いまや日本ミュージカル界に欠かせない存在である藤岡正明。
今年も『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート、『不徳の伴侶』、『タイタニック』と出演作が次々と発表になっています。
藤岡さんにそれぞれの作品について、そして、俳優として、ミュージシャンとして......様々なお話を伺ってきました!
●「役者・藤岡正明」と「ミュージシャン・藤岡正明」?
―― 去年末はその武器である歌を使わないストレートプレイ『欲望という名の電車』でも大役を果たされていて、その前の『ビリー・エリオット』も芝居色の強い役柄を演じていました。もともとの出発点は音楽活動だと思いますが、最近は俳優としての藤岡さんを見る機会が多い。ちょっと今日は、「役者・藤岡正明」「ミュージシャン・藤岡正明」を語っていただければと思っているのですが......。
「『欲望という名の電車』は、自分でもなんで僕にあの役が来たんだろうと最初は思いました(笑)。まず、ミッチという役は "180何センチの大男" ですしね。たしかに、そういう意味では去年は "役者" に寄っていて、歌をガンガン歌うということもあまりなかったし、自分の音楽活動というものもほとんどなかったですね」
―― 一転して今年は、コンサート『TENTH』からはじまり、ミュージカルが何本も決まっていて、さらにライブツアーもある。2018年は「歌う藤岡正明」の年なのかな、と思ったのですが、これは狙ってのことですか?
「いえ、狙ってでは、まったくないです。ただ自分としては、"刺激的でありたい" と思っているんです。自分自身が「ここ!」と思える、この仕事をやる上での縁を感じられるところには、どんどん出ていきたい。ただ、いま「狙ってではない」と言いましたが、最近ちょっと、役者としてだけでなく、歌手としてムラムラしてきました(笑)」
―― ムラムラですか(笑)。
「だから久しぶりにミュージシャンとして、3月にライブツアーもやります。ここ最近は自分のオリジナル曲をやって、普通にギターを弾いてポップスを歌うってことをあまりしてこなかったんです。だから、オリジナルライブは2年半ぶりかな? でも実は、そのやっていない間に、ギターばかりいっぱい買っちゃって。何本増えたんだろう? ってくらい。それで、家でギターを弾くという時間が、ある意味忘れていたものを思い起こさせてくれる時間だったんです。役割としてのミュージシャンではなく、自分の部屋でビールでも飲みながら、ただひたすらギターを弾いているという行為が「俺にとって音楽ってなんなんだろう」みたいな......。そんなことから、最近ふつふつと、やっぱり音楽をやりたい! って思うようになったんですよね」
―― ミュージシャンから出発して、ミュージカル俳優や、俳優になっていく方も多くいらっしゃいますよね。そういう方は「俳優としての自分」「ミュージシャンとしての自分」をどうバランスとっているんだろうと思ったりするんです。
「例えばミュージシャンなのに俳優やっている、本当は音楽やりたいのにー! って思ってやっていたら、結局どっちもが中途半端になりかねない。ストレートプレイに出演させてもらう時には、自分がミュージシャンであるということはまったく関係ない。例えば歌が上手い、歌えるといった武器は一切使えませんから。僕は逆に、自分がミュージシャンだというのを言い訳にしているんじゃないか、それがカッコ悪いんじゃないかって思っていた時があった。でもヘタクソでもいいから、精一杯そこに取り組んで、ヘタクソなりに「役者やってます!」って言えた方がカッコいいんじゃないかなと思ったら吹っ切れました。だって、音楽なんて使わないで、セリフで、お芝居だけで誰かを感動させるって、それはすごくカッコいいですよね。......たしかに「ミュージシャンなの?役者なの?」ってよく訊かれますけどね(笑)」
―― そう訊かれたらどう返すんですか?
「自分では特にこだわりはないので「好きに呼んで」って思います。あっ、ただ、エンターテイナーでありたいことにはかわりないです!」
―― じゃあ、いまのポジションを、ご自身では気に入っている?
「そういう意味では自由にやらせてもらってます。でも、やっぱり芝居ばっかりやっていると、音楽をやりたくはなります(笑)。逆もしかりです。両方ともいいバランスを保てていたとしたら......すごくノンストレスなんだろうな~。ただ "お芝居" だけをとっても、色々な作品がある。『ビリー・エリオット』みたいなパワフルな作品があれば、既存の音楽を使った『ジャージー・ボーイズ』のような作品もあり、『タイタニック』みたいな悲しい作品もある。色々やらせてもらえるのが、楽しいですね。僕個人としては、楽しい人生が送れている気がします(笑)」
●藤岡正明 Live Tour 2018(3/21-4/7 東京・大阪・福岡・愛知)
―― 今年の予定について、それぞれ伺わせてください。いまお話にも上がりました、久しぶりのライブツアーが3月にスタートします。ミュージカルの曲を歌うコンサートなどは開催していらっしゃいましたが、"ミュージシャン・藤岡正明"を前面に出すライブは久しぶりですね。先ほども2年半ぶりだと仰っていました。
「オリジナル曲をメインに、バンドでやろうと思っています。このライブをやって、新譜も作れたら......という気持ちもあります。本当は先にCDを作ってのリリースツアー、って流れだと思うんですが(笑)、とりあえず早くライブをやりたい!」
―― では、新曲もある?
