●よこやまのステージ千一夜●
先日、10月10日に閉幕した、
新国立劇場演劇「朱雀家の滅亡」を拝見しました。
ご存知、三島由紀夫の戯曲。演出は芸術監督の宮田慶子さん。
喋っているだけでも気持ち良くなってしまうような三島のセリフ群ですが、
主演の國村準さんが上手い!!!
(※國村さんは、名門侯爵家の当主、朱雀経隆役)
美しく書かれたセリフをこのようにして自分のモノとして獲得していくのかと、
正直恐れ入ったのと同時に、
時代の流れに逆らわず、滅んでいく世界に身を任せる演技に興奮しました。
女中・おれい役の香寿たつきさんも素晴らしく。
新国立劇場演劇の
新シーズン"【美×劇】―滅びゆくものに託した美意識─"の第1弾として上演されただけあって、
美しい言葉、滅びの美意識に対して、非常に目の行き届いた作品となりました。
さて、来週10月18日(火)からは
"【美×劇】―滅びゆくものに託した美意識─"の第2弾となる
「イロアセル」が開幕します。
作は倉持裕さん。演出は前の芸術監督である鵜山仁さんで、
倉持さんの書き下ろしとなります。
既にニュースでもご紹介いたしましたが、
この作品、実はちょっと変わった趣向の舞台でして...。
稽古場の様子を写真をふんだんに使ってお伝えいたします。
こんなお話です。
舞台はとある島。
島の住民が発する声や文字には全て色があり、それぞれ異なった色を持っている。
自分は青の5番、父は赤の3番といったように、
どんな手段で発言しようと、個人が特定できてしまう。
発言に慎重を期す彼らのもとに、島の外から檻に収監される男(藤井隆)と看守(小嶋尚樹)がやってくる。
島の外からやってきたふたりの言葉に色はなく、島の住民と彼らとの会話は無色透明になる。
やがて住民たちはふたりのもとを訪れ、打ち明け話をする。
住民が訪れるたびに意見をする男だが、同じような見解を別の人間に示すのは非合理的とのことで、
男は新聞を作りだす。やがてその新聞は影響力を持ち、男は権力を握るようになるのだが......。
言葉に色がついている。
一見、カラフルで楽しい話と思いきや、
個人が特定されてしまうことで、内緒話すらできず、まったく本音を語れない。
まるで"言葉狩り"にでも遭ったような、ちょっと末恐ろしい話を、
いったいどう具現化するのか?と、楽しみに稽古場に伺ったら、こんな風になっていました。
天井に地球の形をしたスクリーンがありますが、
ここに個々の俳優さんの話した言葉の色が投影されます。
ちなみにこのスクリーンは、本番ではもっと大きく劇場いっぱいになる予定だとか。
そして後ろにもある障子のようなスクリーン。
今は影絵のようになっていますが、ここにも色が投影されるとか。
島の住民に扮した俳優さんの言葉が側面にも天井にも色となって映し出されます。
(影絵になっているのは、島田歌穂さんですね)
天井のスクリーンでもどの島の住民が話したか色でわかるのですが、
島の人たちは写真でもわかるようにピカピカ光った機械"ファムスタ"を
皆、肩からかけていまして、これで誰がどんなことを話したかわかるようになっています。
※"ファムスタ"は色を採取する機械です。
写真は加藤貴子さん、高尾祥子さん。
通し稽古初日。今ではもっともっと進んでいるでしょうね。
この日は初日なのに、転換こそあれど、ほぼ2時間以上ぶっ通し。
演出家の鵜山さんもほとんど切らずに通していました。
皆さん、結構シリアスな話なんですが、皆さん、ほかのキャストの演技に笑ったり、
初日なのに、意外に余裕ありました...か?
まずは主演・藤井隆さん。
セリフの返しの間がやはりいいですねえ。
NODA・MAP「キャラクター」の演技も素晴らしかったですもんね。
この藤井さんが閉じ込められている檻に、まあ、いろんな人が来るんです。
加藤貴子さんのお父さん役の花王おさむさん(左)がやってきました。
なにやら神妙な面持ち。
今度はお父さんの次に娘の加藤貴子さんと、
彼女のとある競技のライバル選手で友人の高尾祥子さんがやってきました。
囚人の藤井さんを指さしています。
加藤さんは変わったものを持っていますね...。
木下浩之さん(左)がやってきました。熱弁ふるっていますね。
看守の小嶋尚樹さんと藤井さんも笑みがこぼれます。
周りで出番待ちされている俳優さんもニヤニヤ。
島田歌穂さん登場。なんだかとても物憂げです。
剣幸さん登場。やっぱりファムスタを持っているんですね...。
そしていつも藤井さんのそばにいる看守の小嶋尚樹さん。
この後、囚人の男は新聞を書くのですが、続きは舞台を観てからのお楽しみ、ということで。
新国立劇場演劇「イロアセル」は
10月18日(火)より11月5日(土)まで、新国立劇場 小劇場で上演です。
チケットは現在発売中。