これは中毒性のあるミュージカル――『HEADS UP!』相葉裕樹&中川晃教インタビュー

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ラサール石井が構想10年の時を経て舞台化したオリジナルミュージカル『HEADS UP!』

2015年の初演時は、そのストーリーの面白さ、ミュージカルとしての質の高さが大きな評判となったこの作品がパワーアップした再演版として昨年末から上演中。全国ツアーを経て、いよいよ3月2日より東京凱旋公演が登場します。

哀川翔、橋本じゅん、青木さやか、池田純矢、今拓哉、芋洗坂係長、大空ゆうひ ら、バラエティ豊かな顔ぶれも魅力ですが、初演に引き続き新人舞台監督の新藤祐介を演じる相葉裕樹さん、劇場付き雑用係の熊川義男を演じる中川晃教さんのおふたりに、作品の魅力について、たっぷり伺ってきました。

◆ストーリー◆
ミュージカルファンなら誰もが知る "あの名作" が1000回目の公演を迎え、華々しく終了したはず...だった。が、ベテラン主演俳優は某地方都市の古い劇場で1001回目を上演することを要求。誰も鶴の一声には逆らえず、上演することになったが、舞台美術は廃棄済み、キャストのスケジュールも押さえていない、スタッフも人手不足、演出家は理想のプランを頑として譲らず...。しかも、舞台監督はメインをはるのが初めての新人!
それでも、スタッフたちは、幕を開けようと必死に知恵を絞って奔走する。幸か不幸か、チケットは完売!観劇のために必死に都合を付けた観客たちが、期待に胸ふくらませて待っている!!
果たして幕は無事に開けられるのか...!?そして、主演俳優が「1001回目」にこだわった理由とは...?



◆ 相葉裕樹 & 中川晃教 INTERVIEW ◆

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●『HEADS UP!』が東京に帰ってきます!

―― 昨年12月の神奈川から始まった再演版『HEADS UP!』。富山・長野・大阪・名古屋を経て、3月には東京に帰ってきます。地方公演は、いかがでしたか?

中川「地方公演って、忙しいよね。タイトなスケジュールじゃないですか。もちろん本番はあるし、舞台稽古もあるし、(その土地の名物を)食べることもしなきゃいけないし...! 慌しいよね」

相葉「そうですね、ご飯は楽しみですよね。僕は富山で白エビを食べました! (哀川)翔さんについていったら美味しいものが食べられるんです(笑)。基本、毎日声をかけてくださいます。すべてにおいて翔さんは "兄貴" です。アッキーさんはどんなものを食べているんですか?」

中川「白えび、俺も食べました。俺は基本的に地方の美味しいものにパッといく感じかな。ちゃんと、食べてますよ(笑)」

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●『HEADS UP!』は "舞台愛" に溢れたミュージカル

――『HEADS UP!』、2015年の初演が非常に評判が良くて、演劇関係者の間でも「観に行った方がいい!」と話題になっていました。まずは『HEADS UP!』の魅力について、お伺いしたいです。

相葉「あるミュージカルを上演する1日の裏側を描いた作品だということもあり、舞台愛に包まれている作品です。舞台監督や照明、制作、キャスト......誰にスポットを当てても共感できますし、お客さまも作品を上演する上で欠かせない存在ですから、その気持ちもきちんと描かれている。『チケットは売れている』という曲では、一生懸命働いて、スケジュール帳に「この日」って書いて、楽しみに舞台に観にくるお客さまのことを歌っています。それは実際自分が客として観に行くときの気持ちでもあります。そして普段触れ合っている作り手側の皆さんの熱い気持ちも、この作品を通して改めて知ることが出来て、僕はより一層、舞台が好きになりました」

