■『マイ・フェア・レディ』vol.6■
日本初演から50周年の節目に上演される、2013年の『マイ・フェア・レディ』。
〈げきぴあ〉でも既報の通り、今回は演出はじめ、翻訳&訳詞、衣裳に美術と何から何まで一新されての上演になります。
そして、ヒロイン・イライザもフレッシュなこのふたりが初登板!
霧矢大夢&真飛聖、ともに宝塚のトップスターとして活躍した彼女たちが、どんな思いで『マイ・フェア・レディ』に、イライザに向き合っているのか。
じっくりお話を伺ってまいりました。
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霧矢大夢 & 真飛聖
interview
――『マイ・フェア・レディ』との出会いは、映画ですか?
ふたり「はい」
霧矢「結構小さい頃から見ている記憶があります」
真飛「私もです。その頃って、物語がどうとかではなく、"ヘップバーンかわいい、きれいー"って思って見ていましたよね」
霧矢「そうですね。そこまで深くは考えず、音楽の楽しさとミュージカルの楽しさと、ヘップバーンがだんだん変わっていく感じなどを楽しんでいました。あと、宝塚に入ったら男役の勉強にもなるという視点からも見ましたね」
真飛「ほんとにそうですよね。女性なら誰でも憧れるシンデレラ・ストーリー。そういう印象でした」
――では、今回のオファーを受けた時、どう思いましたか?
霧矢「私は今後のこともまだ見えない状況だったので、非常に悩みました。イライザは憧れている役でしたが、"観る役"だと思っていたので、いざ自分がやるとなるとやはり不安で。誰もが知っている作品ですし、音楽にしても誰もが知っている曲ばかりなので、皆さんの理想が高い。でも、宝塚退団後の1作目として、挑戦しがいがあるなという気持ちで、(出演を)決意しました」
真飛「私は映画を観たのが随分昔で、そこまで作品の大きさとかを深く考えなかったんですよ。わからないものの方が興味がわく性格なので、勘というか...」
霧矢「本能なんだ」
真飛「本能ですね(笑)。歴史の長さとかを後から思えば思うほど、怖いもの知らずだったなと思いますが。でも、不思議なことに、お話をいただく前から、あまりよく知らないくせに自分の中で「『マイ・フェア・レディ』、出たい!」って思っていたんですよ。...私、宝塚に入る時も、宝塚(の舞台)を観たことがなかったのに、『歌劇』(雑誌)を見た瞬間に「私、宝塚に入る!」って言ってるんです。願いって、叶うんだなあって思いますね」
霧矢「でもいざやるとなったら課題は盛りだくさんで、イメージだけで向き合ってはいけない役だなと思っています。...G2さん曰く「リボーン」、今回新しく生まれ変わる作品ですし、今まではこうだったから...という先入観ではなく、丁寧に丁寧に向き合っていきたい。今までの方々もそうやって大切に向き合ってこられたからこそ、これだけ愛されている作品になっているんでしょうし、生半可な心意気でやってはいけない。でも、あまり作品の歴史や大きさをプレッシャーにしすぎず、いかに自分らしく呼吸できるか...最終的にはそこにもっていければいいなと思います」
――今のお話にもありましたが、今回は〈リボーン〉、新演出です。今回の見どころは?
真飛「見どころは...すべて!と言いたいですね(笑)。前と比べて、ではなく、私たちは新作として捉えているので」
霧矢「私たちが今取り組んでいるそのままが、〈私たちにとっての『マイ・フェア・レディ』〉になるのだと思います。もちろんG2さんは色々考えていらっしゃると思いますが。今まで皆さん、当たり前のようにやっていたけど、これってよく考えたら自然じゃないよね? という疑問などが演出側からも役者側からも出て、変わっていったりするものもいっぱいあるので、『マイ・フェア・レディ』ファンの方にも新鮮に観ていただけるんじゃないかな」
真飛「そうですね。作品のベースはもちろん一緒なんですが、おしゃれな感じにも見えるかなと思います」
霧矢「でも別に、軸からずれてるとかもなく...ね」
真飛「全然ないですよね!」
霧矢「わりと忠実ですよね。G2さんの演出も、台本のト書き(セリフではない、行動や情景が書かれた部分)は気にしないでいいよ、と役者たちに好きにやらせてみて、でもやってみたらやっぱりこれは元のままの方がいいねって戻ったりもしてるので。奇想天外な『マイ・フェア・レディ』になっている、ということは決してないです」
真飛「(この先)なったら、どうしましょうね(笑)」
――霧矢さんは宝塚を退団してこれがミュージカルデビュー、真飛さんも退団後これが本格的ミュージカルとしては初になります。現場で戸惑いなどはありますか?
霧矢「それが、大丈夫です(笑)。何にでも対応できるように度胸はつけておこうかなと思ってきてましたから。...でも(稽古最初の)集合する前までは、不安だらけでしたけど」
真飛「現場にいってみないとわからないからね。私たちふたりとも、あれこれ考えるタイプじゃないので(笑)。やっぱり同じ(トップという)立場も経験させていただいて、ある意味、度胸がついてますので。昔はすごい考えたりしてたんですが、考えすぎても蓋を開けたら全然違ったりするので...行ってみなきゃ、わからないし!って(笑)」
霧矢「伸び伸びとやりたいですね。今までと変わらず、舞台の上に立った、共演者の方々と作り上げていくものを伸び伸びとやって、それが皆様に伝わればいいんだろうなと思います」
――おふたりが考えるイライザは、どういう女性ですか?
