【あの一家が再びやってくる!】『アダムス・ファミリー』特別連載(4) 稽古場レポート

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■『アダムス・ファミリー』特別連載(4)■


10月28日(土)にKAAT 神奈川芸術劇場 ホールで開幕するブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』10月中旬の某日、その稽古場を取材した。

※稽古場写真は、取材日とは別日のものです
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本番までまだ1週間以上ある中だったが、カンパニーの姿はすでに、実際に作品を上演するKAATのステージの上。この日は「衣裳付き・オケ付き通し稽古」だ。舞台化粧をしている・していない、は人によってまちまち、照明は素明かりではあったが、本番同様の動線、オーケストラもついた本番同様の迫力の歌唱で進められる。開幕を告げる「本ベル」の音も、本番と同じものに違いない。このベル、いかにもゴシック・ホラー的な、いわくありげな鐘の音。憎い演出に、いやがうえにも期待が高まる。

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物語は、NYセントラルパーク内の屋敷に住むお化け一家「アダムス・ファミリー」の面々が主人公。縦縞のスーツをピシっと着こなした一家の主・ゴメス(橋本さとし、その妻モーティシア真琴つばさ壮一帆のWキャスト ※取材日の通し稽古は真琴つばさ)、長女のウェンズデー(昆夏美長男パグズリー(庄司ゆらの、ゴメスの兄フェスターおじさん(今井清隆グランマ(梅沢昌代、そして執事ラーチ(澤魁士。あの(!!)、おなじみのBGMととともに登場する彼ら、インパクト大、怪しさ200パーセント、そして映画やアニメのイメージそのままのキャラクター造形! オープニングから、一気にテンションMAXである。

ゴメス役の橋本さとしは粋で派手、でもちょっと胡散臭いイタリアンマフィアのような風貌。しかし妻と娘の間に挟まれオロオロする姿がキュートな、愛すべきパパ。合いの手のように時折入る笑い声もアメリカンテイストで、すっかりキャラクターになりきっている。普段の橋本の明るく楽しいキャラクターともあいまってとても魅力的、まさに当たり役であろう。その妻・モーティシアを演じる真琴つばさは、初演時に「完璧」との呼び声も高かったが、そのスタイルの良さは、映画版というよりはアニメ版に近いほど、人間離れした美しさ。低めの声で夫に詰め寄る姿も迫力いっぱいで、観ていて楽しい。
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長女のウェンズデーは、ディズニー映画『美女と野獣』ヒロイン・ベルの吹き替えで一気にお茶の間までその名を広めた昆夏美。真っ白い肌に漆黒の髪をお下げにした上目遣いの少女......これまた、完璧である。しかしこの作品では彼女、人間の男の子に恋をする。"一風変わった子"が、恋をして戸惑ったり、臆病になったり......という"普通の女の子"の感情で揺れ動くさまを、きちんと描き出しているのはさすが、ミュージカル界が誇る若き実力派。そして弟のパグズリーは、オーディションでこの役を掴んだ女子高生・庄司ゆらの。完璧な外見、そして美しいソプラノ(パグズリーとして歌うと、それは"ボーイソプラノ"として聴こえるのだ)、ぜひ本番でその姿を楽しみにして欲しい。また特筆したいのが、フェスターおじさんの今井清隆。巨漢で禿頭、目の周りを黒ずませた異様な出で立ちながら、月に恋をするロマンチックな彼を、今井がチャーミングに演じている。歩き方、手の動かし方、どこを切り取っても可愛らしい! グランマ、ラーチ含め、アダムス家に扮する皆さんがあまりにぴったりで、そこに立つだけで笑いがこみ上げてくる絶妙さだ。
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物語は、長女ウェンズデーが人間の男の子・ルーカスに恋をし、ルーカスの家族であるバイネッケ家とアダムス家が交遊のために開催する食事会にまつわるこもごもを中心にコミカルに展開していく。バイネッケ家はルーカスに村井良大、母アリスに樹里咲穂、父マルに戸井勝海という顔ぶれ。初演からキャスト一新、ニュー・バイネッケ家となったが、彼らもまたユニーク! 一見、お化けのアダムス家に対し、人間のバイネッケ家はまっとう......かと思いきや、変わり者感満載。村井のルーカスは、Sっ気のあるウェンズデーに振り回される気弱さがありつつ、一線を越えたら突如動かなくなるような頑固さがあって、面白い。近年途切れることなく舞台に出演している村井、説得力のある立体的なキャラクターを作り上げていて、着実にキャリアを重ねていることが舞台から伝わってくる。母親のアリスは、普通ではないアダムス家に眉を潜める常識人......のようで、彼女自身も突如ポエムを読んだりという変わったところがあるのだが、樹里はそんなちょっとKYな奥さまを、ノリ良くはっちゃけて演じていて楽しい。戸井も、現実に疲れ、昔抱いていた夢を忘れてしまったサラリーマンが見たら共感するに違いない男の哀愁を、色気とともに描き出していた。ニュー・バイネッケ家の3名も、アダムス家に負けじとそれぞれのキャラクターをイキイキとパワフルに演じていたのが印象的。ちなみに出番ではない間、客席で並んで舞台を観ていた姿も「家族感」があって微笑ましかったことを追記しておこう。

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音楽も、ジャズテイストなものからタンゴ、そしてロックと多彩で、耳に残るものばかり。実力派揃いのキャストは歌声も抜群、クセになりそうなミュージカルである。ちなみに、日本の演劇界では一般的には「通し稽古」は稽古場で行われることが多い。本番同様の環境で「通し稽古」が出来る『アダムス・ファミリー』、作品創作としてこの上ない環境だ。そしてそのことが、確実に作品の充実にも繋がっていくに違いないと思わせる完成度の高さがすでに見て取れる、この日の稽古だった。
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なお、このミュージカルが上演されるのは、作品にぴったりなハロウィン・シーズン。中でも10月29日(日)、31日(火)、11月1日(水)(各14時開演)の3ステージは「ハロウィン特別企画」として様々なイベントが用意されている。公式サイトを要チェックだ。

※公式サイトはコチラ
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取材・文:平野祥恵(ぴあ)
撮影:二石友希


【バックナンバー】
#1 顔合わせレポート
#2 真琴つばさ・壮一帆・樹里咲穂インタビュー
#3 初日目前!フォトコールレポート

【公演情報】
・10月28日(土)~11月12(日)
 KAAT 神奈川芸術劇場 ホール(東京)

・11月18日(土)・19日(日)
 豊中市立文化芸術センター 大ホール(大阪)
・11月24日(金)・25日(土)
  富山 オーバード・ホール

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