ゲキ×シネ『薔薇とサムライ』映像製作裏話
今回のゲキ×シネ『薔薇とサムライ』。まず重要視したのは、生バンドが入る音楽劇っぽいということと、『五右衛門ロック』と違う味付けにしたく、チーム編成を考えました。
ゲネプロを下見して感じたのは、以前の『メタルマクベス』より劇場の特性上、どうしてもLED(舞台上で映像を映し出す映像パネル)が近くなってしまうということ。撮影するまで、実際どのアングルのカメラがどれだけのサイズで見えてくるのか、ちょっとわからないのが不安でした。
このLED(商品名はImage-Mesh)は映像が出力されていると、一見一枚のパネルに見えるのですが、実際は網状になっており、役者を撮影する際にその大きさをバストサイズまであげると、後ろに映るLEDは光点しか見えなくなります。(余談:資料はこちら)
ポストプロダクション(※1)で背景の光点を消すという選択肢もあったんですが、あまりに膨大な費用がかかるのであきらめました。なるたけ観ていて違和感がないように処理を試行錯誤して完成形に。
ゲキ×シネチームとしては、舞台で映像を使われると、スクリーンと舞台の映像合成はけっこう大変なのです、実は。よくアンケートを拝見していると、新感線はゲキ×シネを意識して舞台でも映像を多用しているのでは?という意見を見ますが、演出のいのうえひでのりさんは、舞台転換の時間を短縮するのが目的、と言っています。『蛮幽鬼』の時はかなりこの映像合成に時間を要しました。
サウンドミックスのファイナルは、『蜉蝣峠』に引き続き、2度目のロンドン。
郊外にあるシェパートン・スタジオにてファイナルミックスを行いました。
ミキサーも前回と同じくリチャード。前回はダイアローグ(台詞)が日本語なので、抑揚をつけづらかったのですが、今回は反省を踏まえ、ダイアローグの抑揚を日本で仕込んでいきました。
『蜉蝣峠』の時は、スタジオは静まりかえっていましたが、今回は「キャプテン・アメリカ」やスコセッシの新作3D映画の撮影など、もうお祭り状態。昨年とはうってかわって賑やか。
今回も完成してみて感じたのですが、音楽がしっとりとして、かつ厚みがあり、とてもよく仕上がっていると思います。新感線の音楽を担当されている岡崎司さんも「とてもよい」と太鼓判を押してくれました。
というわけで、本作で9作目となるゲキ×シネ。いろいろチャレンジを続けてきた結果が出ていると思います。一足先にキャストの皆さんに観ていただきましたが、みなさんとても楽しんで観てもらいました。
ぜひお楽しみに!
(※1) ポストプロダクション(Post-production)/映像作品、映画の製作における、映像や音楽の編集・合成からマスタリングなど撮影後の作業の総称を差します。
◎ゲキ×シネ『薔薇とサムライ』
作 :中島かずき
演 出 :いのうえひでのり
作 詞 :森 雪之丞
出 演 :古田新太 天海祐希
浦井健治 山本太郎 神田沙也加 森奈みはる /
橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと / 藤木 孝
公開日 :6月25日(土)全国上映
チケット:全国共通前売券発売中!
一般2,000円
※ぴあURL