【光より前に(3)】「興味があることだらけ」宮崎秋人×木村了×和田正人×谷賢一取材会/前編

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11月に上演される舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』の、稽古に先がけ行われたワークショップ&取材会の様子をお届けするレポートその③

→その①/作品の概要&ワークショップ前編はコチラ

→その②/ワークショップ後編はコチラ

本作は、1964年の東京オリンピックで銅メダルを獲得したマラソンランナー・円谷幸吉と、その4年後のメキシコオリンピックで銀メダルを獲得した君原健二という、ライバルであり友人であったふたりのストーリーが初めてドラマ化される舞台です。

今回からは、円谷役の宮崎秋人さん、君原役の木村了さん、円谷のコーチ・畠野洋夫役の和田正人さん、脚本・演出の谷賢一さんが参加した取材会/前編をお届けします!

IMG_3291.jpg▲(左から)谷賢一さん、宮崎秋人さん、木村了さん、和田正人さん

*****

――谷さんはどうしてこの物語を書かれたのですか?

谷:円谷幸吉と谷原健二というふたりの男の人生には、たくさんのメッセージが詰まってると思うんです。僕がすごく気になるのは、なぜそこまでして走るのかということ、そしてなぜ片方のランナーは栄光をつかむことができ片方のランナーは死を選ぶことになってしまったのかということ。それになぜ君原健二は一回失意の底に叩き落とされてそこから復活できたのかもそうだし、円谷幸吉のあの有名な遺書の言葉はなぜ出てきたのかということもそうです。興味があることだらけなんですよ。それに、なぜ走るのか、あるいは走っている選手をどうマネジメントしたり導いたりケアすべきなのかということは、現代への教訓になることもあると思う。単純に物語として悲しいものや美しいものがたくさん詰まっていますしね。そのあたりが、"すごく有名なのにドラマとしては埋もれてしまっている人たち"にスポットライトを当てたいと思った理由です。

――今日、実際に俳優の皆さんとお話しされていかがでしたか?

谷:一番「よかった」と感じているのは、みんな既に"走る"ということに関して準備したり、考えたり、動かし始めていたことです。演劇って稽古場に入って言葉で立ち上げていくものですが、その言葉を吐く身体がどういう状態にあるのかで関係性や出てくる言葉が変わってしまうんですよ。だから"ランナーの身体""ランナーの筋肉"だけは稽古前から目指しておかないと、"ランナーの精神"に辿り着くことができないんじゃないかという不安がありました。今日は、そこに対する危機感や目標といったものを、それぞれの目線で既に持ってくれていたことが一番うれしかったです。

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――円谷幸吉を演じる宮崎さん、君原健二を演じる木村さんは、実在の人物を演じることをどのように思ってますか?

宮崎:時代劇ではなく、この何十年を生きてこられた方を演じるのは初めてで。僕が演じる円谷さんのライバル君原さんはご存命ですし、(自分が演じる人物を)知っている人がいる状況のなかで演じることに対して「どうしよう」というところは、正直まだあります。役作りに関しては、まず円谷さんがどんな土地でどんな空気を吸って、学生時代や子供時代にどんな道を走っていたのか、そういうものを実際にその場所に行って見てみようという風には考えています。あとは、極力走っている人の精神になれるよう、走ること、そして体づくりですね。

木村:今は、僕が演じる君原さんの著書を読みつつ、どんな方なのかというのを思い描き、僕との共通項を探している最中です。そこでひとつ思ったのは、役者の仕事も孤独といえば孤独であるということ。作品づくりはみんなでやりますが、演じるのは一人だし。マラソンランナーも走っている最中は誰にも頼れないし、くじけそうになっても走り抜けなきゃいけない。そういう共通項があるのかなと思ったりしています。そこと自分を重ねながら、いろいろな方法ですり合わせている状況ですね。

谷:幸吉くんは、僕の今の印象ですが、本当に純朴で真っ直ぐな人だったんだろうなと思うんです。その真っ直ぐさが真っ直ぐすぎて命取りになってしまった人だと思うんですけれども。その気取らない朴訥さみたいなものを(宮崎は)きちんと持っていらっしゃると思うので、そこの部分を出していけたらと思う。彼の持つ愛嬌のようなところを役の中で育てていければ魅力的なんじゃないかな。君原さんに関しては、ワークショップで(木村と)意見が合致してよかったなと思うのですが、君原健二という男は立派だし日本の歴史をつくったランナーだけど、かなり癖の強い人だった。そこの部分を楽しんで一緒につくれるんじゃないかなってことは、今一番楽しみです。人間のネガティブだったり欠点だったり歪んでいたりするところって魅力にも変わるし、それがあるからこそ美点もまた映えてくると思うので。

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――この作品は選手とコーチの関係性も描かれますが、そこはどのように考えていらっしゃいますか?

宮崎:まず、僕からすると(円谷幸吉のコーチ・畠野を演じる和田は)本当にコーチなので。走ることに関しても、お芝居に関しても。だから教われることは、とことん教わりたいです。だけど一方的じゃなく、自分も「こいつのためにもっとなんかやりたい」と思わせることができるように、まずは自分がやるべきことをやります。あとはご飯連れてってもらえたら(笑)。

和田:そうですね、ご飯に連れて行く...(笑)。僕は走る役は何度か演じたことがあるのですが、教える側(コーチ役)はあまりやったことなかったので、新鮮な気持ちです。今回、秋人が円谷を演じることになったとき、宮崎秋人という人間のまだまだ使い切れていないエネルギーや葛藤、そういったいろんなものをぶつける場所としてうってつけだと思いました。だから、とことん迷ってほしいし、とことん苦しんでほしい。そこに僕がどう寄り添えるかはまだ想像もつかないですが、秋人がぶつけてきた力と同じかそれを超えるくらいの力を持って向き合ってぶつかっていけたら、何かいいものが生まれるのかなと思っています。だからどっちがどっちというわけでもなく、伴走していかなきゃいけないと思っています。

木村:僕は(コーチ役の)高橋光臣くんとは十数年ぶりの共演です。当時、僕はまだ17、18歳で、クソ生意気だったので(笑)、多分イラッとしてたんじゃないかなって思うんですよ。でもそれって実際のコーチと君原さんの関係性に似てるなと思うので。今回、稽古場でもプライベートでも、甘えるところは甘えてみて、反発するところは反発してみようかなと今は思っています。やさしいのでなんでも受け入れてくれちゃうんですけどね。ちょっとこっちから揺さぶってみようかなって(笑)。もちろんご飯にも連れてってもらいます!

プロデューサー:高橋さんは「天才・木村了との再会、すごい楽しみです」とおっしゃってました。

木村:ちょっとおかしくなってる...。大丈夫かな。

プロデューサー:「彼は子供の頃から演技が天才で、天才・木村了ってみんな呼んでたんですよ」って。

木村:谷さんの前でそれはちょっと...

一同:(笑)

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→→次回は、取材会/後編です!

公演は11月14日(水)から25日(日)まで東京・紀伊國屋ホール(※14日はプレビュー公演)、11月29日(木)から12月2日(日)まで大阪・ABCホールにて。

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