【ニュース】宮本亜門が6年ぶりに代表作『太平洋序曲』を演出。作品ゆかりの地で上演する意義とは?

【演劇ニュース】

神奈川芸術劇場の芸術監督である宮本亜門が、自身の代表作『太平洋序曲』を6年ぶりに演出する。6月の上演が決定したことにあたり、2月28日、同劇場にて宮本が作品への思いを語った。

『太平洋序曲』は、作詞・作曲スティーヴン・ソンドハイム、台本ジョン・ワイドマンによる1976年NY初演のミュージカル。宮本演出による日本語版は 2000年に新国立劇場で初演され、この作品を観たソンドハイムの推薦で2002年にはNY・リンカーンセンター、ワシントンD.C.・ケネディ・センターでも上演され、高い評価を受けた。そして2005年にアジア系アメリカ人キャストで念願のブロードウェイ進出、トニー賞4部門でのノミネートを果たした、いわば宮本の代表作だ。江戸末期、アメリカのペリー来航を皮切りに、イギリス、オランダ、ロシア、フランスと次々と交渉を迫られ開国していく日本の在り方を、外国人との交渉に当たった浦賀奉行所の香山弥左衛門(八嶋智人)とジョン万次郎(山本太郎)の姿を通して鋭く問いかける。


              宮本亜門
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芸術監督として宮本は、劇場のラインナップに"意味を問う"作品を選んでいると言う。先日自身が演出した三島由紀夫の『金閣寺』は戦後の日本を問うものだったと引き合いに出しながら、『太平洋序曲』には「鎖国、原爆、敗戦を経て日本がなしとげた近代化は、どれほどの前世代の痛みと必死さと混乱の上に積み重ねられてきたものなのかという思い」があり、その上で「今の日本をどう思いますか?」という強烈な問いを観客に投げかけるのだと語る。また、企業倒産の連鎖や自身の沖縄移住が発端で日本や日米関係について深く考え、それが2000年の日本版初演につながったこと、9.11が真珠湾攻撃以来の外国からの攻撃だったこともありブロードウェイ上演への道が極めて困難だったこと、白人の威圧に耐えながら生きるアジア系アメリカン俳優が白人を罵倒するセリフがなかなか吐けなかったこと、同じく日本人がアジア人に銃を向けるシナリオにアジア系アメリカンが耐えられないことなど、様々な難局をくぐり抜け上演をしてきたエピソードを振り返る。そして神奈川芸術劇場の裏手がペリーの実際の交渉場所だったという縁もあってか、「今、やっと作品の地元・神奈川でとの話があり、この地で上演したいと思った」との言葉に、今までの様々な思いがこもっていた。

オーディションに丸1年をかけたキャストは、香山弥左衛門役にミュージカル初挑戦の八嶋智人、ジョン万次郎役に山本太郎が扮する。八嶋起用の理由は根の真面目さだと語り、「(八嶋出演の)あるドラマを観たときに痛みを持った真摯な姿で映っていて、この人はもともとそういう人なのだ」と理解したのだそう。一方、山本と八嶋のマッチングについては「ジョン万次郎は明るく爽やかに登場しながら、裏側に痛みを持っていて、最終的には明るさと真逆のほうにいってしまう。真面目すぎるがゆえに苦しむ香山とのふたりの交差する感じがいい」と語った。

公演は6月17日(金)から7月3日(日)まで、神奈川芸術劇場 ホールにて。一般発売は4月16日(土)より開始。

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