【ロングインタビュー】尾上松也が『新春浅草歌舞伎』への意気込みを語る

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お正月の浅草を彩る新春浅草歌舞伎が華やかに開幕。若手の登竜門としても、すっかりおなじみとなっている。尾上松也を筆頭に、若手が大役に挑む。

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――2015年に続いて、出演者ががらりと変わって二度目の公演ですね。まずは意気込みを聞かせてください。

尾上松也(以下:松也):前回と変わらず、みんなと一致団結して、チームとして、全員で乗り越えたいという思いでおります。昨年、みんなで一生懸命やったからこその、2年目ですから、初心を忘れず、臨みたいと思っています。2年目ができたから、それでいいということではなくて、2年目を3年目につなげる、3年目を4年目につなげるということで、毎年を大事にしていくことを、常に心掛けたいと思っています。

――前回の手応えはいかがでしたか?

松也:お役のことで葛藤するのは当然ですし、それぞれが真剣にお役と向き合って成長していかなくてはいけません。浅草歌舞伎では初役が多いですから、やってみて初めて分かったことも、たくさんありましたし、みんなもそうだったと思います。心配だったのは、お客様がどれだけいらしていらしてくださるか、でしたが、初日には大入りで、みんなで手を取り合って喜びました。1か月間、僕らの最悪の予想は外れたので(笑)、ほっとしました。それくらいの危機感を持って臨んでいるので自分たちのできるだけのことをしてよかったなと思いましたし、それがあってこその2回目であると、その認識は昨年出演をしたメンバーの共通した想いですね。

――顔ぶれは前回とほぼ同じですか?

松也:新悟君と国生君以外は、去年のメンバーと同じですが、歌昇君と種之助君、児太郎君は出演いたしません。今回、心強いのは、錦之助のお兄さんにご出演いただけることです。作品に厚みが増して、前回のメンバーとは違う作品が出来ると期待しています。

――チラシの宣伝写真が斬新ですね。白を基調にした衣装で飛び跳ねていますが、どんなリクエストがあったんですか?

松也:とにかく飛べ!と言われました。アクティブな動きがほしいということで。その要求に応えて、私も動いたんですけどね、結果的にチラシでは私だけ歩いてます(笑)。トランポリンを使って飛んでましたけどね。浅草歌舞伎は、近年は斬新なチラシが売りのひとつでもあるので。毎年、「なんだこれ?」と思ってもらうことは、チラシとしては大事なことですから、その辺は意識してやっていきたいところです。

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――演目ですが、『与話情浮名横櫛』はご自身の歌舞伎自主公演で取り上げていらして、与三郎を演じていらっしゃいますが、『義経千本桜』の「四の切」で狐忠信役は初役ですね?

松也:はい、そうです。狐忠信は松緑のお兄さんに教えていただきます。

――狐忠信はどういうところが難しいと思いますか?

松也:演じてみないと、わからないというのが正直なところですが。2役の違いと言いましょうか、本物の忠信と、狐の忠信、なり(衣裳)が違いますから、分かるんですけど、本物のほうは、武将としての格が必要でしょうし、後半の狐忠信になってからは、親を慕う子狐の情感にあふれた表現が必要になってくると思いますので、そのへんはきっちりと気持ちを作って。また、通し狂言ではないので、「四の切」までの、背景も自分の中でしっかりととらえておきたいです

――狐忠信は、意外なところから登場したり、一瞬でいなくなったり、けれん味もたっぷりです。

松也:非常にエンターテイメント性が高いというか、けれん味があふれていて面白いですし、お客様に楽しんでいただけると思います。第2部は、「毛抜」「四の切」で、両方ともザ・歌舞伎ですからね。「毛抜」も荒唐無稽で、大仰な仕掛けと、ありえないことばかり起こる芝居です。歌舞伎でないと成立させられないようなお芝居で僕は大好きです。「四の切」も、狐を人間がやっているわけですからね。その時点で本来はあり得ない表現ではありますが、いろいろな仕掛けを非常に古典的な手法でやるのも面白く、目でも楽しんでいただけるお芝居です。アクロバティックな動きもたくさんあるので、しっかり勤めたいと思っています。

――与三郎は本公演では初めてですが、自主公演で経験してみていかがでした?

