『夜への長い旅路』麻実れいインタビュー

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ノーベル賞作家でもある、アメリカを代表する偉大な劇作家、ユージン・オニールの『夜への長い旅路』がこの秋上演されます。
"演劇史上最高の自伝劇"と呼ばれる本作は、ユージン自身の凄まじい家族関係を赤裸々に描いたもの。
オニール自らが「涙と血で刻みつけた、古い悲しみの原稿」と記し、死後25年間は発表することを禁じたほどの作品です。

キャストもこの傑作に相応しく、実力派の俳優たちが揃います。

麻薬中毒の母・メアリーに麻実れい
かつてシェイクスピア俳優であったが近年は金のために商業演劇で同じ役ばかりを演じている父・ジェイムズは、益岡徹
酒に溺れ自堕落な生活を送る兄・ジェイミーに田中圭、そして肺結核に冒された弟・エドマンド(オニール自身)に満島真之介

さらにこの戯曲を、2010年の『おそるべき親たち』以降、手がける作品すべて大きな話題となっている気鋭の演劇人・熊林弘高が演出します。

このキャスト・スタッフのお名前を見ただけでも、素晴らしい演劇体験が出来そうな、そんな予感がひしひしとしてきます!


この作品でメアリーを演じる麻実れいさんにお話を伺ってきました。


◆ 麻実れい インタビュー ◆

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"ユージン・オニール"には、到底近寄れない何かがある


――『夜への長い旅路』はアメリカ近代文学の巨匠、ユージン・オニールの自伝劇です。まず最初に戯曲を読まれて、どんな印象を受けましたか?

「つい先日、ラフな本読みをして、まだ"ほんのはじまり"なのですが(※取材時は7月上旬)。出版されている翻訳本で読んだ時は、あまりのセリフの多さと、古い言葉が多かったので、大変だなと思いました。でも今回、木内宏昌さんが新たに翻訳されて、いま暗記する作業に入っているのですが、どんどんこの作品に惹かれています。
やはりユージン・オニールという響きは...先日やった『海の夫人』(今年5月、新国立劇場)のイプセンもそうなのですが、自分の中で、進んでは入らなかった気がするんですよね。例えばシェイクスピアだと今までも何作か出演していますし、すんなり入れるのですが、オニールやイプセンはもっと"離れた"印象で、何か異質の圧力みたいなものを感じていました。でも今回、今まで外から抱いていた印象と、脚本の中に入って少しずつ物語を感じている今とでは、全然違うなと感じました。やはり作品の大きさ、そして作品の持つ豊かさ、深さがすごいなと思いますし、今この作品に出会わせていただいたことに感謝をし、緊張していますが、なんとか素敵な作品として皆様の前にお出ししたいな、という気持ちがどんどん強くなってます」
――もともと抱いていた"離れた"感じとは?

「イプセンとかユージン・オニールって、私には到底近寄れないなという何かがあるんですよ。難しさと、果てしない繊細さと、色々なものが含まれている。できたら避けて通りたい、みたいなところがあった。でも今回その中に自分が入って、もがき苦しんで、そうすると作品の方も徐々に近づいてきてくれる、そんな気がします。イプセンを(『海の夫人』で)なんとか無事に乗り越えたこともあり、この齢になってユージン・オニールのこのような名作...そうそう上演される機会もないですし、関われることが大変嬉しく、いい意味で興奮を感じています」


――たしかに私たち観客にとっても、ユージン・オニールというと少し身構えるような重みを感じます。ただ麻実さんをはじめとする今回のキャスト、スタッフ陣なら楽しめそう...という期待もあります。

「そうであって欲しいと思うし、そうしていただけるためには大変な作業を乗り越えていかなくちゃ。『海の夫人』の時も、イプセンを好きな世代のお客さまがすごく多く来てくださいましたし、今回もユージン・オニールをこよなく愛してるお客さまが多くいらっしゃると思います。そういう意味で愛情のこもった空気感の中で演じられることも絶対にあると思うので、頑張りたいですね」


――そして、すでに本読み稽古に入ったとのこと。また、このキャストの身体を通して言葉が発せられると印象も変わるのでは。

「それはもちろん、ラフな本読みとはいえ、セリフが声になって聴こえてくると、もちろん現実味も帯びますし、色々な意味で興奮しました。ただここが出発であり、行き着くところまで行かなきゃいけない緊張、怖さもありますが、それぞれの役の言葉が声で発せられるのを聴いて、まず安心しました。そして声を聴くことで、港から出航していく乗組員ではありませんが、この4人だけで舵を取らなくてはいけない、その腕の取り方をなんとなく感じられた...とみんな言っていました。
物語はたった1日の話なのですが、非常に濃密な内容で始まり、終わるので、本当に精神的にも肉体的にも大変な作業になると思います。でもその中に何か大きな達成感や、色々な意味での喜びを、お客さまとも一緒に感じ取ることが出来たら嬉しいよね、と話していました。
私自身も、読むほどに、この家族の愛での結ばれ方が美しく感じますし、私の演じるメアリーの悲しさも美しく感じるんですよ。その、自分で感じたものが役作りの上で、何か加味されていけばいいなと思います」

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根本は"愛"です


――いま"愛で結ばれている家族"ということを仰っていましたが、表面上をみると罵り合っている、ばらばらな家族に見えます。麻実さんはそんなこの家族の根本は愛だと?

