。そして今回、再演希望が非常に高い『唇に聴いてみる』を上演するという。

――なぜ今だったのでしょうか?

 この作品はもう再演しないかなと思っていたのですが、戯曲を出版もしていますし、雑誌にも載っているし、現代演劇集のようなものにも収められていて、そういう意味ではうちの代表作なんですよ。それで、当時とは劇団メンバーも変わっているので、「代表作だしチャレンジしたいんだ」という劇団員の熱望もあって、お客さんの再演希望と両方からの希望で「じゃあ再演しようか」ということですね。

――今回、タイトルに『~21世紀様行~(21せいきさまゆき)』を付け加えたのはどうしてですか?

 この作品は20世紀、1970年代くらいの高度成長が減速してきた時代の日本、そして団地が大きなモチーフになっています。団地というのは、核家族化が加速する当時のトレンドだったんですよ。だけどこの本を書いた頃にはもう「団地というものは狭くてギュウギュウ詰めのコミュニティで、隣近所も近いし、面倒ごとも多い」と、人間関係が個人主義化していくひとつの原因になってきていて、そこで抜け落ちたものを描いているんですね。なので21世紀の今やって、観た人が「そんな昔のこと言われてもわからない」という感じになると、あまり再演の意味がないと思った。

――21世紀版に書き直すということもできますよね。

 でも今改めて読み返してみると、書き直して21世紀版にするよりは、このままやったほうがいいように思えた。だから全く直してないです。年号や西暦は変わっても、引きずっている"何か"。日本の、僕たちの、解決しえない生活の中の痛みのようなものが散りばめられている作品なので。それを21世紀の現在の視点で観たら、どう見えるかがすごく興味深く感じて。今回はその辺を意識してやるので、「21世紀様に宛ててつくりますよ、どうぞご自由に観てちょうだい」という感じでつけました。

――ということは、「21世紀様」というのは、21世紀を生きる人たち。

 そう、現代を生きる人たち。

――演出も変わらずでしょうか?

 演出は、難しくなってると思う。この作品をつくった当時はまだ下手で、「会話を積み上げる」というような緻密なこともできなくて、身体性ばっかりだった。台詞はちゃんと言うけど、「それよりも身体性から発想して場面をつくらないと、うちの色は出ないんじゃないの?」みたいな時期の作品なので。だけどそこから僕も劇団もブラッシュアップを重ねてきているので、昔みたいに突撃精神で暴れまわって終わるわけにはいかない。だからといって、南河内万歳一座(以下、万歳)のベースにある"身体的なものを軸とする"みたいな部分を薄めちゃうと面白くない。出演者は両方やらされてて、みんな目を白黒してる(笑)。

――話は少し戻りますが、70年代の空気を描いたお話をやるときに、劇団員の若い方は当時の感覚はピンときますか?

 ちょっと誤差はあるみたい。でもその雰囲気はわかります、っていう感じ。70年代って、日本のコミュニティとか生活環境が核家族化と共に大きく変容した時代で、当時はそれによって「隣近所の付き合いが希薄になる」とかいろんなことが叫ばれたけど、今となってはお隣さんに挨拶しないなんて当たり前でしょ?それがいいか悪いかはさておき、そこから抜け落ちたさまざまなものがあって、それを今、みんなが抱えて生きてる。その出発点がここにある、という感じ。この作品は、その痛みのようなものを、70年代のノスタルジーと共に展開している話なので、芝居全体でなんかちょっと「痛い痛い」と言ってるところがある。だから、その「どこかしら痛いと言ってるな」みたいなことが感じられれば、おもしろく観られると思う。

――初演の頃はどういう気持ちで書かれたのですか?

 この本は、まず35年前に書いて、その2年後に書き直したものが現在のカタチになっているのだけど、万歳の作品は旗揚げ公演以外はすべて自分で作・演出をやっているので。自分でも書く度に「これじゃダメだな」「もっとなんとかならないかな」とか考えるし、皆さんにもたくさんアドバイスをもらいながらやっていた。それで、だんだんいろんなノウハウとかアドバイスが溜まってきて、「それを一回一本の作品で実践できないかな」と思って書いたものなんだよね。今読み返してみたら「やってるやってる」って感じがある(笑)。

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――戯曲を読ませていただいて、物語以外にもいろんなものが絡み合ってうねってるような作品だなと思いました。

 そう。モノローグからダイアローグ、時間がどう現実に戻ってくるかとか、そういうものを暴力的にねじ込んでいたり、フッと霧が晴れるようにどっかにやったりしてて、「いろいろやってるな!」って自分でもびっくりした。この本を書いたのは26歳だったと思うんだけど、これで初めて雑誌『新劇』に戯曲として載って、初めて岸田戯曲賞の候補作品になって、最終選考まで残ったの。岸田戯曲賞なんて遠い存在だと思ってたわけよ、26歳の頃なんて。だからそういう意味でも非常に思い出深い作品で。それで評判になって、再演を重ねる中でブラッシュアップして。韓国公演もやったし、上海と北京でもやったし、その間にも日本で再演を繰り返したので、もういいかなと思ってた。それで23年あいちゃったんだけど(笑)。おそらくこれが最後だと思うんだけどね。

――23年ぶりにやってどうですか?

 新鮮に思えた。当時自分が何を考えていたかとか、「そこに引っかかったんだな」みたいなことが明確に見える。演劇的に劇団のオリジナリティみたいなものをどう出すかってことを戯曲の中でもすごく迷いながらやってるし、劇作家の自分としてもそうだし。そういう意味でのチャレンジと集大成が全部詰まってる作品だなって。だから当時の俺のこだわりが全部残ってるような感じかな。

――先ほど「おそらくこれが最後」とおっしゃいましたが、そうなんですか?

 俺はやるつもりないけど(笑)。そのうちその気になるかなあ?

――明言はしない、という感じですね。

 うん。だいたいもう年だからね、劇団が。40年だから。「死ぬまでやるぞ」とかいう意気込みはまったくないのよ。「もう40年やってるんだろ、終わるときは終わるよ」としか思ってない。だから終わるときまで好きにやらせてもらいたい。終わるときはパッと終わるから。だから「50周年までがんばりますよ」とか「死ぬまで劇団を続けますよ」みたいなのは......いや~もう重い。

――あと10年も重いですか?

 続いちゃったらしょうがないよ?今までも続いちゃってるわけだからね。でも"続けるためにはやらない"ってことだね。逆に好きにやらせてもらうっていう感じ。

→→<後編:劇団編>に続きます!

南河内万歳一座『~21世紀様行~ 唇に聴いてみる』は、6月6日(木)から9日(日)まで東京・ザ・スズナリ、6月12日(水)から17日(月)まで大阪・一心寺シアター倶楽にて上演

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