「まだ僕は止まっていない、進化し続けているんだ」――中川晃教コンサート 2018「I Sing ~Wonderful Wonder~」に向けて、中川が語る

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各地でチケット完売続出、大盛り上がりのミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で、"天使の歌声"フランキー・ヴァリ役を好演中の中川晃教さん
ご存知のとおり、日本ミュージカル界を牽引する俳優であり、シンガーソングライターでもあります。

中川さんが脅威のハイトーンボイスを駆使し、フランキー・ヴァリを演じる『ジャージー・ボーイズ』は11月11日(日)の神奈川県民ホール公演まで続きますが、その大千秋楽を終えた直後、11月16日(金)にはソロコンサートである中川晃教コンサート 2018「I Sing ~Wonderful Wonder~」を開催!

「I Sing」は、中川さんが2013年よりコンスタントに開催しているシリーズで、オリジナル曲はもちろん、ミュージカルナンバーも織り交ぜ、その時々の中川さんの"今"が伝わるコンサート。

このコンサートにかける思いを、中川さんに伺ってきました。

 

◆ 中川晃教 INTERVIEW ◆

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●「最近の経験は自分でも「素晴らしいじゃん!」って思うことばかり」
 
 
―― 今日は11月16日のコンサートについてお伺いします。今回は『I Sing』シリーズ、中川さんが2013年から定期的に開催しているコンサートシリーズですね。

「はい。1年に1~2回のペースでやり続けているコンサートが『I Sing』です。なぜこのタイトルを掲げているかというと、歌を歌うということ、声を届けるということに集中したものにしたい、だからぜひ僕の歌を聴きにきて欲しい......そういう思いを込めて、潔く「歌う」というタイトルにしたんです。音楽って、今の自分が表現することであり、自分が感じている、思っていることである。等身大のものをダイレクトに伝えられる。しかも世界に向けて伝えられる。例えば今の僕は、ミュージカルという表現を経験したことによって、ブロードウェイやウエストエンドという世界が見えたりしています。だからミュージカルで歌う僕を知って興味を持ってくれた人も、そうでない人も、色々な経験があるからこその今の僕、目標を掲げて進化し続けていける自分、それを歌を通して聴いて欲しい。そんな思いでやっているコンサートシリーズです」
 
 
―― 今回のサブタイトルは『Wonderful Wonder』となっています。これはどういう心境でつけたのでしょう。

「この『I Sing』シリーズは、たとえば前回は誕生日前後にやったり、ほかにもデビュー何周年というタイミングだったりというタイミングで開催することも多いのですが、今回はそういう意味では何か特別な発表があるというわけではないんです。ただ、2年前に読売演劇大賞最優秀男優賞をいただいた『ジャージー・ボーイズ』が2年ぶりに再演になったり、BSの番組で司会させていただいたり(NHK-BSプレミアム『こころの歌人たち』)、韓国のミュージカルフェスに初めて呼んでいただいたり(2018スターライト・ミュージカル・フェスティバル)、今の僕は今までとはまた少し違うところに行くことができているなって自分でも思うんです。それを包括すると何だろうと考えて、パッと浮かんだのが「Wonder」でした」
 
 
―― では、今のご自身の活躍は「驚き」であり「素晴らしい」ことだと。

「そうですね、自分でも「素晴らしいじゃん!」ってことを経験させてもらっている。いま、すごく楽しいです。プライベートでも音楽と向き合う時間がすごくあるんですよ。それに、たとえば人のことを愛おしいと思ったり、たとえばクリスマスが近付いてきて街が華やいできたり......そういう日常って、僕にとっては音楽に通じるんです。それを改めて思い返させてくれることが多くて。誰かを思うことって、特別なことじゃないんだけど、時としてすごく特別なことになる。そういう感覚は言葉では説明しにくいのですが、ピアノや歌を通してだとあふれ出る。さらに、音楽と向き合う時間がいっぱいある俺の日常って、それ自体がもう、最高に「ありがとう!!」じゃないかな、って思いもあり......。すべてひっくるめて「素晴らしいじゃん!」です(笑)」
 
