デイサービスの悲喜こもごもをミュージカルにし、2015年の初演以来、日本中で絶賛の嵐を巻き起こしてきた『ザ・デイサービス・ショウ』。昨年初お目見えした明治座での公演も大盛況に終わり、早くも再演が決定した。先ごろ行われた明治座近くの水天宮節分祭には、中尾ミエ、尾藤イサオ、初風諄、田中利花が集合。豆まきに集まった大勢の人たちに劇中の振付を指導して歌い踊るなど、早くも熱が高まっている4人に、作品の魅力と明治座再演への意気込みを聞いた。
──昨年夏に明治座で上演されてから1年も経たずに再演が決まりましたね。
中尾 最初は、普段の明治座での出し物とはちょっと違う作品なので受け入れてもらえるだろうかと心配していたんです。でも、みなさんに喜んでいただけて。せっかくなので再演ではもっと弾けたいと思っています(笑)。
尾藤 お芝居、舞台というのはナマモノですから、前の年にやったのをなぞっちゃいけないですし。いい緊張感を持ちながらやれたらいいなと思いますね。
初風 また明治座でできるのは本当に幸せなことですよね。
田中 本当に。あれだけのたくさんの人が観てくださってるっていうことが感激で。
初風 だから、足腰を鍛えて、元気でできるように頑張りたいと思います。
中尾 みんな、元気でいるっていうのが大変なことなんです。若い人と違って(笑)。
初風 明治座まで通うだけでも大変なんですよ(笑)。でも、楽しいことだから。
中尾 高齢のみなさんにとっては、この作品に出演することが、まさに"デイサービス"になっているんです。だから、実際にもこういうデイサービスがあったらいいなと思うんですよね。何か目的を持って一生懸命練習をして人様に見ていただくっていうことができる場所があってほしいなと。
──この作品は、デイサービスに通う高齢者とヘルパーが一緒にバンドを結成していくお話。平均年齢70歳を超えるキャストの方々が実際に楽器を演奏されるのが魅力のひとつです。バンドとしての手応えはいかがですか。
田中 観に来てくれた役者の方が、生演奏だと知って驚いてました。音は別に録音したものを流してるんだと思ってたって。それぐらい本格的だっていうことですよね。
初風 まさに「継続は力なり」です。私はキーボードですけど、最初はもう手が固まっちゃって、右手だけで精いっぱいだったのが、今は両手で暗譜して弾けるようになりました。
中尾 みなさん楽しんでできるようになってますよね。最初はそれこそ必死で楽器しか見てないという感じだったけど、今は振りをつけて踊りながら演奏できるようになって。だからどんどん難しいことをやってもらって、レベルアップしていこうと思ってます。
田中 私はタンバリンでそんなに難しくはないので動きを研究しようと思ってます(笑)。尾藤さんもマイクパフォーマンスがどんどん派手になってますよね。
尾藤 みなさんの演奏が上達してるので、やっぱりノッちゃうんです(笑)。だから本当に、何か新しいことを始めるのに遅いということはないと思いましたね。
中尾 実際にお客さんの拍手が鳴り止まないですしね。拍手の音を聞くとわかるんです。本当に喜んでくださってるかどうか。
初風 お客さんが全員で踊ってくださってるのを見ると、壮観ですよね。
──改めて、ストーリーにはどんな魅力があると感じられますか。
中尾 作者の方自身が介護の資格を持って実際に携わっていらっしゃいますから、きれいごとじゃなく本音のところが描かれているんですよね。だから、介護している方も、わかるわかる、現実はそうだよねと共感できる。そこがこの作品の強みだと思います。
田中 私はヘルパー役なので、その本音がちゃんと上手く伝わるように演じることが大事だなと思っています。
中尾 これをミュージカルにしたのも、セリフで言うとキツくなったり暗くなったりする部分が、歌だとカラッと言えるからなんですね。手前味噌ですけど、私、この作品の歌全部好きなんです。「クレイジー・ジージー」とか「ボケてなんかないぞ」とか、歌だからこんな表現ができるんだと思います。
──どんな方に観てもらいたい作品でしょう。
尾藤 僕は男の人に観てほしいですね。男性は芝居を観に来ることが少ないっていうのもありますし、介護の理解も深まりますからね。
中尾 デイサービスの方が丸ごと来てくれたらいいですよね。介護される側とする側が一緒に楽しんでもらいたい。そして、冗談ではなくこの作品はいつ誰が欠けるかわからないので(笑)、次にいつできるかお約束できません。これが最後だという気持ちで燃え尽きたいと思いますので、ぜひ足をお運びください。
(取材・文:大内弓子)