『オペラ座の怪人』『キャッツ』などを生み出し、現代ミュージカル界の巨匠として君臨するアンドリュー・ロイド=ウェバー。1967年当時、学生だった彼と、『ライオンキング』『アラジン』などを手がけた作詞家ティム・ライスが初めてコンビを組んで作ったミュージカルが『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』です。(その後、このコンビは『ジーザス・クライスト=スーパースター』『エビータ』などヒット作を生み出しています)
作品は、旧約聖書の「ヨセフ物語」を元に、"夢は叶う!"というメッセージが込められた爽快感溢れるもの。
これを、いまブロードウェイで最も人気がある演出・振付家、アンディ・ブランケンビューラーが手がけた新演出版が、日本に初上陸します!
この作品の応援サポーターに、ロイド=ウェバー作品にも縁の深い石丸幹二が就任。
4月12日、その就任イベントが開催され、石丸さんが作品の魅力を語りました。
カラフルなネクタイで登場した石丸さん。
「テクニカラーの迷彩柄です。この作品に相応しいんじゃないかと!」と笑顔。
MCの小松靖アナウンサーから、「テクニカラーってあんまりなじみがない言葉ですが、映画がカラー作品になったときに"テクニカラー"って呼ばれたんですって」という説明が。
●石丸さんとロイド=ウェバー
――石丸さんはロイド=ウェバー作品でデビューされた
「そうなんです、ロイド=ウェバーの『オペラ座の怪人』のラウル子爵という役でデビューしました。25年ちょっと前でしょうか。劇団四季では何回も再演するシステムですので、かなりいい年齢までその役をやっていました(笑)。ですからロイド=ウェバーにはなじみがあります」
――石丸さんにとってロイド=ウェバーはどういう存在?
「音楽でも色々なものがありますが、舞台芸術としてのミュージカルに初めて出会った作曲家がロイド=ウェバーでした。特に『オペラ座の怪人』はクラシックに近いので、私は東京藝大でクラシックを勉強してたのですが、そこで勉強してきた技術ををすっかり使える、歌いがいのある曲がある作曲家。かつ、聴いた人の耳に残る音楽を書く作曲家でもあります。この『ヨセフ~』でもそうです。劇場から帰るときに口ずさんでしまう、そんなナンバーをたくさん書く作曲家です」
――ロイド=ウェバー作品は、演じる側の心持ちは違うものですか?
「実は歌ってる側としては難しいんです。音の幅がとても広かったり、テクニックが要求されるんですね。でもそれを歌いこなせば聴き応えのある歌になる。歌い手泣かせで、聴き手には非常に親切な曲です」
●石丸さんが語る、『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』の魅力
――石丸さんは『ヨセフ~』をご覧になっていますか?
「私が初めてロンドンに行った、1991年の時に観ました。当時大スターだったジェイソン・ドノヴァンさんがヨセフをやるということで、客席は彼を応援している若いお嬢さんや、その演出では小さな子どもたちが大勢出ていましたので、そのお友だちの子どもやお父さんお母さん、老若男女が居る中で私も混じって観ました。ヨセフが上半身ほとんど裸で、女の子たちはほとんど黄色い声でしたね。劇中ずっとキャーキャー客席が言っている。ヨセフは参加型のミュージカルだと思います。手拍子したり、最後は立ち上がってもいいと思います。誰が見ても楽しめる作品です。あと印象に残ったのは衣裳。ヨセフの着るマントはテクニカラーなのですが、それに負けない出演者たちのコスチュームにもびっくりしました。"本物を見た"と思いました」
――色々な世代の方が楽しめる、というのがポイントですね。
「もともと聖書の話でもありますので、あちらでは皆さんよくご存知なんです。12人いる兄弟の11番目の男の子(ヨセフ)が兄弟にいじめらるのですが、でも最後はほかの兄弟に愛を与えて許しあって戻ってくる、非常に家庭的な話でもある。そのプロセスも見応えがあります」
――音楽的にはどうでしょう。
「曲目をみると、色々なジャンルのものが入ってる。しっとりとしたバラードからロック、プレスリーが歌うようなロカビリーなものとか、カリプソとか。音楽の百科事典みたいな感じ。ロイド=ウェバーとはこれです!という...まさしく、ロイド=ウェバーらしいミュージカルだと思います。ぼくは『Any Dream Will Do』というナンバーが好きなんですが、たぶんこれ、みんな劇場出るとき口ずさんじゃうと思いますよ。あとは『Songs of the King』というものが、プレスリー調の曲なんですが、これがまた笑えちゃう。僕が見たバージョンではプレスリーのような格好をして歌っていました。今回どんな演出になってるのかそれも楽しみです」
