宝塚歌劇宙組公演『王妃の館 -Chateau de la Reine-』『VIVA! FESTA!』の制作発表が10月26日、都内にて行われました。
ひとあし先に<チケットぴあニュース>でもお伝えしたこの会見、げきぴあでは詳細レポートをお届けします。
先月まで『エリザベート』を上演していた宙組。
小川友次 歌劇団理事長によると「やはり(人気作の)『エリザベート』の後なので、どんな作品が相応しいか皆で考えた。そんな中、朝夏が以前『メランコリック・ジゴロ』でジゴロを演じた時、彼女はコメディも上手い、と感じたので、このアイディアが出てきました」ということで、この作品になった...とのこと。
つまり『王妃の館 -Chateau de la Reine-』、コメディです。
原作は人気作家・浅田次郎による小説。
水谷豊主演で映画化もされていますね。
会見は、宙組トップコンビ、朝夏まなとさん&実咲凜音さんによるパフォーマンスからスタート。
ふたりの衣裳のインパクトもさることながら、なんだか醸し出す空気感が...すでに面白い!
朝夏さんが演じるのは、セレブ気取りの恋愛小説家・北白川右京。
そして実咲さんは、弱小旅行代理店の女社長 兼ツアーコンダクター、桜井玲子を演じます。
場所はパリ。ツアーコンダクター桜井さん、なにやらトラブル発生?
...というより、トラブルの元といいますか...。
実は経営難に陥ってる高級ホテルとタッグを組み、高額の"光ツアー"と格安の"影ツアー"、それぞれに同じ客室を利用させるというダブルブッキングツアーを敢行しているのです!
さて、このツアー、どうなりますか...。
しかし朝夏さん扮する北白川右京、インパクト大です!
このパフォーマンスを観た浅田次郎さん、
「素晴らしいですね。...正直、あれ(短いパフォーマンス)だけじゃわからないですけれども(笑)! 自分の作品がこうやって舞台化されたり映像化されたりする時はいつもドキドキするんです。自分の作品なんですが、自分の手を離れた、嫁に出した娘がどれだけ幸せになっているかという感覚なんですね。今はカーテンの隙間から垣間見たくらいの感じでドキドキはしていました」との感想を語り、
また北白川右京については、ご自身と同じ"小説家"ということで...
「いま舞台で拝見して、すごく羨ましく感じました。私はわりと地味なので、こういう小説家に早いうちになっておきゃよかった、と。デビューしたときのボタンの掛け違いでしょうか、あの時にカツラを被っておけば...もっと派手なファッションにしておけば...、方向も違ったのかもしれません(笑)。でも作家は本当はこう(朝夏さん扮する北白川のよう)でなきゃいけないんですよ(笑)」
とユーモアたっぷりに話していらっしゃいました。
その浅田さん、
「今まで宝塚さんとはご縁がなくて、実は舞台を観たことがなかったんです。ミュージカルが好きなので興味はあり、一度観てみたいと思ってはいたのですが、どうも男ひとりで行くのが気がひけ、かといって男ふたりで行くのももっと気が引ける。そうかといって女性編集者に宝塚が観たいとも言い出せず...(笑)。そんな中、望外なことに『王妃の館』の舞台化ということ訊き、躍り上がって喜んだ次第です。
この『王妃の館』という小説は、お笑い小説です。私は世間では(『鉄道員』などのイメージで)「お涙作家」と言われていますが、実は本当はお笑い作家なんです。この『王妃の館』は徹頭徹尾、おやじギャグをちりばめた不思議な小説。普通お笑いというのは長編では持たないのですが、これは上下2巻の大変長いお笑いとして仕上げました。こうした形で舞台化されること、大変喜ばしく思っています。今から楽しみでなりません」とご挨拶。
その『王妃の館』を演出するのは、田渕大輔さん。
今夏上演された『ローマの休日』も好評でした。この作品が大劇場公演デビューです。
「宙組で朝夏・実咲主演の新作を大劇場で...というお話があった時、私もぜひふたりと一緒に新しいコメディ作品に挑戦したいなという思いがありましたところ、浅田先生の『王妃の館』をミュージカル化させていただく機会を頂きました。作品の力をお借りして、ふたりの新しい魅力をお客さまにお届けできるような作品を作っていけたらいいなと思っています。浅田先生の作品の中にある独特の、キャラクターの濃い、一癖も二癖もある登場人物の群像劇の中、主人公のふたりが何かを見つけていくというストーリーで台本を執筆している最中です。私自身が作品を拝読したあとに感じた、心の中に温かいものが残るような思いを、お客様にも感じていただける作品にできれば」と意気込みを。
具体的なプランとしては「宝塚歌劇での作品では、テーマが男女の愛にフォーカスされていくところが、原作と一番違うところになる。浅田先生はお笑い小説と仰いましたが、コメディの中で描かれている"大事なものを守るために何かを犠牲にする愛"というものを、宝塚ならではの男女の愛として、それをまたコミカルな中に集約させていければ」と語りました。
また、ショー『VIVA! FESTA!』の演出は中村暁さん。
宙組にとっては約1年ぶりのショー作品!
