■『レ・ミゼラブル』の魅力(12)■
6月12日、ミュージカル『レ・ミゼラブル』は大千穐楽を迎えました。
ご存知の通り、そしてこのブログでも何度も書いておりますが、今回の『レ・ミゼラブル』はロンドンオリジナル演出版としては最後の上演になります。
1987年の日本初演から24年間、愛され続けた現行バージョンの『レ・ミゼラブル』。
総上演回数は2572回、総出演者は462名。
あのセットもあの衣裳もあの照明も、これでサヨナラです。
その千穐楽のカーテンコール、客席は感動と熱気で包まれました。
千秋楽である本日の公演は、スペシャルキャスト公演です。
まずは林アキラさん。
「『レ・ミゼラブル』の思い出、語っていったらわたしのお話だけでみなさんを明日の始発電車までひきとめる自信があるので...(笑)。帝国劇場100周年、そしてオリジナルロンドン演出版のファイナル公演に立たせていただいて本当に感謝の気持ちでいっぱいです。大変な時期でもありますが、今日この劇場に集った出演者、ミュージシャン、劇場関係者、そして客席のみなさん、毎日毎時毎分毎秒を懸命に生きている日本中、世界中の我が兄弟に、神の祝福がありますように」
司教様らしい、暖かいご挨拶です。
次にアンジョルラス役、岡幸二郎さん。現在のバージョンではジャベール役として出演していますが、後半はスペシャルキャストのアンジョルラス役としてのご登場でした。
「なんだか今はすっきりした気分です。1994年にこのアンジョルラスで『レ・ミゼラブル』に参加させていただき、ジャベールをやり、再びこのアンジョルラスという大好きな役で千秋楽を迎えさせていただき本当に感謝しています。こういう状況の中で舞台に立たせていただく喜びを毎日感じながらアンジョルラスをやらせていただきました」
岡さんのアンジョルラスは美しく、リーダーシップを感じさせる存在感があり、本当に素敵でした。
マダム・テナルディエ役の鳳蘭さん。
「24年前の初演に参加させていただいて、それから私は24年間まったく空白で今回再び参加したのですが、また参加してみてなんという深い作品だとつくづくかんじました。『レ・ミゼラブル』万歳、です」
テナルディエ役の斎藤晴彦さん。
「24年前の初演のことが、つい昨日のように...思えるわけがありません(笑)。ですが24年前に一緒にやった出演者のことを、いつも演じながら思い浮かべております。『レ・ミゼラブル』は本当にたくさんの出演者のがいて、その人たちがいることによって、本日のファイナルステージを迎えられた、僕はそう思います。そしてそのステージの前には必ず超満員のお客さんの熱気とエネルギーと集中力があって、レ・ミゼラブルを支えてくれた。今日ここに立てていることは非常に光栄で、同時に私は生涯味わったことのないくらいの幸福感でいっぱいです。永遠にこのことは忘れないと思います。ありがとうございました」
斎藤テナルディエの軽妙さも大好きでした。
そしてあの下水道! 失礼ながらそのお歳で、死体を担いで出てくる姿にも感動でした!
マリウス役の石川禅さん。
「ポケットに詰めてこの舞台とバリケードを持って帰りたいです(笑)。...小説家は小説を残します。画家は絵を残します。音楽家は音楽を残します。役者は何も残せません。でもそのかわり、ご覧になってくださったお客様の心に記憶を残します。どうか忘れないでください。その記憶のひとつひとつがわたしたちの大事な宝物です」
石川さんも現在のバージョンではジャベール役ですが、前半のジャベールの声、後半のマリウスの声、まったく違うその声にも感動しました。
キュートで愛情深い石川マリウス、大好きです。
コゼット役、神田沙也加さん。
「今同じ舞台の上に立っているスペシャルキャストの皆さんは、わたしが本当に憧れ続けてきた方々です。こんな光栄な機会は二度とないと思い、感謝しています。『レ・ミゼラブル』という作品が、わたしは特に特別で、ちょっと恋してるみたいな気分なんです。今こうして終わってしまうのが本当に寂しいのですが、これから『レ・ミゼラブル』という作品が残っていく限り、どこにいてもどんな形でも、わたしはずっと『レ・ミゼラブル』を愛していくと思います」
ファンテーヌ役、岩崎宏美さん。
