舞台「ハルナガニ」の脚本家 木皿泉さんよりコメントを頂きました。
こちらを読んで舞台を観劇していただくと、より楽しめるポイントも伺っております。
脚本を書き上げた今の感想は?
木皿泉(以下、木皿):書いちゃうと、自分たち夫婦のことを書いているような感じがしましたね。
夫婦の話なので、一番良く知ってる夫婦となると、やっぱり自分たちになるんです。だから自分たちの話だなって。あと言い換えると,存在とはなにか、ってことの話かな。
書いているときにおもっていたのも、自分たちのことも考えながら?
木皿:色々考えて試行錯誤したけれど原作があるので、最初は自分たち自身とはかけ離れた話として書き方で始めたと思います。だから密接な気はしなかったんですけど、書いてくうちにだんだんと近づいてきた。自分たちのことだなあ、みたいな。最後はそういう風に落ち着いちゃった感じでしたね。
原作を読むとどんな舞台になるか、まったく想像つかないと思うのですが、どんな構成にしているか 少しだけ教えて下さい。
木皿:前半はお客さんは知っているけれど、舞台の登場人物たちは気づいていない取り違えのギャクとかが色々あって、結構笑って頂けるのではないかと。
本当にパラレルワールドなんですよ。
長い人生の中で、はっと思いだす風景とか、本当に私たちがいるかどうかって、今の時代ね、よくわからないところあるじゃないですか。人に言われて、人が思うように望むままに、生きたりしているので。自分の意見とか出しにくい世の中だし。そんな中で、生きている実感みたいなものとは何だろうなと考えたら、意外とちょっとした事だったりするんです。なんか見た風景だったり、あの時見た、目の端に見えたもの、または本当に鳥が飛んでいく風景だとか。たぶんそういうことなのかなと思ったりするんですね。実は、そういうことを支えに私たちは生きているんじゃないか、というようなことを後半は書きたかった。
抽象的かなあ。あんまり言っちゃうと楽しくないと思うので、あとはお楽しみに。
原作を、選ばれた時点と、書き終えた今の印象の違いは?
木皿:原作を読んだ時に、あー、この夫婦ってお互い配偶者死んでて会えないんだけど、ほんとに一緒にいた時期があったんだなあ。それはとっても幸せな生活だったんだなあって。それがばーっと浮かび上がってくる感じがあったので、それを何とか芝居ふうできないかと思っていた。原作はちゃんとエッチングとか、ちゃんと鉛筆で書いたような緻密な感じがするんですけど、私たちのはクレヨンとか墨でがーっと一筆でやりましたというような感じなので全然違う。素材は同じだけれど、全然違う感じなんです。
でも、おこがましいですが、小説の心はたぶん外してないと思うので、
まだ藤野さんには聞いてませんが、怒られなかったらいいなと。
木皿泉さんより内藤さんへのメッセージ
ご結婚おめでとうございます。
ご結婚されないんだと長い間思っていたので、色んな人が皆ショックを受けてて(笑)
そんな中で今回夫婦の話を演出するのはすごいめぐり合わせというか、どんなふうにやるのかなって。今すごく幸せな段階の人だから 結婚に対して何も絶望的でシビアな意見とか持ってないと思うんだけど、そんな人がこの舞台作るんだって思ったら、どうなるのかすごく興味深いです。どんなふうに反映するのかなあって。
だからね、ニヤニヤしながら皆でみましょう!新婚さんはこんなふうに解釈してるんだ、こんなふうに考えてるんだって。皆さん観て下さい、今明かされる、内藤さんの新婚家庭!
木皿泉さんよりお客様へのメッセージ
今時、決まった時間に、その場所に行くってことがどれだけエネルギーがいるか、色々調整があったり、大変なことじゃないですか。それをわざわざ観に来て頂けるっていうのは本当にありがたい。この脚本がどうなるか、私たち自身も全然わかってないので、「金返せっ」言われたら困るんですけど、もう逃げてます。皆さんから「面白かったわ」って言って頂ければ、また次も頑張ってできると思うので。それをいうとプロデューサーが喜ぶだけですけど。是非観て頂き、なんかくだらねえなあって、大いに笑って自分のこと言われてるかなって感じで、ぐっと来て頂いて、オレが、私が密かに思っていたことや、妬んでたこと、疎外感があったことなどが、いや、みんな思ってたことなんだなと。
帰ってまた明日も頑張って仕事や学校行こうって思ってもらえたら、これ以上嬉しいことはありません。これだけのことで私たちは、こんな苦しい仕事をしていると思います。そうなって頂けたら嬉しいです。