「2017年は『モン・パリ』誕生90周年です。宝塚歌劇にとって『モン・パリ』というレビューは大切なもの。『モン・パリ』は大階段やラインダンスを初めて取り入れ、レビューのスタイルを作り上げたスゴい作品なんですが、その大切なレビューを記念する年にやる公演ということで、『スーパー・レビュー VIVA! FESTA!』を企画しました。大それたサブタイトルをつけましたが、新しいレビューにしたいという意味です。朝夏まなと、実咲凜音を中心に、宙組の出演者全員が躍動する舞台を作り上げたいと思っています」と話されました。
朝夏まなとさんは次のように挨拶。
「つい10日前まで(『エリザベート』で)黄泉の帝王として君臨していましたが、10日後にはこのようにショッキングピンクのスーツを着て、北白川右京として皆さまの前に立って...とても緊張しました(苦笑)。今回、宙組にとっては約1年ぶりのオリジナル作品2本立て。『王妃の館』は、私も『メランコリック・ジゴロ』の時にコメディの楽しさをすごく感じたので、大劇場でコメディ作品に挑戦できるのがとても楽しみです。この素晴らしい小説を皆さまに喜んでいただける舞台としてお届けしたいと思います。
そしてショーは、(自身がトップになってから)『HOT EYES!』に続き2作品目です。今の宙組の魅力を存分に発揮できるよう、引っ張っていきたいと思います。お芝居にもたくさんの濃いキャラクターが出てきます。お芝居もショーも魅力存分に、お客さまに楽しんでいただける舞台をお届けしたいと思います。
そしてこの作品は実咲の退団公演でもありますので、最後までいい舞台を一緒に作りたいと思います」
こちらは実咲凜音さん。
「今回はミュージカルコメディとショーの2本立てということで、今からとても意気込んでいます。(宝塚での)最後の公演となりますが、お芝居の方では今までにない役どころ。新しい自分をお見せできるよう頑張りたいと思います。また私は宝塚に入る前、客席から観ていて、とてもショーに憧れて感動したのを覚えていますので、観にきていただいたお客様にも同じ思いをしていただけるような、楽しい、素晴らしい、華やかなショーをできるようにしたいです。朝夏さん率いる宙組の皆さんと一緒に作り上げる時間、一瞬一瞬を大切にして取り組んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」と、退団作品への思いも込めて話しました。
と、人気の浅田次郎作品を原作にしている点、コメディ作品である点、ショーも記念すべき年に上演される新作である点、実咲さんの退団公演である点...と、話題盛りだくさんの2作品ですが、質疑応答でも多岐にわたる質問が飛びました。
まず、宝塚歌劇団の印象を問われた浅田さん。
「このあいだ『エリザベート』を拝見したんです。目からうろこという感じでした。素晴らしいなぁと。特に、伝統的なものを強く感じたとところが好もしかったですね。やはり伝統というものを基盤にしながら、新しいものを作っていくという、そのスタイルが素晴らしい。(女性が男性を演じる抵抗は)全然なかった。むしろ、それが別世界の感じがしてすごく良かった。これが『王妃の館』となると、『エリザベート』とは違って現代の話になるので、今から想像がつかないんだけど...」との評価!
