3月25日(金)に東京芸術劇場シアターイーストで開幕する、ニューミュージカル『Color of Life』。
日本では初めて上演されるこの作品は、2013年にオフ・オフ・ブロードウェイの国際演劇祭で最優秀ミュージカル作品賞、最優秀作詞・作曲賞、最優秀演出賞、最優秀主演女優賞の4部門を受賞した話題作でもあります。Theatre Polyphonicの主宰であり、蜷川幸雄さんの演出助手でもあった石丸さち子氏が作・演出・プロデュースを務める2人芝居のミュージカルです。
ニューヨーク初演より。和也(左)は今作でも作曲・編曲を担当する伊藤靖浩氏が演じた
<ストーリー>
男(和也)は画家。大震災を機に、画題を見失ってしまった。
女(レイチェル)は女優。心から愛した同性の恋人と死に別れたばかり。
二人は、飛行機で偶然隣りあわせになり、惹かれあい、NYの彼女の部屋で一緒に暮らし始める。二重国籍で同性愛者の彼女と、絵を描くこと以外に世界とつながる方法のなかった彼は。相手に向き合い、自分と向きあっていく。パレットの上で混じりあう絵の具のように、人生が響き合い、新しい色が生まれていく。
でも。やがて観光ビザの決めた90日の猶予が近づいてきて......。
出演者は2人だけ。日本初演となる今作では、和也とレイチェルを、【First Cast】上口耕平さん×AKANE LIVさん、【New Cast】鈴木勝吾さん×はねゆりさんという2組のキャストで上演されます。
というわけで、本番まであと4日という3月21日、上口耕平さんとAKANE LIVさんがいらっしゃる稽古場におじゃまして、お話を伺ってきました。
上口耕平さんとAKANE LIVさん。この写真のように、和やかな雰囲気でよく笑いながら話してくださいました
●まずは、本番を目の前にした今の気持ち教えてください。
上口「濃密な稽古をずっと重ねてきました。今楽しみにしているのは、お客さまの反応。僕たちが想定している以外にもなにかお客さまの反応で気付くことがあると思うんです。この稽古場でもたくさんのものが生まれましたし、思いもよらないところで何かが起こりそうな気がしていて、楽しみです!」
AKANE「早い段階で(演出の)石丸さんが大枠を固めてくれて、既に何度か通し稽古ができているんですよ。回を重ねるごとにお互い感じることが増えて、気付くことも多いですね。音楽もセリフも歌詞もすごく繊細で、やればやるほど本当に美しい作品だなと感じています」
●ご自身の役柄について教えてください。
上口「最初のイメージは繊細で、いわゆる内向的な、オタク気質じゃないですけど絵を描くことでしか表現できないような男性だったんですけど。AKANEさんには笑われましたけど僕もそういう部分があってですね...」
AKANE「でもようやくわかってきました!」
上口「ほんとに? わかってくれてる? 嬉しい」
AKANE「少しずつね(笑)」
上口「(笑)。でもやっていくうちに骨太な部分を感じるようになり、男らしい人なんだと思うようになりました。そういう風に彼を捉えていくと彼女との関係がしっくりくるんです。こういう部分があるからこそ彼女も心地いいのかもしれないし、引き寄せられたのかもしれない。ただのアーティスティックボーイではそうならないかなと」
AKANE「レイチェルの役をいただいたときに、自分のバックボーンと重なるところもあるのでこういう役を演じられるのは嬉しいなと思いました。稽古を始めてみたら、意外とアメリカ育ちのレイチェルとヨーロッパ育ちの私で感覚が違うところもありましたが、今はまたやっぱり似ていると感じています。彼女はすごく熱くてエネルギッシュなので、演じていてすごく楽しいです。エネルギーは使うけど浄化されるような、そんな感覚があります」
●おふたりはミュージカル映画『蝶~ラスト・レッスン~』以来の共演。2人芝居で恋人という役どころは、向き合うことも多かったのでは?