●今年トニー賞をとるか!? 今もっとも注目を集める気鋭の演出家、アンディ・ブランケンビューラー
――新演出を手がけているブランケンビューラーさん、今NYではすごい人気らしいですね。彼の作品『ハミルトン』は2016年でトニー賞を一番の注目を集めるとの前評判で、オバマ大統領ファミリー、ビヨンセ、ジュリア・ロバーツなどセレブがこぞって劇場に足を運ぶほどの社会現象を起こしている。
「ひょっとしたら今年トニー賞を受賞するかもしれないというくらい、注目されている演出家でありダンサーです。その旬の人の演出、振付を日本にいながらに観られるというのも、こんなに貴重なことはない。しかもきっと楽しめるものになっています。自分だけじゃなく、好きな人や家族、一緒に盛り上がってもらえればいいですね」
――ダンスも見どころです。
「今のNY、ブロードウェイの最先端の技術を駆使した演出、踊り、ここが見どころになるはず。私もまだ新演出版は観ていないので、楽しみにしているところです。おそらく客席のみなさんも立ち上がりたくなるんじゃないかな。最後はスタンディングオベーションをしながら、一緒に盛り上がれる、そんなショーになるはずだと思います」
――巨匠のロイド=ウェバーと、新進気鋭の演出家ブランケンビューラーのコラボというのもすごい。
「作曲家と演出家の年齢が20歳くらい離れてる、この世代を超えたコラボレーションが面白いと思うんですよね。でも古典と最新のものがあわさってもミスマッチにならないのは、やはりロイド=ウェバーが書いたものがホンモノなんですよね。それに、音楽の要素は様々なジャンルのものがありますので、振付家としても、振付しがいのあるものなんだと思います」
●石丸さんの思い入れのあるロイド=ウェバー作品
――石丸さんは数々のロイド=ウェバー作品に出演されていますが、思い入れのある役、作品は?
「『オペラ座の怪人』の次に出た作品が『アスペクツ・オブ・ラブ』という作品で、当時の日本では「金妻」とかが話題になって、「不倫というものがあるんだ...」というものが囁かれていた中、大々的に不倫をするミュージカルだったんです(笑)。私は不倫に巻き込まれる役を演じましたが、作品の完成度の高さと、世の中ってこんなに悪いことがあるんだということを、実生活じゃなく、テキストから知った、衝撃的なミュージカルで忘れられませんね(笑)。世の中の方から大ブーイングを受けました、あなたはそういう生き方をしちゃいけない!と。いや私じゃなくてそれはこの役ですから(笑)」
――僕「Love Changes Everything」が大好きなんです。いい歌ですよね!
「♪恋のさだめは出会いと別れ...♪すごいでしょ?最初からそう言うんです、そういう作品なんです。だから恋しなさいという、いい話です。...いま、もう一度この作品観てみたいなと思いました。それくらいメロディもすごくキレイなんですが、ロイド=ウェバーって素晴らしい曲を書きますよね」
――ドラマにみちあふれている音楽です。
「彼は劇的なものを題材に選ぶんです。『ヨセフ~』もそうです。子どもも楽しめるように作っていますが。『オペラ座の怪人』だって『サンセット大通り』だってみんなの心を打つ。そんな作品を選んで作曲しています」
●石丸さん、実はヨセフをやりたかった!?
――『ヨセフ~』の作品、どこに一番共感しますか
「ひとに信じてもらえなくて、思い悩んで、思いのたけをせつせつと語るようなシーンがあったり、親子の和解のシーン、兄弟の和解のシーン、とても身近なものに僕はすごく感じ入ります。逆に、兄弟たちの勝手な言い分もあって、そこのシーンも非常に面白いんです(笑)」
――もし石丸さんが出るとしたらやりたい役は?
「そりゃ、ヨセフですよ~! 今はもう無理ですけど。観た当時、ヒーローとはこういうものなんだと思ったんです。僕はミュージカルをはじめたばかりだったので、こんな風に堂々と歌を歌ったり演技したりするんだなと思ってみながら、自分もヨセフに心を寄せていました。当時はヨセフをやれたらいいなと思っていました」
取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)
【公演情報】
7月13日(水)~24日(日) 東急シアターオーブ(東京)
【石丸幹二出演情報】
ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
・10月 赤坂ACTシアター(東京)
・11月 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
▽「ヨセフっぽいポーズを!」と言われた石丸さん。こんなポーズになりました。