■ミュージカル「メリー・ポピンズ」特集(6)■
いよいよ開幕が近づいてきたミュージカル「メリー・ポピンズ」。3月4日(日)には浅田真央さん出演の特別番組(詳しくはこちら)も決定し、開幕に向けますますの盛り上がりを見せています!
げきぴあメリーポピンズ特集第6弾は、ジェーンとマイケルの父であるジョージ・バンクスを演じる駒田一さん、山路和弘さんの対談をお届け。家庭でも規律と秩序を重んじる、厳格な銀行員であるジョージ。「この2人がWキャスト?」と言われるというお2人それぞれの役に向けた意気込みをお伺いしました。
真面目な堅物だけではない、何かプラスアルファを出せたら(駒田)
堅い人物であればあるほど、表面的で、実は泣き虫だったりする(山路)
――『メリー・ポピンズ』との出合いは?
駒田 小さいころからもちろん映画は観ていましたし、曲自体すごく親しみがありますからね。でもまさか舞台になるとはこれっぽっちも思っていなくて。人が空を飛ぶ、なんてね。でもそれが現実となり、さらに自分が父親役をやることになるとは...。そういう年齢に僕もなったんだなと、今しみじみ感じています(笑)。
山路 僕は子供のころに映画館で観ているんですよ。特に具体的な記憶は残っていませんが、不思議な夢の世界に連れて行かれたなという感覚は強烈に覚えていて。そんな僕もなんと父親役、というかおじいちゃん役でもいいような年齢になってしまったことに、これは困っちゃったなと今少し焦っているところです(笑) 。
――オーディションは非常に長期間にわたったと聞きました。
山路 いやぁ、長かったですね。呼ばれる度に「また? もういいんじゃない?」と思っていましたから(笑)。
駒田 僕はこのマッキントッシュ・カンパニーの作品は3作目ですが、これまでの2倍、3倍は長かったですね。最後の方はもう楽しんでいたくらい(笑)。
山路 その境地までいった!?
駒田 ええ。これでダメならしょうがないし、やれることはやったなと。だから正直決まった時は、「本当にやるんだ!?」と驚きましたし(笑)、じわじわと喜びが込み上げてきた感じです。
山路 僕は何回目かのオーディションの時、「キチッとした格好を見てみたい」と言われたんですよ。で、たまたま『アンナ・カレーニナ』のカレーニンの衣裳を引き取っていたので、「これでどうだ!」くらいの気持ちで着て行ったんです。でも反応は芳しくなくて...。ついに終わりかなと思っていたらこうなったので、不思議なものですよね。
――演じられるジョージ・バンクスについて、現段階ではどんな人物として捉えていますか?
駒田 真面目な堅物という印象ですよね。でも僕がやるからには、それだけではない何かプラスアルファをうまく出せたらなと。もちろん演出家や稽古場の雰囲気にもよると思うんですが、ただ堅い人というのでは面白くないと思っていて。
山路 僕も堅い人物だとは思うんですけど、それって結局表面的なものだったりしますよね。堅い人物であればあるほど泣き虫だったり。うまくそのへんを出せればとは思っているのですが...、そういう自分の色みたいなことって、向こうのスタッフには許されるものですか?
駒田 正直な話、どんどんやった方がいいです。絶対に怒りませんし、必ず許してくれる。決めつけることは決してしないので。だから今回も、いろいろ試せる稽古場であると信じているんですけどね。
山路 なるほど。
――では駒田さん、山路さんならではのジョージとは、どういった部分に表れてくるのではないかと思いますか?
山路 それは自分ではわからないですね。周りには、「このふたりのWキャストっていうのもなかなかないですね」とはよく言われますが。
駒田 それ、僕もよく言われます。だからこそ面白いと思うんですよ。ある意味で本当のWキャストだと思うので。同じようなタイプの役者だと、僕なんか「どっちかでいいんじゃない?」と思ってしまうので(笑)。
山路 そもそも僕はプロになってから初のWキャストなんですよ。
駒田 あっ、そうですか!? 僕の中で山路さんってすごく渋い、ニヒルな印象があるんですけど、そういう意味でも赤と青くらいの違いが出るのかなと。さらにお互いの演じ方、お客さまの捉え方によってももちろん変わってきますから。
山路 僕は駒田さんがWキャストでいてくれることはすごく心強いですよ。稽古中も横にピタッと、ずっと寄り添っていきますので(笑)。
駒田 やめてくださいよ!(笑)
取材・文:野上瑠美子
撮影:イシイノブミ