松居大悟×目次立樹「ゴジゲンは自分勝手でいられる時間」

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ゴジゲン第17回公演『朱春(すばる)』が4月1日(木)から11日(日)まで上演されます。

約1年3カ月ぶりとなる新作公演で、約4年ぶりに「ゴジゲン」のメンバーのみ(奥村徹也・東迎昂史郎・松居大悟・目次立樹・本折最強さとし・善雄善雄)での上演となる本作。どのような作品になるのか、作・演出の松居大悟さんと、目次立樹さんにお話をうかがいに行くと、『朱春』はもちろん、劇団の話や、ゴジゲンのYouTube「ゴジゲンのゴジtube」までさまざまな話題が飛び出したので、ぴあニュースに書ききれなかったことを、げきぴあでお伝えします!

***

――『朱春』の具体的な内容はまだ構想中とのことですが、現段階ではどのような作品にしたいと思われていますか?
松居 どんなふうにしたらいいんだろうと思っています。
目次 ははは!

――というのは?
松居 公演初日の4月1日がどんな世の中になっているのかが読めないので。ようやく演劇観れるぜ!という状況なのか、なんとか勇気を出して劇場に行くという状況なのかで違うなと思っていて。それを言い訳に考えてないです(笑)。ただ、劇団員6人だけでやるのも第14回公演『くれなずめ』('17)以来ではあるので、コアで狭い話にしたいし、くだらない話にしたいですね。多分、「居場所」にまつわる話になるんじゃないかなと思っています。

――「4月1日がどんな状況になっているかで違う」というのは、やはりこの状況が作品に影響を与えているということでしょうか。
松居 そうですね。多分どの劇団もクリエイターもそうだと思います。どっちに振ればいいんだろうというようなところで悩んでいて......日常の些細な幸せを愛おしいとするのかとか。去年、僕もいろいろ観に行ったのですが、そこで描かれていることは世の中からとても影響を受けていて。いかに自分が生きるかとか、半径5センチくらいのことを切実に描いているものが多かった。こうするしかない気もするけど、果たしてそれでいいのだろうか、みたいな。世の中を見すぎるとそうなるなって。それと、舞台『大地』を観た時に、めちゃくちゃ初期のコメディみたいな感じをやられていたのですが、僕の一席離れた隣の方が、笑いながらすごく泣いていて。きっと久しぶりにお芝居を観たんだなと思って、多分、笑えたことに安心したのかな。なんかそれがね、結構グッときたんですよね。カーテンコールで相島(一之)さんとかも泣きそうな顔でお辞儀されていて。劇を、生で観られたことも、上演したことも、素晴らしいと思いました。そうやって、笑えることが嬉しいなと思えたらいいなとか、考えたりもしています。

――目次さんはどんなふうに思いますか?
目次 僕は今、個人的な好みがどんどん、音楽でも、オールディーズだったりクラシックだったり、よりスタンダードと言われるものがよくなっていて。ドラマや映画も同じで、その時代を反映していることも大事だとは思うのですが、テーマが普遍的なものにしか興味がなくなっちゃったんですよ。この作品も、もちろん4月1日の状況もあると思うんですけど、スポーンとはねのけるくらいに、「自分たちはこれ!」っていうのが観たいっちゃ観たいかもしれないなと思っています。
松居 世の中を気にせず。
目次 そう。前作の『ポポリンピック』でオリンピックやパラリンピックを扱ったというのもありますが、今回はそういう時事ネタではなく、ゴジゲンのエッセンスが濃いものがいいなって。

――目次さんにとっての「自分たちはこれ!」はどういうところだと思われていますか?
目次 「僕らおじさんが青春を謳歌しているような姿」というのはちょっとありますね。例えば甲本ヒロトさんのような、どんどん年を重ねていくけどスタイルを貫き続けるあの姿勢がカッコいい。ゴジゲンもそういうふうになれたら、みたいな気持ちがあります。......若い人がどう僕らを見るのかはちょっと怖い部分でもありますけど。

――怖いですか?
目次 「この人たちいい年してなにしてんの」みたいなのはあるのかもしれない。でもそんなの関係ないっすよ!って気持ちです。

――目次さんが『朱春』で楽しみなのは。
目次 謎のワクワク感と安心感があります。脚本がない状態でも別に不安ってこともないですし

――それは信頼なんですかね?
目次 そんなカッコいい言葉では語れないかもしれないですけど(笑)。
松居 タイトルが岩松了さんの戯曲みたいじゃないですか?