 
―― 中川さんにとって音楽は、仕事じゃないんですね。

「仕事じゃ......ないですね。「仕事」と思う点があるとすればひとつだけ、「こういうところを目指したい」と考えることだと思います。仕事というか、プロとして、かな? この間も韓国にいって、べらぼうに歌が上手い人たちを目の前にしたのですが、どうしてもそれは目標になります。でもそう考える時以外は、本当に好きだから音楽をやっている。本当に好きだから、ピアノを弾いているうちに朝になっちゃった、とか、そんな日々です(笑)」
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―― では、そんな最近のWonderな体験の中からピックアップして、今のお話にも出た韓国のミュージカルフェス『2018スターライト・ミュージカル・フェスティバル』(10月20日、仁川)の感想をお伺いしたいです。
 
「『I Sing』ではセットリストの中にミュージカルのナンバーを毎回入れているのですが、今回は『フランケンシュタイン』のナンバーを入れようと思っています。それはやっぱり、こないだの韓国での経験の影響がある。あの時、「次に歌う曲は、フランケンシュタインの『偉大な生命創造の歴史が始まる』です」って言った瞬間に沸き起こった歓声と拍手が凄かったんです! それで、この曲を日本でもまた歌いたいなって思った。なので、実は急遽セットリストに入れることにしました」
 
 
―― 曲紹介の時の歓声もですが、中川さんが歌い終わった時の歓声も凄かったですよ! ...と、読者に向けて付け足しておきます(笑)。フェス自体は、楽しかったですか?

「はい。韓国の方はみなさん本当に歌が上手いって聞いていて、もちろん上手いんだけど、一番感じたことはそれを楽しんでいるお客さんの熱狂です。聞くところによると、ミュージカルを観る層が、日本より20歳くらい若いらしいですね。わかりやすく説明すると、ちょっとアイドルのコンサートに近いノリだった。ミュージカルを好きな世代が若いからこそ、あの熱狂になるんだと納得しました。ああいう、自然にミュージカルで高揚する人たちが1万人規模で集まるフェスって、きっと世界でも珍しいだろうなって。そしてそこに自分がいる、呼ばれたってことで、「ここで俺、生まれ変わるのか?」ってくらい、気持ちが開放されたんです!」
 
 
―― 中川さんにとって、そこまでの体験だったんですね!
 
「韓国にいるのに、もっとグローバルな "世界" を感じた。日本の国外にいる自分に、またさらにその先の世界が見えました。実際、出演されている方も、韓国系だけどオランダ国籍の方だったり、アメリカ国籍だったりと、グローバルで。韓国にいるんだけど世界が見える開放感があって、そのハクハクするような、ドキドキワクワクする感覚は、日本で味わったことがないものだった。素直に「すごいな!」って思ったし、楽しかった。それに、『モーツァルト!』の『愛していればわかりあえる』を韓国の女優さん(キム・グンナさん)と韓国語でデュエットしたのですが、日本語より発音しやすかった感覚があるんです。歌として発声しやすい。韓国語という言語に触れたことで、また歌の表現、発声の仕方も勉強することが出来た。韓国にいるあいだ、何ひとつとして無駄なことがなかったんです。そこに、素直に驚きました」
 
 
―― 韓国の経験はもちろんですが、最近、中川さんの視野がどんどん広がっているなと感じます。今年の『ジャージー・ボーイズ』に際してのインタビューなどでも、世界を意識した発言が多かったような気がします。

