『カム・フライ・アウェイ』完全ナビ! vol.6

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●綾戸智恵、シナトラ愛を語る!●

前回お知らせしたように、5月14日、『綾戸智恵 ミニライブ&トークショー』が開催されました(イベントの模様はこちら)。いやあ、フランク・シナトラに対する思いの熱さは、想像以上でした。『カム・フライ・アウェイ』のオフィシャル・サポーターを務めることになったそうですが、これほど適任だと思わせる人は他に考えられません。

そんな綾戸さんにインタビューする機会をいただいたんです。シナトラへの愛について、また、先日アメリカで観てきたという『カム・フライ・アウェイ』の印象について、たっぷりと訊いてきました!
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――ファンになったのは何歳頃ですか?

しっかり覚えてないぐらい昔......っていうことは、2歳か3歳やと思います。その頃からもう、親父に連れられて名画座によう行ってましたから。『錨を上げて』とか『踊る大紐育』とか『下町天国』とか。ミュージカル映画に出てる人という印象でしたね、最初は。あとあの頃、父親の友人が幻灯機を持っていて、アメリカのテレビ番組の映像を見せてくれたんですね。それで、『フランク・シナトラ・ショー』でプレスリーと共演している回を観て。プレスリーが『ウィッチクラフト』、シナトラが『ラブ・ミー・テンダー』を歌ってました。それが小学校行く前。シナトラのほうがおっちゃんで、プレスリーは出たてでキャーと言われてた頃やったんやけど、私は、プレスリーよりシナトラにキャーて言ってた(笑)。

――なぜシナトラに惹かれたんでしょう。

どうしようもない男みたいな感じせえへん? やんちゃというか、小者やん。チンピラみたいな。後年は立派やけどね、出てきたときは、オドオドした感じがあった。あと、「俺だけ田舎もん」みたいに思ってんちゃうかなって、子供心に思ったの。特に、ビング・クロスビーの『上流社会』が印象的だった。クロスビーに相当嫉妬してるなあと思いましたね。競争かけとんな、タイマンやりたいねんなと。デビュー前は憧れの存在だったらしいけど、映画には、「負けたない」「このおっさん追い越したろう」とかそういう気持ちが出てましたね。

――シンガーとしての魅力はどこに感じました?

普通、声がよく出たり、きれいに歌えたりするのが、いい歌手とされますよね。技をこなせるというのは勉強している証拠やけど、そんなんシナトラにはないんですわ。作った歌い方じゃなく、「こうしか歌えんのや」って歌ってるような気がするんです。「これであかんかったら、もう帰るわ」って感じ。「俺はうまいんや」とか「ナントカ先生に師事したんや」、「ナントカ大学出たんや」みたいに背負うもんがなくて、「もう俺のことが嫌いなら聴かんでもええよ」って、「でも俺はこれで精一杯やねん」って言ってる感じ。だから正直な歌が聞こえましたね。技でこねくり回してない。内側から自然に出てくるだけのもの。もちろんそれは、努力あってのものやろうけど、何より、歌声にはシナトラの味がいっぱいでしたから。教則本が見えてこない。

――レコードを聴き込んでいたんですね。

お袋にいっぱい買うてもらいましたね。みんな郷ひろみとか聴いてる頃に、私だけシナトラを聴いてた。シナトラの写真を下敷きに入れてたら、それを見た友だちが「お前なんで左とん平が好きやねん」って(笑)。

――特に好きだった曲は?

やっぱりどうしても好きなのは、『ザ・レディ・イズ・ア・トランプ』。"トランプ"を「トゥランプッ」って早口で歌うんですよ。ビブラートがない。私は"小便ビブラート"って言われて(笑)ブツブツ切れるんやけど、彼のは、切れるどころかないの、ビブラートが。それがかっこええねん。「どや!」言うてる感じで。あと、『ワン・フォー・マイ・ベイビー』を聴いたとき、シナトラとふたりでいる感じがしてきたんですよ。さみしくバーで。まだ英語の意味がパーフェクトにわかる頃ではなかったのに、「おいお前も一杯飲めや」と言われてるような気して。「ほなもらうわ」って返事しながら聴いてた思い出があります。