また自作の宝塚舞台化に際しての注文は
「僕は一切、どのような時でも注文はつけません。そりゃ、"嫁に出した父親"ですから。相手の家にこうせいああせいと言うのは、ダメでしょう(笑)! ...ダメというよりお任せ。お任せして楽しみにしています」
とのことでした。
そしてコメディ作品への挑戦となるトップコンビには、コメディの難しい点と楽しい点、またお互いのどういう面がコメディに向いていると思うか...という質問。
朝夏「コメディの難しいところは、狙っちゃいけないところ。自然になるまで、身体にたたきこむのですが、お稽古ポロっといったひと言の間が面白かったりする。それがわりと自分の意図しているところと反していた方がウケが良かったりもします。そういう予測できないところが難しくもあり、それが上手くいったときの楽しさ、嬉しさがあります。それはコメディならではじゃないかな。実咲は...普段の彼女が出れば面白いと思います(笑)」
実咲「普段の自分...はい、出せるように頑張ります(笑)。でも狙ってはいけないという朝夏さんの言葉のとおりで、真剣にマジメに、本気でやればやるほど、それがお客様には面白く楽しく映ったりする。そこは難しいところでもあり、また舞台でお客さまの笑い声や反応を感じることによって、コメディ作品は楽しめるんだなと感じます。そこが楽しいところです。
朝夏さんは、普段から今日のように楽しいお話をしてくださり(笑)、ポロっと言ってくださる言葉に救われたりしています。コメディもベテランなので...ついていけるように頑張りたいです」
演出家の両先生には、朝夏さんと実咲さんのどういった魅力を、この作品で引き出すかという質問が。
田渕「今の発言にもありましたように、朝夏さんは笑いに結構ストイック(笑)。でも稽古が終わって、休憩所でも小ネタをちょいちょいかましているところをよく見て、笑わせてもらっています。それにとても"陽"のオーラを持っているスターさんで、何かをキャッチして投げる瞬発力に関してはピカイチ。実咲も関西人ですし、彼女の素が出ると本当に面白くなるなと思います。実はふたりのオフの会話をぜひ聞いていただきたいくらい(笑)。丁々発止のやりとりが面白いんです。今回は設定も現代ですので、(普段の)ふたりに近い、そういうやりとりを楽しんでいただけたら」
中村「朝夏さんは大きな瞳に優しさと強さが同居している。そういう優しさと強さ、明るさと激しさ、強さといったようなものが、レビューの舞台で活かすことが出来たら。宙組80数人率いての歌、ダンスになりますので、そういうところで、レビューのダイナミズムを感じさせてくれたら。
実咲さんは下級生の花組時代、『麗しのサブリナ』で初めて新人公演のヒロインを演じ、その時に"堂々とやりきった感"を見せてくれました。今回も、関西人の「やるぜ」というものをしっかり見せていただければ」
また、ご挨拶にもありましたように、今作が退団公演となる実咲さん。
「今日、このように舞台でパフォーマンスをし、とてもコメディの難しさを感じました。最後の公演といってもまだまだ課題はたくさんあるなと感じました。朝夏さんは本当にお芝居心があって、一緒に舞台に立っていても、毎日違う感情を出されている。いつもそのお隣で学ばせていただくことがたくさんありましたので、少しでも吸収して、最後の公演ももっともっと、新しい一面をお見せできるようにしたいです。そして宙組の作品のひとつの力となれるように、最後まで頑張りたいなと思っています」と最後の公演へ臨む気持ちを。
その実咲さんに対し、相手役として朝夏さんは
「いつも言っているのですが、より良い作品を作り上げるというのが私たちのテーマ。退団公演ですが、作品を作る上では妥協せず、いつもどおり、いいものを作れるように頑張りたいと思います。彼女の集大成なので、何かを下級生に伝えていってほしいですし、娘役として立派な花を咲かせてほしい」とエールが贈りました。
宝塚歌劇宙組公演『王妃の館 -Chateau de la Reine-』『VIVA! FESTA!』、2本とも楽しみですね!
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
2月3日(金)~3月6日(月) 宝塚大劇場(兵庫)
3月31日(金)~4月30日(日) 東京宝塚劇場