松也:実は、名セリフ以外は特に仕どころがなく、本当にいいところだけもっていくお役だなという印象ですね。蝙蝠安(こうもりやす)のお膳立てがあってこその与三郎だということが、演じてみると、よくわかりますね。蝙蝠安がよくなっていないと、与三郎が生きてこない。そのギャップがあるからこそ面白いので。蝙蝠安はアンパンマンで言うところのバイキンマン的な感じ(笑)ですよ。特に世話物は、チームワークで作っていくものですだから、息が合わないとよくならないんです。自分たちの芝居心だけで空気とかを作っていくので、時代物とは、また違った難しさがありますね。


――与三郎は色男、二枚目ですが。

松也:設定上、二枚目ですので(笑)。なりは、あんなにシンプルなのに、ずいぶん色気があるように見えるようになっているんです。僕がそれを台無しにする可能性もありますが(笑)。二枚目とかは、気にしないことにして、それよりも、与三郎は実は非常に一途な男で愛の深い男ですので、そういう部分を大事にしていきたい。あとは、背景ですよね。元々は大店の若旦那で、いわゆるぼんぼん。ただの柄の悪い男ではなくて、ぼんぼん育ちが落ちぶれた品のよさはなくてはいけません。そういう要素も時折見せています。甘えん坊で世間知らずな部分も垣間見えたりするので、その辺の背景を自分の中に入れて演じていけば、二枚目は、そんなに意識しなくてもいいのかなと。

――『与話情~』は、歌舞伎初心者にとっても見やすい演目ですね。第1部は、ほかに『三人吉三』、舞踊の『土佐絵』です。

松也:第1部は世話物、舞踊、世話物ですから、それほど難しくはない演目だと思います。『三人吉三』もこの場面だけですと話の内容が分かりにくいかもしれませんが、何となく、パッと華やかに格好よくきまりますし、楽しんでいただけるのでは。

――去年、コクーンでの『三人吉三』を観て、浅草歌舞伎へと思う人もいるかもしれません。

松也:そうですね。コクーン歌舞伎とはまた全然雰囲気が違いますので、もとはこうだったのかと、楽しんでいただくのもいいかもしれないですね。

――若い三人にアドヴァイスとかは?

松也:コクーン歌舞伎の『三人吉三』とは演出が違うので一概には言えないのですが、コクーン歌舞伎で演らせていただいてみて、わかったことは、三人が出会う「大川端の場」は命を懸けているということです。立廻りも、コクーン歌舞伎でいろいろ試してみると、この場面で、何故、お坊とお嬢が戦うのか想像が膨らんできました。それを理解した上で演じると、「大川端」は全く違うものに見えて来るので、その緊迫感は持っていてほしいと思います。ただ喧嘩してるわけではなく、お互いの存在は風の噂で知っているわけですから、殺し合いをしつつも、実は楽しんでいるところもあって。全員が孤独な人たちなので、同じような人間と出会えた喜びもある。今回は、その表現はなかなか難しいかもしれませんけど、感情を想像して演じたっていいと思うんですよ。それぞれ先輩方に教えていただきますし、教えていただいた中で、自分の感情があるのであれば、どんどん表現してもいいはず。

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――みなさん、初役がほとんどなので、観るほうとしても楽しみです。

松也:僕も楽しみなんです。この人があの役をどうやるのかなと興味を惹かれます。『毛抜』は巳之助君が弾正役ですが、お父様の三津五郎さんの『毛抜』で、僕は春風を勤めさせていただいて。その時に、いろいろと化粧のことから何からご指導してくださった思い出がありますので。今回、巳之助君が弾正をやる、これは楽しみです。

――お年玉の「年始ご挨拶」は、とても好評でしたが、毎日違うんですか?

松也:大体毎日違いますね。ネタは自分たちで考えています。ですので、実はとても緊張するんです。

――こういう人があの役をやるんだと、役にリンクする楽しみもありますよね。

松也:そうですね。見取り狂言ですので、「ご挨拶」で多少なりとも演目の簡単な解説や補足をしておけば、わかりやすくなるだろうというのが、目的なんです。

――『ワンピース』で、巳之助君と隼人君が注目され、浅草も見ようという方も多いのでは。

松也:そうなってくれると非常に嬉しいですね。僕自身も歌舞伎以外の活動をさせていただいている時は、自分自身がやりたいことでもあるんですけど、常に少しでも多くの方に、歌舞伎に足を運んでいただきたいと思っていますので。実際に、ミュージカルを観て、それで歌舞伎にお越しいただいたという方もいらっしゃいます。1年を通して、新春浅草歌舞伎のために、いろいろなお客さまにアプローチをして戻って来る、続けられる限りは、その精神で進みたいですし、皆もそのつもりでいてくれると思います。


新春浅草歌舞伎
1月2日(土) ~ 26日(火) 浅草公会堂 (東京都)
【第1部】
お年玉〈年始ご挨拶〉/「三人吉三巴白浪」/「土佐絵」/「与話情浮名横櫛」
[出演]中村隼人 / 坂東巳之助 / 中村錦之助 / 中村国生 / 坂東新悟 / 尾上松也 / 中村米吉
【第2部】
お年玉〈年始ご挨拶〉/歌舞伎十八番の内「毛抜」/「義経千本桜」
[出演]坂東巳之助 / 坂東新悟 / 中村米吉 / 中村隼人 / 中村国生 / 中村錦之助 / 尾上松也

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