――(笑)。確かに。それはどうしてだったんですか?
松居 側(がわ)から考えたんです。今回はタイトルをシンプルにしようと思ったのと、『青春』の次は『朱夏(しゅか)』というのですが、僕らは青春は終わったけど『朱"夏"』まではいってない気がする。『朱"春"』くらいがちょうどいいと思って。そしたら漢字がカッコよくて。演劇の賞でもとりそうな。
目次 賞、目指してたんだね。知らなかった。
松居 (笑)。でも、外よりもきれいな桜が見られる舞台になると思います!

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――先ほど、「居場所」にまつわる話とおっしゃっていましたが、それがテーマになりますか?
松居 きっとそうなると思います。パーティーの話なので。居場所というか、価値観というか。

――なぜ今、それをテーマにしたいと思われたのですか?
松居 個人的なことなのですが、最近はゴジゲンのメンバーも各々の大切な居場所ができはじめて、前はずっとうだうだしていたのに「稽古が終わったら家に帰りたい」という感じになってきました。僕はそれが寂しいから、それについてみんなで考えたいなと思っていて。答えは出なくてもいいんですけどね。
目次 仕事とか家庭とかあって、今は、稽古早めに切り上げてみんなでご飯食べて酒飲もうぜ、みたいなノリではいられなくなっていて。でもその時間は、作品にとって大事な時間でもあったんですよね。変わらないと思っていたものが変わっていくという状況は良くも悪くもありますね。
松居 一生このまま続くんだろうと思っていたことが「そうは言ってられない」となったときに、足首掴んでそうさせないようにするのが正しいのか、それぞれの生活に送り出すのが正しいのか......わかんないですけど。メンバーそれぞれで価値観が違うから、それを話したら、繋ぎとめられるんじゃないかって(笑)。
目次 はは!

――松居さんとしては繋ぎとめたいんですね。
松居 うん。

――だって楽しいんですもんね。
松居 1年の中でこの(稽古と本番の)2カ月が楽しみ。

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――目次さんにとってはどうですか?
目次 たしかにこの2カ月ってけっこう自分勝手でいられる時間ではあります。他のメンバーもそうで、他の現場だとやっぱりみんな「仕事」って感じで目の色も違うんですけど、ゴジゲンだと緊張もなんもないし、したらいけないこともほとんどないですし。スベッても奥村がツッコんで笑いにしてくれるし(笑)。結構わがままな時間なんだと思いますね。
松居 初期衝動みたいなものがここには詰まっているから、大事です。ちゃんとしなくてもいいというか、やりたいことだけ詰め込めたらいい。

――そういうところが注目もされるところなのかもしれないですね。
松居 いやいやいや、そんなに注目されてますかね?

――されてると思いますが、目指すものがありますか?
松居 チケットとかすぐ売り切れたい。
目次 それはうれしい(笑)。

――そこも目指しつつ、このスタイルで。
松居 そうですね。今話したことと矛盾しちゃうんですけど、「話題になりたい」というのはなくて。前に、売れようとしたから'11年にバーストしたし(ゴジゲンは'11年から3年間活動を休止した)。衝動のままなにか面白いものをやっていて、それをお客さんも面白がってくれてる状態を目指しています。難しいんですよね、だから。お金取っていいのかな、とか思う時もあります。
目次 俺ら楽しいだけだもんな、みたいなね。
松居 ただ、かといって「チケット代に見合うものをお届けせねば」みたいなことを考えることもないんです。スタッフさんたちの力もあって、結果的に価値のあるものになってよかったって思うんですけど、最初から「3800円取れるものにせねば」とか思うと息苦しくなっちゃうから。矛盾したつくり方ですけど。「気付いたらできるでしょ」って言いながらつくっていきたい。でも最近はそうなりやすくなってきた気がします。