「根本は愛です。愛で結ばれていて、今もお互いに愛し合っている、でもどうにもならないことがあり、そのことでそれぞれがもがき苦しむわけですけれど、やっぱり愛の物語だと思いますね。口では罵っても心の中では愛している。
今回は演出の熊林弘高さんが、「ひとつのセリフを直線的に渡すのではなく、何かを通して、屈折して届けたい」とお話しされていて、それがすごく面白いし、すごくヘンだな、と思ったんです(笑)」


――確かに、兄弟が罵り合っていても、実はそれぞれ同じくお母さんのことを思って言い合いをしていたり..."屈折している"気がします。

「面白いでしょう(笑)?」


――そんな熊林さんとは、大評判となった『おそるべき親たち』(2010年)でもタッグを組んでいますね。熊林さんはどんな演出家ですか?

「とても繊細。そしてもの凄く深く表現できるといいますか、役者に深い表現を渡せる演出家です。私にとっては彼は"仲間"。『おそるべき親たち』の時は一緒にお仕事をするのは初めてだったのですが、仲間意識がすごく強く、役者たちは熊林さんのためになんとか頑張りたいと思いましたし、熊ちゃんも自由な、好きな演技を役者に渡したい、というような思いがありました。そこのところは"あうん"でした。あの時は、あんな大きな作品なのに稽古時間も、ものすごく少なかったんですよ。3・4時間やって熊ちゃんが「終わりでぇす」って(笑)。結局は役者に任せられるから、その分大変なのですが(笑)、でもいい雰囲気を作ってくれる演出家なので、今回も4人が恥じらいもなく素っ裸になってもがき苦しみながら作り上げていかなきゃできない、到達できない作品にしたいなと思います。...熊林さんの手に掛かった時に「ちょっと待ってよ」みたいなことも多々あるかと思うんですよ。で、熊ちゃんはニコニコしながら「助けになるものは何もありません」て言うんですよ(笑)。でもその方が逆に、お客さまに細かいところまで伝えることができると思うし、今回は劇場もそれができる小空間なので、その辺は楽しみにしています」


――熊林さんだから挑戦しようと思った、というようなところもあるのでは。

「本当にそうだと思います。変わった演出家ですから(笑)。そして、凄いんですよね。(商業ベースでの)デビュー作のような『おそるべき親たち』があれだけ大ヒットして、それでも、自分の足元をきちんと見られる方で、無理はしないし、自分自身と話し合ってひとつひとつ歩んでいく演出家。逆にそういう演出家だから、私たちも仲間として絶対に失敗させたくないという思いもあります。この愛の物語を、私たちも色々な意味で愛に結ばれて作り上げたいなと思います。今回も、厳しい舞台だと思いますが、さすが熊林さんだなと思うような、まったく今までの流れとも違う演出の世界がそこにはっきりと生まれているので、楽しみにしていてください」


――共演の田中圭さん、満島真之介さんも、熊林さんの演出作に出演経験がありますね。

「バラバラだった4人が、本読み1回だけで、クッと家族というものになっていくのを感じましたね。それぞれが愛しいです。この(芝居の)時にだけ現れる家族ですが、芝居ってそういうものじゃないですか? 残らないからこそ、本当に素晴らしいものを瞬時ですが作り上げたいし、お客様にこのユージン・オニールの世界を感じていただきたい。やはりユージン・オニールという世界的な作家の自伝的ドラマなので、色々な意味で面白いですし、ただ単に暗い物語ではない。人間は生きてる以上、面白いところもあり、自分はそうは思っていなくても傍から見たら笑っちゃう部分もある、その辺も観て楽しんでいただければいいですね」

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メアリーは本当に普通の女性。
悲しいですが、とても愛おしいですし、とても美しいと思います


――偉大な作家の身の"実話"であり、彼の家族を描いた物語。しかも、オニールの奥さまに捧げられた物語ですので、やっぱり"家族"は切り離せない要素ですね。

「そうなんですよねぇ。それもまた愛ですね。様々な思いが集約されている。今の時代、世の中が希薄になっちゃって、家族を作りたくないという若者たちが増えている、と言われていますが、やはり家族って、本来だったら、無防備な愛の中で過ごせる唯一の場。その一番大事な場が徐々に徐々に崩れていく、でもそれにはちゃんとした理由がある、ということを伝えられたらと思います」


――そんな中で麻実さんが演じるメアリーは、どんな女性ですか?

「普通の女性です。本当に普通の女性だと思います。普通の家庭に育ち、少女期から青春期を女子修道院で過ごして、その頃の夢はピアニストかシスター。そういう夢も、私たちが同じぐらいの齢のときに考えたような夢と同じで、ごく普通だと思うんですよね。その中である人との出会いがあって、自分が選んだ道の過程で色々なことが起き始めちゃう。人生のチョイスというのは恐ろしいですね、道さえきちんと選べば、どれほど幸せな道を歩けただろうか。でもメアリーは、あることが起きたのがきっかけで、麻薬中毒になってしまう。愛する次男が結核になってしまう。様々なことが押し寄せてしまい、もう自分では対処できなくなってしまう。どんどん深みにはまっていって、最後はきっとみなさん、彼女の書かれていない終末も感じ取っていただけるでしょう。でもやっぱり、"人間"、そして"愛"、"生きる"......そういうことが詰まった本なので、丁寧にひとつひとつ表現できたらと思っています。今、そのメアリーのセリフを一文字一文字、心に入れているのですが、悲しいことは悲しいですが、とても愛おしいですし、とても美しいと思います」

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取材・文・撮影:平野祥恵(ぴあ)

【公演情報】
9月7日(月)~23日(水) シアタートラム(東京)
9月26日(土)~29日(火) 梅田芸術劇場 シアタードラマシティ(大阪)

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