草彅剛、松尾諭、小林勝也が、不思議さの奥に普遍性を秘めたアイルランドの芝居に挑戦『バリーターク』

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KAAT神奈川芸術劇場と世田谷パブリックシアターで4~6月、アイルランドの劇作家エンダ・ウォルシュによる『バリーターク』が日本初演される。チケット一般発売を前に、演出を手がける白井晃と、出演者の草彅剛、松尾諭、小林勝也が思いを語った。

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白井は、初の試みである世田谷パブリックシアターとKAAT神奈川芸術劇場の共同制作について「公共の劇場が最初の段階から一緒に組むことはなかなかないことで嬉しく思います。私自身、世田谷パブリックシアターでは色々な作品を作らせていただいてきましたが、その中で今回のお話をいただいた時、私が去年から芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場との共同制作にできないかと考えました。公共劇場の一つのあり方として、共同制作は大きなチャレンジです」とした上で、今回のキャスティングを「『バリーターク』の本を読んだ時に最初に頭の中に『この方が男1、男2〜』と思い浮かんだ理想のキャストが、草彅さんと松尾さん。夢に描いていたことが現実にやれるわけです。松尾さんとお仕事をしたことはなかったのですが、草彅さんとやられたらどうだろう、そこに第三の男として、先輩であり色々お仕事をさせていただいていて尊敬している小林さんにやっていただけたら......という強い思いを実現でき、これほど嬉しいことはありません」と語る。また、作家と作品に関しては「エンダ・ウォルシュは映画『ONCE ダブリンの街角で』でも注目されている40代後半の作家。アイルランド出身の劇作家だけあって、(サミュエル・)ベケットや(マーティン・)マクドナーの系譜に連なっており、アイルランドという土壌から生まれる不思議な感覚が作品にはあります。どこの世界の何を喋っているのかわからないような不思議な物語なのですが、その中に、我々が何故生きているのか、生まれた生はどこに行くのかといったようなことを感じさせる、滑稽でもあり詩情溢れる作品でもあると思っています」。

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出演にあたり、草彅剛は「白井さんに声をかけていただいて、松尾さんと小林さんと三人でガッツリとお芝居ができるということなので、僕自身も久しぶりの舞台でまた新しい自分を表現できる作品だと考えました。海外の作品で、難しい描写や台詞もありますが、これもまた楽しんで新しい自分を発見するというか成長にも繋がるのでしょうか、未知なる自分を追い求めて舞台に立ちたいと思います」

松尾諭は「今回、お話をいただいてびっくりしました。普段は端のほうでギャーギャーやっているほうが多いし、自分でもそれが性に合っているのですが、今回は真ん中でわーわーやる役で、台詞も多く身体もたくさん動かすことになり、大変だと思いますが、不安も含めて楽しみな思いでいっぱいです。稽古中には、白井さんに怒られたり、草彅さんや小林さんに「なんや、こいつは」と思われることもあると思いますが大目に見ていただいて(笑)、楽しい出来上がりになるよう頑張ります」
小林勝也は「私が芝居を始めたころは所属する劇団でしか芝居ができなかったが、今ではこのように沢山の公共劇場ができ、様々な作家や俳優やスタッフと出会うことができる。やってきて良かったなと思います。数年前に世田谷パブリックシアターで(『ビッグ・フェラー』を)やった縁で、またアイルランドの芝居が、今度は白井さんの演出でできることを嬉しく思います。僕は実は、(アイルランドの)ダブリンとベルファストに行ったのが、数少ない海外経験なんです。草彅さんがおっしゃったように新しい作品、新しいメンバーと、まだ自分自身の可能性を探していきたい。三人で仲良く激しく厳しくやろうと思っています」
とそれぞれに意気込む。

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作品の印象については、草彅が「本を読んだ時、とても難しかったんですけど、何か白井さんがおっしゃったような普遍的な生と死が描かれているのを感じ取ることができました。今までにやったことがない舞台で、本を読んだ時、やったことがない感覚にとらわれたので、興味がつきません」と言うと、松尾は「1読目はちんぷんかんぷんで、2回目はさらにわからなくなったので、3回目はまだ読んでいません(笑)」とおどけつつも「デヴィッド・リンチのような難解な作品が好きなんです。余白のようなものを、観る側とやる側が埋めていける作品なのではないか」と表情を引き締め、小林は「これまでにも難解で、風変わりな、やって見ないとわからないという作品には沢山出会ってきましたが、この作品はその最高位。いつもより緊張しております。分量的にも、解釈や難解さの点でも、どうやっていくのか楽しみにしています」と笑顔を見せた。

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本作を日本で上演する意義について、「常々、作品を選ぶ時には、その演劇作品と、今生きている社会との繋がりを常に考えながらやっています。今回のこの作品は、この劇場で最近やっている作品のように直接社会性に繋がるかというと、直接は出て来ません。2人の男がただ日常を繰り返している。でもそれは、激変するこの社会の中で我々が感じる生とは何なのか?ということと確実に繋がっている。男2人の繰り返す行為がまるで、ルーティンワークのように繰り返す我々の日常を照らし出すように思われるのです。それを観客の皆さんに目撃していただいた時、今のこの生とは何か、ひいては我々はどこにいるのか、ということに繋がると思っています。そしてもう一つ、自分とは、生とは、記憶が自分を創るとするならばどうやって自分の生を続けていけるのか?という普遍的なテーマがこの作品にはある。KAATでは社会性のあるものを僕は好んで上演してきましたが、それは僕の中で普遍的だと思っていたからです。この作品も、今まさにやるべきだという思いがあります」と説明した白井。その舞台が、2018年春の日本を生きる私達にどのようなものを突きつけるのか、注目だ。

取材・文:高橋彩子

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KAAT神奈川芸術劇場×世田谷パブリックシアター 『バリーターク』

会場:KAAT 神奈川芸術劇場<大スタジオ>

2018/4/14(土)~5/6(日) ※4/14(土)、15(日)はプレビュー公演

【作】エンダ・ウォルシュ 【翻訳】小宮山智津子 
【演出】白井晃

【出演】草彅剛 松尾諭 小林勝也
    佐野仁香/筧礼(ダブルキャスト)

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