「もちろん世界を意識するというのはずっと感じていたことだし、言ってきたことなんですが、確実にいま、それが具体的に一歩踏み込んだ思いになってきています。自分がミュージカルをやっていて出会ったお客さまがコンサートに来て僕の歌を聴いてくれて「こういう歌を歌うんだ」「また聴いてみたい」と応援してくれる。そういう方たちが「中川晃教はどこへ向かうんだろう」と思ってくれるタイミングがあるとしたら、それは今なんだろうなって思う。僕、11月5日に36歳の誕生日を迎えます。コンサートの日には36歳になっている。30歳をすぎた時に、5年ごとに目標を持ってやろうと決めて、36歳から40歳の5年は、世界に向けて準備をする年だって漠然と思っていたんです。実際にその年齢になり、本当にそう思うようになっています」
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● ミュージカルナンバーから、新曲まで。セットリストの構想をチラリ
 
 
―― ここからはコンサートの内容について、具体的なお話を伺います。どんな曲を歌うのか、明かせる範囲で教えてください。

「そうですね、何歌うのかわからないから......と躊躇されている方がいらしたらイヤですもんね! まずオープニングは、『A Brand New Day』を予定しています。これはクインシー・ジョーンズが監修した『THE WIZ』というミュージカルのナンバーで、僕はこれを「ひとりミュージカル」としてライフワークにしてずっとやってきているんですよ。この曲、まさにミュージカル!ってナンバーだし、ちょっと聞いたらすぐワクワクが伝わる。ハッピーだし、言葉のとおり「新しい日が来る」というナンバーなので、この曲からコンサートをはじめたいと思っています。あと、僕はクラシックの名曲に新たなポップスのメロディをジョイントさせて、歌詞を書いて歌うってこともやっているんですが、モーツァルトの『トルコ行進曲』をアレンジした『HAPPY DAY』という曲があるので、この2曲を冒頭に持ってきてまず盛り上げたいなと」
 
 
―― 華やかなオープニングな予感がします!

「はい! それから、先ほども話したNHK-BSの『こころの歌人たち』という歌番組で先日、フィンガー5の『個人授業』を歌ったんですね。これは作曲家の都倉俊一さんがゲストで、そのバックボーンを紐解くという意味もあって歌ったのですが、フィンガー5のメインボーカルって少年だから、キーが高いじゃないですか。でも、ちょうど僕、『ジャージー・ボーイズ』で発声を強化していたこともあって、この曲も原曲のキーで歌えたんですよ。僕の原点が音楽だとすれば、ミュージカルというのは仕事を始めてから出会ったもの。そのミュージカル、『ジャージー・ボーイズ』でフランキー・ヴァリ役に出会ったことで新しく得た発声で、また音楽に帰ってきたときに新しい地点に行けた。相互に高めあえているということが『個人授業』を歌っていてすごく体感できたんです。だからこれも歌ってみようと思って。あと、『ジャージー・ボーイズ』を観た方は、この曲のどこで僕がトワング(という『ジャージー・ボーイズ』でフランキーの歌声で出している発声法)を使ってるかわかるよ、という(笑)」
 
 
―― そんなツウな楽しみ方もできるよ、と(笑)。ミュージカルナンバーはほかには?

「順番は前後するかもしれませんが、先ほどお話に出た『フランケンシュタイン』の『偉大な生命創造の歴史が始まる』。ほかには『ジャージー・ボーイズ』からは『My Eyes Adored You』を、弾き語りでやろうかなとちょっと思っています。チラシにも書いたのですが、僕、塀に向かってドッヂボールを投げているような少年だったんですよ。ひとりで塀にボール投げてるか、ひとりで壁に向かってピアノ弾いて歌っているか(笑)。友だちいなかったのかーい! って感じなんですが(笑)、でもそんな原点であるピアノと向き合った時に、やっぱり自分の中で溢れてくる歌があるんです。せっかくコンサートなんだから、自分の歌として、ピアノ1本で歌ってみるのもいいかな、『ジャージー・ボーイズ』を観たお客さまにも、そんな面白さを感じてもらえたらいいなと思っています。そして中盤以降は自分のオリジナル曲も入れて、コンサートならではの畳み掛け方で、音の中にお客さまを誘っていきたいです」
 