中川「僕は役者としてこの作品に関れていることに意味を感じるんです。僕たちの仕事って、観に来てくださったお客さまが「いいものを観た」「楽しかった」「なんか元気になった! 帰りに美味しいもの食べよ」でも何でもいいのですが、前向きに元気になっていただけるようなものをお届けすることだと思うんです。今回僕が演じる熊川義男という役は、例えば『ジャージー・ボーイズ』のフランキー・ヴァリ役のように、その声を表現するとか、テクニックを磨くとか、誰もが知ってる楽曲を歌うとかではないんですが、"役者としての使命" に向き合う役だと思っていますし、自分が常にそれを感じながら仕事と向き合ってきたということに確信を持てた役です。今まで演じてきた役それぞれに、それぞれの "特別" はありますが、"舞台に立つ自分自身" という視点からの特別感を抱いたのは、この作品が初めてかもしれません」

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―― 観る側からすると、舞台を好きな人こそハマる作品かな、と思いました。

中川「そう! 舞台に対する愛が、それぞれが抱いている愛だけじゃなく、関っているみんなで作り出す愛があったり、さらにそれがお客さまに届いたときにどんなミラクルが起こるのか......ってところまで教えてくれる作品なんです」


―― それに単純に、実在する色々な名作を感じさせるものが散りばめられていて、舞台ファンはそれを見つける楽しみもありますね。大きなところでは、劇中で皆さんが上演しようとしている『ドルガンチェの馬』があきらかに『ラ・マンチャの男』のオマージュだったり......。もちろん、元ネタを知らなくても楽しめますが。

中川「でしょ! これ、観に来たお客さんに「また観たい」と思っていただける、中毒性のある作品なんですよ。それに俺はもともとの、倉持裕さんが書いた脚本の構造がすごく好き。芝居としてしっかりしているんです。パンフにも書かれているけれど、要するに1幕でまっさらな舞台からミュージカルを上演するためのセットを組み立てて、2幕でそれをバラしてまっさらに戻していくんですね。でも倉持さんは「セットをバラしていく、というのはドラマに成り得るのだろうか」と考えたんだそうです。そこで、何かひとつの道具やセットをアイコンとして、例えばそのセットが出てこなかったとか、そこから劇中の事件なりを回想していく形でバラしのシーンを見せていく。その発想を思いついて「いけるかも」と思ったそうです。つまり、一連の動作の中で音楽に行きつく......ミュージカルになるその導入部分がちゃんと芝居の中にある。すごく面白いんですよ、脚本が。オリジナル・ミュージカルとして、そこまで "芝居" を噛み締めながらやれるというのが、この『HEADS UP!』の魅力的な部分です。......そこまで読んでやってた(笑)?」

相葉「仰るとおりです!」

中川「俺、本当にパンフの倉持さんの言葉を読んで、すごく合点がいったんだよね~。芝居としての骨格がしっかりしている。でも打ち出しているのは "ミュージカル"。ミュージカルを観るお客さんって、作品だけじゃなく、そこに誰が出演して、その人が何を演じるのか......というのを楽しみにされるじゃないですか。演じる役が "舞台監督" "劇場付き雑用係" って、ちょっとピンと来ないと思うんですよ。でもそこを乗り越えて観てもらえたら、絶対に「観に来て良かった!」「劇場に来て良かった!」って思ってもらえると思うんだよね!」


―― そうなんですよね、もっとミュージカルファンに観て欲しい!と思う作品です。

相葉「この作品、"ミュージカル俳優、ミュージカル女優を集めました!" という作品じゃないじゃないですか。(初演では)ミュージカル初挑戦の翔さんがいて、橋本じゅんさん、青木さやかさん......本当に面白いキャストが集まっている。そこがこの作品の魅力でもあるのですが、でもその中でミュージカルとして成立させるために、稽古場から色々とアイディアを出したり、時にはラサールさんと話をしてくれてたのがアッキーさんだったんです」

中川「(笑)。そんな風に見てくれてたの」

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● ふたりはお互いをどう見ている?

