見どころ満載!『新春浅草歌舞伎』観劇レポート

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毎年1月はそこここで歌舞伎が楽しめる歌舞伎三昧なひと月。
東京だけでも歌舞伎座をはじめ、新橋演舞場、国立劇場、そして浅草公会堂と4つの劇場で歌舞伎が上演されています。

その中のひとつ、浅草公会堂で上演中の「新春浅草歌舞伎」を観てきました。
浅草は江戸時代、"江戸三座"と呼ばれる芝居小屋が立ち並び、歌舞伎とは縁の深いお土地柄。
「浅草歌舞伎」のポスターがあちらこちらの店に貼られていて、浅草の街全体が歌舞伎ムード一色でした。

今年は襲名後初となる市川猿之助さん、昨年大ブレイクした片岡愛之助さんのふたりを軸に、平成生まれの中村歌昇さん、坂東巳之助さん、中村壱太郎さん、中村種之助さん、中村米吉さん、中村隼人さんら次代を担う若手がずらりと顔を揃えます。
浅草歌舞伎は若手俳優が活躍できる場所でもあるので、彼らのチャレンジする姿も注目ポイントのひとつですね。

第1部は平家全盛の時代を描いた「義賢最期」、男の友情物語「上州土産百両首」の2作を、第2部は地獄を舞台にした楽しい舞踊劇「博奕十王」、男女の悲恋を描いた「新口村」、舞踊「屋敷娘」・「石橋」を上演しています。


以下、公演のご紹介と観劇レポートです。
(ネタバレを含みます)

第1部最初の演目は愛之助さんが義賢を演じる「義賢最期」。
叔父である片岡仁左衛門さんが復活上演してから人気演目となったことから、愛之助さんがこの役をとても大切にされているのが伝わってくるようでした。
みどころは沢山ありますが、何といっても義賢の壮絶な最期の場面は圧巻です。
趣向を取り入れた演出もさることながら、気迫と哀感が入り交じった愛之助さんの芝居がよかった。
アクロバティックな大技もあり、随所に見せ場が満載。
義賢といえば愛之助、というくらいハマり役になってきたように思います。
面白いところでは百姓の九郎助(嵐橘三郎)が孫を背負いながらの立ち回りや、九郎助娘・小万(壱太郎)が女だてらに軍兵相手に戦かったりと、一見するとか弱いイメージの3人が意外と強い(?)といったまさかの設定も工夫ですね。

S10_8565_350.jpg【義賢最期】木曽先生義賢・片岡愛之助

続いては猿之助さんと巳之助さんが幼なじみの友を演じる「上州土産百両首」。
オー・ヘンリーの小説がもとになっている芝居で、頼りがいのある兄貴分の正太郎と間抜けな弟分・牙次郎が互いにスリ稼業から足を洗い堅気になろうと決心、十年後の再会を誓って別れるが、再会の夜、悲しい結末を迎えてしまうというストーリー。
再会を誓う場所が"待乳山聖天"ということもあり、浅草で上演するのにぴったりな作品です。
猿之助さん演じる正太郎は情に厚く気っ風の良い男。猿之助さんが舞台にすっと立っているだけで正太郎の心持ちまで伝わってくるよう。どんな役でも自在に演じてしまうまさに天才肌の人ですね。
牙次郎は巳之助さん。
悲劇の原因を作るみぐるみ三次を中村亀鶴さんがきっぱり演じていたのが印象的。
ラストは悲しいながらも、友を想う正太郎の気持ちに胸が熱くなりました。

S10_8830_350.jpg【上州土産百両首】(右)正太郎・市川猿之助、(左)牙次郎・坂東巳之助


第2部の最初は「博奕十王」。二代目市川猿翁さんが書いた脚本を猿之助さんがさらに練り上げての上演です。
非常にコミカルな舞踊劇で、地獄へ堕ちる亡者が減ってきたことを嘆く閻魔大王(市川男女蔵)のもとに現れた博奕打(猿之助)が、何とか極楽(天国)へ行こうと閻魔大王と博打で勝負、まんまと極楽行きの通行手形を手に入れるというお話。
まず注目したいのは衣裳や小道具。博奕打の衣裳は花札やサイコロをあしらったもので、これは猿翁さんから譲り受けたものだそう。鬼たちの衣裳の絵柄もなかなか凝っています。
地獄らしい演出では、三角の白い布を長唄や附け打ちの方が頭に付けているのがユニーク。このアイディアは猿之助さんが閃いたのだとか。
とにかく細部にわたって様々な工夫がこらされているのでお見逃し無く。ストーリーは明快単純なので歌舞伎初心者でもじゅうぶん楽しめます。

S10_9280_350.jpg【博奕十王】博奕打・市川猿之助


続いては、上方歌舞伎の名作『恋飛脚大和往来』の一場面「新口村」を愛之助さんの忠兵衛と壱太郎さんの梅川で。
傾城梅川と恋仲になった忠兵衛は、彼女の身請け話がもちあがった際、男の意地から公金の封印を切ってしまいます。無断で封印を切れば死罪。
死を覚悟した忠兵衛は実父・孫右衛門(橘三郎)にひと目会いたいと、梅川とともに新口村へ向かいます。
一面の雪景色に揃いの黒地の衣裳に身を包んだ愛之助さん、壱太郎さんが登場すると、溜息が漏れるような美しさに観客もうっとり。
雪道で転んだ孫右衛門を梅川が介抱する場面では、壱太郎さんの若く初々しい姿がいじらしく、その後の悲劇を思うとよけいに悲しみを誘います。
愛之助さん、セリフは少ないですが情感たっぷりに演じていました。

S10_9365_350.jpg【新口村】(右)忠兵衛・片岡愛之助、(左)梅川・壱太郎


最後は、若手が活躍する「屋敷娘」と「石橋」。どちらも華やかでお正月らしい舞踊です。
「屋敷娘」は壱太郎さん、米吉さん、梅丸さんが美しい娘たちに扮し可憐な踊りを披露。途中、引き抜きで衣裳がかわると客席から「わー」という声があがったり、歌舞伎ならではの趣向が楽しめました。

S09_6385_350.jpg【屋敷娘】(右)お春・中村壱太郎、(中央)お蝶・中村米吉、(左)お梅・中村梅丸

「石橋」は歌昇さん、種之助さん、隼人さんによる獅子の精の勇壮な舞を。若獅子たちの毛振りは舞台から溢れんばかりのエネルギーでした。

S09_6538_350.jpg【石橋】(中央)獅子の精・中村歌昇、(右)獅子の精・中村種之助、(左)獅子の精・中村隼人


公演は1/26(日)まで。


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