3月3日(土)に開幕するミュージカル『ジキル&ハイド』。
もはや説明不要の名作ですが、R・L・スティーブンソン「ジキル博士とハイド氏」を原作に『ビクター/ビクトリア』の作詞家L・ブリカッス氏と、まさにこの作品でその名を知らしめた作曲家F・ワイルドホーン氏がミュージカル化した世界的大ヒット作です。
日本では2001年に初演され、03年・05年・07年と鹿賀丈史主演で上演。12年に石丸幹二主演で新たなジキル博士&ハイド氏が誕生し、16年に再演、今回、3度目の主演として舞台に立ちます。また、ハイドに翻弄される妖艶な娼婦ルーシー役には笹本玲奈さん、ジキルの婚約者で彼を一途に愛するエマ役に宮澤エマさんが新キャストとして出演。笹本さんは12年・16年版はエマ役で出演しており、今回、新たな姿を披露します。
また、ジキルの友人ジョン・アターソン役に田代万里生さん、エマの父ダンヴァース・カルー卿に福井貴一さんが新たに参加。前作に続き、エマの結婚を反対するストライド役に畠中 洋さん、執事プール役に花王おさむさんという布陣。演出は山田和也氏です。
医師として理想を追求するも、分裂する人格を制御しきれず、愛と欲望の挟間で深く苛まれる主人公を中心に、人間の持つ"光と影"、"表と裏"を描いた本作(詳しいストーリーはコチラ)。
げきぴあは、その稽古場に潜入してきました!
前編・後編でお送りします。
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この日、まず稽古がおこなわれていたのは、物語の序盤・理事会のシーン。
理事のメンバーは、ダンヴァース卿(福井貴一)、ベイジングストーク大司教(宮川浩)、グロソップ将軍(阿部裕)、サベージ伯爵(川口竜也)、プループス卿(松之木天辺)、ビーコンズフィールド侯爵夫人(塩田朋子)です。
石丸さんが演じる医師ジキル博士が、長年研究してきた「人間の善と悪を分離する薬」を完成させるため、人間を使っての実験を求めます。ですが、権威的な人々の集まる最高理事会は大反対。否決され、研究の中止を余儀なくされてしまうという場面です。
ジキルの提案を理事会が反対するというシンプルなシーンですが、稽古ではその中の一つひとつの言動の意味を話し合うキャストたちの姿が印象的。ただ純粋に反対しているのではない、渦巻く打算や欲望などを確認し、「本当は違うけどあたかももともと思っていたような感じ」「顔色をうかがっている感じ」など、演出の山田氏を中心に話しながらつくりあげていました。
石丸さん演じるジキル博士もまた、ちょっとした動きなども山田氏や出演者と話しながらつくる姿が。何度演じていても、こうやって改めてイチからつくり、且つ深められていくのだな、と感じました!
また、彼らの持つ権力の大きさがそのまま感じられる歌も強烈な「採決」の場面は、秘書官ストライド役畠中さんの「YES」と「NO」の表現が光るシーン! ここの盛り上がりによって、大権力にただ一人向かうジキル博士の像が強まっていくため、間(ま)やストライドの胸中をより繊細に調整しているようでした。
それ以外にも、例えば薬を出すタイミング、それに対する理事会メンバーの反応など、そこに込められた感情を山田氏とキャストが丁寧に確認。結果的には本当にわずかな変更だったりもするのですが、再び同じシーンを通したときに、さまざまな瞬間がよりクリアに伝わってくるから驚きでした!
▶▶後編に続きます
<おまけ>
この後、稽古場では石丸さんの台本紛失騒ぎが!
「みんな、石丸さんの台本を探してくれ~」と全員で探しはじめ、
皆さん、ワイワイと賑やかにセットのあちこちをチェック!
結局、石丸さんご自身が発見されたのですが、
カンパニーの和やかな雰囲気を体感できました(笑)。
取材・文:中川實穗