―― せっかくですから、お互いのことをどう見ているかをお伺いします。劇中、もっとも絡みが多いのではと思うおふたりですし。相葉さんが演じるのは舞台監督の新藤祐介、中川さんが演じるのが劇場付き雑用係の熊川義男ですね。

相葉「アッキーさんは自由に、色々なことを仕掛けてくれるので、そこから生まれるものが多いんです。新藤は受身の芝居が多いのですが、公演も長くやっていると、割と芝居って固まってきてしまいます。その中でアッキーさんが入ってきて、かき混ぜてくれることで、劇場の雰囲気も変わるんです。しかもそれが日々違うので、新藤が振り回される感じがリアルに出て楽しいし、僕は純粋に新藤としてそこに居ることができます。あと、やっぱり "ミュージカル" ですので、その柱としてアッキーさんが居てくださることで、作品が締まりますよね」

中川「(レ・ミゼラブルで)アンジョルラスをやったばっちの方が支えていると思うよ! ナンバーも多いし」

相葉「そうでしょうか(笑)。僕もミュージカルはいくつかやらせてもらっていますが、わかっていないこともあって、アッキーさんから教わることが多く、勉強になりました。その中で"ミュージカル『HEADS UP!』" を成立させようと一緒に頑張っている時間が楽しかったです」

中川「もちろんみんな同じ空気を吸って一緒にやっていて、ひとりで何かをしていていたわけではないんだけれど。でも作品の中に込められているものを認識して、「だったら、自分はどういう役割を果たせるか」というところに立ち返るには、最強の脚本だった。それにラサールさんのセンス......"涙と笑い" がふたつでひとつになっているユーモアのセンスは、ほかにはない! ここまで人の心を揺さぶるような "構築" の仕方をちゃんと教えてくれる人はいません。勉強になります。本当に、細かいんです。でもその細かいシーンがどれだけ意味を持つか。芝居全体の加速感にどれだけ貢献しているか......! それがちゃんと伝われば、ラサールさんが思い描いている "涙と笑い" のショーになっていく。このコメディという部分でラサールさんが何を作りたいと思っているのかは明白だったし、ラサールさんはミュージカルに対する愛がある。でも、実際どうすればこの作品が本当にミュージカルとして形になっていくのかについては......これ、役者ひとりひとりの力があって初めて立ち上がったオリジナル・ミュージカルであることは確かだと思うんですよ」

相葉「はい」

中川「例えば(橋本)じゅんさんが、製作発表の日に「アッキー、俺たちこういう作品の再演ができるって本当に幸せだよな」ってポロっと仰った。じゅんさんもこの再演に際して、自分に課しているものがあるんだろうなって思った。もちろん翔さんもそうです。そういう、作品に込める気持ちであり、言ってしまえば、演出云々ではない部分がこの『HEADS UP!』を成り立たせている気がする。人対人、俳優対俳優の中で増幅も出来るし、上手くいかなかったら見失ってしまうような、すごく繊細なものが作品の中に込められている。僕らの普段と地続きの物語であるがゆえに、稽古場から舞台に立つまでの日常の小さな瞬間に、この『HEADS UP!』の感動は生まれていくんじゃないかなって思って、俺は作品と向き合っていました。......で、ばっちからも、ふたりでやる芝居の時にそれが伝わってくるし、俺が毎回色々変えていることにちゃんと反応してくれてることからも、ちゃんと意味を感じとってくれてるんだなと思えて嬉しい! そもそもこの作品、ばっちがいないと成立しないからね!」


―― 相葉さん演じる新藤の成長物語、という側面もありますからね。

相葉「(それまでは舞台監督助手だったが)劇中で上演される『ドルガンチェの馬』の舞台監督を初めて任されて、まわりに振り回されながらもなんとか奮闘して、様々なドラマがあって、彼が成長していく......という役どころですので、たしかに中心人物ではあります」

中川「「俺を見に来い」くらいのこと、言わなきゃ! 初演と再演の間にアンジョルラスを経験したばっちが再び挑む新藤ですよ!」

相葉「(苦笑気味に)そうですね、初演の時は、正直、この作品を成立させることにいっぱいいっぱいでした。今回は皆さんとのコミュニケーションも深まっていますので、こっちにも行けるんじゃないかな、あっちにも行けるんじゃないかなと色々な挑戦をすることが出来ています。アッキーさんにも前回以上に振り回されていますし、初演には出せなかったものが、今回は丁寧に構築されたかな、とは思っています......」

中川「なんか、俺が悪者みたいじゃない!?」

相葉「いやいや、いい意味でですよ! アッキーさんも初演よりさらに自由に演じているんじゃないかなという気がしているんですが。それで、アッキーさんがかき回したところを、僕が「あわわ...」と言いながら立て直して......」