上口「AKANEさんには初共演から素直に心から話せたというか。彼女は正義感も強くて嘘がない方なので。素敵だなってイメージは最初から変わらないです」
AKANE「彼は一見フレンドリーに見えてすごく繊細で、いろんな人を観察している人。それが芝居の深いところにつながっていて。今回一緒に演じて、いろんな話をしましたが、それでもまだ未知数なところもいっぱいあって...全部は見せてくれないので。ただそれがすごく和也の魅力とも重なります」
上口「何度も思ってるんですよ、AKANEさんでよかったって。僕は細かく考えるタイプですし、心が強いわけでもないんですが、隣でAKANEさんが素直にたくさんのいろんなものを生んでくださるので、そこに僕も自然に乗っかれたりとか、そういうことがすごくありました。だから感謝してます」
AKANE「それはでもお互いなので。私がそうなれるのは彼のおかげなので」
●Wキャストとなりますが、New Cast(鈴木勝吾さん×はねゆりさん)が作る世界と違いはありますか?
上口「New Castの稽古を見せてもらったりしていますが、根本から世界観が違いますね。愛の形も、種類は同じでも、僕たちの形とは違うと思います。だけど同じ作品として成立していて、それが可能な作品ってなかなかないんじゃないかなと思います」
AKANE「Wキャストでもここまで違うってなかなかないね」
上口「僕らはオールドチームで...」
AKANE「わー!(と言って叩くふり)」
上口「(笑)。僕らはある意味食べやすいのかもしれないですけど、New Castチームは食べるのもドキドキする感じというか...。でも食べた瞬間にパーッてなりそうな魅力のある...すごく危険な果実のにおいがする(笑)」
AKANE「これ本当に2パターン観ていただいた方がこの作品の魅力をすごく楽しめるよね。石丸さんがそれぞれの役者の個性、魅力を引き出してくださっているので、私が『こんなはねゆりちゃんいるんだ』って驚きました」
●演出の石丸さんはどんな方ですか?
上口「ある時は待ってくれるし、出そうなときにはとことん引っ張ってくれて。ここまで役者を信じてくれる方はいないんじゃないかなと思います」
AKANE「こんなに愛情があってパワフルな方はそう出会えないです。自分もそこと同じくらいこの作品を愛したいし、その熱量をお客さんにも体感してほしいです」
●今回、ご自身にとってのチャレンジは?
上口「まず"2人ミュージカル"がすごく大きなことで。初めての体験ですし、こんなに一つの作品で歌を歌ったこともないです。あと、今まで僕は芝居の中で誰かを愛する役のとき、相手は必ず男性だったので...初めてのキスシーンも男性でしたし。今回も、元同性愛者の女性なのでスタートとしてはストレートではないですが...」
AKANE「元男役だしね!(AKANEさんは宝塚歌劇団時代、雪組の男役でした)」
上口「(笑)。女性を愛する姿も初めてですから。全部がチャレンジです」
AKANE「私はいろいろなミュージカルに出演しましたが、これだけ繊細な音楽の中でやるのは初めて。自分が歌うその奥で流れる音楽をいかに聴けるかで、セリフも歌詞も声も変わってくると思っています。本当に素敵だよね」
上口「うん、素敵だね」
お話を聞いている中でもおふたりのチームワークのよさ、信頼感がとても伝わってきました。
AKANEさんも「私も出合ったことがないタイプの作品なので、お客さんにとっても新鮮だと思います」とおっしゃっていましたが、スタッフさんが「通しを何度も観ているのですが、観るたびに違うところで感動して、号泣して、新しい発見があって。今まで観たことない2人の姿が絶対観られる作品です」と熱く語っていたのも印象的。これはリピートしたくなりそうです!
ニューミュージカル『Color of Life』は3月31日(木)まで、東京芸術劇場 シアターイーストにて。