 
―― チラシには新曲も発表したいと書いてあります。
 
「はい。『Save Our Souls』『相対性理論』『別れるときに思うこと』という去年書いた新曲も入れる予定なんですが、さらに2曲、新曲を書いているところです。今の僕のテーマのひとつが「ファミリー」なんです。なんでファミリーかというと、すごく今、自分の中で人を愛したり恋しくなったりってことを感じるんです......結婚するとかじゃないんですけど(笑)。ちょっと深い意味で、そういうことを考える年齢になってきたのかな。総じて、「愛」が今の俺のテーマ、なんです」
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● 「愛を持って、世界へ行きます!」
 
 
―― 愛がテーマ。"愛" は今までも中川さんの音楽から伝わってきていますが、ストレートに前面に出すのは新鮮に思えます。

「家に、柿の木があるんです。きっと祖父母が育てた木なんでしょうね。そういえば子どもの頃から、祖父母の家(今の中川さんの家)に来るとあったなって思って。今でも秋になると実をつけて、赤くなると収穫して食べるんですが、家族って、その柿の木みたいだなって。ずっと眺めているその木の実が熟れて、まさにポタっと落ちるときに「恋しい」と思える。そして「恋しい」と思えた自分の気持ちが、なんて素晴らしいんだろうって思った時に、少し恥ずかしいんですが、自分にとっての "愛" ってこういうことかも、って思った。それが、最近のテーマの「ファミリー」「愛」という言葉に繋がっていきました。自分の気持ちが、そういう "素晴らしい" ものに向かっているというところを新曲を含め、今回のコンサートで皆さんにお届けしたいです」
 
 
―― ちなみに形式としては、バンドスタイルですか?

「そうです。ドラム、ギター、ベース、キーボードの編成でやります。園田涼さんという、東大卒の面白いピアニストの方がいらっしゃるのですが、今回僕が彼とやりたい! と思ってお願いして、始まっています。昨日もこのコンサートの打ち合わせをしていたのですが、彼と話しているとあっというまに時間がすぎる。園田さんは今回のキーマンですね」
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――『ジャージー・ボーイズ』大千秋楽の5日後ですし、『ジャージー・ボーイズ』で盛り上がってそのまま初めて中川さんのコンサートに来る方もいらっしゃると思います。

「来て欲しいですね! もし「中川晃教は『ジャージー・ボーイズ』で賞もとって、ある程度行き着くところまで行ってるから、もう応援しなくても大丈夫だよ」って思っている人がいたら「Nooo!!」って言いたい(笑)。ぜひ応援してください! だって、このあいだ韓国に行って新しい世界を感じられた、その今の僕の気持ちは、今じゃないと伝えられない! 世界を目指したいと思っていることも、プライベートが豊かに思えていることも、すべて繋がっている。まだ僕は止まっていないよ、進化し続けているんだ、ということを表現できるコンサートという場は、とても大切。本当に、直近の様々な刺激が作用したコンサートになります。それに今回の会場であるオーチャードホールでやる、というのはひとつの目標でした。その夢もひとつ叶う瞬間でもあります。だからぜひ聴きに来てください!」
 
 
―― お話を伺って、"今" の中川さんのコンサート、さらに楽しみになってきました。

「それに、世界を目指そうと思える自分がいる、というのは、『ジャージー・ボーイズ』がひとつのきっかけだと思うんです。その勢いは2年前からまだ止まっていないし、進化しているんだっていうのはお伝えしたい。だから......僕は、愛を持って、世界へ行きます! みんなもついてきて! ......そんな締め方で、大丈夫かな(笑)? やっぱり自分も、経験を重ねている最中だし、模索をしている最中です。でも「きっとこれを聴いたお客さまは感動してくれるんじゃないかな」という自信を持って、ワクワクドキドキしている今がとても楽しいです」
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:源賀津己

 

【公演情報】
11月16日(金) オーチャードホール(東京)

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