3月3日(土)に開幕するミュージカル「ジキル&ハイド」。
作品の面白さは既にご承知の通りだと思いますが、2012年版から3度目の主演を務める石丸幹二さんをはじめ、娼婦ルーシー役の笹本玲奈さん、ジキル氏の婚約者エマ役の宮澤エマさんと、日本ミュージカル界で屈指の歌唱力を誇る3人の豪華競演も話題の作品です。
医師として理想を追求するも、分裂する人格を制御しきれず、愛と欲望の挟間で深く苛まれる主人公を中心に、人間の持つ"光と影"、"表と裏"を描いた本作。げきぴあでは、稽古場の潜入レポートを前編・後編でお届け中!
詳しいストーリーはコチラ&今作の概要は前編に。今回は、前編で紹介した理事会のシーンに続き、婚約パーティーのシーンの稽古をお届けします!
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さてさて...ジキル博士(石丸幹二)とエマ(宮澤エマ)の婚約パーティー。実寸でお芝居をするのはこれが最初だそうで、「とりあえず1回やってみましょう」とシーンが始まりました。
このシーンは、ほとんどのキャストが登場し、それぞれの関係性が表れる情報たっぷりの場面。だからこそでしょうか、演出の山田和也氏からも、主要キャストはもちろん立ち話をしているキャスト達まで、丁寧な演出が入っていました。
例えば理事会の面々を通して描かれたのは、エマの利発さや社交性。彼らが声高にジキル(パーティー主役なのに!)の悪口を言っているところで、友人のアターソン(田代万里生)はどうにも太刀打ちできませんが、エマはそれをやってのけます(見ていてスッキリするシーンです!)。
エマの結婚に必死で反対するストライド(畠中 洋)のシーンでは、エマの反応にも彼女の性格がよく見えるんですよね。このシーンに限らずではありますが、例えば数歩歩く、ただそれだけの姿にもエマの"自分の意志"を感じさせる、宮澤さんのお芝居が素敵です!
ほかにもアターソンがジキルに、エマの父親(ダンヴァース卿/福井貴一)に余計なことを言わせないために必死でお喋りする姿からはアターソンの人柄、そしてジキルの人柄も感じますし、理事会の人々の様子を遠巻きに見ている招待客の反応からも、さまざまな情報が得られます。
そんな中でも愛がギュギュッと詰まっているのが、ジキルとエマのシーン。
ジキルは自分の婚約パーティーにすら遅刻して来ますが、それを責めることなく、だけど拗ねてみせるエマは、なんともやさしい人。理事会で人体実験を否決され失意に沈むジキルはそんな彼女に本音・弱音をこぼしますが、これもまたエマの前だけの姿なのだということが、言葉がなくともスッと伝わってくるんですよね。何も疑わず「エマは理解してくれる」と思っているジキル、そんなジキルを受け止めるエマに、ふたりの積み上げてきた時間も感じられます。このときの石丸さんの芝居は、他のシーンにはない素直さや弱さがあってとても魅力的、そしてかわいらしくうつりました!
そこで始まるのがふたりのデュエット「ありのまま」(稽古場で口ずさんでいる方がとても多かった曲です!)。それはそれは見事なハーモニーが披露され、稽古場はうっとりとしたムードに。さらにこの日の稽古では"振り"にもたくさんの想いが込められていることがよくわかりました!
振りからも、お互いを大切に扱っている様、そして心が通じ合っているからこその滑らかな動きが伝わってくるように、動きを何度も確認し合いながら進めていくふたり。メロディや歌詞と合わせた動きがベースですが、ところどころ振付の先生から「気持ち的には離れられないよね」と動きの変更も。こうやって、歌だけでなくその動きからもふたりの想いが染み込むシーンがつくられるのですね。歌い終わった後には自然と拍手が沸き起こっていました!
その後の、エマと父親(ダンヴァース卿)の会話も素敵なシーン。愛する娘が結婚していく寂しさ、夫となるジキル博士への(理事会メンバーとしても抱える)気がかり、そして娘の幸せを祈る気持ち...そんないろいろな気持ちが短い場面にギュッと込められています。ダンヴァース卿を演じる福井さんは、ともすれば父から娘への心配とも受け取れるシーンで、信頼がベースにある芝居を提案。その結果、とても温かなシーンがつくられていました。
......と、げきぴあが潜入したのはここまで! ストーリー的にはこの後が怒涛の展開ですが...この続きはぜひ劇場でご覧ください!!
公演は3月3日(土)から18日(日)まで東京・東京国際フォーラム ホールC、3月24(土)・25日(日)に愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、3月30日(金)から4月1日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。
取材・文:中川實穗