――歌い方がドラマティックですよね。

あの人が歌ったら、みんな格好になるやん。『ザッツ・ライフ』なんか歌ってたら、ゴスペルに聞こえるし。黒人かなと一瞬思ってしまう。でも違うねん。彼やねん。自分のジャンルにしてしまうねん。フランク・シナトラ・ジャンルっていうのを持ってはんねん。ジャズやクソもあらへん、俺の歌やって。だから"金太郎飴"って私よう言うんです、あの人の歌を。切っても切ってもシナトラしか見えてけえへん。

――綾戸さんにとって、これまでに出会った中で、やはりナンバーワンのアーティストなんでしょうか。

ナンバーワンちゃいます。オンリーワンです。ナンバーワンだと2番があるでしょ? 2番はないですから。次がプレスリーとか、そういうのちゃうんですよ。あんな人おりませんやん、ほかに。彼の友達でもあるジュディ・ガーランドも好きやけど、あの人の場合少し努力が見える。シナトラはそれがない。努力が見えないというか、見せない。歌うために生まれてきたような人やから。おまけで(娘で歌手の)ナンシー・シナトラがついてきた感じや。

――シナトラとの出会いが、綾戸さんをシンガーへと導いたんですね。

シナトラを見てなかったら、違うことしてたやろな。あの頃の"シナトラごっこ"がなければね。

――"シナトラごっこ"とは?

中学校3年ぐらいまでしてました。帽子を持って歌って、下手な踊りも真似して。友だちは誰も聞いてくれへんから(笑)、家でお母ちゃんとお父ちゃんを相手に。

――高校卒業後、渡米したのも、シナトラの影響でしょうか。

そう。『踊る大紐育』を観て。"350"という番地が映って、上を見上げると、エンパイア・ステート・ビル。ホンマにあんな所なんかなって。

――約15年アメリカに住まれたそうですが、アメリカ人にとって、シナトラの存在はどのようなものだと感じましたか?

やっぱ、オンリーワンやね。ミスター・アメリカ。

――実際にシナトラの生の歌を聴くチャンスはありました?

マジソン・スクエア・ガーデンで、ライザ・ミネリたちとやった、3人コンサートを観ましたね。私が27,8の頃。あとひとりの歌手は、たぶんサミー・デービス・ジュニアやったと思うんですけど、あまり印象になくて。そのときはライザ・ミネリがちっちゃいのにびっくりしたんです。シナトラはそのときは親分として出てきた感じで、ああ太ったなあって。貫禄があった。でも、やっぱり歌はかっこよかったですね。(高齢による衰えで)下手になってもオッケーなのは、素だからだろうなと思いました。昔から技術で売ってた人じゃなかったし、味はそのままでしたから。

――そろそろ、『カム・フライ・アウェイ』に話を移したいのですが、先日、オハイオ州クリーブランドまで観劇に行かれたそうですね。

向こうから来てくれるんじゃない。自分から行ったわけでしょう? もし来てもろうてるんだったら、「いや、おおきに、おおきに」と思いますけど、自分がそこまで足運んでるんだから、「さあ見せてもろやないか」という気分でしたね。この世にシナトラおらんのに、本当に楽しめんのかなあと、心配でした。

――そして幕が開きました。

まず、知らん顔の人たちがダンスをし始めますよね。シナトラが生きていたときの肉声に合わせて。そのうちに、ダンサーは一生懸命踊っているけど、「これは私のショーじゃない、シナトラを聴いてください」っていう彼らのスタンスが見えてきたんです。そのとき、いかにアメリカ人がシナトラを崇拝し、好きやったんか、いうことがわかったんです。2曲目ぐらいからは、ごっつい歌がうまいなあと。今までは、好きやとか、かっこいいとか、味があるとかは思っていたけど、決してうまいと感じることはなかった。ところが、ちょっとこれ、うますぎるやんかと。