中川「確かに。(自分が)壊す班、かき混ぜる班、(相葉が)それを整える班、戻す班だね」

相葉「(笑)。僕はツッコミを入れたり、軌道修正したりして物語を進めていく役割なので」IMG_2170r.JPG

中川「でもね、ばっちは本当に良い俳優だなって思いました! こんなに感情のヒダを震わせる演技をしながら、相手にリスペクトを持って委ねるところがあり、でも自分の役割はちゃんと見極めて「ここは自分が!」って自分を押し出すところまで、丁寧に見えている。とても人間味があって、こんなに中身がちゃんと見える俳優さんって稀有ですよ」

相葉「ほんとですか。嬉しい!」

中川「あと、蒸し返すけど、やっぱり『レ・ミゼラブル』の経験は大きいでしょ!? 俺、帝劇で『レミゼ』をやっているとき、ちょうど(同じ建物内で)『ビューティフル』の稽古中だったんです。稽古場でばっちのアンジョルラスの歌が聴こえてきて、俺、わざわざ「めっちゃ歌、上手くなったね!」って言いにいったもん」

相葉「そうなんです。びっくりしました、僕」IMG_2190r.JPG

中川「言ったよね、ばっち! 歌、すごい良くなってる!って。まぁ、新藤という役は(まわりに振り回される役柄で)ある意味、か弱くても良かったんだけど、アンジョルラスって真逆じゃない。その役を掴んで、帝劇のお客さんを感動させた。その経験を経たばっちが、ふたたび挑む新藤、どういうところを見て欲しいか、最後に聞かせて!」

相葉「はははは(笑)、アッキーさんがインタビュアーになってるじゃないですか~。そうですね、でもアンジョルラスを経験したことで、難しくなったことも多くて。(新藤とは違い)ものすごくしっかりした、どっしりと構えている役柄でしたし。本来の僕はきっと、新藤寄りなんですけど。でも、アンジョルラスはリーダーとして、全員を見ている役。そういう意味では、舞台監督として色々なところに気を配る新藤と、性格は違うけれど役割としては結構近いのかもしれないと、ふと思いました。『レ・ミゼラブル』ではセリフがないところでも各キャラクターとコミュニケーションをとったり、舞台裏でも、開幕前にアンサンブル楽屋に行ってみんなとずっと話をしてその日の調子を確かめたりすることで芝居がやりやすくなったり......ということがありました。やっぱり芝居の原点はコミュニケーションだなと思いましたし、芝居が濃くなったと言っていただけるのだとしたら、本当にアンジョルラスを経験したからかもしれないですね」

中川「余裕が出たのかな?」

相葉「余裕なんでしょうか(笑)? 正直、無意識なんですが、コミュニケーションが増えたということを周りからも言われます。でもアッキーさんもそうじゃないですか。すごーく、さやかさん(制作の本庄役)に絡んだりして!」

中川「僕の中の設定で、ヨッシー(熊川)は制作の本庄さんの大ファンなんです! だって、ヨッシーは『ドルガンチェの馬』が大好きなんですよ。その作品を、1001回公演までずっと携わってきた制作さんって、ぜったいファンの間でも顔が知られているよね。あのカンパニーの本庄さんね!って。だから、大ファンって設定。でも本庄さん、いつも怒ってるから...」

相葉「だからちょっかい出すんですね(笑)。まとめますと、本当に濃く深くなっていますので絶対楽しめる作品です!」

中川「成長したばっちを観に来てください!」

相葉「僕の成長はいいですので(笑)、作品の成長を感じてもらいたい! それに「僕、成長しました」って自分で言うのは恥ずかしいですよ!?」

中川「でも俺、自分で言うかも(笑)。これだけ大変な経験をして、成長した自分をぜひ観に来てください、って! 結構言うよ~。観に来てくれたら、絶対感動させます!って」

相葉「(笑)!」
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:石阪大輔

【公演情報】
3月2日(金)~12日(月) TBS赤坂ACTシアター(東京)

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