――稽古場で、皆さんでつくっていくスタイルですもんね。
松居 僕は、気付いたら出来上がっていたらいいなと思ってるから。稽古という稽古をしないまんま、いつの間にか作品が立ち上がっているっていう。そりゃ先に台本があったほうがいいし、こういう取材でちゃんと内容を伝えられたほうがいいし、それは僕もわかっていて、多分、しようと思えばできるんです。でもそれをしちゃうと仕事になると思うと、難しい。

――ザ・仕事にはしたくないんですね。
松居 「チケット代に見合うコンテンツを"演劇ができる手順"に従ってつくりあげる」とか、「起伏がちゃんとあって、お客さんが最後に拍手したくなるもの」みたいなことを理詰めでやっていくと、とても、なんか、もたなくなるような気がする。
目次 うん。
松居 なので、そこに逆らいながら飯を食うことを一番にしている。ただその飯を食うことが難しくなってきた、みたいな。いろんな矛盾の中にいますね。

――ただ、松居さんは映画とテレビドラマもやられていますよね。そこは違うのですか?
松居 映画とドラマでも違います。ドラマは最近だと『バイプレイヤーズ』になりますが、映画は劇団とは違うもっと具体的な「こういうことを描きたい」とか「こういうものを伝えたい」とか「観た人のなにかを救いたい」とかをすごく思って、そこに向かって、感覚的に、できるだけ今までの映画のロジックにハマらないようなつくり方をしようとしています。ゴジゲンは、ひとつのテーマがあって、そこでみんなでうだうだすることにしているのですが。

――映画は「観る人」が先に立つんですね。
松居 監督なので「責任を取らねば」というのももちろんありますし。映画館に足を運んでもらいたい、というのがあります。ゴジゲンはなんか違うんですよね。「演劇を観に行く」というよりも、「ゴジゲンを観に行く」になってほしいし。失敗していたら「今回はダメだったね」となるような軍団だったらいいなというか。衝動的であり、実験の場所であり。だからドラマだけですね、ちゃんと仕事してるのは。
一同 (笑)
松居 ずっと個人的な感情でつくっていたいんですよ。大人になればなるほど、そうじゃないほうがいっぱい仕事できるってことは気付きだしてるんですけど、無理だなと思って。

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――松居さんがYouTubeをやりたいという噂をうかがいました。(取材時は公開前)
松居 長くなっちゃいますよ?
目次 今一番熱いですよ?

――(笑)
松居 みんな稽古が終わったらどんどん帰るようになっているなかで、YouTubeとかがあればちょっと話さなきゃいけないことが増えると思うんですよ。

――え、帰したくなくて!?
松居 ははは!あとはこのプラットホームがね。演劇が完全に元通りになるのがいつになるかわからないから。ひとつ、劇団の表現の場があったら安心だなって。メンバーも面白いし、それが伝わればいいなって。

――なにをするんですか?
松居 モーニングルーティン。
一同 (爆笑)
目次 やばいですよね(笑)
松居 でも劇団ってYouTubeをあまりやってないんですよ。というのも表現が真逆だから。演劇って「劇場まで足を運んで、高いお金払って、その時にしか観られなくて、期間が過ぎたら跡形もなくなって記憶にしか残らない」という芸術だけど、YouTubeはいつでも観られる。やっぱ手を出しづらいんですね。なので敢えて。

――楽しみです。いつから配信するのですか?
松居 来週からやります。(配信中▶「ゴジゲンのゴジtube」

――目次さんもなにかするのですか?
目次 やりますよ。担当のコーナーができているので。

――楽しみなことは?
目次 いや、もう.........仕方ない。
一同 (笑)
目次 主宰のわがままなんで。誰一人文句言わないのがすごいなと思います(笑)。
松居 でも「大丈夫?引いてない?」って聞いたらみんな無言でした。
目次 あはは!

取材・文:中川實穂

ゴジゲン第17回公演『朱春』は、4月1日(木)から11日(日)まで東京のザ・スズナリにて上演。チケットは現在発売中。

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