「今日という日を迎えられて本当に奇跡のような気がします。24年前も同じような悩みを毎晩抱えながら、明日もこの歌が歌えるのかと不安になりながら日々戦ったことを、昨日のことのように感じておりました。やっと今日でその苦しい戦いが少し離れられるのかなと思うと、ほっとする気持ちととともに、やはりすごく寂しい気持ちでいっぱいです。私はミュージカルの仕事は『レ・ミゼ』以外は全く考えておりませんので、今日でこの帝国劇場からは多分卒業だと思いますが、本当に一生の素敵な宝物ができました」
エポニーヌ役、島田歌穂さん。
本当に島田エポニーヌは、もう、どこを切り取っても理想のエポニーヌです。
「24年前この作品と出会いました。初演のとき、年女でした。それがみごとにふたまわりしてしまって。よく考えると人生の半分、まったく半分をこの『レ・ミゼラブル』とともに過ごしたことになります。人生の色々な思い出が常に『レ・ミゼ』の思い出とともにありました。今回この舞台でエポニーヌの声で歌えるんだろうか、不安で不安でいっぱいな毎回だったんですが、この日にたどり着くことができて本当に感謝でいっぱいです。『レ・ミゼラブル』と出会わせていただいたことは私の生涯の宝物であり、生涯の誇りです」
岩崎さんや島田さんは本当に日本オリジナル版『レ・ミゼラブル』の顔、という印象ですので、ご挨拶も重みがあります。
島田さんは通常のカーテンコールの時点で、すでに涙で顔をゆがめていらっしゃってわたしも思わずもらい泣き...。
ジャン・バルジャン役、今井清隆さん。
「僕は再演からスタートしたので(初参加は)23年前なのですが、入った時はアンサンブルで、鹿賀さんの背中を見ながら一生懸命勉強しました。今日このロンドンバージョンが終わるときに、このメンバーがまた集まってくれて、その中でわたしがバルジャンをやれるなんて役者冥利に尽きる、生涯これ以上の幸せがないじゃないかと思うくらい、最高な幸せな気持ちです。2003年に鹿賀さんが僕のバルジャンを観にきてくれて、"キヨのバルジャンだったら俺、もう一回ジャベールやりたい"って言ってくれたその言葉に僕は支えられて、頑張ってきました。最後にこのメンバーでできたのは本当に幸せです」
鹿賀さんジャベール出演は今井さんのおかげなんですね!
そして、ジャベール役、鹿賀丈史さん。
「24年前の6月12日はプレビュー公演の2日目でした。6月11日が初日で。6月12日、24年前わたしはジャン・バルジャンをやっていました」という鹿賀さん、初演時は滝田栄さんとで、バルジャンとジャベールを交互出演していました。
「今回この帝劇100周年ということでジャベールをというお話がありましたので、今までの再現をもとにまた違った形のジャベールが演じられないかなと考えまして、ちょっと工夫したりしましたが、私自身は満足しております。僕は40年近く役者をやっていますが、そのうちの半分以上この作品と携わってきました。一言では言い表せないいろんな思いがあります。何よりもこの壮大な作品を支えてくださったお客様に厚く御礼を申し上げます。...いつもこういう挨拶をしますが、今回ほんとうに! そう思ってます(笑)」
ストイックなジャベールと対照的に、ちょっとお茶目なご挨拶も素敵な鹿賀さんです。
9名のご挨拶のあと、司会の駒田一さんの紹介で、このオリジナルロンドン演出版を象徴するセット、バリケードが再登場。
そのバリケードが再び開くと......紙ふぶきとともに、昨日までに千秋楽を迎えていた出演者の方々も登場!
そして『レ・ミゼラブル』といったらやっぱりコレ、舞台と客席が一緒になった「ピープルズ・ソング」の合唱です!
ファンテーヌのお三方の姿や...
マリウス、アンジョルラス(暗くてごめんなさい)の姿も。
マリウスさんたちとアンジョルラスさんたちは、げきぴあに動画コメントも寄せてくれました。ありがとうございました!
こちらはコゼットさんたち。
千秋楽のガブローシュは加藤清史郎君でした。
清史郎君も涙、涙。
こちらは黒い服でそろえた、エポニーヌさんたち。
♪明日は~、♪ のところ。
カーテンコールは続きます...
現アンジョルラスの上原さんと、スペシャルキャスト・アンジョルラスの岡さん。
石川マリウス、涙です。
最後はバルジャン4人+鹿賀さんで。皆さん本当に素敵な笑顔です。
カーテンコールは何度も繰り返され、そして終幕。
舞台の、客席の熱気。本当に『レ・ミゼラブル』という作品が愛されていると実感した千秋楽でした。
本日の千秋楽とともに、この連載も終了いたしますが、いずれ新バージョンでの『レ・ミゼラブル』上演の際にふたたび連載できたらいいな、と担当者、ひそかに野望を抱いております!
お読みくださった皆様、ありがとうございました。