宝塚歌劇に関する本も多数執筆している演劇ジャーナリスト・中本千晶さんの新刊『宝塚歌劇に誘う7つの扉』(東京堂出版)が、10月に発売になりました。
こちら、「『ベルばら』『男役』『羽根』だけではない もうひとつのタカラヅカ100年史!!」とのことで、7つの舞台ジャンル(歌舞伎・歌劇・レビュー・バレエ・日本舞踊・ミュージカル・2.5次元)と、宝塚歌劇との関わりを探る一冊になっているとのこと。
近年、名作映画やゲーム、そして国民的アニメなど、意外性のある他ジャンルを意欲的にミュージカル化、しかもことごとく好評を得ていて、宝塚という舞台芸術の懐の深さを感じるのですが、思えば宝塚は、そういった「他ジャンル」を上手く取り入れ、宝塚の舞台に昇華していった歴史を積み重ねているんですよね。
本書は、そんな宝塚の歴史のみならず舞台芸術の歴史をも俯瞰する1作になっています!
...というか、目次(下記参照)を眺めるだけで、とても興味をそそられる...と、思いませんか!?
さて、著者の中本千晶さんから、げきぴあユーザーの皆さんにメッセージを頂きました!
歌舞伎のアンチテーゼとしてスタートしたタカラヅカは、その100年の歴史の前半では、歌劇(オペラ)、レビュー、バレエといった欧米の舞台芸術を取り入れるための実験場としての存在でもありました。それぞれのジャンルが日本でひとり立ちしたとき実験場としての役割は終えるわけですが、その頃にはタカラヅカもまたそれぞれのエッセンスを取り込みタカラヅカ流に消化してしまっているわけです。
100年の歴史の後半は、取り込み消化したものを土台にしつつ、ミュージカルという新たな様式と向き合い続けた50年でした。そして今、まさに旬の「2.5次元」の世界とタカラヅカがいかに向き合っていくのかにも注目したいところです。
私自身、本書の執筆を通じてタカラヅカの懐の深さに圧倒されました。この思いはきっとファンの皆さまにも共感していただけると思います。また、これからタカラヅカの扉を開けてみようと思われている皆さまにとっては、本書が良き道案内の役割を果たせれは嬉しいです。
――中本千晶
<本書の目次>
◆第1の扉 タカラヅカ × 歌舞伎
男役vs歌舞伎の女形?/始まりは「イージーゴーイング」から/小林一三が目指した「国民劇」とは?/「演劇改良運動」にさらされる歌舞伎/「松竹」の誕生/「ベルばら」も歌舞伎の落とし子だった?/進化する「男役」/「男役芸」と学校制度
◆第2の扉 タカラヅカ × 歌劇
「宝塚歌劇」なのに歌が?/「洋楽」にこだわったタカラヅカ/帝劇の失敗作オペラを観た一三は?/「浅草オペラ」とタカラヅカ/「歌劇」から「オペレッタ」「ミュージカル」へ/今、再び宝塚「歌劇」
◆第3の扉 タカラヅカ × レビュー
宝塚歌劇なのに「Takarazuka Revue Company」?/4000人劇場、作ってはみたけれど/日本中がレビューに沸いた時代/小林一三の危機感/レビュー時代のライバル「松竹歌劇団」/「日劇レビュー」はアンチ・タカラヅカから/SKDと日劇レビューその後/タカラヅカが生き残れた理由/転機を迎えるショー・レビュー
◆第4の扉 タカラヅカ × バレエ
バレエと「タカラヅカ・ダンス」/バレエ激動の時代にタカラヅカは生まれた/タカラヅカで「バレエ」上演?/「男役」を魅せるダンスへ/そして黒燕尾群舞/タカラヅカ・ダンスのこれから
◆第5の扉 タカラヅカ × 日本舞踊
「日本物」復活の兆しの中で/オーケストラに合わせて日舞を踊る?/「タカラヅカ日舞」を極めた天津乙女/創成期は「新舞踊」の実験場だった/「温泉」テーマのレビュー?/日本物へのあくなきこだわり/渡辺武雄と「郷土芸能研究会」/「火の島」を見てみた/「ネオ日本物」の時代へ
◆第6の扉 タカラヅカ × ミュージカル
タカラヅカ100年、ミュージカルも100年/駆け足・ミュージカル史/初の国産ミュージカル「モルガンお雪」/東宝ミュージカル」の誕生/脱「ヅカ調」を目指した菊田一夫/「オクラホマ!」への挑戦/「四季」そして「レミゼ/「エリザベート」開幕!/オリジナル・ミュージカルの発信源として
◆第7の扉 タカラヅカ × 2.5次元
何故ここで「2.5次元ミュージカル」?/始まりは「ベルばら」から/原作派vsミュージカル派/発揮されるタカラヅカの底力/タカラヅカは「2.4次元」/「2.5次元ミュージカル」が消える日?/「夢の世界」の行く末