「それはぜったいやります! 実は最近、新曲がけっこう出来ていて。未発表の曲だけで数時間のライブが出来ちゃうくらいです。でも、僕にしか出来ないことはやろうと思っていて、だからミュージカルナンバーも、僕なりのアレンジで何曲かやろうと考えています。何をやろうかなあ......。とりあえず『ビリー・エリオット』の曲は歌おうと思っています!」
―― おぉ!
「ただ単純に歌ってみたかっただけなんですが『electricity』をやろうかな、と。劇中ではビリーが歌いますが、(作曲の)エルトン・ジョンが歌ったバージョンなどもあり、それを聴いていると、やっぱりいい曲だなぁと思って。あのガキども5人が歌うより圧倒的にいい歌を歌ってやるぞ、と(笑)! ほかにも、色々考えていますよ」
●ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート(5/12・13 東京)
―― 5月にはコンサート版『ジャージー・ボーイズ』もありますね。2016年の日本初演でトミー役を演じていました。さまざまな演劇賞も受賞して『ジャージー・ボーイズ』旋風が巻き起こりましたが、おととしの公演はいかがでしたか?
「楽しかったです。シンプルにひと言「楽しかった!」」
―― トミー役、本当にピッタリでした。
「よく言われました、素なのかお芝居なのかわからないって(笑)。でもこのコンサートでは、トミー役者が3人いるでしょ、どうなるんでしょうね......。ただ僕は今年の再演には出演しませんから、ちょっとだけまた、あの『ジャージー・ボーイズ』の世界に戻させてもらえる機会をもらえて、やっぱり嬉しいです。基本的には僕、このコンサートで『ジャージー・ボーイズ』とはお別れしようと思っていますので」
―― そうなんですか! もし次の次の上演があったとしても......?
「いや、もし再々演があって、お話を頂いたらもちろんやりたいんですけど。それを期待してちゃダメだと思うんです。一回、自分のなかでバサっと切って、もうこの役は自分は出来ないものだ、って思わないと」
―― 藤岡さんの俳優としての美学、でしょうか。
「僕、『レ・ミゼラブル』に5年間出させていただいたんです(2005~2009年)。これが初舞台でしたし、特に最初の2年くらいは、"舞台俳優"デビューをしたというより、『レ・ミゼラブル』にしか出ていなかったんですよ。そういう意味では、『レミゼ』は自分のホームのような感覚があったんです。それで何年か出演が続いて、でもあるタイミングで終わりは来ますよね。「次回も...」というお話を頂けなかった時に、すっごく悲しくて寂しい気持ちになったんです。その時から、『レミゼ』に限らず、毎回これが最後のつもりで、もう出れないつもりでいようと決めたんです。もちろん再演できたらいいなとか、また出たいな、って気持ちはあるんですが、ひとつの作品はその千秋楽で「お別れするんだ」というつもりでいます。だから『ジャージー・ボーイズ』も、もうお別れしなきゃいけない気持ちでいたんですが、ちょっとだけこのコンサートでこの世界に戻させてもらって、それはやっぱり嬉しいなって思います」
★藤岡さんロングインタビュー、後編に続きます!
後編では『不徳の伴侶』『タイタニック』、そして『カラオケ☆バトル』のお話も......★
取材・文:平野祥恵(ぴあ)
●藤岡正明 Live Tour 2018"now and then"
3月21日(水・祝) 新宿FACE(東京)
3月24日(土) 大阪 THE LIVE HOUSE soma
3月31日(土) 福岡ROOMS
4月7日(土) 名古屋オキナワAサインバーKOZA(愛知)
●ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」イン コンサート
5月12日(土)・13日(日) 東急シアターオーブ(東京)
●朗読ミュージカル『不徳の伴侶 infelicity』
5月29日(火)~6月3日(日) 赤坂RED/THEATER(東京)
●ミュージカル『タイタニック』
10月上演予定
日本青年館ホール(東京)
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ(大阪)
■2月28日水曜日夜7:54放送
テレビ東京系「カラオケ☆バトル」出演