高校生とアラサー世代の大人達に焦点をあてた、ガレキの太鼓の最新公演「妹の歌」。
7月16日(水)から21日(月・祝)まで王子小劇場にて、佐藤佐吉演劇祭2014+参加作品として上演される。全国の小中学校で演劇指導を務める、劇団主宰である舘そらみの経験を活かし、旗揚げ以降初めての現役高校生にも出演してもらう試みも見どころのひとつだ。様々なアプローチ方法で演劇と関わり続ける劇作家の、新作にかける意気込みをお届けする。
インタビュー後編>>>
公演日程:2014/7/16(水) ~ 2014/7/21(月・祝)
会場:王子小劇場 (東京都)
[作・演出]舘そらみ
[出演]海老根理/舘そらみ/酒巻誉洋/森岡望(青年団)/工藤さや(カムヰヤッセン)/すがやかずみ(野鳩)/万里紗/田中弘志/木山廉彬/瀬戸美奈子/前田佳那子/中西柚貴
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ーーー本作品は「佐藤佐吉演劇祭2014+」参加作品です。演劇祭を主催する王子小劇場で上演するのは初めてだそうですね。
確かにガレキの太鼓は今までこまばアゴラ劇場で多く上演をしてきました。でも、場所にはこだわっていたつもりはなかったんです。どちらかと言うと、場所に合わせて適したものをやりたいと思って活動してきました。
ーーー劇場を飛び出して、マンションの一室を借りて公演をする「のぞき見公演」がいい例ですよね。では、王子小劇場の印象は。
元気なお芝居をやってる若者に優しい劇場という印象でしたね。私自身はもう若くないから足を踏み入れられないかなと思っていたら、王子小劇場の芸術監督の北川さんから声をかけていただけて。誘われた事がうれしかったし、熱意を感じました。「アゴラ劇場を中心に活動してきたガレキの太鼓が王子小劇場に進出することで、小劇場界になんとなくできてしまった垣根を越えほしい」と言ってくれて。実際に参加すると決めてからも、スタッフの方々が「佐藤佐吉演劇祭2014+」にかける熱意を感じることができるので、演劇祭の一員として参加でき、嬉しいです。
ーーーインドの宿屋に集まる日本人の若者たちを描いた前回公演「雪が降っているのなど見たことないが気のせいか」に引き続き、今回も舞台は日本ではありませんが、何か意図はあるんですか。
そうですね、日本の話ではなく、アメリカの話にしました。海外設定が今回必須だったということも勿論あるんですが、私自身が帰国子女なので、正直言うと、日本の引出しが少ないんですよ(笑)。アメリカ自体には中米に住んでいた小学生の頃に時々行ったり、バックパッカーをした時に数カ月滞在をした位で精通している訳ではないですが、メジャーな国にしてみようと思って選んでみました。
ーーー前回公演では朝日新聞の劇評欄に掲載され、登場人物の若者たちは「徹底して無責任で、刹那的」と評されました。
前回公演は「はしゃいだもん勝ち、いくつになってもはしゃごうよ!」がテーマでした。もちろん今回も若者が好奇心を持つものに全力で取り組んでる姿を描くつもりです。ただ、前回公演を通じて、何故人ははしゃぐのかと考えた結果、気づいたのが「他者を楽しませたい・場を崩したくない」という気持ちでした。自分が楽しいから騒ぐんじゃなくて、その場の空気を楽しくさせたいという想いが根本にあるから、はしゃぐんじゃないかと仮定すると、納得できる。私を含め、20代の若者たちの多くは、場を円滑にさせることを動機として生きていると思います。例えば、私は同世代でやる飲み会の会話が大好きです。お約束のようにお笑い芸人のようなボケとツッコミがあるんですよ。バラエティ番組を見すぎている影響かもしれませんが、集団芸をやっている感覚が骨の髄まで染み込んでいるんでしょうね。
ーーー実際、先述したのぞき見公演では「ガールズパジャマパーティー」と名付けた、女子が約90分飲み会をするだけの芝居を定期的に上演されていますね。一見登場人物のアドリブのように見える会話は全て舘さんが一字一句書いた脚本だったということで、驚きました。
私は飲み会で行われる集団芸は、もはや洗練された芸術だと思ってます。現代の若者は、空気を読む事がよしとされる、利己主義になりにくい世代と言えるんじゃないでしょうか。もちろん「空気ばっか読んでるんじゃないよ、逸脱しなよ」という意見も一理あるとは思います。ただ、その空気を読む行為が自分たちの奥底にあることを私は愛おしく思います。空気を読む事をゴールにせずに、そこをスタート地点にすればいいじゃないですか、という思いを込めて作品を書いています
ーーーガレキの太鼓は公演の度に変化し続けていますが、今回もかなり方向転換しましたね。
今回はわざと背伸びをしてやるつもりです。ただ好きなことやっている様に見られますが、こう見えて好きな事をやっている時も、わざと好きな事をやってるだけなんですよ。一応ちゃんと考えてます(笑い)。自分の関心事項はいろいろあるし、私は劇作家で演出家ですから、結局どこを切り取るかは意図的なんです。今回は大人へのエールと同時に「ちゃらんぽらんでも生きられるようになったね」という肯定をしたいと思っています。もちろん、若い人たちには私たちより素敵な人間になって、羽ばたいてほしいとも思ってますけど。これからもガレキの太鼓は「徹底して無責任で、刹那的」な若者たちを描き続けるつもりです。様々な挑戦をしてきましたが、おそらく、このテーマは今後の劇団の軸になるんじゃないでしょうか。今回はちょっぴりそこから背伸びしていますが。
演劇をあまり見ない方にとっても見やすい作品を目指しているので、多くの人に見てほしいですね。(取材・文 上野紗代子)