――それはなぜでしょう。

わからないんですよ。シナトラを聴ける年齢になったこともあるかもしれない。あと、その2日前から、(テレビ番組の収録用に、シナトラの生地であるニュージャージー州の)ホーボーケンまで行って取材してきたじゃないですか。そこで『アワ・ウェイ』っていう本を書いたエドっていう人に会うたんです。意気投合しましてね。70歳ぐらいの人で、彼のおじさんがシナトラと同世代で交流があったそうなんです。いろいろ話を聞いたり、「ここの高校でシナトラは歌っていた」という場所に行ったり、ストーカー行為でつかまったエピソードを聞いたりしてるうちに、ビッグスターのフランク・シナトラではなく、ただのマーチンくん(父親の名。フランク・シナトラの愛称でもあった)に思えてきたんです。

――より身近に感じられる存在になったんですね。

そのマーチンくんが、気がつけば、すごい歌手になってるなあと。この人の人生いろいろあったけど、この歌を残すために生まれてきたんやなあと。私生活を犠牲にしたこともあったかもしれない。でも、それだけのものを表現したんですから、みんなに崇拝されて当たり前。私とは違うし、憧れてもしょうがない。彼は彼らしく生きたんやなと思って、ちょっと熱くなりました。それで、歌の中に、ごはんを食べてきた毎日の重たさが聴こえてきて、これはうまいなと思ったんですね。下手は下手やけど、でもうまいと思いました。

――使用されている楽曲のチョイスはいかがでしたか?

必ずしも、これぞシナトラという曲ばかりじゃなかったのが、かえって良かったと思います。シナトラ、シナトラ、シナトラと畳みかけたら、耳がダンボになりますやん。でも、構成がよくできているせいで、シナトラをふっと忘れて、ダンスに見入る瞬間もあるし、ダンスを忘れて、後ろのバンドを見ているときもある。この三つ巴をうまいことコンビネーションして、お客さんが疲れないようによう作ってはるなと思いました。調和のとれたステージですね。

――物語は?

物語がアバウトでいいですね。ようありますやん。もう一度見直さなければようわからん、映画やドラマが。でも、この舞台では、男と女がひっついた、喧嘩した、呑んだ、ひっくり返った、黒人のお兄ちゃんムキムキでかっこええ、わっ汗飛んだ、とかね。わかりやすいでしょう? 字の大きい絵本やなと思いました。単行本やないんです。もういっぺん観たくなるのは、わからないからじゃなくて、もう一度楽しみたいから。メリーゴーランドに何度も乗りたいってあるでしょ。あの感覚。

――印象的な曲はありました?

『ワン・フォー・マイ・ベイビー』は、私にピアノをやらせてほしかった(笑)。シナトラに「うまいやないかピアノ」って言わしたかった。私も「弾かせてえや」って言いたかった。バックでピアノ弾いてるおじさんを見て、ホンマにそう思いましたね。

――ほかに好きなシーンは?

こんなん言うたら笑われるかもしれへんけど、シーンとしてはお兄さんがパンツ一丁で踊るとこやね。あと、ドランカーが酒飲んで壁に頭ぶつけるとこ。日本のミュージカルではなかなかわざとらしくなるのに。ああいう笑いのセンスは、さすがアメリカンやね。

――どんな人にこの舞台をおすすめしますか?

時期が夏休みでしょう? 誰でもええです。それが私の答。これを家族で観に来たら、子供は「私ダンサーになりたい」「歌手になりたい」「演奏したい」「バレリーナ」と思うかもしれない。で、親は「懐かしいなあ」って観るわけ。アベックは「やっぱりちゃうなあアメリカは」と思って観る。すべてのジェネレーションがそれぞれに楽しめる。ディズニーランドにも匹敵するし、シルク・ドゥ・ソレイユや、カウント・ベイシー楽団や、アメリカン・バレエ・シアターや、アルビン・エイリーのモダンダンスもそう。そのすべての要素があると思います。

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誰よりもシナトラを愛する人の『カム・フライ・アウェイ』解説、説得力抜群ですよね。ますます関心を持った方も少なくないと思います。これからも有益な情報をお伝えしていきますので。次回をお楽しみに。


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