8月1日に初日の幕が上がった大竹しのぶ主演のミュージカル「にんじん」。前日にはゲネプロ、囲み取材が行なわれ、出演者が登壇した。 自身が22歳で演じた役を、60歳となる今、また演じることとなる大竹しのぶ。個性豊かな豪華出演陣がそろい、また演出は大竹しのぶが信頼を寄せる栗山民也が務める。今作は世界中で愛されているジュール・ルナールの児童文学「にんじん」を原作にしたミュージカル。フランスの片田舎を舞台に、"にんじん"と呼ばれる真っ赤な髪の少年を取り巻く家族の物語は1979年8月に日生劇場で大竹しのぶ主演で初演された。そして今年還暦を迎える大竹が、「もしこれまでに演じた役でもう一度演じるなら?」と聞かれ希望したのがこの"にんじん"だ。
囲み取材には大竹しのぶ、中山優馬、秋元才加、中山義紘、真琴つばさ、今井清隆、宇梶剛士、キムラ緑子が登壇。フォトセッションから大柄な宇梶が小柄な大竹を気遣ってかがんだり、後ろに下がったりと、作品とは違った仲のよい空気が。 会見では14歳を演じることについて聞かれると、「この格好("にんじん"の衣装)で普通に答えるのがいたたまれない......」と照れながら答える大竹に対して中山優馬は「本当にかわいいです」と即答。「お芝居の中では兄役としていじわるなこともさせてもらっていますが、稽古中はもちろん弟ですし、お芝居以外でも本当に少女のような方です」(中山優馬)と話し、これには大竹も思わず笑いが。続けてキムラも「ご本人は稽古場で『おばさんに見えなかった?』と気にしていましたけど、もう全然!最初から14歳の少年に見えました!」と太鼓判。また真琴も大竹の"にんじん"について「おそろしいほど純真無垢な少年の瞬間がある」と話し、「その一瞬、一瞬が"にんじん"の魅力だなと、ハートを掴まれます」と絶賛した。
改めて大竹は自身の役について「この作品が大好きなので、演じている間は全て忘れて"にんじん"としてやれるのですが、終わった後に『何やってるのわたしは......』と思って、その気持ちとの戦いです」と話し、笑いを誘った。
また今作で脚本・作詞を務めた山川啓介氏が7月26日に亡くなったことにも触れ、「この作品は、みんなそれぞれ愛を求めてきて、それがとても良く表現されているお話。今回栗山さんがより深く演出をしてくださっており、山川さんがきっと見てくれたら、喜んだだろうなと思います」(大竹)、と「にんじん」の世界を作り上げた故人を偲んだ。
最後に同作品について「38年前に演じたお芝居が、このメンバー、そして栗山さんの演出によって新しくすばらしい作品になって生まれ変わりました。劇場で、大人同士でも、こどもと一緒に家族でも、恋人同士でも、この繊細で元気の出る作品を観ていただけるといいなと思います。みんなでがんばります(大竹)」と意気込みを語った。
会見後のゲネプロでは、村人が歌い踊るオープニングからスタート。38年の時を経たことで、よりにんじんへの理解を深め、舞台上でその世界観を作りだす大竹の姿は"14歳のにんじん"そのもの。会見で今井清隆が「(共演していた「フェードル」で大竹が)こないだまでギリシャの王女様を演じていたので、振り幅がすごいなと。作っているのではなく、役が内から湧き出でてくる感じがあります」と語った通り、大竹しのぶ演じる"にんじん"、ではなく、14歳の"にんじん"が舞台上にいる!という感動が。
そして舞台を彩る一度聞けば耳に残る音楽、思わず口ずさんでしまう歌詞は、38年前に作られたものとは思えないほど色あせないきらめき、迫力があり、"にんじん"たちの住む世界へ引き込んでくれる。 60歳の大竹が演じる14歳、愛を渇望する少年の物語はぜひ劇場で。
東京公演は新橋演舞場にて8月1日(火)~27日(日)、大阪公演は大阪松竹座にて9月1日(金)~10日(日)。チケットは好評発売中。