霧矢「自立心だったり、その世界から抜け出たいという思いからヒギンズの家のドアを叩くわけですが、でも強いばっかりじゃなく弱い部分もある。一生懸命、けなげに自分の人生を切り開こうとしている女性ですね」
真飛「それに嫌味がないですよね。ただ言葉遣いが乱暴だから強く見られてしまうけれど案外もろくて、いろいろなことを気にしている劣等感もある。でもそこじゃ終わらないんだという気持ちもあり、それを楽しみながら生きている、けなげだけど可愛らしい女の子」
霧矢「イライザというキャラクター自身、女性から見てすごく可愛いと思える女性じゃないですか。だから、今まで男役やったけど、今度は女役!とか、変なところで作ろうとしちゃうと、その可愛さ、いじらしさが出ないと思うんです。だからなるべくそういった意識を無くして自然に、たとえ男役臭かったとしても、それがイライザじゃないかと自信を持って言えるようになれたらいいなと思います」
――共演の皆さんは、いかがですか?
霧矢「楽しいですね。松尾(貴史)さんのお父さん(ドゥーリトル)が自由で、素晴らしいですね」
真飛「おっもしろいですよねー。皆さん面白いですが」
霧矢「田山(涼成)さんのピッカリングさんも、ヒギンズ夫人の江波(杏子)さんも、ホントに...(笑)。役の軸からそれずにめちゃくちゃ面白くて、何が飛び出すかわからないですね」
真飛「すばらしいですよね...。あとヒギンズ教授の寺脇さん。すごくひっぱってくださる」
霧矢「お兄さん気質というのかな。全体を見てくださっています。私たち、製作発表で初めてお会いしたんですが、気さくに声をかけてくださって」
真飛「こちらはテレビでよく見ていた方なので、勝手に親近感を感じてしまうんですけど(笑)。向こうからすると"宝塚"ってちょっと身構えるイメージがあったりするのかな、と思ったんですが、もう、すぐ意気投合でした。製作発表でも、私たちのテンパった感じを楽しんでくださって、逆に私たちが気取らずカツカツになっていたことが、寺脇さんからしても「仲良くなれると思った」って仰ってくださって」
霧矢「大人ですよね~。って、私たちも、いい大人なんですが(笑)」
――この物語、イライザを教育する側のヒギンズ教授も、意外と幼稚というか、人間味がありますよね
霧矢「最初はイライザを導こうという大きさ、頼りがいがありつつ、いざ実験に成功したら、アンドロイドみたいに思っていたイライザが心をさらけ出して...となりますよね。そのあたりのヒギンズさんは、女性から見れば「子どもだな!」と思いますよね(笑)。そういうところがあるから、面白いんだと思います」
真飛「イライザの心が成長して、関係性が逆転しますよね。そのあたりも大事にやりたいですよね」
霧矢「ヒギンズの役もすごい魅力的ですよね」
真飛「やりたいですね~...」
霧矢「やりたい(笑)。ヒギンズ、わかるわかる~!って思います。私、結構、宝塚時代はオクテな男性役が多かったんですよ、相手の思いに気付かない役とか。だからヒギンズの気持ち、本当にによくわかるの(笑)」
真飛「チャンスあれば奪っちゃおうかな。そこも役替わりしちゃいます!?」
霧矢「ね! 今、逆の立場で男女の駆け引きみたいなのをやっていますが、なかなか慣れないです(笑)」
――ちなみに、おふたりの胸キュンポイントなどはありますか?
霧矢「あります(きっぱり)。...でも言っちゃうと、そういう目で見られちゃうから...」
真飛「教えてください!私も知りたい!」
霧矢「実はまだお稽古をしていないシーンなので(※取材時は4月上旬)、今後変わるかもしれませんよ、の注意書き付きでいいですか? ...初めて舞踏会にいく時に、ヒギンズがエスコートしてくださるんですよ。そこが結構ぐっとくるんじゃなかろうかと! 一回、先にヒギンズさんは行こうとするんですが、わざわざ戻って、腕を差し出してくださるんですね。またこれが、綺麗なBGMもかかっているんですよ~。なんかすごい素敵、早くやりたいわ♪って思っちゃった」
真飛「ああ、男性の懐の大きさも感じるところですよね~」
霧矢「そこがワクワクしているシーンです!」
真飛「私は...まだわからないですね...。でも、言葉を寝ずに教えてもらっているシーンなんかは、大変なんだけど楽しいってイライザも思っているんですよね。イヤダヨ~って思いながら楽しくて、怒ったり物にあたったり、泣いたり。一喜一憂ですよ。ともに過ごす事によって、知らず知らず、その空間が大好きになってきているというシーンですが、たぶん私自身も本当にそこの場所を好きになっていくんだろうなって思います。場面としても楽しいし、きっとお客さんも楽しいと思いますが、わたしたちもそこはイライザとして生き生きとしているんじゃないかなと思います」
霧矢「でも微笑ましいふたりですよね」
真飛「そこがいいんですよね。観る人が"なんで気付かないのよー"ってやきもきしちゃうの」
霧矢「そういうところが楽しい作品ですよね。いい意味でわかりやすい作品だけど、お客さまが想像する余地がちゃんと残されている、そういうバランスがとってもいい。最近の作品は描写がどんどんリアルになっていますが、観る側がいろんな人の立場になって想像できるというのは、すごく楽しいですよね」
公演は5月5日(日・祝)から28日(火)にかけ、東京・日生劇場にて行われます。
チケットは発売中。
その後、石川、福岡、愛知、大阪でも上演されます。